洗濯物1キログラムに、水は何リットル?:米国、EU、オーストラリアの目安を並べると、5リットルから33リットルまで開きがある
ホテルのシーツやタオルを洗うとき、水の使い方は「洗濯物1キログラムあたり何リットル」で比べる。#251では、米国サンフランシスコの大型ホテルの洗濯の数字を読んだ。
では、1キログラムあたり何リットルなら、少ないと言えるのか。この記事では、米国の環境保護庁(EPA)、欧州委員会の共同研究センター(JRC)、オーストラリアのニューサウスウェールズ州の資料に書かれた目安を並べる。そのうえで、日本の宿の洗濯を考える。
1室1泊で、洗濯物はどれだけ出るか
JRCが2013年にまとめた観光業の環境の手引きは、1室1泊で出る洗濯物の量について、いくつかの例を挙げている。
- フランスのホテル会社アコーは、1室1泊4キログラムとしている
- 米国の研究では、真ん中の値が1室1泊5.4キログラムだった
シーツ、タオル、浴衣やバスローブ、レストランのテーブルクロスなど、何を洗うかで量は変わる。自分の宿の数字は、洗濯物の重さを量って出すのが確かだ。
米国EPA:洗濯脱水機で17〜33リットル
EPAの節水の手引き「ウォーターセンス・アット・ワーク」の洗濯の章(2023年5月)によると、ホテル、病院、大学などは、敷地内に洗濯の設備を持つことが多い。
- 業務用の洗濯脱水機は、洗濯物1キログラムあたり17〜33リットルの水を使う。機械、洗う回数、水位の設定で変わる
- すすぎの水をためて次の洗濯に使える洗濯脱水機なら、21リットル未満にできる
- 大規模な施設で使う連続式の洗濯機(トンネル型)は、17リットル以下。水の使用を30〜60%減らせる。1時間に最大907キログラムを洗える
- 洗濯機を動かすエネルギーの約90%は、水を温めるのに使われる
手引きは、汚れの程度で洗濯物を分けると、水の量を決めやすいとしている。
EUのJRC:大規模な洗濯で5リットル以下
JRCの手引きは、もっと厳しい目安を示している。
- 500室を超える大型ホテルや、洗濯を請け負う業者では、連続式の洗濯機を使い、水を逆向きに流してすすぎの水を前の工程で使うのが最良の方法としている
- その場合の目安は、宿泊の洗濯物で1キログラムあたり水5リットル以下、エネルギー0.90キロワット時以下。レストランの洗濯物は、水9リットル以下、エネルギー1.45キロワット時以下
- 工程を見直し、水を再利用して、1キログラムあたり2リットルまで減らした例がある
- 小さな業務用の洗濯機は、大規模な連続式の洗濯機と比べて、水を最大3倍、エネルギーを2倍使う
- 小規模な洗濯では、業務用の機械で1キログラムあたり7リットル以下、脱水後の水分45%以下を目安にしている
手引きは、10キログラムの洗濯物を60℃ではなく40℃で洗うと、1回あたり0.7キロワット時、約40%のエネルギーを減らせるとしている。
オーストラリア:施設の種類ごとの目安
ニューサウスウェールズ州の気候変動・エネルギー・環境・水省のページによると、業務用の洗濯所では、水の92%が洗う工程に使われる。蒸気をつくるのに5〜8%、そのほかに2〜3%を使う。
- 洗濯脱水機は、節水の工夫で、1キログラムあたり17〜22リットルから12〜15リットルに減らせる
- 連続式の洗濯機は、水の再利用で、7.5〜12リットルから4.5〜5リットルに減らせる
ページは、施設の種類ごとの最良の目安も示している。
- 大規模な業務用:5リットル
- 敷地内の洗濯(ホテルなど):9リットル
- 中小規模の業務用:16リットル
目安の開きは、機械の種類と規模の差
並べると、目安は1キログラムあたり5リットルから33リットルまで開きがある。大きな差を生むのは、機械の種類と規模だ。連続式の洗濯機は、すすぎの水を何度も使うので、少ない水で洗える。小さな宿の洗濯機では、同じ数字は出しにくい。
自分の宿の数字を比べるときは、どの規模、どの機械の目安と比べているのかを確かめたい。
日本の宿に置き換えると
厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」(2026年1月の改正の通知)は、シーツ、布団カバー、枕カバー、寝衣など、直接肌にふれるものは、宿泊者1人ごとに洗濯したものと取り替えるよう定めている。同じ宿泊者なら、寝衣は毎日、そのほかは少なくとも3日に1回取り替える。連泊の客にシーツの交換を選んでもらう取り組みは、この範囲で考えることになる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で考える。
