GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 5分 / 2834文字 規模の違う2軒を並べる型 #359

週800ポンドでも、開業の日から分けた:マサチューセッツ州の「ヒルトン・ガーデン・イン・デベンス・コモンズ」の生ごみの堆肥化を、レノックス・ホテルと並べる

米国マサチューセッツ州では、州の環境保護局の資金で動く「リサイクリングワークス」という支援の窓口が、ホテルやレストランのごみを減らす事例をまとめている。よく知られているのは、ボストンの「レノックス・ホテル」だ。3つのレストランの生ごみを堆肥にまわし、その量は年91トンから156トンに増えた。

同じ窓口の事例集には、ずっと小さな例もある。州の中部、デベンスにある「ヒルトン・ガーデン・イン・デベンス・コモンズ」だ。こちらは、ホテルを開業したときから、生ごみを分けて堆肥にまわした。この記事では、この小さな例を中心に読み、レノックスと並べて、規模と始めた時期の違いを考える。

小さなレストランの事例

デベンスの地域の環境センターと、環境の支援団体「センター・フォー・エコテクノロジー(CET)」がまとめた事例によると、ホテルの中のレストラン「グレート・アメリカン・グリル」は、席数50。1日に60〜80食を出し、厨房と給仕のスタッフは10〜15人だ。

事例は、ホテルとレストランについて「2011年の終わりにデベンスに置かれた」とも「2012年に開業した」とも書いている。どちらにしても、新しく開いたばかりの店で、スタッフは開業のときから、生ごみと資源ごみを分け始めた。事例は、最初から分ける習慣を文化として根づかせたので、店が大きくなっても無理なく広げられると書いている。

容器は、すでにあったものを使った

生ごみを集める容器は、ごみが出る場所のすぐ近くに置いた。

  • 仕込みの場所:平たいホテルパン(厨房でよく使う金属の容器)
  • コーヒーをいれる機械の横の台:1ガロン(約3.8リットル)ほどの小さな容器で、コーヒーかすを集める
  • 皿洗いの場所の、皿の残りを落とす台:5ガロン(約19リットル)のプラスチックのバケツ

どれも、店にすでにあった容器だ。新しい容器を買わずにすんだうえ、食器洗い機に入る大きさなので、必要なときにすぐ洗える。

手順は、早い時期のスタッフの会議で説明した。容器の置き場所や大きさについて、スタッフの意見も聞いた。置き方は固定せず、必要に応じて変えられるようにした。

集めた後の流れ

食事の時間が終わると、容器を外の堆肥用の大型容器に運んで空ける。大型容器には、関係のないごみが入らないよう、鍵の棒が付いている。空の容器の底には段ボールを敷き、回収のときに中身がすべて出やすいようにした。

堆肥用の容器は週に1回空にする。必要なら回数を増やせる。一方、ふつうのごみの回収は、毎週から「呼んだときだけ」に変わり、間隔は1か月近くに延びた。

CETは、分け方の掲示をつくり、スタッフに分け方を教えた。デベンスの環境センターも、質問に答えたり、ホテルに合わせて掲示を新しくしたりして支え続けた。

2か月で、週800ポンド

事例によると、厨房から、仲間に分け方を熱心に呼びかける「堆肥の担当者」が現れた。分け方は少しずつ良くなり、始めて2か月で、堆肥にまわす生ごみは平均で週800ポンド(約363キログラム)になった。

リサイクルと堆肥化を進め、ごみの容器はいっぱいになったときだけ回収してもらうようにした結果、ごみの処理のサービスの必要は約50%減り、ごみの費用も下がったという。総支配人は、会社として環境を守ることに取り組んでおり、生ごみを再利用する堆肥化はその目標に役立つと話している。

レノックスと並べる

リサイクリングワークスの2019年の事例によると、レノックス・ホテルは2014年5月から、3つのレストランの生ごみを農場に送り、堆肥にしている。4年で、年91トンから156トンに増えた。ホテルは、週6,000ポンドを堆肥にまわしていると報告している。

週6,000ポンドは、デベンスの週800ポンドの7.5倍だ。ただし、2つの数字は時期が違う。デベンスは2012年ごろの始めて2か月の平均、レノックスは2019年の事例の時点の量だ。規模も、1日60〜80食の1軒のレストランと、3つのレストランを持つホテルで、大きく違う。

並べて分かるのは、量の大小より、始め方の違いだ。レノックスは営業を続けながら途中から始め、デベンスは開業の日から始めた。デベンスの事例は、最初から分けることを当たり前にしておけば、後から習慣を変える手間がいらないことを示している。

州の決まりの線

マサチューセッツ州には、一定量以上の生ごみを出す事業者に、ごみとして捨てることを禁じる決まりがある。リサイクリングワークスによると、その線は2022年11月1日から、週1トンから週半トンに下がった。半トンの生ごみは、64ガロン(約242リットル)のカート約4台分にあたる。

