GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 3分 / 2072文字 客の声から駐車場に屋根をかける型 #343

「屋根つきの駐車場がほしい」という声から:ドイツの「アトリウム・ホテル・アマデウス」の41台分のソーラーカーポートと、後から気づいた配線の工事

駐車場の上に屋根をかけ、そこに太陽光パネルを載せる「ソーラーカーポート」。#264では、米国カリフォルニア州の「ハンプトン・イン」が、屋根の工事で最上階を閉めないために駐車場を選んだ例を読んだ。

ドイツ東部のザクセン=アンハルト州にある「アトリウム・ホテル・アマデウス」は、別の理由で駐車場に屋根をかけた。きっかけは、客からの声だった。この記事では、2022年の業界誌の記事をもとに、その経緯と、運営者が後から気づいた課題を読む。

客が求めた2つのこと

太陽光の業界誌「pvヨーロッパ」の2022年9月の記事によると、ホテルはオスターフェルトという町にある、上級の田舎のホテルだ。客の多くは車で来る。駐車場は広い。

運営する会社の社長によると、自動車クラブやクラシックカーのラリーの主催者から、何度も問い合わせがあった。貴重な車を、雨や強い日差しから守る屋根つきの駐車場がほしいという声だった。

もう1つの声は、夏に増えている北欧からの客だった。電気自動車(EV)で来ることが多く、記事の時点では、最大6台のEVが、3つしかない充電器を取り合っていた。

1つの方法で、2つの声に応える

社長は、ミュンヘンのソーラーカーポートの会社「ソパゴ(Sopago)」に、駐車場に屋根をかけ、同時にEVの電気をつくる設備を頼んだ。

  • 41台分の駐車場に、太陽光パネルの屋根をかけた
  • 充電の設備は倍にし、ホテルの業界誌「トップホテル」の記事の時点で、6台分に充電器がついている
  • 充電に使わないときは、太陽光の電気をホテルの運営に使う。それで、電気の約60%をまかなえるとしている

屋根の骨組みは、木と鋼を組み合わせた構造だ。会社は、買い取りとレンタルの2つの方法で提供している。

決めるのは早く、つなぐのに時間がかかった

トップホテルの2022年9月の記事によると、社長は2021年から2022年への年の変わり目のころに、インターネットでソパゴを見つけた。社内で短く話し合い、2週間で買い取ることを決めた。建築の許可が出たあと、組み立ては短い期間で終わった。

ただ、社長は2つのことを甘く見ていたと話している。

  • パネルがつくる電気の量に合わせて、もとからある配線を強くする工事が必要だった
  • 地域の電力網を運営する会社との調整が必要だった

記事の時点では、設備は組み上がっていたが、電力網への接続はまだで、「まもなく」と書かれている。屋根つきの駐車場は、すでに客に喜ばれていた。電気の約60%という数字は、稼働前の見込みとして読むのが正確だ。

ドイツには、新しい駐車場に太陽光を求める州がある

ドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州の環境省によると、州の気候保護法は、35台を超える屋外の駐車場を新しくつくるとき、太陽光の設置を求めている。

  • 駐車場は2022年1月1日から(建築の申請の受付日で判断)
  • 太陽光に向いた駐車スペースの面積の60%以上にパネルを置けばよい。車が通る通路の上には置かなくてよい
  • 近くに同時に建てる建物の屋根などに、代わりに置くこともできる
  • 太陽光の費用が駐車場の建設費の30%を超える場合は、その範囲まで義務が軽くなる

アトリウム・ホテル・アマデウスはこの州にはなく、もとからある駐車場に屋根をかけた例だ。ただ、ドイツでは、駐車場を発電の場所と考える流れが、制度にもなっている。

日本の宿に置き換えると

日本では、環境省が、駐車場を使った太陽光発電と充電設備の導入を補助している。2025年度の公募では、ソーラーカーポートなどの太陽光の設備に、パワーコンディショナの出力1キロワットあたり8万円の定額の補助があった。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿の駐車場10台分に、25キロワットのソーラーカーポートをつくるとする。

  • 1キロワットあたり年1,100キロワット時を発電すると、年2万7,500キロワット時
  • そのうち70%を宿で使えば、1万9,250キロワット時。電気代を1キロワット時30円とすると、年57万7,500円分
  • 費用を1キロワット32万円として800万円。補助を1キロワット8万円とすると200万円で、残りは600万円。元が取れるまで約10.4年
  • 屋根のある10台分を、クラシックカーやバイクの客向けの「屋根つき駐車場」として案内できる

アトリウム・ホテル・アマデウスの例からわかるのは、設備の値段のほかに、配線の工事と、電力会社との協議に時間と費用がかかることだ。見積もりの段階で、受電の設備に余裕があるかを確かめておきたい。

客の声を、設備の理由にする

アトリウム・ホテル・アマデウスは、屋根つきの駐車場と、EVの充電器という、2つの客の声に1つの設備で応えた。太陽光の電気は、その結果としてついてくる。

駐車場の太陽光を考えるときは、発電量だけでなく、屋根があることで誰が喜ぶかを考えると、宿にとっての意味がはっきりする。そのうえで、配線と電力網への接続を、早めに確かめておきたい。

持ち帰れる知識

  • ソーラーカーポートは、客の車を雨や日差しから守る設備にもなる
  • 発電した電気を、充電に使わないときは建物で使える
  • パネルの電気を受け入れるため、配線の強化と電力網との調整が必要になることがある
  • ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州は、35台を超える新しい屋外の駐車場に太陽光を求めている

宿で考えられること

  • 屋根つきの駐車場を喜ぶ客がいるかを考える
  • EVの充電器の数と、使われ方を確かめる
  • 受電の設備と配線に、太陽光の電気を受け入れる余裕があるかを確かめる
  • 電力会社との協議にかかる期間を、計画に入れる

事業・予約への接続

屋根つきの駐車場は、クラシックカーやバイクの客、雨の日の到着を気にする客に、わかりやすい価値になる。予約ページでは、屋根のある台数と、充電器の数を具体的に書くと伝わりやすい。

Sources / 参考情報

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