GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 6分 / 3567文字 比と率を読み分ける型 #351

「7対1」と「600%」は同じことを言っている:ホテル42軒の食品ロス対策の報告を、比・率・中央値から読む

ホテルの食品ロスの話では、「1ドルかけると7ドル返ってくる」「投資に対して600%のもうけ」という言葉がよく出てくる。どちらも、2018年4月に出た同じ報告書から来た数字だ。

報告書の名前は「食品ロスを減らす経営上の理由:ホテル編」。食品ロスを2030年までに半分にするという国連の目標(SDGsのターゲット12.3)を進めるために集まった各国の政府・企業・団体のリーダーの集まり「チャンピオンズ12.3」のために、米国の研究機関「世界資源研究所(WRI)」と、英国の非営利団体「WRAP」の研究者3人がまとめた。

この記事では、「7対1」「600%」「5対1」という3つの数字が、それぞれ何を表しているのかを読み分ける。

何を調べたのか

報告書が調べたのは、15か国にある42軒のホテルだ。国は、オーストラリア、中国、ドイツ、ハンガリー、ミャンマー、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、シンガポール、スウェーデン、タイ、アラブ首長国連邦、英国、米国、ベトナムにわたる。

数えたのは、厨房で出た食品ロスだ。料理を作る途中で捨てたもの、傷んで捨てたもの、ビュッフェで売れ残ったものなどで、食べられない部分も含む。一方、客が皿に残した食べ残しや、寄付した食べ物は含めていない。報告書は、450を超える厨房を調べた別の調査を引いて、ホテルや外食では、捨てる食べ物の70%以上が、客の皿に届く前に出ていると書いている。

調べ方の決まりは、次のとおりだ。

  • 期間は、取り組みを始めてから3年間
  • お金の流れは、ホテルの過去の実際のデータを使った。ただし、データが3年分そろっていないホテルは、直近の数週間の傾向が続くと仮定して補った
  • 将来のお金は、1年に10%ずつ割り引いて、今の価値に直して比べた
  • 42軒はすべて、捨てる食べ物の重さと種類を記録できる秤(はかり)を使っていた

「7対1」は比、「600%」は率

報告書の中心の数字は、「便益と費用の比」だ。取り組みで得たもの(食材を買う量が減った分など)を、取り組みにかけた費用で割る。

42軒の平均は「ほぼ7対1」(表では6.8対1)だった。1ドルかけると、平均で約7ドルが戻ってきた、という意味だ。

では、なぜ「600%」なのか。報告書の注は、次のように説明している。

  • 「2対1」は、投資のもうけの率で言うと100%で、200%ではない
  • 1ドルを出して2ドルが戻れば、もうけは1ドルで、出した額と同じ。だから100%になる

同じように考えると、「7対1」は、1ドルを出して7ドルが戻り、もうけは6ドルだから、ほぼ600%になる。「7対1」と「600%」は、同じことを、比と率という別の形で言っている。

「7ドル返ってくるなら700%」と読むと、まちがいになる。

平均と中央値:「7対1」と「5対1」

報告書は、平均のほかに「中央値」も出している。42軒を比の大きい順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値だ。中央値は「ほぼ5対1」(表では4.7対1)だった。半分のホテルは約5ドル以上を得て、残りの半分はそれより少なかった、という意味になる。

平均が中央値より大きいのは、比がとても大きいホテルが一部にあり、平均を押し上げているからだ。比の幅は、0.4対1から28.8対1まであった。報告書の表では、区分ごとに次のようになっている。

  • 高級ホテル(21軒):中央値4.5、平均6.1
  • 中くらいの価格帯(14軒):中央値4.2、平均6.1
  • 手ごろな価格帯(2軒):中央値2.9、平均2.9
  • フルサービス(4軒):中央値4.9、平均9.9
  • カジノを持つホテル(1軒):28.8

ただし報告書は、比の大きさと、ホテルの区分や地域とのあいだに、はっきりした関係は見られないとしている。1軒だけの区分や、2軒だけの区分もあるので、区分どうしを比べるときは注意がいる。

