「ホテルのごみ年28万9,700トン、うち食品7万9,000トン」は英国の数字:ホテルのごみの統計を、もとの調査までたどる
インターネットには、ホテルのごみについての統計を集めたページがたくさんある。「ホテルは年28万9,700トンのごみを出し、うち7万9,000トンが食品」「1皿あたり0.46キログラムが捨てられる」「食品ごみの45%は仕込み、34%は食べ残し、21%は傷み」。
こうした数字は、出どころをたどると、国や年、数えた対象がはっきりしてくる。この記事では、3つの数字をもとの調査までたどってみる。
7万9,000トンは、英国のホテルの食品ごみ
英国の非営利団体WRAP(廃棄物・資源行動プログラム)は、2013年11月、英国の外食・給食の業界(接客・フードサービス業)のごみについての概要報告書を出した。
報告書によると、英国のこの業界の店や施設は、年に約287万トンのごみを出す。内訳は、包装が約130万トン、食品が92万トン、紙のタオルなどその他が66万トン。このうち46%がリサイクル、バイオガス化、たい肥化に回っていた。食品ごみだけで見ると、リサイクルの割合は12%だった。
報告書は業界を9つの分野に分けていて、そのひとつが「ホテル」だ。2012年の推計で、食事を出すホテルは4万5,763か所、食品ごみは年7万9,000トン。費用は2011年の推計で1トンあたり4,000ポンド、合計3億1,800万ポンドとされている。7万9,000トンは、世界ではなく英国のホテルの数字だ。
「ホテル」に入るもの
WRAPの同じ時期の費用の報告書は、「ホテル」を、泊まる場所を提供し、売り上げに占める食事の割合が50%未満の施設と定義している。例として挙げているのは、ホテル、B&B、ユースホステル、キャラバンパーク(キャンプ場)だ。
同じ報告書では、ホテルの食品ごみは7万8,700トンで、そのうち食べられたはずのもの(避けられた食品ごみ)が4万9,400トン、食べられない部分が2万9,300トンだった。2011年のホテルの食品ごみの費用は3億1,780万ポンドで、業界全体の食品ごみの費用の約13%にあたる。
28万9,700トンも、英国の数字
28万9,700トンという総量は、WRAPの概要報告書の中には見当たらなかった。2018年8月、英国の政策メディア「オープン・アクセス・ガバメント」は、廃棄物管理会社リコノミーの調べとして、英国の接客業のごみを分野別に紹介している。
- ホテル:年28万9,700トン。うち食品7万9,000トン(業界の食品ごみの9%)
- パブ:年87万3,800トン。うち食品17万3,000トン(19%)
- レストラン:年91万5,400トン。うち食品19万9,100トン(22%)
食品の量はWRAPの数字と合う。28万9,700トンも、英国のホテルの数字として読むのが自然だ。
0.046キロが0.46キロに
「1皿あたり0.46キログラム、重さの5.8%」という数字のもとは、ポーランドの研究者が2021年1月に学術誌「サステナビリティ」に発表した論文だ。
研究は、2019年末から2020年初めにかけて、ポーランドの4つのホテルで行われた。各持ち場で7日間、捨てた食品の重さを記録した。その結果、捨てた食品の平均72.55%は、ビュッフェや食べ残しなど、料理を出す段階で出ていた。客の数で割ると、出した1皿あたり平均0.046キログラムが食べ残しとして捨てられ、これは1皿の重さの5.8%だった。
論文の数字は0.046キログラム、つまり46グラムだ。0.46キログラムと書くと、10倍になる。
45%・34%・21%は、業界全体の平均
WRAPの概要報告書は、食品ごみの出どころを、平均で仕込み45%、食べ残し34%、傷み21%としている。これは外食・給食の業界全体の平均で、ホテルだけを調べた内訳ではない。
同じ報告書によると、英国のこの業界で捨てられる食品は13億食分、年80億食の6食に1食にあたる。
日本の数字も、何を数えたかを確かめる
日本でも、似た言葉で数え方が違う数字がある。環境省などによると、2023年度の日本の食品ロスは約464万トンで、うち事業系が約231万トン、家庭系が約233万トンだった。
