「26%」は、庭の水を入れる前の量で割った数字:サウジアラビア・アルコバールの12階建てのホテルで、使った水の再利用を計算した論文を読む
サウジアラビア東部の海沿いの町、アルコバールに、12階建てのホテルがある。名前は明かされていない。このホテルでは、水はすべて、海水を淡水にする施設から来ている。使った水を再利用する仕組みは、まだない。
2019年、サウジアラビアのイマーム・アブドゥルラフマン・ビン・ファイサル大学の研究者が、このホテルで、洗面やシャワーなどの使った水をきれいにし、トイレと庭の水やりに使えるかを計算した論文を出した。パキスタンの首都科学技術大学が開く、土木の持続可能性の会議の論文だ。
結論は、「1日1万2,000ガロンの処理の装置を入れれば、真水の使用を26%減らせる」。この記事では、この26%がどう計算されたのかを読む。これは、実際に入れた結果ではなく、計算による提案だ。
どんなホテルか
論文によると、建物は次のとおりだ。
- 地上階と1階はサービスや共用の施設で、その上に同じつくりの階が12ある
- 同じつくりの階は、1つの階が9,150平方フィート(約850平方メートル)で、客室が24ある
- 敷地の中と屋上のテラスに、芝生や植え込みがある
- 水はすべて、アルコバールの海水淡水化の施設から来ている
屋内で使う水を、人数から出す
論文は、まず建物全体で屋内に使う水を計算した。
- 泊まる人と働く人を合わせた最大の人数を650人とした。客室には少なくとも2人が泊まるとした
- 1人1日あたり58.6ガロン(約222リットル)とした。これは、米国の水の研究財団の、家庭の水の使い方の報告書の値だ
- 650×58.6で、1日3万8,090ガロン(約144立方メートル)
トイレの水は、節水型のトイレで計算した
次に、トイレを流す水を計算した。
- 計算では、節水のため、大と小の2段式のトイレを使うとした。大は1.6ガロン(約6.1リットル)、小は0.8ガロン(約3.0リットル)
- 1人1日5回流し、そのうち大は平均1.5回とした
- 650人で、大が1,560ガロン、小が1,820ガロン。合わせて1日3,380ガロン(約12.8立方メートル)で、屋内の水の9%
論文は、このホテルではまだ節水の工夫がされていないと書いている。トイレの水は、今のトイレではなく、節水型のトイレを前提にした値だ。
庭の水やりと、漏れ
庭の水やりの量は、次のように出した。
- 芝生や植え込みの面積は、約3万5,000平方フィート(約3,250平方メートル)
- 暑く湿った気候の芝生では、1日0.3インチ(約7.6ミリ)の水が蒸発するとした。国連食糧農業機関(FAO)の手引きをもとにした値だ
- 1日6,550ガロン(約24.8立方メートル)。屋内の水の17%にあたる
また、漏れやむだを12%、行方のわからない水を4%とし、合わせて1日6,100ガロン(16%)とした。
75%と26%
屋内の水3万8,090ガロンから、トイレの水と漏れを引くと、1日2万8,610ガロン(約108立方メートル)が残る。論文は、これが洗面、風呂、台所の流し、食器洗い機、洗濯、床の掃除などから出る使った水だとし、屋内の水の75%にあたるとした。
トイレと庭の水を合わせると、1日9,930ガロン(約37.6立方メートル)。屋内の水の26%だ。論文は、1日1万2,000ガロン(約45立方メートル)の処理の装置を入れ、別の研究をもとに、取り出せる水の割合を0.85とした。1万2,000×0.85で1万200ガロンとなり、9,930ガロンをまかなえる。余った水は、下水に流す。
26%の分母
ここで、26%の分母を確かめたい。
- 26%は、9,930ガロンを、屋内の水3万8,090ガロンで割った数字だ
- ところが論文は、庭の水は屋内の水に含まれず、それに加わる量だと書いている
- 屋内の水と庭の水を合わせた4万4,640ガロンで割ると、約22%になる(この記事での計算)
