GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 7分 / 3946文字 出し方を比べる型 #353

「いくらでもどうぞ、ただし一皿ずつ」:ビュッフェの“たっぷり感”を残しながら捨てる量を減らす、ホテルの出し方を比べる

ホテルのビュッフェは、好きなものを好きなだけ選べる楽しさがある。一方で、客が食べきれないほどの料理を並べ、最後に捨てることになりやすい。

米国の旅行誌「アファー」は、2025年5月、旅行業界の食品ロスの取り組みを集めた記事を出した。記事は、ビュッフェを「作りすぎの温床」と呼び、新しい課題をこう書いている。「かつてチョコレートの噴水や食べ放題の魚介の台が生んでいた、ぜいたくなたっぷり感を、どう残すか」。

この記事では、アファーが紹介したホテルの例を中心に、ビュッフェの出し方を変える方法を比べる。

記事の見出しの数字について

アファーの記事の見出しは「ホテルは年に7万9,000トンの食品を捨てている」で、本文では「1軒あたり年7万9,000トンと推計される」と書き、根拠として学術誌の論文にリンクしている。

ただ、同じ7万9,000トンという数字は、英国の非営利団体WRAPが2013年に出した報告書に、「英国のホテル全体」の1年の食品ごみとして出てくる。この報告書では、英国のホテルは4万5,763か所あった。1軒あたりと読むと、ありえないほど大きな量になる。この記事では、見出しの数字ではなく、記事が紹介したホテルの取り組みに注目する。

旅の業界の食品ロス

アファーは、ホテルのほかにも、旅の業界の食品ロスの数字を挙げている。

  • 航空:国際航空運送協会のいちばん新しい調査では、2017年に、手を付けていない飲食物が推計114万トン捨てられた
  • クルーズ:業界としては数えていないが、ロイヤル・カリビアンは2022年に190万立方フィート(約5万4,000立方メートル)の食品ごみを出したと報じられている。マンハッタンの1区画を4フィート(約1.2メートル)以上の深さで覆う量だという
  • 温室効果ガス:国連気候変動枠組条約の事務局は、食品ロスが世界の温室効果ガスの排出の最大10%を占めると推計している。アファーは、航空業界全体の4倍にあたると書いている

いずれも、アファーが他の資料から引いた数字だ。

出し方1:頼めば何度でも、一皿ずつ

インドネシアのバリ島にある「デサ・ポテトヘッド」は、宿泊料金に含まれる朝食を、ビュッフェから、メニューから選んで頼む形に変えた。

アファーによると、朝食は今も宿泊料金に含まれていて、客が満たされた気分になれるようにしている。そのうえで、無駄の多いビュッフェをやめ、客が意識して選ぶように促している。広報の担当者のマリア・ガルシア・デル・セロ氏は、こう話している。

「量の問題ではありません。好きなだけ食べてかまいません。ただ、一度に一皿ずつです」

出し方2:大皿を持って、席を回る

中米コスタリカで2025年2月に開業した「ネカフイ、リッツ・カールトン・リザーブ」では、料理長のルル・エリサガ氏が、料理を山盛りにしたビュッフェをやめた。並べた料理は、時間が終わると捨てなければならないからだ。

代わりに選んだのは、「トレイから席へ」というビュッフェの形だ。給仕の人が、新鮮な果物、甘いパン、チーズ、ハムやソーセージなどの大皿を次々に席へ運び、客が「もう十分」と言うまで続ける。エリサガ氏は、「ぜいたくという言葉の意味が変わってきている。前は大きな皿いっぱいの料理が必要だったが、今は『いろいろ選びたい、いろいろ味わいたい』になっている」と話し、その結果、食品ロスが出ないと語っている。

出し方3:量って、品目と季節で変える

カナダのロッキー山脈にある「フェアモント・バンフ・スプリングス」は、オランダの会社「オービスク」のカメラを厨房に取り付け、捨てる食べ物を記録した。アファーによると、ビュッフェでは、ソース、スープ、焼き菓子が特に多く捨てられていると分かり、作る量を減らした。秋に涼しくなると、生の野菜を捨てる量が増えたので、毎日用意する野菜の量を減らした。

なお、地元の観光局の記事は、秋の野菜の変化を、客のビュッフェではなく、従業員の食堂での変化として紹介している。

コスタリカの「フォーシーズンズ・リゾート・コスタリカ・アット・ペニンシュラ・パパガヨ」は、英国の会社「ウィノー」の仕組みを厨房に入れ、4か月で捨てる食べ物を50%減らし、4万食分にあたる食べ物を節約したと、アファーは伝えている。