半トンは1,000ポンド。デベンスの週800ポンドは、下がった後の線にも届かない。つまり、このホテルは、決まりで求められる量より少ないうちから、自分で分けることを選んでいた。レノックスの週6,000ポンドは、半トンの6倍にあたる。

日本の宿に置き換えると

日本では、食品リサイクル法のもとで、食品を扱う事業者が、食品廃棄物の発生を抑えたり、再生利用したりすることが求められている。農林水産省の発生抑制の目標値の表では、旅館業は外食産業の区分に入っている。

農林水産省によると、2025年3月14日に公表された新しい基本方針は、2029年度までに外食産業全体で「再生利用等実施率」50%を目指すとしている。これは業種全体の目標で、事業者一つひとつに義務づけるものではない。

再生利用等実施率は、次の式で計算する。

  • 分子:発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95+減量量
  • 分母:発生抑制量+発生量

個々の事業者には、前の年の実績に応じた「基準実施率」があり、毎年それを上回ることが求められる。基準実施率は、前の年が20%以上50%未満なら2ポイント、50%以上80%未満なら1ポイント上がり、80%以上なら維持・向上とされている。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、朝食と夕食を出す30室の宿で考える。

  • 生ごみの発生量は週80キログラム、年4,160キログラム
  • 仕込みの量を見直して、年400キログラムの発生を抑えた
  • 年2,000キログラムを、堆肥をつくる業者に引き渡した
  • 再生利用等実施率は、(400+2,000)÷(400+4,160)=約52.6%

週80キログラムは、マサチューセッツ州の半トン(約454キログラム)の2割に満たない。それでも、デベンスのように、手元の容器と掲示から始めることはできる。生ごみを量っておけば、この式で、自分の宿の取り組みを数字で確かめられる。

小さく、最初から

デベンスの例は、量が少なくても、決まりの線の下でも、生ごみを分けることはできると教えてくれる。新しく宿を開くときや、厨房を改装するときは、最初から分ける仕組みを組み込む、よい機会になる。

持ち帰れる知識

  • 生ごみを分ける容器は、ごみが出る場所のすぐ近くに置く
  • 食器洗い機に入る大きさの容器なら、すぐに洗える
  • 開業や改装のときから分ければ、後から習慣を変える手間がいらない
  • 再生利用等実施率は、発生抑制量も分子と分母の両方に入れて計算する

宿で考えられること

  • 厨房にある容器で、生ごみを分ける場所を決める
  • コーヒーかす、仕込みのくず、皿の残りを、それぞれの場所で集める
  • スタッフの会議で手順を説明し、置き場所の意見を聞く
  • 生ごみの重さを週ごとに量り、記録する

事業・予約への接続

生ごみを堆肥にまわす取り組みは、食事を大切にする宿の姿勢として伝えられる。量が少なくても、続けていることを示すと、客の共感を得やすい。

Sources / 参考情報

  • Devens Eco-Efficiency Center・Center for EcoTechnology(英文) - 事例:ヒルトン・ガーデン・イン・デベンス・コモンズのグレート・アメリカン・グリル(PDF)
    裏付け: 席数50・1日60〜80食・スタッフ10〜15人、2011年の終わりに置かれた・2012年に開業、最初から分けた、早い時期の会議・置き場所の意見、ホテルパン・1ガロンの容器・5ガロンのバケツ、既存の容器で購入不要・食器洗い機に入る、鍵の棒付きの堆肥容器・底に段ボール、週1回の回収・ごみは呼んだときだけで間隔は1か月近く、CETの掲示と研修、堆肥の担当者、2か月で週平均800ポンド、ごみの処理のサービスの必要が約50%減
  • RecyclingWorks in Massachusetts(英文) - レノックス・ホテルの事例(PDF)(2019年)
    裏付け: 2014年5月から3つのレストランの生ごみを農場で堆肥に、4年で年91トンから156トン、週6,000ポンド
  • RecyclingWorks in Massachusetts(英文) - 宿泊業向けのごみ削減の手引き
    裏付け: 週半トン以上の事業者は州の生ごみの廃棄禁止の対象、現在の線は2022年11月1日から、半トンは64ガロンのカート約4台分、ヒルトン・ガーデン・インは開業時から堆肥化とリサイクル・週800ポンド
  • RecyclingWorks in Massachusetts(英文) - レストランの堆肥化の事例:ジョニーズ・ランチョネット(PDF)(2022年)
    裏付け: 2022年11月1日から、州の生ごみの廃棄禁止の線が週1トンから週半トンに下がる
  • 農林水産省 - 食品廃棄物等の再生利用等の目標について
    裏付け: 令和7年3月14日公表の基本方針、2029年度までに外食産業50%、業種全体の目標で個別の義務ではない、再生利用等実施率の計算式、基準実施率の増加ポイント(20%以上50%未満は2%、50%以上80%未満は1%、80%以上は維持向上)
  • 農林水産省 - 食品廃棄物等の発生抑制の取組
    裏付け: 発生抑制の目標値の表で、旅館業は外食産業の区分に入る

関連する記事