GOAL 7 · TARGET 7.3 エネルギー・脱炭素 4分 / 2167文字 先に配線を用意する型 #313

「11基を今、あと12基は需要に合わせて」:米コロナドの「ホテル・デル・コロナド」が、つながらない充電器から、見える充電器に替えた方法

米国カリフォルニア州サンディエゴ湾を望む「ホテル・デル・コロナド」は、1888年に建てられた浜辺のリゾートだ。1977年には、国の歴史的建造物に指定されている。ホテルの年表によると、開業前の1887年11月には、すでに発電の設備が届いていた。

このリゾートが、地下駐車場の電気自動車(EV)の充電器を入れ替えた。工事をまとめたのは、ミネアポリスのエネルギー設備の会社「EMC」だ。同社が2023年4月にまとめた事例と、同じ年の9月に照明・設備の業界誌「LM&M」が載せた記事から、入れ替えの流れを読む。

最初の充電器には、見る仕組みがなかった

EMCの事例によると、リゾートはEVの充電を早くから取り入れていた。けれども、最初に置いた充電器には、次の特徴があった。

  • ネットワークにつながっていない
  • リゾートではなく、別の会社が持ち、運営している

そのため、関係者はすぐに、客がどれだけ使い、どう料金を払っているかを見る仕組みと、報告の仕組みが要ると気づいた。将来、充電器を増やせることも求めた。

23基分の電気を用意し、まず11基を入れた

EMCの事例は、リゾートの準備を次のように書いている。

  • 客のEVの利用が大きく増えると見込み、ネットワークにつながる充電器を最大23基まで置けるように、電気の設備をすでに強化していた
  • そのうえで、すぐに11基を加え、需要が増えたら最大12基を足せるようにしたいと考えた
  • 選んだのは、壁にかける1口の充電器。使い方を見て報告できること、見た目、客に人気があることで選んだ

一方、LM&Mの記事は、「23基まで置けるように電気の設備を強化したことが解決策だった」と書いている。強化をだれがいつしたのかは、2つの資料で書き方が違う。

工事の前に、配線の誤りを見つけた

EMCの事例によると、取り付けの前に、専門の担当者が電気の設備と、無線の電波の届き方を調べた。

  • そこで、すでにある配線に誤りを見つけ、配線をやり直した
  • そのうえで、充電器の箱を開けて組み立て、配線するまでを、1日で終えた。駐車場への影響を小さくするためだ
  • 取り付けのあと、1基ずつネットワークにつながり、正しく動き、登録されているかを確かめた

LM&Mの記事は、さらに工事の工夫を伝えている。

  • 配線を通す管は、すべて壁や天井の表面に取り付けた
  • そのため、地面を掘ったり穴をあけたりする必要がなかった。掘る工事は、取り付けを複雑にし、費用を大きく増やすことがある
  • 費用が低かったため、リゾートは建物の改修の予算の中で工事をまかなえた

地元の作業員を使い、宿泊費を減らした

EMCは、北米の各地で、あらかじめ審査した工事会社と組んでいる。今回は、サンディエゴ湾の近くの作業員が工事をした。そのため、遠くから作業員を呼んだ場合にかかる宿泊の費用を減らせたという。

保証と、あとで増やすための準備を守る

EMCは、充電器を自社で持ち、運営する形でリゾートに提供している。そのため、取り付けの手順を守り、次の2つを保つとしている。

  • 充電器の製品の保証
  • 将来、充電器や機能を足すときに使う、先に用意した配線や電気の設備

また事例は、ホテルの所有者のグループが、ほかのホテルにも同じ充電の設備を広げられる可能性があると書いている。どのホテルに、いつ広げるのかは書かれていない。

入れ替えのあとに見えるようになったこと

EMCの事例は、結果を次のように書いている。

  • インターネット上の管理画面で、電気の使用量、温室効果ガスの排出量、客への請求などを記録できる
  • 将来、充電が終わっても車を動かさない人への追加料金、会員の特典、ほかの建物の管理の仕組みとの連携などを加えられる
  • 客は、空いている充電器を探して予約し、充電の様子を見て、満充電になると知らせを受け取れる
  • 保守と修理は、24時間365日、工事会社の網で受ける