終わりの時間の出し方

ホテル42軒の食品ロス対策を調べた報告書の著者の一人は、2018年4月、米国の研究機関「世界資源研究所」のサイトで、ビュッフェについて次のように書いた。

  • ビュッフェは、ホテルの食品ロスの最大の出どころの一つで、肉のように値段の高い食べ物を多く捨てやすい
  • 「過去のホテル」は、時間の最後の1分まで料理を満杯にしておく。朝食の終わりに、どれだけのベーコンやソーセージや卵が捨てられるか、想像してほしい
  • 「未来のホテル」は、食事の時間の終わり近くになると、一部の料理を注文を受けてから作る形に切り替える。客の満足を下げずに、捨てる量を減らせる
  • 残った料理は、安全に配慮して、時間外に着いた客の持ち帰りの包みにしたり、別の料理に使ったりする

ビュッフェをすべてやめなくても、終わりの時間の出し方を変えるだけで、捨てる量は減らせる。

報告書の2つのホテル:ビュッフェをやめずに

この報告書は、15か国42軒のホテルの厨房の食品ロスを調べたもので、ビュッフェで売れ残った料理も数に入れている。報告書は、25か国の450を超える厨房を調べた別の調査を引いて、食品ロスの70%以上は、客の皿に届く前に出ていると書いている。ビュッフェの売れ残りは、まさに皿に届く前のロスだ。

報告書は、ビュッフェの出し方を変えた2つのホテルを紹介している。

ソフィテル・バンコク・スクンビット(タイ)は、5つ星の中規模のホテルだ。

  • 秤で記録すると、ビュッフェと、パンや季節の果物がロスの多い場所だった
  • 看板のビュッフェの料理はやめず、並べる量をきめ細かく調整した
  • 傷みやすい食べ物は、仕入れ先と契約を見直し、柔軟に注文できるようにした
  • 料理長たちが、毎日ロスについて話す会議を設けた
  • 15週で、食品ロスの金額を50%減らした。節約は年約6万ドルの見込み

MGMゴールドストライク・リゾート・アンド・カジノ(米国ミシシッピ州)は、年65万人以上が利用する。

  • 食べ放題のビュッフェに力を入れた
  • 朝食の終わりには、作りすぎたベーコン、卵、ハム、クロワッサンが鍋ごと捨てられていた
  • 夕食の終わりにも、その日の残りがすべて捨てられていた
  • 一部の料理を、終わり近くは注文を受けて作る形にした。料理はよりできたてになった
  • 12か月で、食品ロスの量を80%以上、食材の費用を5%以上減らした

どちらのホテルも、ビュッフェをやめてはいない。並べる量と、終わりの時間の出し方を変えている。

堆肥にすれば終わり、ではない

アファーの記事は、捨てる前の工夫と、捨てたあとの工夫の両方を紹介している。

  • 米国デンバーで2024年の秋に開業した「ポピュラス・ホテル」では、敷地内の機械が、食べ物のくずを地元の農場のための堆肥に変える
  • ノルウェーのクルーズ会社「フッティルーテン」は、2024年、港町スタムスンに堆肥をつくる装置を置いた。近くの農場が、できた堆肥で船のための野菜を育てる。1年目に処理した食べ物のくずは、スクールバス19台分の重さだった
  • 6つのレストランを持つデサ・ポテトヘッドでは、コーヒーのかすをリキュールや発酵茶に使い、魚のうろこをせんべいに、スイカの皮を漬け物に、残ったパンを味噌のような調味料にする。リゾートは、年末までに、料理に使う食材の25%を、捨てられるはずだった部分の再利用にすると話している

ただし、米国オハイオ州立大学で食品ロスの研究を率いるブライアン・ロー氏は、注意も呼びかけている。堆肥にできる仕組みがあると、「良いところへ行くから」と、食べ物を捨てることを気にしなくなる例があるという。そして、食べ物から出る温室効果ガスの80〜90%は、捨てるときではなく、作るときに出ていると話す。堆肥は大切だが、作りすぎを減らすことが先だ。

日本の宿に置き換えると

日本の厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、食中毒を防ぐための目安として、「調理後の食品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい」としている。このマニュアルは、同じメニューを1回300食以上、または1日750食以上出す調理施設に当てはまるが、厚生労働省は、中小規模の調理施設でも、マニュアルの趣旨を踏まえた衛生管理を求めている。

たくさんの料理を長い時間並べ続けると、衛生の面でも、捨てる量の面でも負担が大きい。少しずつ作って補充する、終わりの時間は注文を受けて作る、といった出し方は、その両方を軽くする。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、朝食に1日60人が来る宿で考えてみる。

  • ビュッフェの終わりに残って捨てる料理が、1日6キロ
  • 終わりの1時間を、小さな器での補充と、注文を受けて作る形に変え、残りを3分の1減らす
  • 1日2キロ、年730キロ減る
  • 捨てていた料理の食材の値段を1キロ800円とすると、年約58万4,000円分

