GOAL 6 · TARGET 6.3 水・衛生・循環 4分 / 2685文字 下水と川の側から読む型 #357

下水管につながっていた排水を、タンクにつなぎ替えた:アトランタの「グランド・ハイアット」の雨水利用を、下水と川の側から読む

屋根に降った雨は、ふつう、雨どいを通って建物の外へ流れていく。行き先は、下水管や雨水の管、そして川だ。強い雨の日には、その水が一度に集まる。

米国ジョージア州アトランタの「グランド・ハイアット・アトランタ」は、その雨の一部を下水管に流さず、建物の中のタンクにためて使っている。このホテルの雨水利用は、水道代の節約の話として紹介されることが多い。この記事では、見方を変えて、下水や川に流れる水を減らすという面から読む。

ホテルがしていること

米国の水環境の専門団体「水環境連盟(WEF)」の2018年2月の記事によると、ホテルは439室。次の水を集めている。

  • 屋根の平らな部分に降った雨
  • 屋外の日本庭園風の庭に降り、土にしみこんだ雨(庭の下の排水管で集める)
  • 客室の冷房の機械にたまる結露の水
  • 製氷機の氷が溶けた水

集めた水は、下のロビーの階の下にある車庫の、8つのタンクにためる。容量は合わせて11万3,500リットル(3万ガロン)。そこから、建物の冷房を支える冷却塔に送り、蒸発させて使う。冷却塔が必要とする水は1日4万5,400〜5万6,800リットルで、1年を平均すると、この仕組みがその約3分の1をまかなっている。

下水管から、タンクへ

記事の中で、ホテルの主任技術者は、雨水や排水を集めるために「市の下水管につながっていた排水管を、タンクにつなぎ替えただけだ」と話している。庭の下の排水管も、下水の代わりにタンクへ向けた。

仕組みは簡単だ。

  • 水はまず、大きなごみを取るろ過の筒(降り始めの水をこす装置)を通る
  • タンクの中のろ過の袋で、細かな粒を取る
  • 水の移動は、すべて重力でまかなう
  • タンクの水位は超音波の計器で測り、建物の管理システムにつなぐ。このシステムが弁を操作し、冷却塔の受けの槽に水を送る

雨の日が続いた後の見学のときには、タンクに7万3,800リットル以上の水がたまっていた。

数字は、雨だけのものではない

記事によると、2013年に動き始めてから、この仕組みは冷却塔に約1,700万リットル(450万ガロン)の水を送った。節約はこれまでに約3万8,000〜4万ドル。設置の費用は9万〜10万ドルで、回収の見込みは約7年だ。

ただし、この1,700万リットルには、結露の水と製氷機の水も入っている。そのうち雨の分がどれだけかは、記事からは分からない。下水に流れずにすんだ雨の量を、この数字から直接読むことはできない。

もう一つ大事なのは、使い道だ。冷却塔に送った水は、蒸発して空気中に出ていく。トイレに使えば、水は結局下水に流れるが、冷却塔なら下水には戻らない。このホテルでは、ためた雨が、下水にも川にも流れずに使われていることになる。

アトランタの下水と雨の決まり

アトランタでは、雨の水が下水の問題と深く結びついている。EPAによると、アトランタ市は裁判所の同意判決にもとづき、汚水と雨水を同じ管で流す「合流式下水道」からの許可されていない放流をなくし、4つの下水処理場を改善することを求められている。

市は2013年2月に、開発後の雨水の管理に関する条例を改めた。WEFの2013年3月の記事によると、新しく開発する土地や建て替える土地では、最初の1インチ(約25ミリ)の雨を、植物や土の働きを使う「グリーンインフラ」で敷地の中で処理しなければならない。商業施設は500平方フィート(約46平方メートル)以上、住宅は1,000平方フィート(約93平方メートル)以上が対象だ。

EPAによると、条例ができてから6年で、市はグリーンインフラを使う4,800件以上の建設に許可を出した。その結果、市の雨水の管と合流式下水道に入る汚れた雨の水は、年に9億5,000万ガロン減った。市は2018年に、グリーンインフラで雨の流出を年2億2,500万ガロン減らす目標を立てた。

ホテルの仕組みも2013年に動き始めたが、この条例の対象だったかどうかは、記事には書かれていない。既存の建物が自分で始めた取り組みとして読むのがよい。

1インチの雨は、どれくらいか

1インチは25.4ミリ。1,000平方メートルの屋根に1インチの雨が降ると、25.4立方メートル、約2万5,400リットルの水になる。グランド・ハイアットのタンクは11万3,500リットルなので、計算の上では、約4,500平方メートルの屋根に降った1インチの雨を受け止められる大きさだ。ただし、タンクがいつも空いているとは限らない。

