最初の「15%から80%へ」は、2つある棟の1つの数字:「シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナ」が、生ごみを下水に流すのをやめた2011年
アメリカ西海岸のサンディエゴ湾のハーバー島に、「シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナ」がある。客室は1,053室で、2つの高層の棟に分かれている。2つの大きな厨房が、4つのレストランやバー、宴会のために、1日平均2,500食を出している。
このホテルは、2009年にカリフォルニア州のグリーン・ロッジング・プログラムで最も高い段階に、2010年にグリーン・シールのゴールド認証を得ていた。それでも2011年の初め、ごみのうち埋立地に送らなかった割合(転換率)は、15%にとどまっていた。
生ごみを、排水にして流していた
サンディエゴ市の担当者が2015年に業界誌「バイオサイクル」に書いた記事によると、それまでホテルは、酵素で生ごみを分解して排水にし、下水に流す方法を使っていた。ホテルは、この方法に満足していなかった。リサイクルの取り組みもあったが、転換率は15%だった。
地元紙「サンディエゴ・ユニオン・トリビューン」の2011年8月の記事によると、きっかけは故障だった。その年の初夏、余った食べ物を処理するホテルの古い機械が壊れた。ごみの収集会社の担当者が、ホテル・マネージャーのジョン・フォードを市の担当者に引き合わせ、ごみの流れ全体を見直すことになった。フォードは、「思っていたほどできていなかった。並の仕事しかしていなかったと気づいた」と話している。
市の制度に合わせて、分け直す
バイオサイクルの記事によると、ホテルはまず、市のリサイクルの条例に合わせて、リサイクルを強めた。条例は、紙、段ボール、プラスチック、金属、ガラスなどのリサイクルを求め、リサイクルの箱をごみ箱と並べて置くこと、出せるものを文字や絵で示すことも求めている。
そのうえで、2011年6月、ホテルは市の、事業所の生ごみを堆肥にする制度に加わった。
- 市の制度は、生ごみ、コーヒーかすやフィルター、厨房のペーパータオルやナプキンを受け入れる。堆肥にできるとうたう食器や持ち帰り容器は受け入れない
- ごみ、リサイクル、生ごみの箱を色で分けた
- 何を捨てるかを写真で示した表示を、見やすい場所に貼った
- 市の担当者が、すべての監督者と、できるだけ多くの従業員に研修をした
ユニオン・トリビューンによると、約500人の従業員が研修を受けた。市は、生ごみに混ざりものが1%以下という目標を求めており、フォードは、これを守るのが難しいと話している。
まず1つの棟で、次にもう1つ
バイオサイクルの記事によると、生ごみの回収は2段階で始めた。
- 最初は1つの棟で、32ガロン(約120リットル)の台車を使った
- 数か月して、最初の棟で順調に回るようになってから、もう1つの棟に広げた
記事は、この段階を踏んだ進め方で、従業員が新しい手順に慣れ、回収の不具合を見つけて直せたと書いている。
2011年8月17日のホテルと収集会社の発表によると、制度を始めて3週間で、マリーナ・タワー(2つの棟の1つ)の転換率は、15%から80%に上がった。年末までに90%を目指した。つまり、最初の80%は、ホテル全体ではなく、1つの棟の数字だった。
92%の会議
2011年8月14〜19日、ホテルは、親会社スターウッドの「客室・設備リーダー会議」を開いた。業界誌の記事によると、北米から500人を超える従業員や取引先が集まり、会議のごみの転換率は92%だった。総支配人は、スターウッドで初めて、ごみを出さないことを目指して開いた会議だったと話している。
業界紙「グリーン・ロッジング・ニュース」の2011年9月の記事によると、ホテルは、会議を開く人に、資料を紙で配る代わりに、画面やメール、USBメモリで渡すよう勧めた。ロビーや会議室、入口、プールのそば、カフェには、見た目にも配慮したリサイクルの箱を置いた。
その後の数字
