「69%」と「80%超」は、どう違うのか:スペインの「イベロスター」が、ごみ専門の部署と250人以上の社員でつくった数字を読む
スペインのホテル会社「イベロスター・ホテルズ&リゾーツ」は、家族で所有する会社で、4つ星と5つ星のホテルを約100軒持っている。海辺のホテルが多い。
2026年1月、この会社は、オランダの研究団体「サークル・エコノミー」、国連の観光の機関「国連ツーリズム」と共同で、ホテルの循環経済についての報告書を出した。報告書の後半は、イベロスター自身の取り組みの事例になっている。そこには、埋め立てに回すごみについて「69%」と「80%超」という2つの数字が出てくる。この記事では、その2つの違いと、数字をつくった部署の仕事を読む。
目標は、段階ごとに変わってきた
報告書によると、イベロスターの目標は次のように変わってきた。
- 2017年:海を守る活動「ウェーブ・オブ・チェンジ」を始めた。まず、ごみの出どころ、中身、量を調べ、使い捨てのプラスチックを急いで取り組むべき課題とした
- 第1段階(2017〜2020年):客の目にふれる使い捨てのプラスチックを、2020年までになくす
- 第2段階(2020〜2025年):2025年までに、埋め立てに回すごみをゼロにする
- 第3段階(2025〜2030年):2030年までにカーボンニュートラル
第1段階の目標は、18か月で達成したと書かれている。
最初の年に、1,000を超える品を見直した
使い捨てのプラスチックをなくすため、報告書によると次のことをした。
- 最初の年に、ホテルで使う1,000を超える品を洗い出し、使い捨てのものを見つけた
- 取引先と組んで、使い捨ての品を長く使える品や、くり返し使える品に替えた
- シャンプーやコンディショナーなどは、大きな容器に替えた
- 客が水をくめる場所を設け、1,300を超える浄水の給水器を置いた。使い捨てのペットボトルは要らなくなった
その結果、最初の年に、2018年と比べて692トンの使い捨てのプラスチックを減らしたという。
ごみ専門の部署「3Rチーム」
第2段階のために、イベロスターは2021年、ごみを減らす専門の部署をつくった。減らす(リデュース)、くり返し使う(リユース)、資源にする(リサイクル)の頭文字から「3Rチーム」と呼ぶ。報告書は、ホテル業界で初めての、ごみをなくすための部署だと書いている。
- 250人以上の社員が、毎日のごみの扱いの研修を受けている
- 社員はごみのデータを集め、確かめ、読み解く。それが会社の上の判断に使われる
- ごみは、決まった形の報告と、くり返しの監査で測る。業界でよくある「見積もり」に頼らない
- デジタルの画面と現場の機器で、ごみの重さと種類をその場で記録する
- ごみが、それぞれの土地で最後にどこへ行くのか(分別されるのか、資源になるのか、堆肥になるのか、燃やされるのか)まで追う
- 3Rチームの分析は、社員の評価と賞与にも結びついている
監査では、ホテルのごみの少なくとも60%(主に生ごみ)は、設備をよくし、取引先と協力すれば、埋め立てから外せるとわかった。
食べ物は、いちばん大きなごみ
報告書によると、食べ物はごみの約60%を占める。
- 60を超えるホテルで、AIを使うごみ箱(ウィノウ社)を入れた。捨てたものの種類と量がわかる
- 入れて最初の年に、食品のごみが12%減った
- 2024年は2023年と比べて、食品のごみを26万キロ減らした。世界のすべてのホテルで見ると、2.65%の減少だった
- 生ごみは、その場で堆肥にするか、規則が許す場所では地元の農家と組んで家畜のえさにする
- ブラジルの2つのホテルでは、地元との協力で、生ごみをすべて堆肥にしている
「69%」と「80%超」の違い
報告書は、第2段階の結果を次のように書いている。
- 2024年の時点で、2021年と比べて、ごみの69%を埋め立てから外した
- 監査を受けていない2025年の数字では、80%を超えた
- 新しい結果は、2026年に出る予定
