GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2154文字 減る割合の土台を確かめる型 #327

「堆肥にすれば92%減」は、生ごみの処分の排出の話:ギリシャ北部の5つ星リゾートで、客1泊あたり1.57キロの食品ロスを数えた研究

ホテルの温室効果ガスというと、まず電気やガスが思い浮かぶ。では、ごみや食べ残しは、どのくらいの重さを占めるのか。

ギリシャなどの研究者たちは、ギリシャ北部の5つ星のリゾートホテルを試しの対象(パイロット)にして、この問いを数字にした。論文は学術誌「エナジー・ネクサス」の2026年3月の巻に載っている。ホテルの名前は書かれておらず、使ったデータは非公開とされている。

4つの分野に分けて数える

論文は、ホテルの営業で出る温室効果ガスを、次の4つに分けて数えた。

  • エネルギー(電気と天然ガス)
  • 厨房で料理に使うプロパンガス
  • ホテルのごみ
  • 食品ロス

電気の量はホテルのメーターから取り、ごみの量や処理の方法は、従業員への聞き取りとアンケートで集めた。1年の宿泊は延べ62,411人泊だった。

客1泊あたり37.19キログラム

論文の表では、客1泊あたりの排出(二酸化炭素に換算)は次のとおりだ。

  • エネルギー:30.34キログラム(電気19.09、天然ガス11.25)
  • 厨房のプロパンガス:1.20キログラム
  • ごみの処理:1.71キログラム
  • 食品ロス:3.95キログラム
  • 合計:37.19キログラム

割合でいうと、エネルギーが81%、食品ロスが11%、ごみが5%、プロパンガスが3%。ごみと食品ロスを合わせると16%になる。

客が多い月ほど、1泊あたりは小さい

論文の表では、厨房のプロパンガスの排出を月ごとに客1泊あたりで示している。延べ3,814人泊の月は1.57キログラムだったが、延べ7,403人泊の月は0.99キログラムだった。ガスの使用量は客の数ほどには増えないため、客が多い月ほど1泊あたりの値は小さくなる。月ごとの数字を比べるときは、客の数の違いに注意がいる。

1.57キロの食品ロスと「4時間」の決まり

食品ロスは、客1泊あたり平均1.57キログラムだった。内訳は、調理の下ごしらえで出るものが0.34キログラム、皿に残ったものが1.24キログラムだ。

論文は、この量が多く見えることを認めたうえで、理由を品質管理の決まりにあるとしている。追加の注文に備えて作った料理は、出されなくても4時間たったら捨てる、という決まりだ。安全のための決まりが、捨てる量を押し上げていることになる。

92%は、処分の排出の割合

論文は、食品ロスを埋め立てる代わりに堆肥にするシナリオを計算した。ほかの研究によると、埋め立てでは食品ロス1キログラムあたり1.38キログラム、堆肥では0.11キログラムの排出が出る。

これを当てはめると、食品ロスの処分の排出は、客1泊あたり1.83キログラムから0.15キログラムに減る。約92%の減少だ。1年の延べ62,411人泊で見ると、114トンから9.3トンになる。

ここでの92%は、生ごみの処分から出る排出が減る割合で、ホテル全体の排出が92%減るわけではない。論文は、全体では13.8%減るとしている。ただし、論文の表の合計(37.19キログラム)と減る量(1.68キログラム)から計算すると約4.5%になり、13.8%がどの数字を土台にしたのかは読み取りにくい。論文は、敷地内で堆肥にするには、設備の費用や運び方の課題も検討すべきだとしている。

リサイクルと太陽光

ほかのシナリオでは、次のような結果が出ている。

  • 従業員の研修で、リサイクルに回すごみを20%増やすと、ごみの処理の排出は1.71から1.38キログラムに、19.3%減る。全体では0.97%の減少
  • 太陽光の電気を使うと、全体の排出は36%減る
  • すべてを組み合わせると、47.45%減る

論文は、ごみの対策は、エネルギーの対策より簡単で費用も少ないことが多い、と強調している。

日本の数え方との違い

日本では、農林水産省が外食の食べ残しを調べている。この調査では、宿泊施設は宿泊客の夕食が対象で、厨房の中の調査はむずかしいため、食べ残しだけを数え、厨房で捨てたものは数えていない。

2007年の農林水産省の発表によると、平成18年の調査では、宿泊施設の1食あたりの食品の使用量は682.3グラム、食べ残しは88.9グラムで、割合は13.0%だった。ギリシャの研究の1.57キログラムは、客1泊あたりで、下ごしらえのロスも含む。数える範囲が違うので、そのまま比べることはできない。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、夕食のビュッフェで、追加に備えて作り置く料理が、1日に3キログラム捨てられている宿を考える。

  • 1年365日で、1,095キログラム
  • 少しずつ作る方法に変えて、捨てる量が1日1キログラムになれば、1年365キログラム
  • 減る量は730キログラム。食材の原価を1キログラム800円とすると、58万4,000円

この仮定の数字は宿によって変わる。まず、何時に、何を、どれだけ捨てたかを記録すると、作り置きの量を決める手がかりになる。

割合の土台を確かめる

この研究で大切なのは、ホテルの排出の中で、ごみと食品ロスがどのくらいの重さかを分けて示したことだ。そして、「92%減」は生ごみの処分の排出についての割合で、全体の減り方とは別に読む必要がある。

持ち帰れる知識

  • 92%は処分の排出の割合で、ホテル全体の割合ではない
  • 安全のための決まりが、捨てる量を押し上げることがある
  • 日本の外食の調査は食べ残しだけで、厨房のロスは数えていない

宿で考えられること

  • 作り置きの料理を、何時に、何を、どれだけ捨てたか記録する
  • 下ごしらえのロスと皿の残りを分けて量る
  • 減る割合を伝えるときは、何の割合かを書き添える

事業・予約への接続

食品ロスの対策は、客にも見える取り組みだ。数字を伝えるときに、何の割合かを正しく書くと、信頼につながる。

Sources / 参考情報

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