GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 5分 / 2741文字 資金の組み方を読む型 #360

ホテルを買うときの借入れに、太陽光も入れた:カリフォルニア州の「ハンプトン・イン&スイーツ・ベーカーズフィールド」が、102キロワットの資金を組んだ方法

太陽光発電の事例では、発電量や電気代の節約、元が取れるまでの年数に目が行きやすい。けれども、宿の経営者にとって最初の壁になるのは、工事の費用をどう用意するかだ。

米国エネルギー省の「ベター・ビルディングズ」の事例集は、カリフォルニア州ベーカーズフィールドの「ハンプトン・イン&スイーツ・ベーカーズフィールド・ノース・エアポート」が、駐車場の屋根に102キロワットの太陽光発電をつくった例を紹介している。この記事では、発電の数字ではなく、そのお金の組み方を中心に読む。

事例の基本の数字

ホテルは94室。ロサンゼルスから車で北へ約2時間の、夏の昼は気温が華氏100度(約38℃)を超えることの多い土地にある。いちばん大きな電気代は冷暖房だ。運営会社の「ブラックストーン・ホスピタリティ・グループ」は、電気代を抑えるために太陽光を検討した。

事例の表には、次の数字が並んでいる。

  • 完成:2014年7月
  • 大きさ:102キロワット
  • 年の発電量:15万7,080キロワット時
  • 電気をまかなう割合:37〜44%
  • 月の電気代の節約:8,800ドル
  • 元が取れるまでの見込み:7.75年
  • 資金:SBA 504 グリーン・エネルギー・ローン

最後の行の「SBA」は、米国の中小企業庁のことだ。

買うときの借入れに、最初から入れた

事例によると、ホテルは2013年11月に買い取られた。ブラックストーンは、太陽光の工事と省エネの工事の費用を、ホテルを買うときの最初の借入れの中に入れた。

中身は次のとおりだ。

  • 買い取りの総額の35%:中小企業庁の「グリーン504」の融資
  • 残り:ふつうのつなぎ融資

つまり、ホテルを買ってから改めて太陽光のお金を探したのではなく、買う段階で、太陽光と省エネを含めた計画として資金を組んだ。買ってから約8か月後の2014年7月に、太陽光が完成している。

貸し手が、この融資を知らなかった

事例は、この方法の難しさも書いている。すべての銀行が、中小企業庁のグリーン504の融資に詳しいわけではない。ブラックストーンは、貸し手の銀行と、制度の選び方や細かな点について話し合いを重ね、銀行が参加することに同意した。

工事の会社の「RECソーラー」も、銀行と相談した。その結果、この融資は工事のための融資として扱われ、工事の間、決まった時期ごとにRECソーラーに支払う形になった。工事の進み方に合わせてお金が出ていく仕組みだ。

504の融資とは

中小企業庁のページによると、504の融資は、事業の成長と雇用を生む大きな固定資産のための、長期の固定金利の融資だ。中小企業庁が認めた地域の非営利の「認定開発会社」が、主たる貸し手の銀行と組んで融資する。

融資の上限について、中小企業庁のページは見出しで「最大500万ドル」と書き、本文で「最大550万ドル」と書いている。この違いは、連邦の規則を見ると分かる。

  • 規則の120.931条:ふつうは借り手ごとに500万ドルまで。ただし、借り手のエネルギーの使用を10%以上減らす事業や、建物などのための再生可能エネルギーの設備の事業は、1つの事業ごとに550万ドルまで
  • 規則の120.862条:504の融資が満たすべき公共の政策の目標として、エネルギーの使用を10%以上減らすこと、持続可能な設計、再生可能エネルギーの設備の導入などを挙げている

120.931条の今の文は、2011年10月の官報にもとづく。ホテルが買われた2013年には、この上限の仕組みがすでにあったことになる。ただし、ホテルの融資の額は事例に書かれていない。

屋根ではなく駐車場にした理由

資金の組み方と並んで、事例は、場所の選び方の理由も書いている。屋根に載せると、工事の間、最上階の客室を閉める必要があり、その間の売り上げを失う。駐車場の屋根なら、その問題を避けられ、客の車に日陰もできる。

ホテルはヒルトンのブランドのフランチャイズなので、見た目を変えるにはヒルトンの承認が要った。地域の開発計画の区域にあるため、市の審査も受けた。どちらも順調に進んだという。

工事は駐車場の約75%を使ったが、ホテルは営業を続けた。工事の会社は工事の場所を囲い、安全の計画をつくった。ホテルは、ロビーに計画を説明する展示を置いた。駐車場には電気自動車の充電器も2基置かれ、将来は8基まで増やせる。

日本の宿に置き換えると

日本では、日本政策金融公庫の「環境・エネルギー対策資金」に、非化石エネルギーの設備を入れるための枠がある。公庫のページ(小規模事業者・個人事業主向け)によると、次のような内容だ。

