GOAL 6 · TARGET 6.3 水・衛生・循環 4分 / 2558文字 雨の季節と費用の内訳を見る型 #335

雨は冬に降り、観光客は夏に来る:トルコ・アンタルヤで営業中のホテルの屋根4,280平方メートルに雨水を集める試算は、トイレの水の20%

トルコ南部のアンタルヤ県は、国内有数の観光地だ。論文によると、観光地であるために、特に夏の数か月は人口がとても多くなり、市の水資源に負担がかかっている。

イスタンブール工科大学などの研究者は、この県で営業中の病院、ショッピングモール、ホテルを選び、雨水を集める仕組みと、使った水を処理してもう一度使う仕組みの費用と効果を試算した。論文は2023年1月4日、学術誌「フロンティアーズ・イン・エンバイロメンタル・サイエンス」に載った。この記事では、ホテルの雨水の試算を読む。

建物の名前は、所有者との約束で伏せられている。いまはどれもこうした仕組みを使っておらず、数字は図面などをもとにした設計上の試算だ。

ホテルの屋根と雨

ホテルの屋根は4,280平方メートルの平らな屋上で、傾きは1%。集めた雨は地下のタンクにためる前提だ。

雨の量には、アンタルヤ国際空港の気象観測所の2012〜2020年の月ごとの平均を使った。9年の平均は年794.6ミリメートル。論文は、屋根の面積×雨の量×流れ出る割合(0.8)で、集められる雨水を計算している。

月ごとに見ると

補足資料の表によると、ホテルの屋根で集まる雨水は、月によって大きく違う。

  • 1月:雨205.6ミリメートル、集まる水633.6立方メートル
  • 12月:135.0ミリメートル、416.0立方メートル
  • 7月:1.3ミリメートル、3.9立方メートル
  • 8月:0.9ミリメートル、2.8立方メートル

1年の合計は2,477立方メートル。そのうち12〜2月の3か月で1,421立方メートル、約57%が集まる。6〜8月の3か月は合わせて63立方メートルほどで、約2.5%にとどまる。雨の多い冬と、人が多い夏が、ずれている。

トイレの水の20%

集めた雨水は、トイレを流す水に使う。ホテルのトイレに必要な水は年1万2,264立方メートルとされ、2,477立方メートルはその約20%にあたる。

前提は、トイレのタンクが1回6リットル、従業員320人と1日の来訪者1,200人が、それぞれ1日30リットル分を流すというものだ。

ここでの20%は、ホテル全体の水ではなく、トイレの水に対する割合だ。

タンクは50立方メートル1基

論文は、タンクの大きさを次の考え方で決めている。

  • いちばん雨の多い月の1日の雨の量を見て、少なくとも3日分をためられる大きさを選ぶ
  • タンクに残った水は、次の月に使う

ホテルでは、1日の最大の雨水が21立方メートル、1日の最大のトイレの水が46立方メートルで、必要な容量は42立方メートル。50立方メートルのタンク1基を選んだ。

本文と補足資料の費用

論文の本文の結果の表では、ホテルの雨水の欄に、設備19万634ユーロ、運転の費用8,937ユーロ、1年の節約3万6,752ユーロ、回収9年と書かれている。設備と運転の費用は、同じホテルのグレーウォーターの欄と同じ数字だ。

一方、補足資料の雨水の費用の表では、ホテルの数字は次のとおりだ。

  • 設備:4万2,878ユーロ(壁や床の工事2万9,033、配管5,366、配管の取り付け2,683、ポンプ2,623、タンク2,993、フィルター181)
  • 1年の効果:4,175ユーロ
  • 運転の費用:数年ごとに27〜118ユーロの修理や点検

2,477立方メートルに水の値段1.69ユーロをかけると約4,186ユーロで、補足資料の効果とほぼ一致する。補足資料の数字で、割引をしない単純な計算をすると、回収は4万2,878÷4,175で約10.3年になる。補足資料の表は15年目まで続いている。本文の表の数字と補足資料の数字は一致していない。

設備の約68%は、壁や床をこわして配管を通し、直す工事だ。すでに建っている建物に入れると、タンクより建物の工事が高くなる点は、グレーウォーターの試算と同じだ。

病院とモールとの比較

同じ論文では、雨水の節水の割合と回収の年数は次のようになった。

  • 病院:屋根1万70平方メートル、トイレの水の23%、回収6年
  • ショッピングモール:屋根1万8,500平方メートル、トイレ・水やり・床の掃除・洗車に使って50%、回収2年
  • ホテル:屋根4,280平方メートル、トイレの水の20%、回収9年(本文の表)

