GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 5分 / 2947文字 能力と実績を分けて読む型 #331

「1日50トン」は湯をつくる力、「年15万キロワット時」は減らしたエネルギー:北京のホテルで12年動いてきたという太陽熱の給湯を、業者が公開した数字で検算する

中国の太陽熱の機器メーカー、ソレトクス(SOLETKS)は、2026年8月10日、ホテルと病院の太陽熱給湯の設計についての解説ページを公開した。その中で、自社の実績として「APECサミットのホテル」と呼ぶ北京のホテルの設備を紹介している。

ページには、ホテルの正式な名前は書かれていない。ここでの数字は、ホテルや第三者が公表したものではなく、設備を納めた業者自身が示したものだ。この記事では、その数字を、同じページに載っている計算式で確かめてみる。

業者が示した数字

ページの表によると、設備の概要は次のとおりだ。

  • 2014年に運転を開始
  • 1日の給湯の能力は50トン
  • 補助の熱源で使わずにすんだエネルギーは、年約15万キロワット時
  • 減らしたCO2は、年約74トン
  • 冬の設計の最低気温は約マイナス12度。凍らないように、35%のプロピレングリコールを使う間接式
  • 太陽熱でまかなう割合(ソーラーフラクション)は、制御の調整のあと約40〜45%
  • 運転は12年以上。累計で約180万キロワット時、CO2は約888トン

年15万キロワット時を12年続ければ180万キロワット時、年74トンを12年続ければ888トンになる。累計の数字は、年の数字に12をかけたものと一致する。2014年の運転開始からページの公開まではおよそ12年なので、「12年以上」はほぼその期間にあたる。

「50トン」は湯をつくる力

表の項目名は「1日の給湯の能力」だ。毎日50トンの湯を実際に使っているという意味ではない。

同じページには、湯をつくるのに必要な熱の計算式が載っている。湯の量(リットル)×上げる温度(度)×4.186÷3600で、キロワット時が出る。業者はこの式で、160室・稼働80%・1室1.8人のホテルを例に、1日15,650リットル、40度上げるとして、1日728キロワット時と計算している。15,650×40×4.186÷3600を計算すると728キロワット時になり、例の計算は合っている。

検算してみる

同じ式で、50トン(5万リットル)を40度上げるとする。上げる温度の40度は、業者の例に合わせた仮定だ。

  • 1日:50,000×40×4.186÷3600=約2,326キロワット時
  • 1年:約2,326×365=約84万9,000キロワット時
  • その40〜45%:約34万〜38万キロワット時

ところが、業者が示した年の値は約15万キロワット時で、満量で使った場合の熱の約18%にとどまる。逆に、15万キロワット時が使った熱の40〜45%だとすると、1年に使った熱は約33万〜38万キロワット時、湯にすると1日約20〜22トンになる。

つまり、50トンは設備の能力で、実際に1日どれだけ湯を使ったかはページに書かれていない、と読むのが自然だ。また「補助の熱源で使わずにすんだエネルギー」が、湯に入った熱なのか、ボイラーで燃やす燃料なのかも書かれていない。燃料の量なら、ボイラーの効率の分だけ、湯の熱はさらに少なくなる。

74トンの換算

74トンを15万キロワット時で割ると、1キロワット時あたり約0.49キログラムになる。ページには、この換算に使った係数も、補助の熱源が電気かガスか石炭かも書かれていない。補助の熱源の種類で係数は大きく変わるので、74トンは業者が示した値として読む必要がある。

12年の運転で業者が学んだこと

ページは、12年の運転からの教訓を4つ挙げている。

  • 2年目、補助のヒーターが先に動いて、太陽熱の割合が下がった。ボイラーが動く時間帯を調整し直すと、次の冬に割合が戻った
  • 4年目、湯を回すポンプを強いものに替えたら、タンクの中で湯が混ざり、上が熱く下がぬるい温度の層が崩れた。直し方は、より小さいポンプにタイマー制御をつけることだった
  • 1年目、膨張タンクの空気の圧力が0.4バールずれて、いちばん暑い日に逃がし弁から湯が出た。毎年の点検で測り直すことにした
  • 横に通した配管の紫外線よけの覆いは、縦の配管より3〜4年早く傷んだ

業者は、湯を回し続ける配管から逃げる熱について、160室のホテルなら給湯のエネルギーの10〜25%になりうるとも書き、朝と夜のピークだけ連続で回すタイマー制御を勧めている。

補助の熱源と凍結

アメリカの省エネ認証、エナジースターは、太陽熱の給湯は年の給湯費を半分にできるとし、一般に電気かガスの補助の給湯器と組み合わせて設計されると説明している。寒い地域では凍結への備えが必要だとも書いている。北京の設備が凍らない液を使う間接式なのは、この考え方に合う。