  • 使い道:非化石エネルギーを導入する施設などを取得するための設備資金
  • 融資の限度額:7,200万円
  • 返済の期間:20年以内(そのうち返済を据え置く期間は2年以内)
  • 利率:太陽光は、発電の出力10キロワット以上の自家消費型なら「特別利率A」、それ以外の太陽光は「基準利率」

同じ資金には、温室効果ガスの排出量を算定して取り組む人のための「GX関連」の枠もある。利率は金融情勢で変わり、審査の結果、希望に沿えないこともあると、公庫は書いている。

太陽光の判断では、元が取れるまでの年数と並んで、返済の期間が大切になる。InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿が40キロワットの自家消費型の太陽光をつくるとする。

  • 費用:1キロワット28万円として1,120万円。全額を借りる
  • 発電:1キロワットあたり年1,100キロワット時で、年4万4,000キロワット時
  • 宿で使う割合を75%とすると3万3,000キロワット時。電気を1キロワット時30円とすると、年99万円の節約
  • 20年で返すと、元本の返済は年56万円。節約との差は年43万円の余り
  • 10年で返すと、元本の返済は年112万円。節約との差は年13万円の不足

この計算には、利息、保守の費用、パネルの発電の衰えは入れていない。それでも、同じ設備でも、返済の期間によって毎年の手元のお金がプラスにもマイナスにもなることが分かる。

もう一つ、ベーカーズフィールドの例から学べるのは、時期だ。宿を買うとき、建て替えるとき、大きく改装するときは、借入れの計画をつくり直す時期でもある。そこに太陽光や省エネを最初から入れておけば、別々に資金を探す手間が減る。

発電の数字の前に、お金の流れ

ハンプトン・イン&スイーツの例は、太陽光の事業が、発電の技術だけでなく、資金の組み方で決まることを示している。制度を知らない貸し手と話し合い、工事の進み方に合わせた支払いの形をつくった。数字の表の最後の1行に、この事例のもう一つの中身がある。

持ち帰れる知識

  • 太陽光の資金は、宿を買うときや改装するときの借入れに最初から入れる方法がある
  • 貸し手が制度を知らないこともあるので、早めに相談する
  • 工事の進み方に合わせて支払う形にすると、資金の流れを工事にそろえられる
  • 同じ設備でも、返済の期間で毎年の手元のお金は大きく変わる

宿で考えられること

  • 改装や設備の更新の予定と、太陽光の検討の時期を合わせる
  • 取引のある金融機関に、環境・エネルギー向けの融資の扱いを尋ねる
  • 節約の見込みと、返済の額を、年ごとの表に並べる
  • 工事の間の駐車場や客室への影響と、客への案内を計画する

事業・予約への接続

駐車場の太陽光は、客の目に入る取り組みだ。工事の間も、ロビーの展示などで計画を説明すれば、客の理解を得やすい。完成後は、日陰の駐車場や充電器を、宿の便利さとして伝えられる。

Sources / 参考情報

  • U.S. Department of Energy Better Buildings(英文) - 一石二鳥:駐車場の屋根に太陽光をつくる(PDF)
    裏付け: ロサンゼルスの北約2時間・夏は華氏100度超・最大の電気代は冷暖房、ブラックストーン・ホスピタリティ・グループ、屋根なら最上階を閉める必要、ヒルトンの承認と地域の開発計画の審査、2014年7月・102キロワット・15万7,080キロワット時・37〜44%・月8,800ドル・7.75年・SBA 504グリーン・エネルギー・ローン、2013年11月の買い取り時に太陽光と省エネの費用を最初の借入れに含めた、買い取り総額の35%をグリーン504・残りはつなぎ融資、駐車場の約75%・営業を継続・安全の計画、94室、充電器2基・将来8基、ロビーの展示、貸し手が制度に不慣れ・話し合いで参加に同意、工事の融資として扱い工事中に定期的に支払い
  • U.S. Small Business Administration(英文) - 504の融資
    裏付け: 大きな固定資産のための長期・固定金利の融資、認定開発会社が主たる貸し手と組んで融資、見出しは最大500万ドル・本文は最大550万ドル
  • eCFR(英文) - 連邦規則集 第13編 120.931条 504の融資の上限
    裏付け: 借り手ごとに500万ドル、エネルギーの使用を10%以上減らす事業・再生可能エネルギーの設備の事業などは1事業ごとに550万ドル、2011年10月の官報
  • eCFR(英文) - 連邦規則集 第13編 120.862条 その他の経済開発の目標
    裏付け: 公共の政策の目標として、エネルギーの使用を10%以上減らすこと、持続可能な設計、再生可能エネルギーの設備の導入
  • 日本政策金融公庫 - 環境・エネルギー対策資金(国民生活事業)
    裏付け: 非化石エネルギー関連は設備資金・限度額7,200万円・返済20年以内(据置2年以内)、太陽光は出力10キロワット以上の自家消費型が特別利率A・それ以外の太陽光は基準利率、GX関連の枠、利率は金融情勢で変動・審査の結果希望に沿えない場合あり

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