バイオサイクルの2015年の記事によると、生ごみを堆肥にする取り組みを始めてから、ホテルは、仕込みのくずと食べ残しを、年に400トン近く埋立地から外している。食べられる余った料理は、従業員食堂で使っている。
- 転換率は83%になった
- ごみ、リサイクル、堆肥の毎月の収集費は、約40%下がった
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宴会場のある宿の1週間のごみ700キログラムを考える。
- 生ごみ280キログラム(うち厨房200キログラム、宴会や客室80キログラム)、資源ごみ170キログラム、その他250キログラム
- 今は、資源ごみのうち100キログラムだけを分けているとする。転換率は100÷700で約14%
- 第1段階:資源ごみを全部分け、厨房の生ごみも分ける。(170+200)÷700で約53%
- 第2段階:宴会や客室の生ごみまで広げる。(170+280)÷700で約64%
第1段階だけでも、数字は大きく動く。最初に厨房で手順を固めてから広げると、従業員が慣れる時間をとれる。ただし、残りの250キログラムを減らさないかぎり、64%より上には行かない。
最初の数字は、どこの数字か
シェラトン・サンディエゴの記録で大切なのは、生ごみを排水にして流す方法をやめ、色分けと表示と研修で分け直し、1つの棟から順に広げたことだ。そして、「3週間で80%」は1つの棟の数字で、ホテル全体の83%は数年かけた結果だったことだ。数字を見るときは、どこの、いつの数字かを確かめたい。
持ち帰れる知識
- 生ごみを排水にして流す方法は、転換率を上げない
- 色分け、写真の表示、研修をそろえると、分け方が続く
- 最初は1つの場所で手順を固め、順調になってから広げる
宿で考えられること
- ごみ、資源、生ごみの箱を色で分け、何を捨てるかを写真で示す
- 生ごみの分別は、まず厨房から始める
- 会議や宴会を開く人に、紙の資料を減らす方法を提案する
事業・予約への接続
ごみを減らす会議は、環境に関心のある団体の会議や宴会の誘致につながりうる。紙の資料を減らす方法を、会議を開く人にあらかじめ提案しておくとよい。
Sources / 参考情報
- BioCycle(英文) - サンディエゴのホテルが、持続可能性に大きく踏み出す(2015年2月)
裏付け: 筆者はサンディエゴ市の担当者、1,053室・2つの棟、2つの厨房で1日平均2,500食、酵素で生ごみを排水にして下水に流していた、転換率15%、市のリサイクル条例、2011年6月に市の生ごみの堆肥の制度に参加、受け入れるもの、色分け・写真の表示・研修、1つの棟から2段階、32ガロンの台車、年400トン近く、余った料理は従業員食堂、転換率83%、収集費約40%減 - The San Diego Union-Tribune(英文) - サンディエゴで、生ごみの堆肥の新しい時代が始まる(2011年8月23日)
裏付け: 初夏に古い機械が壊れた、収集会社が市の担当者を紹介、フォードの言葉、約500人の研修、混ざりもの1%以下の目標が難しい、約15%から約80% - Patch(英文) - シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナが、ごみゼロを目指して生ごみのリサイクルを始める(2011年8月17日)
裏付け: 7月に収集会社と組んだ、3週間でマリーナ・タワーの転換率が15%から80%、年末までに90%の目標 - Black Meetings & Tourism(英文) - シェラトン・サンディエゴが、スターウッド初のごみゼロの会議を開く(2011年)
裏付け: 2009年にグリーン・ロッジングの最高段階、2010年にグリーン・シールのゴールド、2011年8月14〜19日の会議、500人超、転換率92%、総支配人の言葉 - Green Lodging News(英文) - シェラトン・サンディエゴが、リサイクルの箱にT2サイト・アメニティーズを選ぶ(2011年9月27日)
裏付け: 2011年の初めは15%、ロビー・会議室・入口・プールのそば・カフェの箱、会議の資料を画面・メール・USBメモリで