「いちばん多く捨てる物」と「いちばん高くつく物」は、別だった:フォーシーズンズ・ホテル・ニューオーリンズの、2つの順位
食品のごみを減らそうとするとき、まず何から手をつけるか。量がいちばん多い物か、お金がいちばんかかっている物か。米国ルイジアナ州の「フォーシーズンズ・ホテル・ニューオーリンズ」の厨房は、毎日の記録から、この2つの順位が別々であることを知り、それぞれに違う手を打った。
この記事は、捨てた食品を記録する仕組みを売る会社「ウィノウ」が、2024年8月20日に公開したニュースと、同社の事例資料をもとにしている。どちらも、機械を売る会社自身の販売資料だ。
何を入れたか
ウィノウによると、ホテルのエグゼクティブ・スチュワード、アーヴィン氏が、2023年7月に同社の仕組みを入れた。
- 捨てる食品を、はかりで量り、カメラで写す
- AIが何を捨てたかを見分け、毎日、種類と量をまとめた報告を厨房のチームに送る
- 報告には、「いちばんよく捨てられている物」と「捨てたときにいちばんお金がかかっている物」の両方が載る
アーヴィン氏は「在庫をうまく管理し、意識して作ることが、ごみを減らす鍵だ」と話している。
2つの順位
事例資料によると、記録から分かったのは次のことだった。
- いちばんよく捨てられていた物:米と豆
- 捨てられる物の中でいちばん高かった物:プルドポーク(豚肉をじっくり煮てほぐした料理)と、タコス用の牛ひき肉
米と豆は安いが、量が多い。豚肉と牛ひき肉は量が少なくても、1回捨てるごとの損が大きい。重さだけを見ていれば米と豆に目が行き、金額だけを見ていれば肉に目が行く。この厨房の記録は、両方を同時に見せた。
それぞれに違う手を打つ
事例資料は、2つの順位に、別々の手を打ったと書いている。
- 米と豆は、毎日作る量を調整した。これで捨てる量が大きく減った
- プルドポークと牛ひき肉は、高い食材のむだを減らすことに集中した。これが厨房の費用によい影響を与えた
量の多い物には、作る量という「蛇口」を締める。高い物には、一つひとつを捨てない工夫をする。同じ「食品ロスを減らす」でも、何を見て決めたかで、打つ手が変わる。
量と金額のほかに打った手
ウィノウのニュースと事例資料は、ほかの取り組みも挙げている。
- 残った物を、新しい料理に作り替える
- 在庫の管理を改め、注文しすぎを減らし、材料が傷む前に使い切る
- 従業員食堂の献立を立てるときにも、記録を使う
- できるだけ地元の農家や仕入れ先から食材を買う。輸送にともなう二酸化炭素を減らし、地域の経済を支えるためだという
結果の数字と、その意味
ウィノウが示す結果は、次の5つだ。
- 捨てる量が48%減った
- 年に11トンの食品のごみを減らした
- 二酸化炭素に換算して、年に46トン減らした
- 年に2万7,000食分を減らした
- 捨てた食品の価値が、年換算で6万5,000ドル減った
ここで読み方を一つ添えておく。6万5,000ドルを11トンで割ると、捨てずに済んだ食品1トンあたり約5,900ドル、1キログラムあたり約5.9ドルになる。ただし、「トン」がどの単位かは書かれておらず、金額の計算の方法も示されていないので、これは目安にすぎない。この値は、米と豆のように安くて量の多い物と、肉のように高い物の両方を混ぜた平均だ。どちらを多く減らしたかで、1キログラムあたりの値は変わる。
なお、フォーシーズンズのウェブサイトの環境のページは、すべてのホテルとリゾートで食品のごみを減らす取り組みが動いており、技術を使って食品のごみを見つけ、量り、追っていると書いている。食品と飲料の部門のスタッフ全員に研修を求め、食べられる余った食品を、できる場合は寄付していることも書かれている。
日本の宿に置き換えると
日本の数字を見ておく。環境省の2026年6月30日の発表によると、2024年度の日本の食品ロスは約461万トンで、家庭から約224万トン、事業者から約237万トンだった。同じ日の農林水産省の発表によると、事業者の237万トンのうち、外食産業は70万トンだった。
国は、2025年に見直した基本方針で、事業者の食品ロスを2000年度と比べて2030年度までに60%減らす目標を立てている。農林水産省によると、2024年度の時点で57%減っている。
消費者庁は、同じ日に、食品ロスによる損失の推計も公表した。2024年度の食品ロスによる経済損失は3.8兆円、国民1人あたり年3万1,097円。温室効果ガスの排出は978万トン、1人あたり年79キログラムだった。消費者庁は、経済損失は事業者と家庭にまたがるものを合計した数字で、減らしたときの得がすべて家計に戻るわけではない、と注意書きを添えている。
量と金額の2つの順位で、手の打ち方がどう変わるかを、InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で見てみる。
