GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 3分 / 2052文字 言葉の定義を読む型 #302

「ゼロ・ウェイスト」を、3つの行き先で説明したホテル:バンクーバーの「リステル・ホテル」が2011年8月から掲げた「100%」を読む

カナダ・バンクーバーの繁華街ロブソン通りの「リステル・ホテル」は、129室の高級なブティックホテルだ。館内にはレストラン「フォレッジ」を持つ。

このホテルは、2011年8月から「100%ゼロ・ウェイスト」になったと掲げてきた。ホテルの環境の資料に、そう書かれている。

「ゼロ・ウェイスト」は、ごみをまったく出さないという意味に聞こえる。けれどもリステルは、この言葉を、ごみの「行き先」で説明していた。この記事では、その説明と、それを支えた裏側の手順を読む。

リステルの「ゼロ」は、3つの行き先

2011年11月に記録されたホテルのサイトの環境のページは、ゼロ・ウェイストを次のように説明していた。

  • 生ごみなどの有機物は、すべて堆肥にする
  • リサイクルできるものは、すべて資源として回す
  • リサイクルできないものは、電気に変える

つまり「ゼロ」とは、埋め立てに回すものがないという意味だ。ごみが出ないという意味ではない。観光局「デスティネーション・バンクーバー」の2021年の記事も、同じ3つの行き先で、このホテルの「ゼロ・ウェイスト」を紹介している。

裏側の手順:分けてから出す

ホテルの環境の資料には、ごみについて、細かい手順が並んでいた。

  • リサイクルするものは、回収の前に、缶、びん、プラスチック、紙、段ボール、新聞などに分けておく
  • 使わなくなったパソコンは、地元の団体「フリー・ギーク・バンクーバー」に寄付し、直して使ってもらう
  • びんと缶は、地元の慈善団体「ユナイテッド・ウィー・キャン」に寄付する
  • 持ち帰りの容器は、発泡スチロールをやめて、堆肥にできるものにした
  • すべての客室に、リサイクルの箱と堆肥にするごみの箱を置いた
  • ごみ袋は、生分解性で堆肥にできるもの
  • 新聞は、頼まれた客室にだけ届ける
  • 印刷はできるだけ両面。片面だけ使った紙は、古いメニューを店員のメモ帳にするなどして使い直す

また、シャンプーなどの小さなボトルをやめて大きな容器に切り替え、年に4万5,000本を超える小さなボトルをなくしたと書いている。

エネルギーの数字も、同じ資料にある

同じ資料は、エネルギーの取り組みも挙げている。

  • 太陽光のパネル20枚と、熱を回収するしくみで、天然ガスの使用量を年に30%減らした
  • 建物の冷房の機械を効率の高いものに替え、電気の使用量を20%超減らした
  • 電力会社「ブルフロッグ・パワー」と組み、電気の使用量の5%を、再生可能エネルギーで埋め合わせた

デスティネーション・バンクーバーの記事によると、パネルと熱を回収するしくみを屋上に入れたのは2008年だ。記事は、お湯と建物の暖房に使う天然ガスを大きく減らすための設備だと説明している。

2013年と2024年の資料を比べる

ネット上に残る、2013年と2024年の環境の資料を並べると、中身の多くは同じだ。ゼロ・ウェイストの3つの行き先、パネル20枚、天然ガス30%減は、どちらにも書かれている。

ちがうのは、カナダ・ホテル協会の環境の格付けだ。2013年の資料では「4つのグリーンキー」、2024年の資料では「5つのグリーンキー」と書かれ、どちらもバンクーバーの小さなホテルで最も高い評価だとしている。数字の多くが同じまま、格付けの表記だけが変わっている。

「ゼロ」の定義は、ひとつではない

ゼロ・ウェイストの国際的な団体「ゼロ・ウェイスト・インターナショナル・アライアンス」は、2018年に定義を改めた。その定義は、資源を「燃やさずに」守ることを条件にしている。

