「堆肥にすれば92%減」は、生ごみの処分の排出の話:ギリシャ北部の5つ星リゾートで、客1泊あたり1.57キロの食品ロスを数えた研究
ホテルの温室効果ガスというと、まず電気やガスが思い浮かぶ。では、ごみや食べ残しは、どのくらいの重さを占めるのか。
ギリシャなどの研究者たちは、ギリシャ北部の5つ星のリゾートホテルを試しの対象(パイロット)にして、この問いを数字にした。論文は学術誌「エナジー・ネクサス」の2026年3月の巻に載っている。ホテルの名前は書かれておらず、使ったデータは非公開とされている。
4つの分野に分けて数える
論文は、ホテルの営業で出る温室効果ガスを、次の4つに分けて数えた。
- エネルギー(電気と天然ガス)
- 厨房で料理に使うプロパンガス
- ホテルのごみ
- 食品ロス
電気の量はホテルのメーターから取り、ごみの量や処理の方法は、従業員への聞き取りとアンケートで集めた。1年の宿泊は延べ62,411人泊だった。
客1泊あたり37.19キログラム
論文の表では、客1泊あたりの排出(二酸化炭素に換算)は次のとおりだ。
- エネルギー:30.34キログラム(電気19.09、天然ガス11.25)
- 厨房のプロパンガス:1.20キログラム
- ごみの処理:1.71キログラム
- 食品ロス:3.95キログラム
- 合計:37.19キログラム
割合でいうと、エネルギーが81%、食品ロスが11%、ごみが5%、プロパンガスが3%。ごみと食品ロスを合わせると16%になる。
客が多い月ほど、1泊あたりは小さい
論文の表では、厨房のプロパンガスの排出を月ごとに客1泊あたりで示している。延べ3,814人泊の月は1.57キログラムだったが、延べ7,403人泊の月は0.99キログラムだった。ガスの使用量は客の数ほどには増えないため、客が多い月ほど1泊あたりの値は小さくなる。月ごとの数字を比べるときは、客の数の違いに注意がいる。
1.57キロの食品ロスと「4時間」の決まり
食品ロスは、客1泊あたり平均1.57キログラムだった。内訳は、調理の下ごしらえで出るものが0.34キログラム、皿に残ったものが1.24キログラムだ。
論文は、この量が多く見えることを認めたうえで、理由を品質管理の決まりにあるとしている。追加の注文に備えて作った料理は、出されなくても4時間たったら捨てる、という決まりだ。安全のための決まりが、捨てる量を押し上げていることになる。
92%は、処分の排出の割合
論文は、食品ロスを埋め立てる代わりに堆肥にするシナリオを計算した。ほかの研究によると、埋め立てでは食品ロス1キログラムあたり1.38キログラム、堆肥では0.11キログラムの排出が出る。
これを当てはめると、食品ロスの処分の排出は、客1泊あたり1.83キログラムから0.15キログラムに減る。約92%の減少だ。1年の延べ62,411人泊で見ると、114トンから9.3トンになる。
ここでの92%は、生ごみの処分から出る排出が減る割合で、ホテル全体の排出が92%減るわけではない。論文は、全体では13.8%減るとしている。ただし、論文の表の合計(37.19キログラム)と減る量(1.68キログラム)から計算すると約4.5%になり、13.8%がどの数字を土台にしたのかは読み取りにくい。論文は、敷地内で堆肥にするには、設備の費用や運び方の課題も検討すべきだとしている。
リサイクルと太陽光
ほかのシナリオでは、次のような結果が出ている。
- 従業員の研修で、リサイクルに回すごみを20%増やすと、ごみの処理の排出は1.71から1.38キログラムに、19.3%減る。全体では0.97%の減少
- 太陽光の電気を使うと、全体の排出は36%減る
- すべてを組み合わせると、47.45%減る
論文は、ごみの対策は、エネルギーの対策より簡単で費用も少ないことが多い、と強調している。
日本の数え方との違い