また、1対1を超えて、かけた費用より多くを得たホテルは95%だった。言いかえると、42軒のうち約2軒は、3年間では費用を取り戻せていない。

「最大7ドル」ではない

英国の業界サイト「ホテル・マネジメント・ネットワーク」の2024年12月の記事は、WRAPの推計として、食品ロスを減らすのに1ドルかけると、ホテルなどは「最大7ドル」節約できると紹介している。

けれども、報告書では、7対1は平均で、いちばん大きいホテルは28.8対1だった。「最大7ドル」は、報告書の数字の読み方としては正しくない。

同じ記事は、ホテルチェーンIHGの41軒が、2023年に約19万7,312キロの食品ロスを減らし、49万3,279食分にあたると紹介している。こちらはチェーンの実績の紹介で、報告書の42軒とは別の数字だ。

量と金額の減り方

報告書は、費用の比のほかにも、次の結果を挙げている。

  • 12か月で、捨てる食べ物の重さが平均21%減った
  • 3年間で、捨てる食べ物の金額が平均64%減った
  • 食材の原価に占める食品ロスの割合は、平均でほぼ4ポイント、中央値で2ポイント以上下がった。原価1ドルあたり、平均で4セント以上の節約になる
  • 1年以内に費用を取り戻したホテルは70%以上、2年以内では95%
  • 約9割のホテルは、3年間の費用が2万ドル未満だった。費用は平均で、年間の食品の売上の0.9%

重さの21%は12か月、金額の64%は3年間の数字で、期間がちがう。並べて比べるときは注意したい。また報告書によると、多くのホテルは、1キロあたりの値段が高い食材ほど捨てたときの損が大きいため、お金の効果が大きいものから優先して減らした。

何をしたのか:5つの方法

報告書は、成果を上げたホテルが取った方法を、5つにまとめている。

  • 量る:捨てる食べ物を記録し、どこで多く出ているかを見つける
  • 働く人を巻き込む:働く人を責めると、参加の意欲はすぐに落ちる。量ったことをほめる
  • ビュッフェを見直す:小さな皿にする、ビュッフェの残りを、その日の後の時間に売る
  • 作りすぎを減らす:あるホテルは、いつもポテトサラダを作りすぎていた。記録で気づいて作る量を減らすと、客の行動を変えずに無駄が減った
  • 余りを生かす:使い切れない食材を、別の料理に使う

事例では、タイの「ソフィテル・バンコク・スクンビット」が15週で食品ロスの金額を50%減らし、年約6万ドルを節約する見込みになった。米国ミシシッピ州の「MGMゴールドストライク・リゾート・アンド・カジノ」(年65万人以上が利用)は、食べ放題のビュッフェに力を入れ、12か月で食品ロスの量を80%以上、食材の費用を5%以上減らした。厨房の働く人は、はじめは「監視や罰のための仕組みではないか」と疑ったが、秤を使うと週ごとにほめる仕組みや、食品ロスについての話し合いを重ねるうちに、長く働く人も含めて考え方が変わったという。

日本の宿に置き換えると

日本では、食品リサイクル法にもとづいて、業種ごとに食品廃棄物の「発生抑制の目標値」が決められている。農林水産省によると、2024年度から2028年度の旅館業の目標値は、利用者1人あたり0.570キロだ。食品関連事業者は、発生量をこの値以下にするよう努力することが求められている。

この目標値は、利用者1人あたりの重さで表す。報告書の「比」や「率」とは、ものさしがちがう。宿で取り組むときは、重さ(目標値と比べる)と、お金(費用と比べる)の両方を記録しておくと、2つのものさしで成果を確かめられる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、年間の食材の費用が3,000万円の宿で考えてみる。

  • 厨房で捨てる食べ物が、食材の原価の5%なら、年150万円
  • 量って作る量を見直し、3%まで下げると、年90万円になり、年60万円の節約
  • 3年間の節約は180万円。秤や記録の手間などの費用を、はじめに30万円とする
  • 比は、180万円÷30万円=6対1。投資のもうけの率は、(180万円-30万円)÷30万円=500%

