GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2363文字 冷却塔の水を読む型 #317

「年100万ドルの節約」は、水道料金が上がらずに済んだ額:米アトランタの「ハイアット・リージェンシー・アトランタ」が、冷却塔の水を35%減らした方法

米国ジョージア州アトランタの「ハイアット・リージェンシー・アトランタ」は、客室1,260室、延べ床面積150万平方フィート(約14万平方メートル)の大きなホテルだ。

2014年7月、米国環境保護庁(EPA)の節水の制度「ウォーターセンス」は、このホテルの事例をまとめた。題は「ジョージアのホテルが、機械の設備を最大限に生かして年100万ドルを節約」。この記事では、「100万ドル」の意味と、水を減らした中心である冷却塔の仕組みを読む。

水道料金が大きく上がった

事例によると、アトランタの上下水道の料金は、2000年から2013年の間に、100立方フィート(約2.8立方メートル)あたり20ドル以上上がった。そのため、ホテルは節水を最優先にし、とくに冷却塔、水で冷やす機器、冷凍機とボイラーの水を減らすことに力を入れた。

その結果、2013年の水の使用量は、2000年より35%少なくなった。2013年の1年だけで、3,600万ガロン(約13万6,000立方メートル)の水を節約したという。

「100万ドル」は何の額か

事例の冒頭は、100万ドルを次のように説明している。

  • もし2000年と同じ量の水を使い続けていたら、大きく上がった料金のために、上下水道の費用が年に100万ドル多くかかっていた

つまり、100万ドルは、水道代の請求が前より100万ドル下がったという意味ではない。料金が上がった中で、節水しなかった場合と比べて、払わずに済んだ額だ。

また、EPAの事例の一覧のページは、この事例を「3年で水の使用を35%減らした」と紹介している。事例の本文では「2000年から2013年」の比較で、期間の書き方が違う。

最大の削減は、冷却塔の「濃縮倍数」

ホテルの冷房は、冷却塔で水を蒸発させて熱を外に逃がす。水が蒸発すると、水に溶けていた塩類が残って濃くなる。濃くなりすぎると配管に固まりがつくので、濃くなった水の一部を捨てて、新しい水を足す。捨てる水を「ブローダウン」と呼ぶ。

EPAの手引きによると、冷却塔の水の使い方は「濃縮倍数」で見る。

  • 濃縮倍数は、捨てる水と足す水の、溶けたものの濃さの比。足す水の量と捨てる水の量の比でもある
  • 多くの冷却塔は2〜4倍で動いているが、6倍以上にできることもある
  • 3倍から6倍に上げると、足す水は20%減る

ハイアット・リージェンシー・アトランタは、6つの冷却塔を持つ。ホテルと水処理の会社は、濃縮倍数を上げることが水を減らすいちばんの方法だと考えた。

  • 水の電気の通しやすさ(導電率)と、薬の濃さを測る
  • 溶けたものの濃さが設定の値に達したら、自動で水を捨てる。人の手や、時間を決めて捨てるやり方はやめた
  • 15年かけて、濃縮倍数を5.0から8.0に上げた

冷やすたびに水を流す機器をなくした

事例によると、水を1回だけ流して機器を冷やす方式は、同じ熱を逃がすのに、冷却塔の約40倍の水を使う。

  • 事例の約17年前に、この方式の製氷機25台をすべて、空気で冷やす型に替えた
  • 2000年代の初めに、水で冷やす空調機2台を取り外し、この方式をすべてなくした

水の使用が2002年までに大きく減ったのは、この取り組みによる。2007〜2013年の大きな減少は、冷却塔の改善、空調の結露の水の再利用、冷凍機とボイラーの交換による。

結露の水、冷凍機とボイラー

ホテルは、空調機で出る結露の水を冷却塔に送り、年に約100万ガロンの水道の水を減らしている。装置は1万2,000ドルで、6か月で元がとれた。EPAの手引きは、結露の水は溶けたものが少なく、冷却塔がいちばん働く暑い時期に多く出るので、冷却塔に向いていると書いている。結露の水の使い方は、同じアトランタの別のホテルを扱った#260でくわしく読んだ。