- 稼働率70%で、年5,110室泊。1室1泊3.5キログラムとすると、洗濯物は年約1万7,885キログラム
- 1キログラムあたり20リットルなら年約357.7立方メートル、9リットルなら年約161.0立方メートル。差は約196.7立方メートルで、水道代を1立方メートル600円とすると年約11.8万円
- JRCの数字を使い、60℃を40℃にして1キログラムあたり0.07キロワット時減らすと、年約1,252キロワット時。電気で温めているなら、1キロワット時30円で年約3.8万円
- 連泊の2泊目以降が全体の30%で、その半分の客がシーツの交換を断り、シーツが1室1.5キログラムなら、洗濯物は年約1,150キログラム減る
洗濯を外の業者に頼む宿も多い。JRCの手引きも、洗濯を外に頼むことはよくあると書き、業者が良い方法を使っているかを確かめることで、間接的な影響を減らせるとしている。業者に、1キログラムあたりの水とエネルギーの数字を聞いてみるのも1つの方法だ。
量って、比べる
洗濯の水は、まず洗濯物の重さと水の量を量ることから始まる。1キログラムあたりの数字が出れば、同じ規模の目安と比べられる。目安は国や規模で大きく違うので、何と比べているかを確かめながら、少しずつ減らしていきたい。
持ち帰れる知識
- 洗濯の水は「洗濯物1キログラムあたり何リットル」で比べる
- 目安は機械の種類と規模で大きく違う
- 洗濯機のエネルギーの多くは、水を温めるのに使われる
- 日本では、同じ宿泊者のシーツなどは少なくとも3日に1回取り替える
宿で考えられること
- 洗濯物の重さと、洗濯に使う水の量を量る
- 汚れの程度で洗濯物を分け、水位とすすぎの回数を見直す
- 洗う温度を下げられるものを確かめる
- 外に頼んでいる場合は、業者に1キログラムあたりの数字を聞く
事業・予約への接続
連泊の客にシーツの交換を選んでもらうときは、衛生の決まりの範囲で行っていることと、減った水の量を伝えると、納得してもらいやすい。
Sources / 参考情報
- U.S. Environmental Protection Agency(英文) - ウォーターセンス・アット・ワーク 3.5節 洗濯の設備(PDF)(2023年5月)
裏付け: ホテルなどの敷地内の洗濯、洗濯脱水機1キログラムあたり17〜33リットル、すすぎ水を再利用する機械は21リットル未満、連続式は17リットル以下・30〜60%減・1時間最大907キログラム、洗濯機のエネルギーの約90%は水を温めるため、汚れの程度で分ける - European Commission Joint Research Centre(英文) - 観光業の環境管理の最良の方法(PDF)(2013年)
裏付け: アコー1室1泊4キログラム、米国の研究の真ん中の値5.4キログラム、500室超の大型ホテルと請負業者は連続式・逆向きの流れ、宿泊の洗濯物は5リットル以下・0.90キロワット時以下、レストランは9リットル以下・1.45キロワット時以下、2リットルの例、小さな機械は水最大3倍・エネルギー2倍、小規模は7リットル以下・脱水後45%以下、60℃→40℃で10キログラム1回0.7キロワット時・約40%、外に頼むことはよくある - NSW Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water(英文) - 業務用の洗濯所の節水のヒント(ページに日付なし、2026年10月閲覧)
裏付け: 水の92%が洗う工程・蒸気5〜8%・そのほか2〜3%、洗濯脱水機17〜22→12〜15リットル、連続式7.5〜12→4.5〜5リットル、最良の目安(大規模5・中小16・業務用14・敷地内9・公衆14リットル) - 厚生労働省 - 旅館業における衛生等管理要領の一部改正について(PDF)(2026年1月20日)
裏付け: 寝衣、敷布又はシーツ、布団カバー、枕カバー等は宿泊者1人ごとに洗濯したものと取り替え、同一の宿泊者は寝衣は毎日・その他は少なくとも3日に1回 - U.S. Department of Energy, FEMP(英文) - 最良の管理方法13:そのほかの水を多く使う工程
裏付け: 大型の業務用の洗濯設備を入れ替えるときは連続式の洗濯機を検討する、連続式は洗いとすすぎで水を何度も再利用する