1回5ガロンは、約19リットル:テキサス州の「ホリデイ・イン・サンアントニオ」が替えたトイレとシャワーの数字を、リットルと日本の規格に直して読む
米国テキサス州サンアントニオの空港の近くにある「ホリデイ・イン・サンアントニオ・インターナショナル・エアポート」は、397室のホテルだ。2007年、市の水道公社の事業で、全室のトイレ、洗面の蛇口、シャワーを、水を節約できるものに替えた。
アメリカの環境保護庁(EPA)は、2014年7月、この取り組みを節水の事例としてまとめている。回収年数や節約額の前提は、#258の記事で読んだ。この記事では、同じ事例の器具の数字を、ガロンからリットルに直し、日本の規格と並べて読む。
替えた器具と台数
事例の表によると、替えた器具は次のとおりだ。
- トイレ:1回3.5ガロン(gpf)のものを297台、1回5.0ガロンのものを100台、どちらも1回1.1ガロンに
- 洗面の蛇口の先に付ける部品:毎分2.2ガロン(gpm)から1.5ガロンに、397台
- シャワーヘッド:毎分2.5ガロンから1.75ガロンに、397台
器具を選ぶとき、水道公社は、EPAの節水の認証「ウォーターセンス」の、タンク式のトイレと洗面の蛇口の基準を使った。当時はシャワーヘッドの基準がまだなかったため、シャワーヘッドはホテルが自分で選び、水道公社は毎分1.75ガロンより少ないことを条件にした。
リットルに直すと
アメリカの1ガロンは、約3.785リットルだ。直すと、数字の大きさがつかみやすくなる。
- トイレ:1回約13.2リットルと約18.9リットルが、約4.2リットルに
- 蛇口:毎分約8.3リットルが、約5.7リットルに
- シャワー:毎分約9.5リットルが、約6.6リットルに
1回5ガロンのトイレは、1回流すたびに約19リットルを使っていた。替えたあとのトイレは、その4.5分の1ほどだ。
1室泊あたり約765リットルが、約500リットルに
事例によると、替える前のホテルの水の使用量は、使われた客室1室あたり1日約202ガロンだった。替えたあとは35%減って、132ガロンになった。リットルに直すと、約765リットルが約500リットルになったことになる。
節約した水は、月に約58万ガロン、年に約700万ガロンだ。立方メートルに直すと、月に約2,200立方メートル、年に約2万6,500立方メートルになる。
なお、この1室あたりの数字は、ホテル全体の水の使用量を、使われた客室の数で割ったものだ。客室の浴室だけの水ではなく、厨房や洗濯などの水も含まれていると読める。
修理の電話がなくなった
事例は、水のほかの変化も書いている。替える前は、浴室の器具の修理の依頼が1日に1〜2件あったが、替えたあとは、新しい器具についての依頼がなくなったという。1981年に建ってから大きな改修をしていなかった浴室で、器具が古くなっていたことがうかがえる。
ホテルは、ほかにも次のことを進めている。
- 冷暖房の機器にたまる水(結露水)を、庭の水やりに使う
- 屋上でハーブを育てる
- プールのろ過装置の洗浄水と、冷却塔から抜く水を再利用する
日本の規格と並べる
日本では、トイレの洗浄水量を、日本産業規格(JIS A 5207)が区分している。国土交通省の事業でまとめられた資料によると、2019年の改正で次のようになった。
- 1回8.5リットル以下を「Ⅰ形」、6.5リットル以下を「Ⅱ形」とする
- 8.5リットルを超える「一般形」の区分はなくなった
日本レストルーム工業会は、国の「グリーン購入法」で調達の基準になっている6.5リットル以下の大便器が、節水形とされていると説明している。
この区分に当てはめると、ホテルが替える前の1回約13.2リットルと約18.9リットルのトイレは、いまの規格の区分には入らない。替えたあとの約4.2リットルは、Ⅱ形の6.5リットルを大きく下回る。
シャワーについては、EPAは、ふつうのシャワーヘッドは毎分2.5ガロン(約9.5リットル)で、ウォーターセンスの認証を受けるには毎分2.0ガロン(約7.6リットル)以下である必要があると説明している。ホテルが付けた毎分1.75ガロンは、その基準より少ない。
日本の宿の今の便器
同じ国交省の資料は、日本レストルーム工業会が2015年に行ったアンケートの結果を載せている。家のトイレの1回の洗浄水量は、次のように分かれていた。
- 13リットル以上:13.3%
- 10リットル:21.3%
- 8リットル:24.6%
- 6リットル:16.1%
- 6リットル未満:23.9%
これは家庭のアンケートで、宿の便器の調査ではない。ただ、古い建物には、1回10リットルを超える便器がまだ残っている可能性があることがわかる。
浄化槽の宿は、注意がいる
同じ資料は、節水形の便器の課題も挙げている。下水道がなく、浄化槽を使う建物では、便器の水を減らすと、浄化槽に流れ込む汚水が濃くなる。
