GOAL 12 · TARGET 12.5 水・衛生・循環 6分 / 3597文字 順番から読む型 #366

生ごみを水にする機械は、いちばん最後の一段:チャールストンの「スペクテイター・ホテル」と、同じ記事に並んだ3つのホテルを、順番から読む

ホテルの業界紙「ホテル・ダイブ」は、2023年9月8日に「ホテルが食品のごみに取り組む3つの独自の方法」という記事を載せた。最初に登場するのは、米サウスカロライナ州チャールストンの「スペクテイター・ホテル」の、生ごみを分解して水にする機械だ。同じ記事には、サンディエゴ、ワシントンD.C.のホテルも並んでいる。

機械の話は目を引く。ただ、記事の後半と、記事が引いている業界団体の手引きを合わせて読むと、機械は「減らす」「寄付する」の後に来る、最後の一段として描かれている。この記事では、4つのホテルの取り組みを、その順番に並べ直して読む。

スペクテイター・ホテルの機械

記事によると、スペクテイター・ホテルは、食品のごみを埋め立てに回さない取り組みを2018年に始め、そのときから「リクープ・テクノロジーズ」という会社の「ダイジェスター」という機械を使っている。

  • スタッフは、食べ残しを、リサイクルの物や埋め立てのごみと分けておく
  • 日中、たまった生ごみを機械に「食べさせる」
  • 機械の中の生きた微生物が分解し、水にする。その水は下水に流れる
  • 使い始めてから、6万1,000ポンド(約27.7トン)以上を埋め立てから外し、5,000ガロン(約1万9,000リットル)以上の水をつくった

総支配人のカルロ・カロッチャ氏は「堆肥づくりに似ているが、土ではなく水をつくる」と話し、ホテルにとっては低コストの投資だとも述べている。記事は、ダイジェスターは大きさによって処理できる量が変わり、家庭用から工業用まであると補っている。機械の仕組みと、水の行き先については、#261で詳しく取り上げた。

業界団体の手引きが示す順番

ホテル・ダイブの記事が引いているのは、世界自然保護基金(WWF)と米国ホテル・ロッジング協会(AHLA)が、ロックフェラー財団の支援を受けて2017年につくった手引き「ホテルの食品のごみと闘う」だ。手引きは、ホテルに次の3つを求めている。

  • 食品のごみが出ないように防ぐ
  • 防げなかったが、まだ安全に食べられる物は寄付する
  • 残りを、埋め立てから外す

手引きは、生ごみを埋め立てに出せなくなった都市の例を挙げ、ホテルが急いで堆肥の業者を探したり、ダイジェスターや乾燥機を借りたりしたことを書いている。そのうえで、まず防いで生ごみそのものを減らし、次に寄付の相手をつくり、最後に外す方法を調べること、と順番をはっきり示している。

手引きは、米国の10のホテルで4か月かけて行った実証の結果も載せている。いくつかの方法を取り入れただけで、食品のごみは17%から38%減ったという。

ワシントン・ヒルトン:減らす、寄付する、残りを機械へ

ホテル・ダイブの記事で、この順番をいちばんはっきり見せているのが、ワシントンD.C.の「ワシントン・ヒルトン」だ。記事によると、大きな催しを数多く開くこのホテルは、食品のごみを半分に減らした。

1. ごみが少ない食材を中心にした献立をつくった
2. 余った料理や食事を寄付している。ヒルトンの環境データの報告ソフト「ライトステイ」によると、用意した料理の約7%にあたる
3. それでも残った物は、毎週ダイジェスターで処理している

ここで、数字の出どころを分けておきたい。ホテル・ダイブは、献立の工夫で食品のごみを「最大50%」減らせる、とWWFとAHLAの共同研究を引いている。手引きを読むと、この50%は、ある企業の社員食堂の厨房で行った実証の結果で、それを受けてワシントン・ヒルトンが似た献立を取り入れた、と書かれている。ホテルでの50%と、社員食堂での50%は、出どころが違う。手引きは、低いごみの献立が、ごみと費用を減らすだけでなく、営業の担当者にとっても売りになったと伝えている。

