GOAL 7 · TARGET 7.3 エネルギー・脱炭素 4分 / 2237文字 山の宿の充電を読む型 #314

「22kW」は充電器の上限で、速さは車が決める:インド・ヒマラヤの「エコール・ホテルズ」が、山の宿に有料の充電器を置いた理由と、ネットが切れたときの備え

インド北部のヒマーチャル・プラデーシュ州には、山の町が多い。都市から車で向かう旅行者も多い。この州を中心に宿を運営する「エコール・ホテルズ」は、カソルとマナリの宿に、電気自動車(EV)の充電器を置いた。

2026年2月、インドの充電器の会社「ゼブポイント(ZEVpoint)」は、この取り組みを自社の事例として公表した。書いたのは充電器を納めた会社自身で、充電の回数や売り上げの数字は載っていない。この記事では、事例が説明している判断の理由と、山の宿ならではの課題を読む。

エコール・ホテルズとは

インドの業界メディア「ETホスピタリティワールド」によると、エコール・ホテルズは2019年に、観光客の少ない土地を旅するのが好きな友人2人が始めた。そうした土地で、安心して泊まれる一定の水準の宿を見つけにくかったことが出発点だという。最初の宿はナルカンダで、2024年2月の時点で13軒を運営していた。同じ年の11月には、15軒目をパラムプルに開いたと伝えられている。

ゼブポイントの事例によると、宿はどれも12〜33室の小さな宿だ。

環境のためではなく、予約のため

事例によると、充電器を置いたきっかけは、客からの問い合わせだった。

  • フロントと予約の担当者に、「EVの充電器はありますか」という質問がくり返し届くようになった
  • とくに、チャンディーガルやデリー、パンジャブの平野から車で来る客だった
  • 山では公共の充電器がまだ少なく、あてにならない。そのため、宿で夜に充電できるかどうかが、予約するかどうかを決める客がいた

事例は、これを「環境のための宣伝ではなく、予約の実務の判断だった」と書いている。

なぜ22kWの交流の充電器なのか

事例は、22kWの交流(AC)の充電器を選んだ理由を次のように説明している。

  • 22kWは充電器が出せる上限で、実際の速さは車の側の受け入れ能力で決まる。たとえば、タタのネクソンEVは約3.3kW、MGのZS EVは7.4kWまで受け入れる
  • 3.3kWの車でも、夜の10〜12時間つなげば満充電になる
  • 高速道路の休憩所にあるような30〜60kWの急速充電器(直流)は、値段が高く、より多くの電気の容量が要る。車が10〜14時間止まっている宿では、速さの利点がない
  • 新しい車は受け入れ能力が上がっているので、22kWなら、機器を替えずに速い充電に対応できる

無料ではなく、有料にした

事例によると、エコールの充電は有料だ。

  • 客は使った電気の量に応じて払う。1キロワット時あたりの料金は、宿が決める
  • 料金は、季節に合わせて変えられる
  • 充電代は、その場で払うか、宿泊の請求にまとめる
  • 管理画面で、どの充電器が、いつ始まり、どれだけ動き、何キロワット時を送り、いくら集めたかが、1回ごとにわかる

事例は「意図して宣伝に使うのでなければ、無料にする理由はない」と書いている。宿の側で料金も中身も把握したい、というのがエコールの求めた条件だった。

ネットが切れても、充電を止めない

山の宿ならではの課題が、インターネットの接続だ。

  • カソルやマナリでは、山の地形や天気のため、接続が数分から数時間切れることがある
  • 充電を始めるたびにネットの向こうの管理の仕組みとつながる必要があると、切れている間は充電器が動かない。夜9時に長い運転を終えて着いた客が、充電できないことになる
  • ゼブポイントは、ネットが切れても充電器が動き続ける仕組みを用意した。どのように動くかの細かい説明は、事例には書かれていない

事例は、山や人里離れた土地の宿は、充電器の会社を選ぶときに、この点を必ず尋ねるべきだと書いている。

宿ごとに、電気の余裕を調べた

宿は、大きな電気室のある大きな建物ではない。照明、冷暖房、厨房、給湯に合わせた電気の設備しかない。

  • 22kWの充電器を加えるため、宿ごとに電気の余裕を調べた
  • 手を加えずに置けた宿もあれば、分電盤や保護の装置を少し強化した宿もあった
  • 大雨や雪、冬の氷点下に耐えられるよう、防水・防じんの等級が高い機器を選び、水や雪の流れを考えて配線する

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、夜に30キロワット時を充電する車を考える。充電の途中の損失は考えない。

  • 3.3kWまで受け入れる車:約9時間かかる
  • 7.4kWまで受け入れる車:約4時間
  • 11kWまで受け入れる車:約3時間弱

どの車でも、夕方に着いて朝に出るなら間に合う。充電器の上限を上げても、3.3kWの車は速くならない。

次に料金を考える。電気代を1キロワット時あたり30円とし、客から50円をいただくとする。30キロワット時なら、客の支払いは1,500円、電気代は900円、差は600円になる。ただし、ここには充電器の値段、工事費、電気の基本料金の増加、管理の仕組みの利用料が入っていない。日本で電気の量に応じて料金をとる方法は、契約や制度を、電力会社や充電の会社に確かめたい。

山の宿が確かめた3つのこと

エコール・ホテルズの事例から持ち帰れるのは、充電器の大きさよりも、確かめた中身だ。車が受け入れる速さと、止まっている時間を並べたこと。料金と記録を自分の手に持ったこと。ネットが切れても動くかを尋ねたこと。電気の余裕を宿ごとに調べたこと。事例は充電器を納めた会社の説明なので、回数や売り上げは、自分の宿で記録して確かめたい。

持ち帰れる知識

  • 充電器の「22kW」は上限で、実際の速さは車の受け入れ能力で決まる
  • 宿のように長く止める場所では、急速充電は必ずしも要らない
  • 山や人里離れた土地では、ネットが切れたときに充電器が動くかを確かめる

宿で考えられること

  • 予約やフロントで、充電器の問い合わせの数を記録する
  • 無料にするか有料にするかを、宣伝の目的と費用から決める
  • 電気の余裕と、ネットが切れたときの動きを、充電器の会社に尋ねる

事業・予約への接続

公共の充電器が少ない土地では、宿で夜に充電できることが、予約の決め手になることがある。予約のページに、充電器の数、料金のかけ方、使える時間を書いておくと、客が計画を立てやすい。

Sources / 参考情報

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