- 30室の宿の朝食のビュッフェで、捨てる物を1か月記録した
- 白いご飯:1日2キログラム捨てている。1キログラムあたり400円とすると、1日800円、年29万2,000円。重さでは1位
- 焼き魚:1日0.4キログラム捨てている。1キログラムあたり3,000円とすると、1日1,200円、年43万8,000円。金額では1位
- 重さは、ご飯が魚の5倍。金額は、魚がご飯の1.5倍
- ご飯は、炊く回数を分けて、客の入りに合わせて炊く。捨てる量が半分になれば、年に365キログラム、14万6,000円減る
- 焼き魚は、焼く数を、その日の朝食の予約の数に合わせる。捨てる量が半分になれば、年に73キログラム、21万9,000円減る
重さで見れば、ご飯の改善が5倍の効果がある。金額で見れば、魚の改善が1.5倍の効果がある。どちらか一方だけを見ていたら、もう一方を見落とす。
残った料理を別の料理に作り替えるときは、温度と時間の管理など、衛生の決まりの範囲で行うことが前提になる。
2つの物差しを並べる
ニューオーリンズの厨房が持ち帰らせてくれるのは、48%という数字よりも、量と金額の2つの順位を並べて見るという習慣だ。量の多い物は作る量で減らし、高い物は一つずつ捨てない工夫で減らす。物差しを2つ持つと、打つ手が2つになる。
持ち帰れる知識
- 「いちばん多く捨てる物」と「いちばん高くつく物」は、同じとは限らない
- 量の多い物は作る量で、高い物は一つずつのむだを減らす工夫で減らす
- 1キログラムあたりの金額は、何を多く減らしたかで変わる平均値
- 日本の2024年度の食品ロスは約461万トン、外食産業は70万トン
宿で考えられること
- 捨てる物を、重さと金額の両方で記録する
- 重さの1位と金額の1位を、別々に書き出す
- 量の多い物は、作る回数や量を客の入りに合わせて変える
- 高い物は、仕込みの数を予約に合わせ、作り替えは衛生の決まりの範囲で行う
事業・予約への接続
朝食の予約の数と、捨てる物の記録を結びつければ、仕込みの量を前日に決めやすくなる。食材のむだが減れば、地元の食材のように少し高い物を選ぶ余地も生まれる。
Sources / 参考情報
- Winnow(英文) - フォーシーズンズ・ニューオーリンズ、食品のごみを48%減らし、地域の持続可能性を後押し(2024年8月20日)
裏付け: 2023年7月にエグゼクティブ・スチュワードのアーヴィン氏が導入、在庫管理と意識した生産が鍵という発言、はかりとカメラ・毎日の報告、いちばんよく捨てられる物と金額の大きい物、米と豆・プルドポークとタコス用の牛ひき肉、作る量の調整と在庫管理、48%減・年11トン・46トンCO2e・2万7,000食・6万5,000ドル(年換算)、残り物を新しい料理に、注文しすぎを減らす、地元の農家や仕入れ先から購入 - Winnow(英文) - フォーシーズンズ・ニューオーリンズの事例資料(PDF)
裏付け: 米と豆がいちばん頻繁に捨てられ、プルドポークとタコス用の牛ひき肉がいちばん高い物、米と豆の毎日の生産量を調整して大きく減少、高い物のむだの削減に集中し厨房の費用に好影響、在庫管理で注文しすぎを防ぐ、残り物の作り替え、従業員食堂の献立にも活用、地元からの調達 - Four Seasons(英文) - 環境への取り組み
裏付け: すべてのホテルとリゾートで食品のごみの削減の取り組み、技術で食品のごみを見つけ・量り・追う、食品と飲料の部門のスタッフ全員に研修、食べられる余った食品をできる場合は寄付 - 環境省 - 我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和6年度)の公表について(2026年6月30日)
裏付け: 2024年度の食品ロスは約461万トン、家庭系約224万トン・事業系約237万トン、基本的な方針で事業系は2000年度比で2030年度までに60%削減の目標 - 農林水産省 - 事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表(2026年6月30日)
裏付け: 事業系237万トンのうち外食産業70万トン、2000年度比で57%削減、基本方針の見直しで60%削減の目標を新たに設定 - 消費者庁 - 食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果(2026年6月30日公表、別添2)(PDF)
裏付け: 2024年度の経済損失3.8兆円・国民1人あたり年3万1,097円、温室効果ガス978万トン・1人あたり年79キログラム、経済損失は各部門にまたがるものの合計で利得がすべて家計に戻るわけではない