シェラトン・サンディエゴ:寄付できない物を、乾かして堆肥へ

サンディエゴの「シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナ」は、2021年に、出しているごみを調べて、食品が大きな部分を占めると気づいた。ホテル・ダイブによると、そこで堆肥の取り組みを見直した。

  • 廃棄物の会社「ウェイスト・マネジメント」の「CORe」という仕組みと組んだ。食品のごみを、エネルギーをつくる「有機スラリー」に変える
  • 料理長のマルコス・セビル氏は「地元のフードバンクに寄付できないときに、生ごみを別のことに使う」と話し、2023年に食品のごみを20%減らすことを目標にしていた
  • 220ポンドの乾燥機を使い始めた。宴会の調理で出た生ごみから水分を抜き、体積を80%以上減らしてから、堆肥の施設に運び、マルチ(土を覆う材料)にする

ここでも、寄付が先で、機械はその後に来る。

フェアモント・ワシントンD.C.:ごみ箱を分けたら、見えたもの

同じワシントンD.C.の「フェアモント・ワシントンD.C.ジョージタウン」は、ビュッフェを片付ける場所で、生ごみを他のごみと分けた。ホテル・ダイブによると、分けたごみ箱は、そもそも食品のごみを出さないという考えに目を向けさせた。1か月の試行のあと、ホテルは堆肥の回収業者を見つけ、生ごみを分ける仕組みを恒常的なものにした。

WWFの手引きは、このホテルの事例を2つ載せている。

  • 分ける前の仕組みは何もなかったが、1か月のうちに、量を扱える地元の堆肥の業者を見つけて契約し、分別を始めた。生ごみを外したことで、ごみの圧縮機の回収が月に4回減った
  • ビュッフェを片付ける場所で生ごみを分けると、普通のごみ箱がほとんど要らなくなった。そこで普通のごみ箱を撤去したら、宴会からどれだけの食品のごみが出ているかが、スタッフと幹部の目にはっきり見えるようになった。その結果、仕込みをその場で調整する余地や、催しのたびに5%多めに用意する決まりを見直すことにつながった

分けて外すための工夫が、作りすぎを防ぐことに戻ってきた。順番は一方通行ではない。

日本の宿に置き換えると

日本にも、同じ順番がある。食品リサイクル法にもとづき、2025年3月14日に定められた「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」は、手法の優先順位を次のように決めている。

1. 発生の抑制:最優先。食品ロスの削減を含む
2. 再生利用:肥料や飼料などの原材料にする
3. 熱回収:再生利用が難しく、一定以上の効率でエネルギーを得られる場合に限る
4. 減量:再生利用も熱回収もできないものについて、事業者が自ら脱水、乾燥、発酵、炭化をして重さを減らす

基本方針は、外食産業のように、あちこちの店から少しずつ出る生ごみは、再生利用や減量をするには技術、費用、エネルギーの面で制約が多いので、発生の抑制がとくに有効で重要だとしている。減量をするときは、装置の排水を適正に処理し、においが漏れないようにすることも求めている。さらに、食品関連事業者は、フードバンクなどへの寄付の量を公表するよう努める、としている。

日本の分け方では、たとえばシェラトン・サンディエゴの乾燥機のように水分を抜く機械は、「減量」の手法として名前が挙がっている。どの機械がどの区分に当たるかは、仕組みと、処理したあとの行き先によって変わるので、導入の前に確かめたい。

規模の目安もある。農林水産省の2026年6月30日の発表によると、2024年度の事業系の食品ロスは237万トンで、そのうち外食産業は70万トンだった。

順番を守ると機械の選び方がどう変わるかを、InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で見てみる。

  • 20室の宿の厨房で、生ごみが1日10キログラム出ている
  • 機械だけの場合:10キログラムを処理できる大きさの機械が要る。重さが7割減るとすると、残りは1日3キログラム、年約1,095キログラム
  • 順番を守る場合:朝食の作る量を見直して1日3キログラム減らし、未開封の食材0.5キログラムを地域の受け皿に回す。機械に入るのは1日6.5キログラムで、機械は約3分の2の大きさで足りる。7割減ると残りは1日1.95キログラム、年約712キログラム
  • 減らした3キログラムは、もともと仕入れて調理した食材だ。食材が1キログラム600円なら、年約65万7,000円分を買わずに済む