日本では、農林水産省が外食の食べ残しを調べている。この調査では、宿泊施設は宿泊客の夕食が対象で、厨房の中の調査はむずかしいため、食べ残しだけを数え、厨房で捨てたものは数えていない。
2007年の農林水産省の発表によると、平成18年の調査では、宿泊施設の1食あたりの食品の使用量は682.3グラム、食べ残しは88.9グラムで、割合は13.0%だった。ギリシャの研究の1.57キログラムは、客1泊あたりで、下ごしらえのロスも含む。数える範囲が違うので、そのまま比べることはできない。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、夕食のビュッフェで、追加に備えて作り置く料理が、1日に3キログラム捨てられている宿を考える。
- 1年365日で、1,095キログラム
- 少しずつ作る方法に変えて、捨てる量が1日1キログラムになれば、1年365キログラム
- 減る量は730キログラム。食材の原価を1キログラム800円とすると、58万4,000円
この仮定の数字は宿によって変わる。まず、何時に、何を、どれだけ捨てたかを記録すると、作り置きの量を決める手がかりになる。
割合の土台を確かめる
この研究で大切なのは、ホテルの排出の中で、ごみと食品ロスがどのくらいの重さかを分けて示したことだ。そして、「92%減」は生ごみの処分の排出についての割合で、全体の減り方とは別に読む必要がある。
持ち帰れる知識
- 92%は処分の排出の割合で、ホテル全体の割合ではない
- 安全のための決まりが、捨てる量を押し上げることがある
- 日本の外食の調査は食べ残しだけで、厨房のロスは数えていない
宿で考えられること
- 作り置きの料理を、何時に、何を、どれだけ捨てたか記録する
- 下ごしらえのロスと皿の残りを分けて量る
- 減る割合を伝えるときは、何の割合かを書き添える
事業・予約への接続
食品ロスの対策は、客にも見える取り組みだ。数字を伝えるときに、何の割合かを正しく書くと、信頼につながる。
Sources / 参考情報
- Energy Nexus(英文) - ホテルの営業の炭素の足あとに影響する要素としてのごみの発生と、減らす取り組みの評価(2026年3月、21巻100615)
裏付け: ギリシャ北部の5つ星リゾート、4分野、メーターと聞き取り・アンケート、データは非公開、62,411人泊、厨房のプロパンガスは3,814人泊の月1.57・7,403人泊の月0.99キログラム、30.34(電気19.09・天然ガス11.25)・1.20・1.71・3.95・合計37.19、81・11・5・3%、ごみと食品ロスで16%、1.57キログラム(0.34・1.24)、4時間で捨てる決まり、埋め立て1.38・堆肥0.11、1.83→0.15、約92%、114→9.3トン、全体13.8%、設備の費用と運び方、リサイクル20%増で1.71→1.38・19.3%・全体0.97%、太陽光36%、組み合わせ47.45%、ごみの対策は簡単で費用が少ないことが多い - SSRN(英文) - 同じ論文の査読前の版
裏付け: 著者6人、ギリシャ北部の5つ星ホテル、81・5・11・3% - Research Square(英文) - 観光宿泊施設の物の流れと営業の炭素排出(アイルランドの研究)
裏付け: ほかの研究との比較表で、ギリシャの5つ星・客1泊37.19キログラム・食品ロス11%・エネルギー81%として引用 - 農林水産省 - 食品ロス統計調査(世帯調査・外食産業調査)の概要
裏付け: 外食産業調査の対象に宿泊施設、宿泊客の夕食が対象、厨房内の廃棄は調べず食べ残しのみ - 農畜産業振興機構「畜産の情報」 - 農林水産省から:平成18年食品ロス統計調査(外食産業調査)結果の概要(2007年4月)
裏付け: 宿泊施設の1食あたり使用量682.3グラム、食べ残し88.9グラム、割合13.0%