「80%」から「48%」、そして「61%」:米ボルダーの「セント・ジュリアン」のごみの数字と、堆肥の受け皿が変わった2023年
米国コロラド州ボルダーに、「セント・ジュリアン・ホテル&スパ」がある。201室で、旅行サイト「トラベル・ボルダー」の2025年の記事によると、開業20年を迎えた。
このホテルは、ごみを埋め立てに回さない取り組みで知られてきた。2014年の地元紙は、その割合を「80%」と伝えた。ところが、ホテル自身の報告書では、2024年が48%、2025年が61%だ。
数字だけを見ると、10年で大きく下がったように見える。けれども、その間に、地域の堆肥の受け皿のルールが変わっていた。この記事では、年ごとの数字と、その周りで変わったことを並べる。
2007年から始まった取り組み
地元紙「デイリー・カメラ」の2014年11月の記事と、業界サイト「グリーン・ロッジング・ニュース」の2017年5月の記事によると、流れは次のとおりだ。
- 2007年、ホテルの所有者が、埋め立てに回さない割合を高めると決めた
- 2007年に処分した物は約70万ポンド(約318トン)。10年で、年に40万ポンド(約181トン)まで減った
- 最初はリサイクルから始め、客室のリサイクルの箱を除いて、ごみはすべて裏側で分けた
- ごみの40%は堆肥にできる物で、地元の非営利団体「エコサイクル」が引き取った
- 埋め立てに回さない割合は、2014年の記事で80%、2017年の記事では前の年に78%
2014年の記事で、ホテルの担当者は「60〜65%までは、とても簡単に届く」と話している。
2023年4月:堆肥にできる物が、食べ物と草木だけになった
ボルダー郡のサイトによると、2023年4月1日から、地域の堆肥の工場「A1オーガニクス」は、生ごみと庭の草木しか受け入れなくなった。
- 紙ナプキン、ペーパータオル、「堆肥にできる」と認証された食器や容器、堆肥にできる袋は、受け入れの対象から外れた
- 家庭も事業所も同じで、これらはごみとして捨てることになった
- 堆肥にプラスチックやガラスがまじり、売り物にならなくなっていたことが理由だ
ホテルの2024年の報告書にも、「生ごみだけを受け入れる、エコサイクルの新しい堆肥のルール」に合わせて表示を替え、従業員を教え直したと書かれている。
2023年から2025年の数字
ホテルの報告書とトラベル・ボルダーの記事から、最近の数字を並べる。
- 2023年:リサイクル14万2,000ポンド、堆肥4万3,000ポンド(トラベル・ボルダーの2025年の記事)
- 2024年:リサイクル13万4,278ポンド。堆肥は1万7,000ポンドあまり増えた。埋め立てに回さない割合は48%
- 2025年:埋め立てに回さなかった量は30万6,358ポンド(約139トン)。割合は61%
2025年の内訳は、紙・プラスチック・びん・缶のリサイクルが33%(16万6,117ポンド)、エコサイクルの「リサイクルしにくい物のセンター」に回した物が16%、堆肥にした生ごみは5万3,310ポンドだ。客室のマットレスや、ロビーとテラスの家具を替えたときも、埋め立てには回さなかったという。
なお、2024年の報告書では、埋め立てに回さなかった量が「201,2421lbs」と書かれていて、桁の区切りがくずれている。正しい量は、この表記からは読み取れない。
「13%増」は、13ポイント
2025年の報告書は、48%から61%への変化を「13%の増加」と書く。これは、割合の差の13ポイントのことだ。61÷48で計算すると、約1.27倍、つまり27%の増加になる。
報告書は、2025年の目標「5%増やす」を「2倍以上で達成した」とも書く。ここでの「5%」も、ポイントの意味で読むのが自然だ。
80%と61%は、比べられるか
2014年の80%と2025年の61%を、そのまま比べることはできない。2023年4月の堆肥のルールの変更のように、何を「埋め立てない」側に数えられるかが、途中で変わったからだ。そのほかに、数え方や対象が変わったかどうかは、資料からは分からない。