ただし、この事例には、充電の回数や電気の量、料金の額は書かれていない。「見えるようになった」のは仕組みで、見えた中身はまだ公表されていない。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室、稼働率70%の宿を考える。1日の宿泊は14組になる。

  • 14組がすべて車で来るとし、そのうちEVの割合を今は15%とすると、1日約2.1台。夜の間に1台ずつ充電するなら、充電器は3基で足りる
  • 数年後に30%になるとすると、1日約4.2台。充電器は5基要る
  • コロナドのように考えるなら、電気の設備と配線の管は5基分を先に用意し、充電器は3基から始める。あとの2基は、需要が増えたら壁にかけるだけで済む

最初から5基を置くと、2基はしばらく使われない。3基分しか配線しないと、増やすときにもう一度工事が要る。電気の工事会社には、この2つの費用を並べて見積もってもらいたい。

数を決めるより先に、増やし方を決める

ホテル・デル・コロナドの事例で大切なのは、11という数よりも順番だ。最初の充電器で見えなかったものに気づき、23基分の電気を用意し、11基から始め、配線の誤りを先に直し、掘らない工事で1日で取り付けた。充電器を考える宿は、今の数と、将来の数と、その間をつなぐ配線を、同時に決めておきたい。

持ち帰れる知識

  • 「最大23基」は置ける数で、実際の数は11基
  • 見る仕組みのない充電器では、使われ方も請求も把握しにくい
  • 配線を先に用意しておくと、あとから増やす工事が小さくなる

宿で考えられること

  • 車で来る客の数と、EVの割合を記録する
  • 今の数と将来の数を決め、配線をどこまで先に用意するかを見積もる
  • 充電が終わっても動かさない車への対応を決めておく

事業・予約への接続

充電器の空きを予約の前に確かめたい客は多い。空きや充電の様子を客が見られる仕組みは、予約の前の不安を減らす。

Sources / 参考情報

  • EMC(英文) - EVの充電:ホテル・デル・コロナドの事例(2023年4月26日)
    裏付け: 最初はネットワークにつながらず別の会社が運営する充電器、見る仕組みと報告と拡張の必要、最大23基まで置けるよう電気の設備をすでに強化、11基をすぐに加え最大12基を足せる、壁かけの1口、配線の誤りをやり直した、組み立てと配線を1日で、取り付け後の確認、サンディエゴ湾の近くの作業員で宿泊の費用を減らした、管理画面で電気・温室効果ガス・請求を記録、追加料金・会員の特典・連携、空きの検索と予約・知らせ、24時間365日の保守、保証と先に用意した設備を守る、所有者のグループがほかのホテルに広げられる可能性、地下駐車場、サンディエゴ湾を望む歴史的なリゾート
  • EMC(英文) - ホテル・デル・コロナド(事例のページ)(2023年4月27日)
    裏付け: サンディエゴ湾を望む浜辺のリゾートで歴史的建造物、カリフォルニアはEVの普及率が高い州の一つ
  • LM&M(英文) - 需要に応える:EVの充電(2023年9月号)
    裏付け: 23基まで置ける電気の設備の強化が解決策、11基を加え最大12基を足せる、地元の作業員、組み立てと配線を1日で、地下駐車場、配線の管はすべて表面に取り付け掘る工事が不要、改修の予算の中でまかなえた
  • Hotel del Coronado(英文) - デルの歴史
    裏付け: 1888年に建てられた、1977年に国の歴史的建造物に指定
  • Hotel del Coronado(英文) - ホテルのいちばん高いところ(年表、1887年)
    裏付け: 1887年11月、外装の工事の多くが終わり、発電の設備と洗濯機が届いた

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