GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2522文字 数字を並べる型 #372

105万、73万、61万:ベルギーのホテル・ローザのシャワーの水の数字を、時期と出どころで並べる

ベルギーの海辺の町オーステンデにある「ホテル・ローザ」は、客室のシャワーと蛇口の水を集めてきれいにし、トイレを流す水に使い直している。装置は、オランダのハイドラループ(Hydraloop)のH600を4台つないだものだ。装置の能力と「可能な量」の計算は #255 で取り上げた。

この記事では、その後に出た数字を加えて、3つを並べる。装置の会社の「可能な年の節水量」105万1,200リットル、水回りの器具の会社の発表の「年に約73万リットル」、そしてホテル自身が開業1年で報告した61万4,340リットル。誰が、いつ、何を数えた数字かを見ていく。

① 装置の会社の数字:105万1,200リットル

ハイドラループの事例のページは、ホテル・ローザを次のように紹介していた(2026年10月の確認では、ページが移動したのか、表示されなくなっている)。

  • オーステンデ、65室
  • H600を4台つないだ仕組み。処理の能力は1日2,880リットル
  • 可能な年の節水量は105万1,200リットル

2,880リットルに365日をかけると、105万1,200リットルになる。装置が毎日、能力いっぱいに水を処理したときの上限だ。

② 器具の会社の発表:年に約73万リットル

水回りの器具の会社ハンスグローエは、2025年にハイドラループとの協力を発表した。その内容を伝えた2025年5月の業界サイトの記事によると、ホテル・ローザについては次のとおりだ。

  • ハイドラループの装置を4台入れてから、建物のすべてのトイレを、使い直した水で流している
  • その水は、ハンスグローエの節水の機能つきのシャワーと洗面の蛇口から集めている
  • 1年あたり、約73万リットルの飲み水を節約している

73万リットルを365日で割ると、1日2,000リットル。装置の能力の約69%にあたる。

③ ホテル自身の報告:61万4,340リットル

ホテルのページの「ローザの1年」(2024年7月)は、次のように書いている。

  • 2024年6月23日に、1歳の誕生日を祝った
  • ハイドラループの技術で、この1年に61万4,340リットルの水を節約した
  • 太陽光のパネルなどの技術で、二酸化炭素2万1,134キログラムの排出を避けた

1年を365日とすると、1日あたり約1,683リットル。装置の能力の約58%だ。

3つの数字の違い

並べると、105万1,200、約73万、61万4,340。いちばん小さい数字は、いちばん大きい数字の約58%にあたる。

  • 105万1,200リットルは、能力から計算した上限
  • 約73万リットルは、器具の会社の発表に書かれた「1年あたり」の目安。いつの、どの期間の数字かは書かれていない
  • 61万4,340リットルは、ホテルが開業からの1年について報告した実績

装置が使い直せる水の量は、集まるシャワーの水の量と、トイレで使う水の量の、少ない方で決まる。客が少ない日には、どちらも減る。節水の機能つきのシャワーは水を減らすが、そのぶん集まる水も減る。装置の能力は、そのまま節水の量にはならない。

なお、客室の数は、ハイドラループのページでは65室、オーステンデの観光のページでは62室と、資料によって違う。65室で割ると、1室1日あたり約26リットル。稼働率は書かれていないので、これは目安にとどまる。

節水は、清掃の選び方にも

同じ「ローザの1年」のページは、連泊の客が清掃を1回とばすごとに5ユーロを地域の団体の「空っぽの弁当箱」という取り組みに回し、1年で2,680ユーロを寄付したとも書いている。5ユーロで割ると、536回分だ。清掃をとばせば、タオルやシーツの洗濯も減る。ホテルは、水の使い直しと、使う量を減らす工夫を、両方続けている。

日本の宿に置き換えると

日本の宿でシャワーの水を使い直すとき、水道の料金だけでなく、下水道の料金も関わる。東京都の区部の場合を見てみる。

東京都下水道条例は、水道の水による汚水は、水道の使用量を汚水の量とみなし、水道以外の水による汚水は、使い方などを考えて下水道局が認定した量を汚水の量とみなす、と定めている。下水道局のページは、次のことも示している。

  • 井戸水、工事の湧き水、ビルの湧き水、雨水を利用した水にも、下水道料金がかかる。公共下水道の使用の届出が要る
  • 雨水をためて公共下水道に流すだけなら、料金の対象ではない。ただし、ためた雨水をトイレの洗浄などに使うと、その排水は汚水になり、料金の対象になる
  • 雨水の不足を水道の水で補う場合、メーターの位置によっては、料金が二重にかかることがある

