GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2511文字 目安の数字の中身を確かめる型 #332

「客1人1泊1キロ」は、何を数えた数字か:EUの研究機関の報告書が示す、ホテルのごみの目安と「0.6キロ以下」の目標

ホテルのごみの話になると、「客1人が1泊すると、ごみが約1キログラム出る」という数字がよく使われる。この数字は、どこから来て、何を数えたものなのか。

もとをたどると、EUの研究機関である欧州委員会共同研究センター(JRC)が2013年9月に出した報告書「観光業における環境管理のベストプラクティス」に行き着く。この報告書は、EUの環境管理の制度(EMAS)で使う手引きのもとになった技術的な資料だ。ここでは、その第6章「宿泊施設のごみ」を読む。

「1キロ」は、分別していないごみ

第6章のリサイクルの節は、こう書き出している。

「平均すると、ホテルは客1人1泊あたり約1キログラムの分別されていないごみを出す(ITP、2008年)。これは英国では、1ホテルあたり年66トンにあたる(WRAP、2011年)」

ここでの1キログラムは、ごみの総量ではなく、「分別されていないごみ」の量だ。報告書は、分別がほとんどされていないホテルでは、ごみの大部分が「その他のごみ」に入ると説明している。分別が進めば、同じホテルでも「分別されていないごみ」は減っていく。

総量で見ると

報告書は、欧州の中価格帯のホテルチェーン135軒の2010年の月ごとのデータを、分別したごみと分別していないごみの合計(総量)で並べている。

  • 総量の中央値:客1人1泊1.05キログラム
  • 上位10%のホテル:0.59キログラム

この上位10%をもとに、報告書は「総量で客1人1泊0.6キログラム以下」を、優れたホテルの目安(ベンチマーク)として示した。中央値から上位10%の水準まで減らせば、ごみの製造と処分にともなう環境への負荷は44%減るとしている。

別の調査として、ドイツとオーストリアの2〜4つ星のホテル36軒では、総量の平均は客1人1泊1.98キログラム(6リットル)だった。調査によって、数字は2倍近く違う。

分別していないごみと、リサイクル率

同じチェーンのデータでは、分別していないごみ(最後に処分するごみ)の中央値は客1人1泊0.46キログラム、上位10%は0.16キログラム未満だった。リサイクル率の中央値は56%、上位10%は84%を超えていた。

報告書は、ここから次の2つの目安を示した。

  • 重さで84%以上のごみをリサイクルに回す
  • 分別していないごみを、客1人1泊0.16キログラム以下にする

100室のホテルなら年11〜31トン

報告書は、0.16キログラムの目安を守ったときの効果も試算している。

  • このチェーン全体なら、分別していないごみは客1人1泊0.3キログラム減る
  • 1キログラム出している平均的なホテルなら、0.84キログラム減る

前提は、100室、稼働率80%、泊まっている部屋の25%が2人使用。この条件で、1年の分別していないごみは11トンと31トン減ると計算している。前提から客の数を出すと、100×0.8×1.25×365=3万6,500人泊で、0.84キログラムをかけると約30.7トン、0.3キログラムなら約11トンになり、報告書の数字と合う。

同じ前提で200室を数えると

同じ前提を200室・稼働率70%のホテルに当てはめると、1か月(30日)の客は200×0.7×1.25×30=5,250人泊になる。1キログラムをかけると、分別していないごみは月約5.3トンだ。

「1キロ」は1泊あたりの小さな数字だが、部屋数、稼働率、1部屋の人数のどれを置くかで、月や年の量は大きく変わる。目安の数字を使うときは、前提をいっしょに書く必要がある。

ごみを分けると費用が変わる

報告書は、ロンドンのサヴォイ・ホテルを例に挙げている。268室と62のスイートがあり、2010年の大きな改装のあと、ごみのリサイクルの取り組みを始めた。報告書によると、食品以外のごみの95%超を埋め立てずにすませ、分別していないごみは客1人1泊約0.3キログラムになった(レストランだけを使う外の客の分も含む)。

費用の面では、混ざったごみの回収は1トン約110ユーロかかる一方、分別したごみの回収は無料だった。使い終わった食用油は月600リットル出て、バイオディーゼルをつくる会社から1リットル0.30ユーロを受け取っていた。

報告書は、100室のホテルが分別していないごみを年11〜31トン減らせば、回収の費用は年1,210〜4,030ユーロ減ると試算している。ごみを分けることは、環境のためだけでなく、処分の費用を変える手段にもなる。

日本のごみの数字

環境省によると、2023年度の日本のごみの総排出量は3,897万トン、1人1日あたり851グラムだった。このうち事業所から出る事業系ごみは1,185万トン。リサイクル率は19.5%だった。

851グラムは、家庭と事業所のごみの合計を人口で割った値で、ホテルの客1人1泊の量とは数え方が違う。並べて比べるときは、何を何で割ったかを確かめる必要がある。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室、稼働率70%、1部屋平均1.5人の宿を考える。1年の客は20×0.7×1.5×365=7,665人泊。

  • 総量が客1人1泊1.05キログラムなら年約8.0トン、0.6キログラムなら年約4.6トン。差は約3.4トン
  • 分別していないごみが0.46キログラムなら年約3.5トン、0.16キログラムなら年約1.2トン。差は約2.3トン
  • 分別していないごみの処分費を1キログラム40円とすると、年約14万1,000円が約4万9,000円になり、約9万2,000円減る

まずは2〜4週間、ごみを種類ごとに量り、客1人1泊あたりの数字を出すと、自分の宿がどの位置にいるかがわかる。

目安の数字を読むときに

「客1人1泊1キロ」は、分別していないごみの、2008年の資料にもとづく平均だ。総量の目安は0.6キログラム以下、分別していないごみの目安は0.16キログラム以下。どのごみを、どの単位で数えた数字かを確かめてから使うと、自分の宿の数字と正しく比べられる。

持ち帰れる知識

  • 「客1人1泊1キロ」は、分別していないごみの平均
  • EUの報告書の目安は、総量0.6キログラム以下、分別していないごみ0.16キログラム以下、リサイクル84%以上
  • 月や年の量は、部屋数・稼働率・1部屋の人数の前提で大きく変わる
  • 日本の1人1日851グラムは、数え方が違う数字

宿で考えられること

  • 2〜4週間、ごみを種類ごとに量って、客1人1泊あたりの数字を出す
  • 総量と、分別していないごみを分けて記録する
  • 混ざったごみと分別したごみの処分費を、業者に確かめる
  • 使い終わった食用油の引き取り先を探す

事業・予約への接続

客1人1泊あたりのごみの量を測っている宿は、その数字と目安を並べて示せる。数え方を添えて伝えると、環境に関心のある客や団体に信頼されやすい。

Sources / 参考情報

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