ここでの食品ロスは、本来食べられるのに捨てられた食品だ。WRAPの「避けられた食品ごみ」に近く、食べられない部分は含まない。英国の7万9,000トンには食べられない部分も入っているので、そのまま並べて比べることはできない。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室、稼働率70%、1部屋平均1.5人の宿で、朝食を1日21食、1年で7,665食出すとする。
- 1食あたりの食べ残しが50グラムなら、年約383キログラム
- 単位を書き違えて0.5キログラムとすると、年約3,833キログラムになる
- 処分費を1キログラム40円とすると、年約1万5,000円と年約15万3,000円。計画の金額も10倍ずれる
数字の桁がひとつ違うだけで、対策にかける費用の判断も変わる。自分の宿で量るときは、1食あたりではなく、1日の合計の重さを量って食数で割ると、桁の間違いに気づきやすい。
数字を使う前に確かめる3つのこと
統計のまとめの数字を使う前に、次の3つを確かめると、誤解を避けやすい。
- どこの国の、何年の数字か
- 何を数えたか(総量か食品か、食べられる部分だけか)
- もとの調査の単位と桁
28万9,700トンも7万9,000トンも、もとをたどれば英国の調査にもとづく数字だった。出どころをたどることで、数字の意味がはっきりする。
持ち帰れる知識
- 28万9,700トンと7万9,000トンは、英国のホテルの数字
- 英国の調査の「ホテル」には、B&Bやユースホステル、キャンプ場も入る
- ポーランドの研究の食べ残しは、1皿あたり0.046キログラム
- 仕込み45%・食べ残し34%・傷み21%は、業界全体の平均
宿で考えられること
- 統計の数字を使うときは、国・年・数えた対象を確かめる
- 食品ごみを、食べられる部分と食べられない部分に分けて量る
- 1日の合計の重さを量り、食数で割って1食あたりを出す
事業・予約への接続
自分の宿で量った数字を、出どころのはっきりした統計と並べて示すと、取り組みの説明に説得力が出る。数え方を添えることで、客にも誤解なく伝わる。
Sources / 参考情報
- WRAP(英文) - 英国の接客・フードサービス業のごみの概要(PDF)(2013年11月)
裏付け: 年約287万トン(包装130万・食品92万・その他66万)、46%がリサイクル等、食品ごみのリサイクル12%、9つの分野、ホテルは4万5,763か所・7万9,000トン・1トン4,000ポンド・3億1,800万ポンド(2012年)、仕込み45%・食べ残し34%・傷み21%、13億食・80億食の6食に1食 - WRAP(英文) - 接客・フードサービス業の食品ごみの本当の費用(PDF)(2013年11月)
裏付け: ホテルの定義(泊まる場所、食事の売り上げ50%未満、ホテル・B&B・ユースホステル・キャラバンパーク)、ホテルの食品ごみ7万8,700トン(避けられた4万9,400・避けられない2万9,300)、2011年の費用3億1,780万ポンド・約13% - Open Access Government(英文) - 接客業とごみの関係(2018年8月30日)
裏付け: リコノミーの調べ、ホテル年28万9,700トン・うち食品7万9,000トン(9%)、パブ87万3,800トン・17万3,000トン(19%)、レストラン91万5,400トン・19万9,100トン(22%) - Sustainability(英文) - ホテルの食事の場の食品ロスの規模の推計:事例研究(2021年1月5日、13巻1号421)
裏付け: ポーランドの4つのホテル、2019年末〜2020年初め、7日間の記録、料理を出す段階で平均72.55%、1皿あたり平均0.046キログラムの食べ残し・重さの5.8% - 環境省 - 我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について(2025年6月27日)
裏付け: 2023年度の食品ロス約464万トン、事業系約231万トン・家庭系約233万トン、食品ロスは本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品