日本の宿に置き換えると

日本の都市にも、合流式下水道は多い。東京都下水道局によると、東京23区の約8割は、汚水と雨水を1本の管で流す合流式下水道だ。強い雨が降ると、街を浸水から守るため、汚水の混じった雨水が川や海に放流される。都は、雨の降り始めの特に汚れた下水をためる施設の整備を進め、2024年度から強くなった国の基準に向けて、累計約170万立方メートルの貯留施設などを整えた。

国土交通省によると、2014年5月に施行された「雨水の利用の推進に関する法律」は、雨水の利用を進めて水資源を有効に使うとともに、下水道や河川などへ雨水が一度に流れ出るのを抑えることを目的にしている。

宿の屋根の雨をためることは、小さいながら、この流れに加わることになる。ただし、強い雨の日に役立つのは、タンクに空きがあるときだけだ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、屋根600平方メートルの宿で考える。

  • 降り始めの20ミリの雨を受け止めるには、600×0.02=12立方メートルのタンクが要る
  • ためた水を、庭の水やりやトイレに1日2立方メートル使うと、満水のタンクは6日で空になる
  • 雨が週に1回なら、次の雨までにタンクに空きができる。使わずに満水のままだと、次の雨は受け止められない
  • 年の雨を1,500ミリとすると、屋根に降る雨は900立方メートル。その6割を使えれば540立方メートルで、水道代を1立方メートル600円とすると年32万4,000円

使い道によって、水の行き先も変わる。トイレに使った水は、時間をずらして下水に流れる。庭にまけば、土にしみこむ。どちらも、雨が一度に下水へ流れ込むのを和らげる。

ためて、使って、空けておく

グランド・ハイアットの例が示すのは、雨水の利用には、水道代の節約と、下水や川に流れる水を減らすことの、2つの面があるということだ。そして、後者の効果を出すには、ためた水を使い続けて、タンクに空きをつくっておくことが欠かせない。

持ち帰れる知識

  • 雨水の利用には、水道代の節約と、下水や川への流出を減らす、2つの面がある
  • 冷却塔で蒸発させる水は下水に戻らず、トイレに使う水は時間をずらして下水に流れる
  • 強い雨を受け止められるのは、タンクに空きがあるときだけ
  • 東京23区の約8割は合流式下水道で、強い雨の日には汚水まじりの雨水が川や海に出る

宿で考えられること

  • 屋根の雨どいが、下水の管につながっているか、雨水の管につながっているかを確かめる
  • 雨水をためるなら、毎日の使い道(散水、トイレなど)を先に決める
  • 降り始めの汚れた水を除く装置と、ろ過の袋の点検の手順をつくる
  • タンクの水位を記録し、雨の前に空きがあるかを見る

事業・予約への接続

雨をためて使う取り組みは、建物の外から見えにくいが、館内の案内で伝えられる。水道代の節約だけでなく、街の下水や川への負担を減らす取り組みとして説明すると、地域とのつながりも伝わる。

Sources / 参考情報

  • Water Environment Federation(英文) - ホテルの簡単な雨水の回収と再利用の仕組みが、地域の環境に役立つ(2018年2月)
    裏付け: 439室、屋根の平らな部分と日本庭園風の庭の雨・結露の水・製氷機の水、8つのタンクで11万3,500リットル、下のロビーの階の下の車庫、冷却塔の1日4万5,400〜5万6,800リットルの約3分の1、市の下水管から排水管をつなぎ替えた、降り始めのろ過の筒とろ過の袋、すべて重力、超音波の水位計と建物の管理システムが弁を操作、見学時に7万3,800リットル超、2013年から約1,700万リットル・約3万8,000〜4万ドル、費用9万〜10万ドル・回収約7年
  • U.S. EPA(英文) - クリーン・ウォーター・アトランタ:市の施策でグリーンインフラを進める
    裏付け: 同意判決で合流式下水道からの許可されていない放流をなくし4つの処理施設を改善、2013年の条例で最初の1インチをグリーンインフラで管理、6年で4,800件以上・雨水の管と合流式下水道に入る汚れた流出を年9億5,000万ガロン削減、2018年の行動計画で年2億2,500万ガロンの目標
  • Water Environment Federation(英文) - アトランタが雨水の条例でグリーンインフラを義務づけ(2013年3月)
    裏付け: 2月4日に市議会が改正を発表、新規開発と建て替えで最初の1インチ(25ミリ)を敷地内でグリーンインフラで処理、商業は500平方フィート(46平方メートル)以上・住宅は1,000平方フィート(93平方メートル)以上
  • 東京都下水道局 - 東京都下水道事業 経営レポート2024
    裏付け: 合流式下水道は23区の約8割、強い雨では汚水混じりの雨水が河川や海へ放流、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設を整備、2024年度から強化された雨天時放流水質基準に向けて累計約170万立方メートルの貯留施設等の整備を完了
  • 国土交通省 - 雨水の利用の推進に関する法律
    裏付け: 平成26年5月1日施行、雨水の利用を推進し水資源の有効な利用を図り、あわせて下水道・河川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与することが目的

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