リステルの3つめの行き先は「電気に変える」だった。資料には、どのような方法で電気に変えたのかは書かれていない。もしごみを燃やして発電する方法なら、この団体の定義での「ゼロ」とは別のものになる。どちらが正しいかではなく、同じ言葉に、ちがう線の引き方があるということだ。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、1日に30キロのごみを出す宿を考える。

  • 生ごみ:12キロ(4割)。堆肥にする
  • 資源ごみ:10.5キロ(3割5分)。分けてリサイクルに回す
  • そのほか:7.5キロ(2割5分)。燃やして発電する施設に回す

「埋め立てない割合」で数えれば100%だ。けれども「燃やさない割合」で数えると、22.5キロ÷30キロで75%になる。1年で見ると、燃やす分は約2.7トンだ。

ここで、客室の使い捨ての品を見直し、「そのほか」を1日2キロ減らせたとする。合計は28キロ、燃やさない割合は22.5キロ÷28キロで約80%に上がる。どちらの数え方を選ぶかで、宿が次に取り組むことも変わってくる。

「ゼロ」と言うなら、定義を1行で添える

リステルの資料は、「ゼロ」の中身を3つの行き先で書いていた。だから、読む人は何が「ゼロ」なのかを確かめられた。宿が「ごみゼロ」と言うときも、埋め立てない意味か、燃やさない意味かを1行添えるだけで、伝わり方が変わる。

持ち帰れる知識

  • 「ゼロ・ウェイスト」は、ごみが出ないことではなく、行き先で定義されることが多い
  • 「埋め立てない」と「燃やさない」は、別の線の引き方
  • 資料の年がちがっても数字が同じなら、いつの数字かを確かめる

宿で考えられること

  • ごみの行き先を、堆肥、資源、そのほかの3つに分けて、量を記録する
  • 「ごみゼロ」と書くときは、何をゼロにしたかを1行で添える
  • 資源は、回収の前に種類ごとに分けておく

事業・予約への接続

ごみの行き先を具体的に示せば、環境に関心のある客や、会議を開く企業の担当者に伝わりやすい。数字と定義をセットで書けば、「言い過ぎ」と受け取られる心配も減る。

Sources / 参考情報

  • The Listel Hotel(英文) - 環境は大切:リステル・ホテルの持続可能な取り組み(インターネット・アーカイブ、2013年11月4日の記録)
    裏付け: 2011年8月から100%ゼロ・ウェイスト、3つの行き先、資源を種類ごとに分ける、フリー・ギーク・バンクーバー、ユナイテッド・ウィー・キャン、堆肥にできる容器・ごみ袋、全客室の箱、新聞は頼まれたときだけ、両面印刷とメニューのメモ帳、小さなボトル年4万5,000本超、パネル20枚と熱の回収で天然ガス年30%減、冷房の機械で電気20%超減、ブルフロッグ・パワー5%、4つのグリーンキー
  • The Listel Hotel(英文) - 環境は大切:リステル・ホテルの持続可能な取り組み(インターネット・アーカイブ、2024年5月16日の記録)
    裏付け: 5つのグリーンキー、ゼロ・ウェイストの3つの行き先、パネル20枚、天然ガス年30%減
  • The Listel Hotel(英文) - 環境は大切:私たちの環境の取り組み(インターネット・アーカイブ、2011年11月27日の記録)
    裏付け: ゼロ・ウェイストとは、有機物をすべて堆肥に、資源をすべて使い直し、リサイクルできないものを電気に変えること
  • Destination Vancouver(英文) - 持続可能性への強い思いを示す、バンクーバーの2つのホテル(2021年11月17日)
    裏付け: ロブソン通り1300番地の高級なブティックホテル、レストランのフォレッジ、129室、2008年に屋上にパネル20枚と熱の回収のしくみ、お湯と建物の暖房の天然ガスを減らす、客室のリサイクルと堆肥の箱、リサイクルできないものを電気に、5つのグリーンキー
  • Zero Waste International Alliance(英文) - ゼロ・ウェイストの定義(2018年12月20日に改定)
    裏付け: 資源を燃やさずに、環境や健康を脅かす排出なしに守る、という定義

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