GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2112文字 満室の計算と実際の稼働を比べる型 #325

満室なら1日1万リットル超、実際の稼働なら年1,586立方メートル:スロバキアの研究者が、128人が泊まるホテルの建物で試算した、洗面とシャワーの水をトイレに回す計画

洗面やシャワーで使った水を、きれいにしてトイレに回す仕組みを入れたら、どれだけ水道の水を減らせるのか。2015年、スロバキアのコシツェ工科大学の研究者4人が、ホテルの建物を例に、この試算を学術誌「WSEAS トランザクションズ・オン・エンバイロメント・アンド・ディベロップメント」に発表した。

論文によると、こうした仕組みは世界では多く動いているが、スロバキアではまだ遅れていて、使われた例もなかった。そこで研究者たちは、設計の手順と、節約できる量を示そうとした。これは、実際に入れた仕組みの記録ではなく、設計の段階の試算だ。

例にしたホテルの建物

論文が例にしたのは、4階建てのホテルの建物だ。

  • 1階には、受付、フィットネス、レストラン、厨房、機械室がある
  • 定員は128人
  • 洗面台、台所の流し、シャワー、浴槽の排水を集める
  • きれいにした水は、トイレと小便器を流すこと、掃除、5〜9月の庭の水やりに使う

2つの案

研究者たちは、2つの案を比べた。

案1:2〜4階の排水だけを集める。機械室を1階に置き、ポンプを使わず重力で流れるようにする。

  • 集まる水は、1日14,148リットル
  • 必要な水は、水やりのある月で1日7,391リットル、ない月で6,160リットル

案2:1階の排水も加える。機械を地下に置く。

  • 集まる水は、1日19,798リットル
  • 必要な水は、水やりのある月で1日11,969リットル、ない月で10,739リットル

どちらの案でも、集まる水が必要な水を上回る。論文は、余った水は予想外に水を使う時の備えになり、使わなければ排水として流せると書いている。

満室は「まれなこと」

ただし、この計算は満室を前提にしている。論文は、満室は「まれなこと」と書き、スロバキアの山あいの町、リプトフスキー・ミクラーシュにあるホテルの2014年の実際の稼働率をあてはめた。

  • 2月は96.1%、8月は83.33%、7月は77.88%
  • 4月は13.42%、11月は8.4%

論文は、リプトフ地方を、夏と冬の休暇で知られる地域と紹介している。表を見ると、2月と7〜8月に客が集まり、春と秋の月は大きく落ちる。

年間の節約

論文は、実際の稼働率で計算した節約を、次のように示している。

  • 案1:水道の水を年948立方メートル節約。水道料金で1,035ユーロ、下水の料金で1,259.10ユーロ。論文は合計を2,294.5ユーロとしている(2つを足すと約2,294.1ユーロ)
  • 案2:水道の水を年1,586立方メートル節約。水道料金で1,732ユーロ、下水の料金で2,107ユーロ

案2について、論文は合計を3,693ユーロと書いている。ただし、示された2つの金額を足すと約3,839ユーロになる。

この記事で表の数字から計算すると、案2の必要な水は、満室なら年に約4,100立方メートルになる。実際の稼働での1,586立方メートルは、その約4割だ。

大きめの設計は、ふつうのこと

論文は、ほかの資料の数字とも比べている。

  • 2〜3つ星のホテルでは、客1人1日160リットルの水を使い、そのうち52リットルが洗面やシャワーの水という資料
  • スペインの3つ星ホテルでは、客1人1日145リットルのうち36リットルの水をトイレに回し、1日5.2立方メートルの水道の水を節約したという測定

論文は、満室と設備の最大の使用で計算する設計は大きめになりがちで、それはふつうのことだと書いている。実際の運転では、使う量は少なくなる。一方で、大きめの設計は、水が思ったより多く出た時や、多く必要な時に役立つこともあるとしている。

日本の基準と仕組み

日本では、東京都が「水の有効利用促進要綱」で、延べ床面積1万平方メートル以上の建物などに、雑用水の利用や雨水の浸透に協力するよう求めている。建物ごとや地区で排水をきれいにして使う方式(個別循環方式・地区循環方式)は、延べ床面積3万平方メートル以上の建物が対象だ。また、建築物衛生法の基準では、トイレに使う雑用水に、遊離残留塩素を1リットルあたり0.1ミリグラム以上保つことなどを求めている。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、スキー場の近くにある、定員40人の宿を考える。

  • トイレに使う水は、客1人1日30リットルとする。満室なら1日1.2立方メートル
  • 満室が1年続く計算なら、年438立方メートル。1立方メートル600円で約26.3万円
  • 実際の年間の稼働率が40%なら、年約175立方メートル。約10.5万円

設備の大きさは満室で決めても、節約の見込みは実際の稼働率で計算しないと、2.5倍の差が出る。冬と夏に客が集まる宿なら、月ごとの稼働率で計算すると、どの月に水が余り、どの月に足りないかも見えてくる。

設備は満室で、見込みは実際の稼働で

この論文で大切なのは、設計の段階で、満室の計算と実際の稼働の計算を並べて示したことだ。設備の大きさは満室で決め、節約の見込みは実際の稼働率で見る。2つを分けて考えると、期待しすぎずに導入を判断できる。

持ち帰れる知識

  • 満室の計算は、設備の大きさを決めるためのもの
  • 節約の見込みは、月ごとの実際の稼働率で計算する
  • 季節で稼働率が大きく動く宿ほど、2つの計算の差は大きい

宿で考えられること

  • 設備を考えるときは、月ごとの稼働率の表を用意する
  • 水を集める場所と使う場所を、重力で流せる配置にできるか確かめる
  • 余った水をどうするか(備えにするか、流すか)を決めておく

事業・予約への接続

水を再利用する設備は、客には見えにくい。導入したら、仕組みと安全の管理を短く説明すると、取り組みとして伝わる。

Sources / 参考情報

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