2011〜2013年には、冷凍機とボイラーを新しくし、エネルギーを10.6%減らした。冷凍機の効率が上がると、冷却塔が逃がす熱が減り、蒸発させる水も減る。

測って、交換の時期を決める

事例は、設備の運用についても書いている。

  • すべての機械の設備を、建物の自動管理の仕組みで動かし、水とエネルギーの使い方を記録している
  • 冷凍機や空調、ボイラーなどの交換の予定を長期の計画にまとめ、効率の改善による回収も考えて交換の時期を決めている
  • 客室に節水型の器具を入れ、庭の水やりを減らし、レストランでは頼まれたときだけ水を出し、タオルとシーツの再利用も始めた

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、冷却塔のある宿を考える。

  • 夏の90日、冷却塔で1日10立方メートルが蒸発するとする。飛び散る水や漏れは考えない
  • 濃縮倍数3倍なら、足す水は1日15立方メートル(10×3÷2)。5倍なら12.5立方メートル(10×5÷4)
  • 差は1日2.5立方メートル、90日で225立方メートル。1立方メートル600円なら、約13万5,000円

次に、「払わずに済んだ額」を考える。基準の年の水道代が300万円で、その後、料金が1.5倍になったとする。

  • 使う量を35%減らすと、今の水道代は約292.5万円(300万円×0.65×1.5)
  • 同じ量を使い続けていたら、450万円
  • 差の157.5万円は「払わずに済んだ額」。ただし、請求は基準の年とほぼ同じで、下がってはいない

「節約した額」は、何と比べたかを確かめる

ハイアット・リージェンシー・アトランタの事例で大切なのは、冷却塔の濃縮倍数を少しずつ上げ、水を1回だけ流す機器をなくし、測りながら交換の時期を決めたことだ。「年100万ドル」のような数字を読むときは、請求が下がった額なのか、上がらずに済んだ額なのかを確かめたい。

持ち帰れる知識

  • 「年100万ドル」は、同じ量を使い続けた場合と比べて払わずに済んだ額
  • 冷却塔の濃縮倍数を上げると、足す水が減る。3倍から6倍で20%減る
  • 水を1回だけ流して冷やす方式は、冷却塔の約40倍の水を使う

宿で考えられること

  • 冷却塔があれば、水処理の会社に今の濃縮倍数を尋ねる
  • 水で冷やす製氷機や機器がないかを調べる
  • 水道代の変化を、使用量と料金に分けて記録する

事業・予約への接続

水の数字は、使用量と料金を分けて示すと伝わりやすい。会議や団体の担当者に説明するときも、何と比べた数字かを添えたい。

Sources / 参考情報

  • U.S. EPA WaterSense(英文) - ジョージアのホテルが、機械の設備を最大限に生かして年100万ドルを節約(2014年7月)
    裏付け: 1,260室、150万平方フィート、料金が100立方フィートあたり20ドル以上上がった、2013年は2000年より35%少ない、2013年だけで3,600万ガロン、同じ量を使い続けたら年100万ドル多くかかった、6つの冷却塔、導電率と薬の濃さで自動で捨てる、15年で5.0から8.0、1回だけ流す方式は約40倍、約17年前に製氷機25台、2000年代初めに空調機2台、結露の水で年約100万ガロン・1万2,000ドル・6か月、2011〜2013年にエネルギー10.6%減、2002年までと2007〜2013年の減少の理由、自動管理の仕組み、長期の計画、客室の器具・庭・水は頼まれたとき・タオルとシーツ
  • U.S. EPA WaterSense(英文) - 事例の一覧
    裏付け: ハイアット・リージェンシー・アトランタは「3年で35%減らした」と紹介
  • U.S. EPA WaterSense(英文) - ウォーターセンス・アット・ワーク 6.3 冷却塔
    裏付け: 足す水=蒸発+飛散+ブローダウン+漏れ、濃縮倍数は濃さの比であり足す水と捨てる水の比、多くは2〜4倍で6倍以上も可能、3倍から6倍で足す水が20%減る、結露の水は溶けたものが少なく冷却塔の負荷が高いときに多く出る
  • U.S. DOE FEMP(英文) - 水の管理の手引き10:冷却塔
    裏付け: 濃縮倍数は捨てる水と足す水の溶けたものの濃さの比で、量の比にほぼ等しい、3倍から6倍で足す水が20%減る
  • U.S. EPA(2017年の記録) - ジョージアのホテルが年100万ドルを節約(記録版)
    裏付け: 同じ事例の、2017年1月時点のEPAのサイトの記録

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