論文は、雨水は比較的かんたんに入れられる一方で、集まる量は屋根の広さと雨の量で決まり、場所と季節で変わると説明している。水の質の面では比較的安全だが、量の面では安定しない仕組みだという。

日本の雨水利用

国土交通省によると、日本で雨水を使う施設は、2024年度末で少なくとも4,563施設が確認されている。2024年度には131施設が新しく設けられた。1年に使われた雨水は約1,278万立方メートル。地域別では関東の臨海部が約39%を占め、使い道はトイレと散水が多い。

2014年5月に施行された「雨水の利用の推進に関する法律」は、ためた雨水をトイレや散水などに使うことを「雨水の利用」と定め、国などの責務を定めている。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、すでに営業している宿で、屋根250平方メートルの雨をトイレに使う場合を考える。

  • 年の雨を1,500ミリメートル、流れ出る割合を0.8とすると、集められる雨は年300立方メートル
  • タンクがあふれて使えない分を引いて、使える量を年270立方メートルとする
  • トイレの水を1日3立方メートル(年1,095立方メートル)とすると、約25%をまかなう
  • 水の代金を1立方メートル600円とすると、年16万2,000円
  • タンク、ポンプ、配管と工事で140万円なら、単純な計算で回収は約8.6年

雨の多い月と、客の多い月が重なるかどうかで、タンクの大きさと使える量は変わる。月ごとの雨とトイレの水を並べて表にすると、タンクの大きさを決めやすい。

試算を読むときに

アンタルヤのホテルの雨水は、冬に集まり、トイレの水の20%をまかなう試算だった。費用は、本文の表と補足資料で数字が違い、補足資料では設備の約7割が建物の工事だった。月ごとの量、割合の分母、費用の内訳を確かめると、雨水の試算の意味がはっきりする。

持ち帰れる知識

  • アンタルヤでは雨水の約57%が12〜2月に集まり、6〜8月は約2.5%
  • 20%は、ホテル全体ではなくトイレの水に対する割合
  • タンクは、いちばん雨の多い月の3日分を目安に選んでいる
  • 本文の表と補足資料で、ホテルの雨水の費用の数字が違う

宿で考えられること

  • 月ごとの雨の量と、トイレの水の量を並べて表にする
  • タンクの大きさは、雨の多い月の数日分を目安に考える
  • 費用の見積もりを、タンク・ポンプと建物の工事に分けてもらう
  • 新築や改修のときに、雨水の配管を組み込めるかを検討する

事業・予約への接続

雨水を使う宿は、何に使い、どれだけまかなっているかを示すと伝わりやすい。季節によって量が変わることも添えると、取り組みが正確に伝わる。

Sources / 参考情報

  • Frontiers in Environmental Science(英文) - トルコ・アンタルヤでの代わりの水資源の利用による気候変動への適応(2023年1月4日)
    裏付け: 夏の人口増と水資源、営業中の3つの建物・名前は非公開・いまは使っていない、ホテルの屋根4,280・傾き1%・屋上・地下にタンク、空港の観測所の2012〜2020年の雨(1月205.6・12月135.0・7月1.3・8月0.9・平均794.6)、式と流出係数0.8、6リットル・30リットル/人/日、3日分のタンク・残りは次の月へ、21・46・42・50立方メートル1基、結果の表(ホテルの雨水2,477・12,264・190,634・8,937・36,752・20%・9年)、病院23%・6年・屋根10,070、モール50%・2年・屋根18,500、雨水は入れやすいが量は屋根と雨で決まる
  • Frontiers(英文) - 同じ論文の補足資料(Word)
    裏付け: ホテルの月ごとの雨水(633.6・416.0・3.9・2.8ほか、合計2,477)、雨水の設備(配管5,366.08・取り付け2,683.04・工事29,032.51・ポンプ2,622.79・タンク2,992.54・フィルター180.77・合計42,877.72)、効果4,175・修理と点検27と118、表は2037年(15年目)まで
  • 国土交通省 - 雨水利用の普及状況
    裏付け: 2024年度末で少なくとも4,563施設、2024年度の新設131件、年約1,278万立方メートル、関東臨海地域が約39%、水洗トイレと散水が多い
  • 国土交通省 - 雨水の利用の推進に関する法律
    裏付け: 2014年5月1日施行、「雨水の利用」の定義(ためた雨水を水洗便所や散水などに使う)、国などの責務
  • Istanbul Technical University(英文) - アンタルヤの研究の書誌のページ
    裏付け: 同じ研究の書誌と要旨(雨水の節水20〜50%、回収6・2・9年)

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