約束どおりの熱が出ているかを確かめる

国際エネルギー機関(IEA)の太陽熱の国際協力の枠組みは、2026年9月、大きな太陽熱の設備が出すべき熱を出しているかを調べる無料のソフト「サンピーク」に賞を贈った。

発表によると、開発者は「どの設備も、ふつうは決まった年の熱量を約束して売られる」と述べ、サンピークは国際規格ISO 24194に沿って、実際の天気と運転の条件で出すべき熱と、測った熱を比べると説明している。オーストリアのグラーツの5.7メガワットの設備では、この分析で集熱器の掃除の時期を見直し、測った性能が10%上がった。

能力、約束した熱、実際に出た熱。この3つを分けて記録すると、北京の設備のような数字も読みやすくなる。

世界の太陽熱の市場

IEAの太陽熱の枠組みが2025年6月に出した「ソーラー・ヒート・ワールドワイド2025」の発表によると、2024年に新しく入った太陽熱の設備は17.8ギガワットだった。議長は、使い手の例として建物の持ち主や農業、産業と並べて、ホテルを挙げている。

一方で、建物の給湯や暖房はヒートポンプと電化の政策に押され、世界の市場は2024年に14%縮んだ。メキシコ、ブラジル、トルコでは、売り上げが2桁伸びた。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、1日3,000リットルの湯を40度上げて使う宿を考える。

  • 1日に必要な熱:3,000×40×4.186÷3600=約139.5キロワット時
  • 1年:約5万929キロワット時
  • 太陽熱で40%をまかなうと:年約2万372キロワット時
  • 熱1キロワット時あたりの燃料代を12円とすると:年約24万円

ここで、設備は1日3,000リットルの能力で選んだのに、実際の使用が1日1,500リットルだったとする。太陽熱の割合が同じ40%なら、減るエネルギーは年約1万186キロワット時、燃料代は年約12万円で、半分になる。

能力で見積もった効果と、使った量で出る効果は、これだけ違う。給湯量のメーターを付けて、実際の湯の量を記録しておくことが、効果を確かめる第一歩になる。

能力と実績を分けて読む

北京の事例で確かめられるのは、業者が示した累計と年の値が計算上つながっていることまでだ。50トンという能力と、15万キロワット時という結果のあいだには、実際の湯の量と温度という、書かれていない数字がある。業者の事例を読むときは、能力と実績を分けて読むと、数字の意味がはっきりする。

持ち帰れる知識

  • 「1日50トン」は能力で、実際の使用量ではない
  • 湯の熱は、湯の量×上げる温度×4.186÷3600で計算できる
  • CO2の換算は、補助の熱源の種類と係数で大きく変わる
  • 制御、ポンプ、膨張タンク、断熱の手入れで、太陽熱の割合が変わる

宿で考えられること

  • 給湯量のメーターを付けて、実際の湯の量を記録する
  • 補助のボイラーが先に動いていないか、動く時間帯を確かめる
  • 湯を回すポンプをタイマーで制御し、配管から逃げる熱を減らす
  • 業者の提案では、能力と見込みの熱量と前提の温度を分けて書いてもらう

事業・予約への接続

太陽熱で湯をつくる宿は、そのことを伝えるとき、設備の能力ではなく、実際に太陽熱でまかなった量を示すと信頼されやすい。測った数字があれば、客の関心にも応えやすい。

Sources / 参考情報

  • SOLETKS(英文) - ホテルと病院の太陽熱給湯システム(2026年8月10日)
    裏付け: APECサミットのホテル(北京、2014年運転開始)、1日の給湯の能力50トン、年約15万キロワット時・CO2約74トン、マイナス12度・35%プロピレングリコールの間接式、40〜45%、12年以上・累計180万キロワット時・888トン、4つの教訓(2年目・4年目・1年目0.4バール・紫外線よけ3〜4年)、160室で配管の熱損失10〜25%とタイマー制御、計算式と160室の例(15,650リットル・40度・728キロワット時)
  • IEA SHC(英文) - ソーラー・ヒート・ワールドワイド2025の発表(PDF)(2025年6月)
    裏付け: 2024年の新設17.8ギガワット、使い手にホテルを挙げる、ヒートポンプと電化の政策で市場は14%縮小、メキシコ・ブラジル・トルコは2桁の伸び
  • IEA SHC(英文) - ソーラー・ヒート・ワールドワイド
    裏付け: 毎年発行、2005年から各国がデータを提供(現在72か国)
  • IEA STSHC(英文) - サンピークが2026年のソーラー・アワードを受賞(PDF)(2026年9月)
    裏付け: 大きな太陽熱の設備が出すべき熱を出しているかを調べるソフト、決まった年の熱量を約束して売られる、ISO 24194、グラーツ5.7メガワットで性能10%向上
  • ENERGY STAR(英文) - 太陽熱の給湯器
    裏付け: 年の給湯費を半分にできる、電気かガスの補助の給湯器と組み合わせて設計、寒い地域では凍結への備え

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