どちらが正しいというより、何を分母にしたかで数字が変わる。論文の26%は、「屋内で使う水に対する割合」として読むのがよい。
台所の水も入っている
この論文は、台所の流しや食器洗い機の水も、再利用できる水に数えている。一方、欧州委員会の報告書は、台所の水は汚れがひどいので含めないという注意を紹介している(#319)。実際に装置を入れるときは、どの排水を集めるかで、処理の方法も量も変わる。
論文は最後に、ホテルの経営者に、装置を広げて残りの水もきれいにし、冷却塔や冷凍機に使うことも勧めている。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、夏に庭の水やりをする宿を考える。
- 屋内で使う水は1日20立方メートル
- 夏は、庭の水やりに1日5立方メートル使う
- 使った水をきれいにして、トイレ(1日2立方メートル)と庭の水やりに回す。合わせて1日7立方メートル
屋内の水20立方メートルで割ると35%、庭の水も合わせた25立方メートルで割ると28%になる。同じ7立方メートルでも、伝え方で7ポイント違う。また、庭の水やりがない冬は、再利用できるのはトイレの2立方メートルだけになる。
計算の論文は、前提ごと読む
アルコバールのホテルの論文で大切なのは、人数、1人あたりの水、トイレの型、芝生の面積と蒸発といった前提を一つずつ置き、再利用の量を見積もったことだ。こうした計算の数字を読むときは、実際の結果か計算か、分母は何か、どんな前提を置いたかを確かめたい。
持ち帰れる知識
- 計算の論文の数字は、実際の結果ではなく、前提を置いた見積もり
- 割合は、分母に何を入れるかで変わる
- どの排水を集めるかで、処理の方法も量も変わる
宿で考えられること
- トイレと庭の水やりに使う水の量を、季節ごとに見積もる
- 再利用の割合を伝えるときは、分母を書き添える
- 台所の水を含めるかどうかを、設計の前に決める
事業・予約への接続
水の少ない地域では、使った水の再利用は宿の取り組みとして伝わりやすい。ただし、計画や計算の段階の数字は、実績と分けて伝えたい。
Sources / 参考情報
- CSCE(英文) - 使った水をトイレと庭の水やりに再利用して真水を減らす:12階建てのホテルの事例研究(2019年)
裏付け: イマーム・アブドゥルラフマン・ビン・ファイサル大学の研究者、アルコバール、地上階と1階+同じつくりの階12、1階9,150平方フィート・客室24、芝生と屋上テラス、水はすべて海水淡水化、節水の工夫はまだない、最大650人・1室2人以上、58.6ガロン(家庭の水の使い方の報告書)、3万8,090ガロン、2段式トイレ1.6と0.8ガロン・1日5回・大1.5回、3,380ガロン・9%、漏れ12%と行方のわからない水4%で6,100ガロン、3万5,000平方フィート・0.3インチ・6,550ガロン・17%、庭の水は屋内の水に加わる量、2万8,610ガロン・75%(台所・食器洗い機・洗濯を含む)、9,930ガロン・26%、1万2,000ガロン・0.85、余りは下水へ、冷却塔や冷凍機への拡張を勧める - CSCE(英文) - 土木の持続可能性の会議(首都科学技術大学)
裏付け: パキスタン・イスラマバードの首都科学技術大学が開く会議 - Journal of King Saud University - Engineering Sciences(英文) - 回転する円板を使った、使った水の処理の効率の研究(2013年7月)
裏付け: 論文が取り出せる水の割合0.85の出典として挙げる研究 - FAO(英文) - 作物の蒸発散:作物に必要な水の計算の手引き(FAO灌漑排水報告書56)(1998年)
裏付け: 論文が蒸発の値の出典として挙げる手引き - European Commission JRC(英文) - 観光の分野の、環境の管理のベストプラクティス(2013年9月。ウェブ・アーカイブの記録)
裏付け: 台所の流しや食器洗い機の水は、汚れがひどいので含めないという注意の紹介