報告書と同じように、将来の節約を1年10%で割り引くと、3年分は約149万円になり、比は約5対1に下がる。比を見るときは、割り引いているかどうかも確かめたい。

数字を、自分の宿の言葉に直す

「1ドルで7ドル」は、とても分かりやすい言葉だ。けれども、それが平均なのか、中央値なのか、最大なのか、比なのか率なのかで、意味は変わる。42軒のうち、比が1対1に届かなかったホテルもある。

報告書は、ホテルに「目標を決め、量り、行動する」ことを呼びかけている。自分の宿で量った数字を、自分の宿の費用と比べることが、いちばん確かな「経営上の理由」になる。

持ち帰れる知識

  • 「2対1」は投資のもうけの率で100%。「7対1」はほぼ600%
  • 平均(ほぼ7対1)と中央値(ほぼ5対1)はちがう。幅は0.4対1〜28.8対1
  • 費用を取り戻したのは1年以内で70%以上、2年以内で95%
  • 旅館業の発生抑制の目標値は、2024〜2028年度で利用者1人あたり0.570キロ

宿で考えられること

  • 厨房で捨てる食べ物を、重さと金額の両方で記録する
  • 取り組みの費用を最初から記録し、節約と比べる
  • いつも作りすぎている料理を、記録から見つける
  • 量った人をほめ、捨てた人を責めない

事業・予約への接続

食品ロスを量って減らしていることは、客に我慢を求めずに無駄を減らす取り組みとして伝えられる。数字を伝えるときは、平均か中央値か、比か率かをはっきり書くと、信頼につながる。

Sources / 参考情報

  • Champions 12.3・WRI・WRAP(英文) - 食品ロスを減らす経営上の理由:ホテル編(PDF)(2018年4月)
    裏付け: 著者3人(WRI2人、WRAP1人)、15か国42軒、厨房の食品ロス(食べられない部分を含み、客の食べ残しと寄付は含まない)、70%以上が皿に届く前、3年間・割引率10%・3年分のデータがない軒は直近の傾向が続くと仮定、平均ほぼ7対1(表で6.8)・中央値ほぼ5対1(表で4.7)・0.4〜28.8、注1「2対1は100%で200%ではない」、ほぼ600%、区分別の表、区分や地域とのはっきりした関係はない、95%が1対1超、1年以内70%超・2年以内95%、約9割が2万ドル未満・売上の0.9%、12か月で重さ21%減、3年で金額64%減、原価比で平均ほぼ4ポイント・中央値2ポイント超、高い食材を優先、5つの方法、ポテトサラダ、責めると参加が落ちる、ソフィテル・バンコク・スクンビット(15週で50%・年約6万ドル)、MGMゴールドストライク(年65万人超、12か月で80%超・食材費5%超、週ごとの報奨)、「目標を決め、量り、行動する」
  • WRAP(英文) - 食品ロスを減らす経営上の理由:ホテル編(報告書の紹介)
    裏付け: チャンピオンズ12.3のための報告書、1ドルで7ドル、約9割が2万ドル未満、70%が1年以内、著者はWRAPのミッチェル氏とWRIのクロウズ氏・ハンソン氏、チャンピオンズ12.3は政府・企業・市民社会のリーダー約40人の集まり、「目標を決め、量り、行動する」
  • World Resources Institute(英文) - ビュッフェを見直す:ホテルが今すぐできる3つのこと(2018年4月9日)
    裏付け: 42軒・15か国、平均で600%、平均の費用は食品の売上の1%未満で7倍が戻る、95%が2年以内に回収、MGMゴールドストライク(80%超・5%超)、ソフィテル・バンコク・スクンビット(15週で50%・年約6万ドル)、70%以上が客の皿に届く前
  • Hotel Management Network(英文) - ホテル業界と食品ロス(2024年12月13日)
    裏付け: WRAPの推計として「1ドルで最大7ドル」、IHGのホテルが2023年に41軒で約19万7,312キロ・49万3,279食分
  • 農林水産省 - 食品廃棄物等の発生抑制の取組
    裏付け: 目標値設定期間2024年度〜2028年度、旅館業は客数あたり0.570kg/人、目標値以下になるよう努力が必要、再生利用等実施率目標とあわせて評価

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