GOAL 12 · TARGET 12.3 食品・フードロス・堆肥 4分 / 2677文字 版を読み比べる型 #376

イフタールの大皿から始まった:ドバイの「フェアモント・ザ・パーム」の食品ロス61%減を、3つの資料で読み比べる

ドバイの人工島パーム・ジュメイラにあるリゾート「フェアモント・ザ・パーム」は、2017年4月から、捨てた食べ物を記録する仕組みを使っている。仕組みを提供する英国のウィノウによると、ビュッフェのレストランで食品のごみを61%減らし、年に50万ディルハム、14万ドルを節約したという。

同じ事例は、ウィノウの資料に何度も出てくる。ただ、資料によって数字の書き方が少しずつ違う。この記事では、3つの資料を並べて、どの数字がどこから来ているかを確かめる。

1つ目:2019年のブログ

ウィノウのブログは、2019年7月16日にこの事例を紹介した。書かれていることは次のとおりだ。

  • 2017年4月から仕組みを使い、2年間で、ホテルのビュッフェのレストランの食品のごみを61%減らした
  • 年に推定50万ディルハム、14万ドルの節約にあたる
  • よく捨てられていた料理を入れ替え、料理を盛る器を小さくした
  • 料理長のチームが、毎日レポートを読んだ
  • 年に7万食分と、50万ディルハムの節約になる

最後の金額は、ブログの本文では「AED 500,00」と書かれている。桁の区切りがずれた誤記で、同じ記事の冒頭には「AED 500,000」とある。

料理長のトレバー・マクラウド氏は、レポートのデータで、どこで、なぜ食べ物が捨てられているかが分かり、そこから減らす方法を考えられると話している。今は捨てる量が落ち着いてきたので、できるだけ減らし続けるよう自分たちを励ましている、とも述べている。

2つ目:事例紹介のPDF

ウィノウの事例紹介のPDFは、食品と飲料の部門の責任者、アラン・ゴベイユ氏の言葉を中心にまとめている。ゴベイユ氏は、この仕組みを、厨房にとって「簡単で、効率がよく、迷う必要のない」解決策だと表している。

PDFによると、取り組みのきっかけは、ラマダンのイフタールの豪華なビュッフェだった。イフタールは、ラマダンの月に日没後にとる食事だ。豪華な品ぞろえを見せることと、責任ある料理の出し方のあいだで、釣り合いをとる必要があった。毎日と毎週のレポートで、それまでの方法では得にくかった、捨てる物の細かい情報が得られたという。

数字は、次のように並んでいる。

  • 大きな見出しは「食品のごみを60%削減」
  • ゴベイユ氏の言葉の中では「61%」
  • 年換算の結果として、約50万ディルハム(14万ドル)と、年7万食

PDFは最後に、ホテルがこの仕組みを、食品のごみを減らすだけでなく、客の満足、持続可能性、オーナーへのよい利益にもつながる道具と見ている、と書いている。

3つ目:中東のガイドの案内

ウィノウには、中東のホテルの食品ロスの取り組みをまとめたガイドもある。そのページは、ガイドの中身を「フェアモント・ザ・パームはどのように22万5,000ドルを節約したか」と案内している。

22万5,000ドルは、ブログやPDFの14万ドルとは違う数字だ。ページには、期間も、計算の方法も書かれていない。ガイドは、ダウンロードしないと中身を読めない。だから、この記事では、22万5,000ドルが何年分の、どの範囲の数字なのかは判断しない。数字が違うという事実だけを記しておく。

3つの資料を並べると

並べて分かるのは、次のことだ。

  • 61%と60%:同じPDFの中に両方ある。見出しは丸めた数字、言葉の中は細かい数字と読める
  • 14万ドルと22万5,000ドル:期間や範囲が違う可能性がある。案内のページだけでは確かめられない
  • 範囲:ブログは「ビュッフェのレストランで」と書き、PDFは「業務全体で」記録を始めたと書く。61%がどの範囲の数字かは、ブログの書き方がいちばん具体的だ
  • 期間:61%は、2年間の取り組みの結果だ

数字を引用するときは、どの資料の、どの段落の数字かを添えると、あとで読む人が確かめやすい。

7万食は、何キログラムか

7万食を重さに直す手がかりは、事例の資料には書かれていない。参考になるのは、ヒルトンが2025年5月30日に出した、ラマダンの食品ロスの取り組みの発表だ。そこには、「1食400グラムというウィノウの推定に基づく」という注がある。

もし同じ400グラムで計算されているとすれば、7万食は約28トンになる。これは条件つきの計算で、フェアモント・ザ・パームの資料に28トンと書かれているわけではない。

金額のほうでは、50万ディルハムを7万食で割ると、1食あたり約7.1ディルハム、14万ドルなら1食あたり2ドルになる。

日本の宿に置き換えると

日本で、大勢で食べる場の食べ残しを減らす取り組みに、「3010(さんまるいちまる)運動」がある。環境省の広報誌によると、乾杯からの30分間とお開き前の10分間は自分の席で料理を楽しみ、食べ残しを減らそうと呼びかける運動だ。

  • 消費者庁は、宴会のポイントとして、乾杯後30分はできたての料理を楽しみ、お開き前の10分はもう一度料理を楽しむこと、幹事が「食べきり」を呼びかけることを挙げている
  • 環境省の広報誌は、佐賀市が、運動に参加する飲食店、宴会場、宿泊施設にロゴマーク入りのコースターを配っている例を紹介している

3010運動は、客の側の工夫だ。フェアモント・ザ・パームの2つの手、料理の入れ替えと器の大きさは、出す側の工夫だ。宴会のビュッフェでは、両方を組み合わせられる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考えてみる。

  • 40人の宴会のビュッフェで、10品を合わせて40キログラム用意し、6キログラムが残る
  • 残りの多い2品で、合わせて3キログラム残っていた。1品を別の料理に替え、もう1品は用意を半分にして、この2品の残りを1キログラムにする
  • ほかの8品の残り3キログラムは、大皿をやめて小さな器で足していく出し方にして、2キログラムにする
  • 残りは6キログラムから3キログラムになり、半分になる
  • このような宴会が月に4回、年に48回あれば、年に144キログラム減る
  • 乾杯のあとと、お開きの前に、3010運動の案内を入れる

どの版の数字かを添える

フェアモント・ザ・パームの事例は、イフタールの大皿をどう出すかという問いから始まった。答えは、よく残る料理を替え、器を小さくし、毎日レポートを読むことだった。その結果を伝える数字は、資料によって60%にも61%にもなり、金額にも別の値がある。宿で自分たちの数字を伝えるときも、期間、範囲、出どころを一緒に書いておきたい。

持ち帰れる知識

  • 同じ事例でも、資料によって60%と61%、14万ドルと22万5,000ドルのように数字が違うことがある
  • 61%は、ビュッフェのレストランでの2年間の結果
  • 「何食分」を重さに直す係数は、事例の資料には書かれていないことが多い
  • 3010運動は、宴会の乾杯後30分とお開き前10分に席で料理を楽しむよう呼びかける

宿で考えられること

  • 宴会やビュッフェで、どの料理がよく残るかを記録する
  • 残りの多い料理は、入れ替えるか、用意を減らす
  • 大皿をやめ、小さな器で足していく出し方を試す
  • 宴会の始めと終わりに、3010運動の案内を入れる

事業・予約への接続

宴会の幹事との打ち合わせで、料理の量の決め方と、食べきりの案内の入れ方を提案できる。「残さない宴会」を一緒に設計することは、幹事にとっても安心材料になる。

Sources / 参考情報

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