エネルギーの数字にも、同じ注意がいる。2017年の記事は、2009年から2015年に、使用中の客室あたりの天然ガスを38%減らしたと書いた。2024年の報告書は、2009年からの減り方を13%と書く。期間がちがうので、どちらかがまちがいとは言えない。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、1日に25キロのごみを出す宿を考える。
- 生ごみ8キロ、紙ナプキンや堆肥にできる容器2キロ、資源ごみ7キロ、そのほか8キロ
- 受け皿の変更の前:堆肥10キロと資源7キロで、埋め立てに回さない割合は17÷25で68%
- 変更の後:紙ナプキンや容器の2キロがごみに回り、15÷25で60%
宿のやり方は同じなのに、割合は8ポイント下がる。そこで、使い捨ての容器をやめて洗って使う食器に替え、2キロを出さないようにする。合計は23キロで、15÷23は約65%。上がったのは約5ポイントで、割合で言えば約9%の増加だ。
数字の周りの「ルール」も一緒に書く
セント・ジュリアンの数字は、ホテルの努力だけでなく、地域の受け皿のルールにも左右されていた。宿が年ごとの割合を伝えるときも、ポイントか%かを分け、途中でルールが変わったならそれを書き添える。そうすれば、下がった年の数字も、正しく読んでもらえる。
持ち帰れる知識
- 「埋め立てない割合」は、地域の受け皿のルールで変わる
- 「13%増」が、ポイントの差か、割合の伸びかを確かめる
- 期間のちがう削減率は、そのまま比べない
宿で考えられること
- 地域で何が堆肥やリサイクルに回せるかを、年に1度確かめる
- ルールが変わったら、ごみ箱の表示と従業員の説明をすぐに替える
- 割合の変化は、ポイントで書く
事業・予約への接続
年ごとの報告書を公開すれば、下がった年も含めて、取り組みの続き具合が伝わる。会議や結婚式の主催者には、ごみの行き先の内訳を示すと、企画の相談に生かしてもらいやすい。
Sources / 参考情報
- St Julien Hotel & Spa(英文) - 2025年 持続可能性の年次報告書(2026年3月)
裏付け: 61%・13%の増加、30万6,358ポンド、埋め立ての割合52%→39%、リサイクル33%・16万6,117ポンド、リサイクルしにくい物16%、堆肥5万3,310ポンド、マットレス・家具を埋め立てずに更新、寄付6,000ポンド超、目標5%を2倍以上で達成、フォーブス・トラベルガイドの4つ星 - St Julien Hotel & Spa(英文) - 2024年 持続可能性の年次報告書(2025年5月)
裏付け: 生ごみだけのエコサイクルの新しいルール、堆肥1万7,000ポンドあまり増、リサイクル13万4,278ポンド、「201,2421lbs」・48%、2025年の目標5%増、電気28%減・天然ガス13%減(2009年から) - Daily Camera(英文) - ボルダーは、事業所のリサイクルをさらに進める(2014年11月28日)
裏付け: 2007年に所有者が決めた、割合は80%、裏側で分ける、堆肥がごみの40%、60〜65%まではとても簡単 - Green Lodging News(英文) - セント・ジュリアン・ホテル&スパで、ごみを減らす努力が大きな成果に(2017年5月8日)
裏付け: 201室、2007年に約70万ポンド・年40万ポンドに、前年78%、堆肥にできる物40%・エコサイクル、2009〜2015年に客室あたり電気27%・天然ガス38%・水11%減 - Travel Boulder(英文) - セント・ジュリアンが「ボルダーの居間」として20周年(2025年4月10日)
裏付け: 201室、20年、2023年にリサイクル14万2,000ポンド・堆肥4万3,000ポンド、2009年から電気28%・天然ガス13%減 - Boulder County(英文) - 堆肥のルールの変更についてのよくある質問
裏付け: 2023年4月1日からA1オーガニクスは生ごみと庭の草木だけ、紙ナプキン・ペーパータオル・堆肥にできる食器は家庭と事業所とも回収しない、まじり物で売り物にならない