一方、同じ月にイベロスターが出した発表では、「2021年から、埋め立てに回すごみを80%以上減らした」と書いている。報告書では「監査を受けていない暫定の数字」とされている80%超が、発表では条件をつけずに書かれている。また、ホテルの数は、報告書では「13か国の約100軒」、発表では「14か国の100軒超」と、少し違う。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、ごみの数字の2つの読み方を考える。
- 基準の年:ごみは全部で10トン、すべて埋め立てに回していた
- 今年:客が増えて、ごみは全部で12トン。そのうち埋め立ては3トン、残りの9トンは資源や堆肥にした
- 埋め立ての量は、10トンから3トンへ70%減った
- 今年のごみのうち、埋め立てから外した割合は、9÷12で75%
同じ宿の同じ年でも、「埋め立ての量が何%減ったか」と「ごみのうち何%を埋め立てから外したか」で、数字が変わる。宿が数字を伝えるときは、どちらの意味か、基準の年はいつか、測った数字か見積もりかを書き添えたい。
人とデータで、数字を支える
イベロスターの事例で大切なのは、69%や80%という数字よりも、その裏にある仕組みだ。ごみ専門の部署をつくり、250人以上に研修をして、重さを測り、行き先まで追い、監査を受けた。宿の規模なら、1人が毎日ごみの重さを記録するだけでも、数字の土台ができる。
持ち帰れる知識
- 「監査を受けた数字」と「暫定の数字」は分けて読む
- 「埋め立ての量の減少率」と「埋め立てから外した割合」は、同じではない
- ごみの約60%を占める食べ物は、量を測ることから減らし始められる
宿で考えられること
- ごみを種類ごとに、毎日重さを測って記録する
- ごみが最後にどこへ行くのかを、回収の業者に確かめる
- 数字を伝えるときは、基準の年と意味を書き添える
事業・予約への接続
ごみの数字は、基準の年と測り方を一緒に示すと信頼されやすい。団体や企業の旅行を決める担当者は、数字の根拠を確かめることが多い。
Sources / 参考情報
- Circle Economy・Iberostar・UN Tourism(英文) - 循環するホテル業に向けて:観光の仕組みを変える(2026年1月19日)
裏付け: 家族で所有、13か国の約100軒の4つ星・5つ星、海辺が多い、2017年に始めごみの出どころ・中身・量を調べた、3つの段階の目標、18か月で達成、2021年に3Rの部署、業界初、250人以上の研修、データを集め確かめ読み解く、決まった報告とくり返しの監査、重さと種類の記録、行き先まで追う、評価と賞与、少なくとも60%を外せる、1,000を超える品の洗い出し、大きな容器、1,300を超える浄水の給水器、692トン(2018年比)、食べ物は約60%、ウィノウを60超のホテル、最初の年に12%減、2024年に26万キロ・2.65%、堆肥と家畜のえさ、ブラジルの2ホテル、2024年に69%、監査前の2025年に80%超、2026年に新しい結果 - European Circular Economy Stakeholder Platform(英文) - 循環するホテル業に向けて:観光の仕組みを変える(2026年1月)
裏付け: 欧州委員会などの循環経済の情報サイトに、サークル・エコノミー、イベロスター、国連ツーリズムの報告書として掲載、10の課題と5つの機会 - Iberostar(英文) - 国連ツーリズム、イベロスター、サークル・エコノミーが、循環経済をホテル業の原動力として打ち出す(2026年1月23日)
裏付け: 14か国の100軒超、3Rの部署に250人以上、60超のホテルの厨房でAI、2021年から埋め立てを80%以上減らした - Circle Economy(英文) - 循環するホテル業に向けて(紹介ページ)
裏付け: サークル・エコノミーとイベロスターが国連ツーリズムと協力してつくった報告書 - Iberostar Wave of Change(英文) - 循環するホテル業に向けて
裏付け: イベロスターの活動のサイトでの報告書の紹介