GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2406文字 残りを読む型 #375

電気を100%にした後に、何が残るか:クロアチアのヴァラマーの排出の表を、燃料から読む

クロアチアでホテルやキャンプ場を営むヴァラマーは、買う電気をすべて再生可能エネルギーにしている。8万本の木の管理と、電気の「100%」が証明書つきで買う電気であることは #309 で、地元の食材77%を掲げるフヴァル島のリゾートは #349 で取り上げた。

この記事では、2025年の年次報告書の排出とエネルギーの表から、「電気を100%再生可能にした後に、何が残っているか」を読む。答えは、燃料と、冷媒だ。

2015年と2025年の排出

ヴァラマーの2025年の年次報告書の排出の表(単位はトン、二酸化炭素に換算)は、次のとおりだ。

  • 燃料を燃やすなどの直接の排出(スコープ1):2015年1万3,507.3、2024年9,435.7、2025年1万37.4
  • 買った電気などの間接の排出(スコープ2、契約にもとづく数え方):2015年1万4,150.6、2024年159.9、2025年154.2
  • 2015年の合計は2万7,657.9

2025年の二つを足すと1万191.6トン。2015年から約63%減った。その中で、直接の排出が約98.5%を占める。電気の排出がほぼなくなったので、残りのほとんどは、燃料などの直接の排出だ。

報告書の本文は、2015年から2025年に、利用された宿泊の単位あたりで67%超、総量で63%減らし、そのうち直接の排出は33%、電気の排出は99%減らしたと書いている。表の数字で直接の排出を割ると、1万37.4÷1万3,507.3で約25.7%減になる。本文と表で、直接の排出の減り方の数字が違う。報告書は、その理由を説明していない。

また、同じ報告書の別のページには、2024年の主な指標として「2015年比70%減」とある。2025年の本文は「67%超」だ。年によって、比べる数字は少しずつ動く。

何が燃えているのか

同じ報告書のエネルギーの表(単位はメガワット時)を見る。

  • 石油系の燃料(暖房用の油、液化石油ガス、車の燃料):2024年1万5,460、2025年1万7,944
  • 天然ガス:2024年1万3,777、2025年1万5,114
  • 化石のエネルギーの合計:2024年2万9,519(全体の25.4%)、2025年3万3,324(26.7%)
  • 再生可能エネルギーの電気などの購入:2024年8万4,305、2025年8万8,013
  • 屋根の太陽光などで自分でつくった電気:2024年2,364、2025年3,548
  • エネルギー全体:2024年11万6,188、2025年12万4,885

エネルギーの約4分の1は、まだ燃料だ。2025年は、石油系も天然ガスも前の年より増え、直接の排出は6%増えた。報告書の本文は、増えた理由を天然ガスの使用の増加だと説明している。

燃料だけではない:冷媒

報告書は、直接の排出には、建物の暖房や車の燃料に加えて、冷媒のガスの漏れも含むと書いている。2024年からは、補充した冷媒の量をすべて記録するようになり、排出が大きく増えた。そのため、2015年の冷媒の量も2024年の補充の量をもとに見積もり直し、2015年の排出を更新したという。

一方、2026年までの目標(利用された客室1室あたり2015年比75%減、2.4キログラム)について、報告書は、対象のガスを二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素と書いている。目標の約99.7%は直接の排出だという。

次の手は、熱ポンプと電動の船

報告書によると、ヴァラマーは2025年に、気候の対策に430万ユーロを投じた。これまでの手として、化石の燃料の設備を熱ポンプに替える、電気自動車を入れる、環境に配慮した冷媒のエアコンや冷蔵の設備に替える、などを挙げている。

2026年の計画は130万ユーロで、熱ポンプへの切り替え、電動の船、プールの設備(暖房とプールのカバー)、エアコンの更新などに使う。そのうち29万8,000ユーロを、脱炭素の取り組みの続きに充てる。2030年までの排出の目標は、2027〜2030年の新しい戦略の中で、欧州の持続可能性の報告の基準に合わせて決めるという。

なお、2022年7月の発表は、2025年までに直接・間接の排出で「カーボンニュートラル」になると書いていた。今の目標は、1室あたりの排出の削減の率で書かれている。