ただし、お金が実際に浮くのは、仕入れや仕込みの量を、減った残りに合わせて見直したときだ。

たっぷり感は、量ではなく選べること

「一度に一皿ずつ」も「もう十分と言うまで」も、客が選べることを残したまま、並べる量を減らしている。どの出し方が合うかは宿によってちがうので、まず、どの料理がどれだけ残るかを量ってみたい。

持ち帰れる知識

  • ビュッフェをやめなくても、終わりの時間の出し方を変えると捨てる量を減らせる
  • 7万9,000トンは、WRAPの報告書では英国のホテル全体の数字で、1軒あたりではない
  • 食べ物の温室効果ガスの80〜90%は作るときに出る(ロー氏)。堆肥より作りすぎを減らすことが先
  • 大量調理施設衛生管理マニュアルは、調理後2時間以内の喫食が望ましいとしている

宿で考えられること

  • ビュッフェで残りやすい料理を、量って見つける
  • 終わりの時間は、補充を小さな器にし、注文を受けて作る形にする
  • 季節で残り方が変わる料理の量を見直す
  • 堆肥にする前に、作る量を見直す

事業・予約への接続

「好きなだけ、ただし一皿ずつ」という出し方は、我慢ではなく、できたての料理を選べる楽しさとして伝えられる。できたてを出すことは、衛生への配慮としても説明できる。

Sources / 参考情報

  • AFAR(英文) - ホテルは年に7万9,000トンの食品を捨てている。AIと魚のせんべいは役立つか(2025年5月27日)
    裏付け: 1軒あたり年7万9,000トンという記述と論文へのリンク、航空2017年114万トン(IATA)、ロイヤル・カリビアン2022年190万立方フィート・マンハッタンの1区画を4フィート以上(報道)、食品ロスは温室効果ガスの最大10%(UNFCCC)・航空業界の4倍、ポピュラス・ホテルは昨秋開業、フッティルーテンの2024年スタムスンの堆肥の装置・近くの農場・スクールバス19台分、6つのレストラン、ビュッフェは作りすぎの温床・たっぷり感をどう残すか、デサ・ポテトヘッドの朝食を注文の形へ(宿泊料金に含む)とガルシア・デル・セロ氏の言葉、ネカフイ(2025年2月開業)のエリサガ氏と「トレイから席へ」、フォーシーズンズ・コスタリカで4か月50%・4万食分、オービスクとフェアモント・バンフ・スプリングス(ソース・スープ・焼き菓子、秋の生の野菜)、ポピュラス・ホテルの敷地内の機械で堆肥、デサ・ポテトヘッドの再利用と25%、ロー氏の注意と80〜90%
  • Banff & Lake Louise Tourism(英文) - 現場からの話:フェアモント・バンフ・スプリングス、食品ロスを賢く減らす(2024年11月12日)
    裏付け: 秋の野菜と炭水化物の変化は従業員の食堂での変化
  • World Resources Institute(英文) - ビュッフェを見直す:ホテルが今すぐできる3つのこと(2018年4月9日)
    裏付け: 著者はクロウズ氏、ビュッフェは最大の出どころの一つで肉など高い食べ物を捨てやすい、最後の1分まで満杯・ベーコンやソーセージや卵、終わり近くに一部を注文を受けて作る形へ、時間外の客の持ち帰りの包みや別の料理に安全に再利用
  • Champions 12.3(英文) - 食品ロスを減らすビジネスの理由:ホテル(PDF)(2018年4月)
    裏付け: 15か国42軒の厨房の食品ロス、ビュッフェの売れ残りを含む、25か国の450を超える厨房の調査で70%以上が皿に届く前、ソフィテル・バンコク・スクンビット(5つ星の中規模、秤、ビュッフェと傷みやすい食べ物、看板の料理をやめず量を調整、仕入れ先との契約の見直し、毎日の料理長の会議、15週で金額50%減・年約6万ドルの見込み)、MGMゴールドストライク(年65万人以上、朝食と夕食のビュッフェの終わりの廃棄、終わり近くに注文を受けて作る形へ、できたて、12か月で量80%以上・食材費5%以上の減少)
  • WRAP(英文) - 英国の接客・フードサービス業のごみの概要(PDF)(2013年11月)
    裏付け: 英国のホテルは4万5,763か所、食品ごみ7万9,000トン
  • 厚生労働省 - 「大量調理施設衛生管理マニュアル」の改正について(PDF)(2017年6月16日)
    裏付け: 調理後の食品は調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上の施設に適用、中小規模調理施設でも趣旨を踏まえた衛生管理を求める

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