- 資料の計算では、トイレの排水だけを処理する「単独処理浄化槽」で、流れ込む水の汚れの濃さ(BOD)が117%高くなる
- 台所や風呂の排水も一緒に処理する「合併処理浄化槽」では、16%の上昇にとどまる
- 単独処理浄化槽は、いまは新しく設置することが禁止されている
山あいや海辺の宿で、古い単独処理浄化槽を使っている場合は、便器を替える前に、浄化槽の管理業者に相談しておくと安心だ。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、30室の宿で考えてみる。
- 稼働率70%で、年7,665室泊(30室×365日×70%)
- 1室泊あたり、トイレの大の洗浄を4回とすると、年3万660回
- 1回13リットルの便器を4.8リットルのものに替えると、1回8.2リットル、年約251立方メートルの節約になる
- シャワーを1室泊あたり合計10分、毎分10リットルから7リットルにすると、1室泊30リットル、年約230立方メートルの節約になる
- 水道と下水道の料金を1立方メートル600円とすると、トイレで年約15万円、シャワーで年約13.8万円になる
シャワーの水はお湯なので、お湯をわかす燃料も減る。ホリデイ・インの事例でも、EPAは、測ってはいないものの、お湯の節約による電気の節約を年33万キロワット時と推定している。
単位をそろえると、比べられる
ガロンとリットル、1回あたりと1分あたり、ホテル全体と1室あたり。単位をそろえると、海外の事例と自分の宿の器具を、同じものさしで比べられる。便器の裏やシャワーヘッドに書かれた数字を、一度確かめてみるところから始めたい。
持ち帰れる知識
- 1ガロンは約3.785リットル。1回5ガロンのトイレは約19リットルを使う
- 日本の規格では、大便器は1回8.5リットル以下がⅠ形、6.5リットル以下がⅡ形
- ウォーターセンスのシャワーヘッドは毎分2.0ガロン(約7.6リットル)以下
- 単独処理浄化槽では、節水形の便器で汚水が濃くなることがある
宿で考えられること
- 客室の便器とシャワーヘッドの水の量を、型番から調べて一覧にする
- 1回10リットルを超える便器が残っていないかを確かめる
- 浄化槽を使う宿は、便器を替える前に管理業者に相談する
- 器具を替えたら、修理の依頼の件数も記録する
事業・予約への接続
節水の取り組みを伝えるときは、「1回何リットルの便器か」「毎分何リットルのシャワーか」を書くと、具体的に伝わる。水の勢いを保ったまま量を減らす器具であることを添えると、客も安心できる。
Sources / 参考情報
- U.S. EPA WaterSense(英文) - ホテルが節水型の衛生器具を入れる(PDF)(2014年7月)
裏付け: 397室・23万6,000平方フィート、1981年から大きな改修なし、2007年の水道公社の事業、ウォーターセンスのタンク式トイレと洗面の蛇口の基準で選定、シャワーの基準はまだなく毎分1.75ガロンより少ないことが条件、表(3.5ガロン297台・5.0ガロン100台→1.1ガロン、2.2→1.5ガロン397台、2.5→1.75ガロン397台)、結露水・屋上のハーブ・プールの洗浄水・冷却塔の水、202→132ガロン・35%減、月約58万ガロン・年700万ガロン、推定33万キロワット時、修理の依頼1日1〜2件がなくなった - 国土交通省 - 便所等の基準に係る見直し検討(PDF)(建築基準整備促進事業、いであ・建築研究所、2020年)
裏付け: JIS A 5207の2019年改正でⅠ形8.5リットル以下・Ⅱ形6.5リットル以下、8.5リットルを超える一般形を廃止、日本レストルーム工業会の2015年のアンケート(13リットル以上13.3%・10リットル21.3%・8リットル24.6%・6リットル16.1%・6リットル未満23.9%)、節水形の便器で単独処理浄化槽のBODの濃度が117%・合併処理浄化槽は16%上昇(原単位からの計算)、単独処理浄化槽の新設は禁止 - 日本レストルーム工業会 - JIS A 5207の改正の趣旨と改正内容(2022年8月22日の改正について)
裏付け: 大便器はグリーン購入法の判断の基準になっている6.5リットル以下のものが節水形、2022年の改正で小便器にⅠ形(4リットル以下)・Ⅱ形(2リットル以下)を新設 - U.S. EPA WaterSense(英文) - シャワーヘッド(2026年3月3日更新)
裏付け: ふつうのシャワーヘッドは毎分2.5ガロン、ウォーターセンスの認証は毎分2.0ガロン以下、満足できる浴び心地も条件 - U.S. EPA(英文) - 商業・公共施設の事例の一覧
裏付け: ホリデイ・イン・サンアントニオなどホテルの事例を掲載