シャワーの水を館内で使い直す場合は、水道の使用量そのものが減るので、条例の数え方では、汚水の量も同じだけ減ることになる。ただし、下水道局のQ&Aが取り上げているのは雨水で、シャワーの水の使い直しの扱いは見当たらない。設備を入れる前に、下水道局に確かめておきたい。

下水道料金は、1か月の汚水の量が多いほど1立方メートルあたりの料金が上がる。一般の汚水では、200立方メートルを超え500立方メートル以下の分が1立方メートル270円、1,000立方メートルを超える分が345円だ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿が、シャワーの水を1日1,200リットル使い直してトイレに回すとする。

  • 1か月(30日)で36立方メートル、1年で約438立方メートルの水道の水が減る
  • この宿の1か月の水の使用が400立方メートルなら、減る36立方メートルはすべて270円の段。下水道料金は1か月9,720円、年約11万7,000円下がる(消費税は別)
  • 水道の料金も、別に下がる
  • 装置の能力が1日1,800リットルでも、使い直せたのが1,200リットルなら、能力の約67%

数字には、誰がいつ数えたかを添える

105万1,200リットルは上限、約73万リットルは発表の目安、61万4,340リットルは1年の実績。どれも間違いではなく、数えたものが違う。宿が節水を伝えるときは、可能な量と、実際に減った量を分け、誰がいつ数えたかを添えておきたい。

持ち帰れる知識

  • 105万1,200リットルは、能力2,880リットル×365日の上限
  • 器具の会社の発表は「年に約73万リットル」、ホテルの1年の実績は61万4,340リットル(上限の約58%)
  • 使い直せる量は、集まる水と使い道の水の少ない方で決まる
  • 東京都の区部では、雨水をトイレに使うと、その排水に下水道料金がかかる

宿で考えられること

  • 装置の能力と、実際に使い直した量を、別々に記録する
  • トイレで使う水の量を、1日単位で見積もる
  • 設備を入れる前に、下水道料金の扱いを下水道局に確かめる
  • 連泊の清掃を選べる仕組みを、節水の工夫として客に伝える

事業・予約への接続

「1年で何リットル」をホテル自身が報告していることは、客にとって分かりやすい安心材料だ。宿でも、実績の数字を年に一度まとめて伝えると、取り組みの信頼が増す。

Sources / 参考情報

  • Hydraloop(英文) - ホテル・ローザ
    裏付け: (2026年3月ごろの掲載。2026年10月17日の確認では表示されない)オーステンデ、65室、H600を4台つないだ仕組み、処理の能力1日2,880リットル、可能な年の節水量105万1,200リットル
  • Interior Daily(英文) - ハンスグローエが、灰色の水の再利用の仕組みで協力関係に(2025年5月)
    裏付け: ハンスグローエとハイドラループの協力、ホテル・ローザでは4台を入れてからすべてのトイレを使い直した水で流す、水は節水の機能つきのシャワーと洗面の蛇口から集める、1年あたり約73万リットルの飲み水を節約
  • Rosa Hotel(英文) - ローザの1年(2024年7月)
    裏付け: 2024年6月23日に1歳の誕生日、清掃をとばすごとに5ユーロを「空っぽの弁当箱」の取り組みへ・1年で2,680ユーロを寄付、ハイドラループで1年に61万4,340リットルを節約、太陽光のパネルなどで二酸化炭素2万1,134キログラムを回避
  • Meet in Oostende(英文) - ホテル・ローザ
    裏付け: 62室、浜辺の近く
  • 東京都下水道局 - 東京都下水道条例
    裏付け: 第14条の料率表(一般汚水200〜500立方メートルの分は1立方メートル270円、1,000立方メートルを超える分は345円)、第16条(水道水による汚水は水道の使用水量を排出量とみなす、水道水以外の水は管理者が認定した使用水量)
  • 東京都下水道局 - 井戸水・工事湧水・ビル湧水・雨水利用水Q&A
    裏付け: 雨水を貯留して公共下水道へ流すだけなら対象外、トイレの洗浄等に使うとその排水は汚水で料金の対象、補給水のメーターの位置により二重徴収が起きる場合
  • 東京都下水道局 - 井戸水、工事湧水、ビル湧水、雨水利用水を排出される際の届出について
    裏付け: 井戸水・工事湧水・ビル湧水・雨水利用水にも下水道料金がかかる、水道水以外の水を公共下水道へ排出する場合は使用届が必要

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