機械の大きさは、減らしたあとの量で決めるほうが、費用も置き場所も小さくて済む。

機械は、順番の最後に置く

スペクテイター・ホテルの機械は、6万1,000ポンドという分かりやすい数字を残した。同じ記事に並んだホテルを見ると、機械に入れる前に、献立を変え、寄付し、ごみ箱を分けて目に見えるようにする段階がある。生ごみを水や堆肥にする機械は、その順番の最後の一段として選ぶと、いちばん力を発揮する。

持ち帰れる知識

  • 業界団体の手引きの順番は、防ぐ、寄付する、外す
  • ワシントン・ヒルトンは、献立の工夫と寄付のあとに、残りを機械で処理している
  • 「最大50%」は社員食堂の厨房での実証の結果で、ホテルでの実績とは出どころが違う
  • 日本の基本方針の優先順位は、発生の抑制、再生利用、熱回収、減量の順

宿で考えられること

  • 機械を選ぶ前に、何がどれだけ捨てられているかを分けて量る
  • 作る量の見直しと、未開封の食材の行き先を先に決める
  • 機械の大きさは、減らしたあとの量で見積もる
  • ごみ箱を分けて、厨房の誰からも食品のごみが見えるようにする

事業・予約への接続

ワシントン・ヒルトンでは、ごみの少ない献立が営業の売りにもなった。宴会や会議を受ける宿なら、献立の工夫と寄付の仕組みを、提案書の中で具体的に示せる。

Sources / 参考情報

  • Hotel Dive(英文) - ホテルが食品のごみに取り組む3つの独自の方法(2023年9月8日)
    裏付け: スペクテイター・ホテルのリクープ・テクノロジーズのダイジェスター(2018年から)、微生物で分解し水は下水へ、6万1,000ポンド以上・5,000ガロン以上、総支配人の発言、ダイジェスターは大きさで処理量が変わる、シェラトン・サンディエゴの2021年の見直し・WMのCORe・寄付できないときに転用・2023年に20%減の目標・220ポンドの乾燥機・体積80%以上減・堆肥の施設でマルチに、WWFとAHLAの共同研究の最大50%、ワシントン・ヒルトンの食品のごみ半減・献立・用意した料理の約7%を寄付(ライトステイ)・残りは毎週ダイジェスター、フェアモント・ワシントンD.C.のビュッフェの片付け場所での分別・1か月の試行のあと堆肥の業者と恒常的な仕組み
  • World Wildlife Fund(英文) - ホテルの食品のごみと闘う(手引き、2017年)(PDF)
    裏付け: WWFとAHLAがロックフェラー財団の支援でつくった、防ぐ・寄付する・外す、まず防ぎ次に寄付の相手をつくり最後に外す方法を調べる、10のホテルで4か月の実証・17%から38%減、50%は企業の社員食堂の厨房での実証でワシントン・ヒルトンが似た献立を採用・営業の売りに、フェアモントの1か月での堆肥の業者との契約・圧縮機の回収が月4回減、普通のごみ箱の撤去・宴会の食品のごみが見えるように・5%の上乗せの見直し
  • World Wildlife Fund(英文) - ホテル・キッチン:ホテルの食品のごみと闘う(紹介ページ)
    裏付け: WWFとAHLAが、ロックフェラー財団の支援で、防ぐ・寄付する・外すをホテル業界に求める手引きをつくった
  • 農林水産省 - 食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針(令和7年3月14日策定)(PDF)
    裏付け: 優先順位は発生の抑制・再生利用・熱回収・減量、熱回収は一定以上の効率でエネルギーを得られる場合に限る、減量は脱水・乾燥・発酵・炭化、減量装置の排水の適正処理と臭気の防止、外食産業など散在する事業所の少量の排出は発生の抑制が有効、フードバンク等への寄附量の情報提供に努める
  • 農林水産省 - 事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表(2026年6月30日)
    裏付け: 2024年度の事業系食品ロス量は237万トン、うち外食産業は70万トン

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