GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2244文字 1つの棟から広げる型 #324

最初の「15%から80%へ」は、2つある棟の1つの数字:「シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナ」が、生ごみを下水に流すのをやめた2011年

アメリカ西海岸のサンディエゴ湾のハーバー島に、「シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナ」がある。客室は1,053室で、2つの高層の棟に分かれている。2つの大きな厨房が、4つのレストランやバー、宴会のために、1日平均2,500食を出している。

このホテルは、2009年にカリフォルニア州のグリーン・ロッジング・プログラムで最も高い段階に、2010年にグリーン・シールのゴールド認証を得ていた。それでも2011年の初め、ごみのうち埋立地に送らなかった割合(転換率)は、15%にとどまっていた。

生ごみを、排水にして流していた

サンディエゴ市の担当者が2015年に業界誌「バイオサイクル」に書いた記事によると、それまでホテルは、酵素で生ごみを分解して排水にし、下水に流す方法を使っていた。ホテルは、この方法に満足していなかった。リサイクルの取り組みもあったが、転換率は15%だった。

地元紙「サンディエゴ・ユニオン・トリビューン」の2011年8月の記事によると、きっかけは故障だった。その年の初夏、余った食べ物を処理するホテルの古い機械が壊れた。ごみの収集会社の担当者が、ホテル・マネージャーのジョン・フォードを市の担当者に引き合わせ、ごみの流れ全体を見直すことになった。フォードは、「思っていたほどできていなかった。並の仕事しかしていなかったと気づいた」と話している。

市の制度に合わせて、分け直す

バイオサイクルの記事によると、ホテルはまず、市のリサイクルの条例に合わせて、リサイクルを強めた。条例は、紙、段ボール、プラスチック、金属、ガラスなどのリサイクルを求め、リサイクルの箱をごみ箱と並べて置くこと、出せるものを文字や絵で示すことも求めている。

そのうえで、2011年6月、ホテルは市の、事業所の生ごみを堆肥にする制度に加わった。

  • 市の制度は、生ごみ、コーヒーかすやフィルター、厨房のペーパータオルやナプキンを受け入れる。堆肥にできるとうたう食器や持ち帰り容器は受け入れない
  • ごみ、リサイクル、生ごみの箱を色で分けた
  • 何を捨てるかを写真で示した表示を、見やすい場所に貼った
  • 市の担当者が、すべての監督者と、できるだけ多くの従業員に研修をした

ユニオン・トリビューンによると、約500人の従業員が研修を受けた。市は、生ごみに混ざりものが1%以下という目標を求めており、フォードは、これを守るのが難しいと話している。

まず1つの棟で、次にもう1つ

バイオサイクルの記事によると、生ごみの回収は2段階で始めた。

  • 最初は1つの棟で、32ガロン(約120リットル)の台車を使った
  • 数か月して、最初の棟で順調に回るようになってから、もう1つの棟に広げた

記事は、この段階を踏んだ進め方で、従業員が新しい手順に慣れ、回収の不具合を見つけて直せたと書いている。

2011年8月17日のホテルと収集会社の発表によると、制度を始めて3週間で、マリーナ・タワー(2つの棟の1つ)の転換率は、15%から80%に上がった。年末までに90%を目指した。つまり、最初の80%は、ホテル全体ではなく、1つの棟の数字だった。

92%の会議

2011年8月14〜19日、ホテルは、親会社スターウッドの「客室・設備リーダー会議」を開いた。業界誌の記事によると、北米から500人を超える従業員や取引先が集まり、会議のごみの転換率は92%だった。総支配人は、スターウッドで初めて、ごみを出さないことを目指して開いた会議だったと話している。

業界紙「グリーン・ロッジング・ニュース」の2011年9月の記事によると、ホテルは、会議を開く人に、資料を紙で配る代わりに、画面やメール、USBメモリで渡すよう勧めた。ロビーや会議室、入口、プールのそば、カフェには、見た目にも配慮したリサイクルの箱を置いた。

その後の数字

バイオサイクルの2015年の記事によると、生ごみを堆肥にする取り組みを始めてから、ホテルは、仕込みのくずと食べ残しを、年に400トン近く埋立地から外している。食べられる余った料理は、従業員食堂で使っている。

  • 転換率は83%になった
  • ごみ、リサイクル、堆肥の毎月の収集費は、約40%下がった

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宴会場のある宿の1週間のごみ700キログラムを考える。

  • 生ごみ280キログラム(うち厨房200キログラム、宴会や客室80キログラム)、資源ごみ170キログラム、その他250キログラム
  • 今は、資源ごみのうち100キログラムだけを分けているとする。転換率は100÷700で約14%
  • 第1段階:資源ごみを全部分け、厨房の生ごみも分ける。(170+200)÷700で約53%
  • 第2段階:宴会や客室の生ごみまで広げる。(170+280)÷700で約64%

第1段階だけでも、数字は大きく動く。最初に厨房で手順を固めてから広げると、従業員が慣れる時間をとれる。ただし、残りの250キログラムを減らさないかぎり、64%より上には行かない。

最初の数字は、どこの数字か

シェラトン・サンディエゴの記録で大切なのは、生ごみを排水にして流す方法をやめ、色分けと表示と研修で分け直し、1つの棟から順に広げたことだ。そして、「3週間で80%」は1つの棟の数字で、ホテル全体の83%は数年かけた結果だったことだ。数字を見るときは、どこの、いつの数字かを確かめたい。

持ち帰れる知識

  • 生ごみを排水にして流す方法は、転換率を上げない
  • 色分け、写真の表示、研修をそろえると、分け方が続く
  • 最初は1つの場所で手順を固め、順調になってから広げる

宿で考えられること

  • ごみ、資源、生ごみの箱を色で分け、何を捨てるかを写真で示す
  • 生ごみの分別は、まず厨房から始める
  • 会議や宴会を開く人に、紙の資料を減らす方法を提案する

事業・予約への接続

ごみを減らす会議は、環境に関心のある団体の会議や宴会の誘致につながりうる。紙の資料を減らす方法を、会議を開く人にあらかじめ提案しておくとよい。

Sources / 参考情報

関連する記事