日本の宿に置き換えると

日本では、環境省の「算定方法・排出係数一覧」が、燃料ごとの係数を示している。

  • 灯油:1キロリットルあたり2.50トン
  • A重油:1キロリットルあたり2.75トン
  • 液化石油ガス(LPG):1トンあたり2.99トン
  • 液化天然ガス(LNG):1トンあたり2.79トン

電気は、2025年度の排出量の算定に使う全国の平均の係数が、1キロワット時あたり0.000423トンだ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の旅館が、1年に電気を10万キロワット時、灯油を15キロリットル(給湯と暖房)使うとする。

  • 電気:10万×0.000423=約42.3トン
  • 灯油:15×2.50=37.5トン
  • 合計は約79.8トン
  • 電気を、係数ゼロの再生可能エネルギーのメニューに替えると、残るのは灯油の37.5トン(合計の約47%)
  • 熱ポンプの給湯で灯油を半分にすると、灯油の排出は18.75トン減る。代わりに電気が3万キロワット時増えるとすると、再生可能エネルギーのメニューなら増える排出はゼロ、全国の平均の係数なら約12.7トン増える

電気を替えるだけでは、燃料の分は残る。燃料を電気に替えると、電気の選び方で、減る量が変わる。

「100%」の後の表を読む

ヴァラマーの表は、電気の排出をほぼなくした後、燃料と冷媒が残ることを示している。宿の排出を考えるときも、電気と燃料を分けて数え、燃料の分をどう減らすかを、次の手として考えたい。

持ち帰れる知識

  • 電気を再生可能エネルギーにすると、残る排出の大部分は燃料と冷媒になる
  • ヴァラマーのエネルギーの約4分の1(2025年26.7%)は、まだ化石の燃料
  • 直接の排出の減り方は、本文では33%、表の数字では約25.7%
  • 日本の灯油の係数は1キロリットルあたり2.50トン

宿で考えられること

  • 電気、灯油、ガスを、1年の量で別々に集計する
  • 燃料ごとの排出を、環境省の係数で計算する
  • 給湯や暖房を熱ポンプに替えたときの、燃料の減りと電気の増えを並べる
  • エアコンや冷蔵庫の冷媒の補充の記録をつける

事業・予約への接続

「電気は100%再生可能」に加えて、「燃料はこれだけ残っていて、次はここを減らす」と書けると、取り組みの正直さが伝わる。

Sources / 参考情報

  • Valamar Riviera(英文) - 2025年の年次報告書(PDF)
    裏付け: スコープ1は1万3,507.3(2015年)・9,435.7(2024年)・1万37.4トン(2025年)・前年比6%増、契約にもとづくスコープ2は1万4,150.6・159.9・154.2トン、2015年の合計2万7,657.9トン、2015〜2025年に宿泊の単位あたり67%超・総量63%・スコープ1は33%・スコープ2は99%減、2024年の主な指標で70%減、エネルギーの表(石油系1万5,460→1万7,944、天然ガス1万3,777→1万5,114、化石の合計2万9,519〔25.4%〕→3万3,324〔26.7%〕、再生可能エネルギーの購入8万4,305→8万8,013、自家発電2,364→3,548、合計11万6,188→12万4,885メガワット時)、スコープ1は燃料と冷媒の漏れを含む・増加は天然ガスの使用の増加、2024年から補充した冷媒をすべて記録・2015年を見積もり直し、75%目標は2.4キログラム・二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・99.7%がスコープ1、2025年の投資430万ユーロ、2026年の計画130万ユーロ・うち29万8,000ユーロ、2027〜2030年の戦略で目標を設定
  • Valamar ESG(英文) - ヴァラマーの2026年の目標
    裏付け: 12の目標、スコープ1と2の脱炭素(2026年までに利用された客室1室あたり2015年比75%減)、太陽光の電気15%
  • Valamar Riviera(英文) - ヴァラマーは今後3年でカーボンニュートラルな会社に(2022年7月)
    裏付け: 2025年までに直接・間接の排出でカーボンニュートラル
  • 環境省 - 算定方法・排出係数一覧(PDF)
    裏付け: 参考1の燃料の係数、灯油2.50トン/キロリットル、A重油2.75トン/キロリットル、液化石油ガス2.99トン/トン、液化天然ガス2.79トン/トン
  • 環境省・経済産業省 - 電気事業者別排出係数一覧(令和8年提出用、2026年8月3日一部追加・更新)(PDF)
    裏付け: 令和7年度の排出量の算定に用いる全国平均係数0.000423トン/キロワット時

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