「69%」は何の重さか:ブダペストの「ハンプトン・バイ・ヒルトン」の朝食の予測を、言葉と単位で読む
ハンガリーの首都ブダペストにある「ハンプトン・バイ・ヒルトン・ブダペスト」は、219室のホテルだ。朝食は宿泊料金に含まれ、多い日には400食を超える。ホテルは2024年12月に、料理をどれだけ作るかを予測する道具を入れ、6か月で朝食の作りすぎを69%減らした。
この事例には、69%、64%、4%、10%と、いくつもの割合が出てくる。この記事では、それぞれの割合が何を数えたものかを、言葉と単位から確かめる。
何を入れたか
入れたのは、英国のウィノウが作った「ウィノウ・フォーサイト」という道具だ。ウィノウとヒルトンが2026年9月29日に出した発表によると、次のような仕組みだ。
- 宿泊の人数と、その厨房で実際に出した量・残った量の記録から、料理ごとに作る量を予測する
- 携帯電話で使える。食事のあと、残った料理を写真に撮ると、重さを推定する。その結果が次の予測に使われる
- 欧州・中東・アフリカのヒルトンの約13軒で使われている
- 1日の作業は10〜15分ほど(計画の確認に約5分、残りの記録に約10分)
ウィノウとヒルトンが一緒に開発した経緯を書いた記事は、シェフの悩みを次のように表している。宿泊の人数は目安になるが、180人が泊まっていると分かっても、朝6時半にスクランブルエッグを何トレイ出せばよいかは分からない。
「作りすぎ」と「残り物の重さ」
69%という数字は、2つの資料で言い方が違う。
- 2025年9月1日のウィノウのブログ(総支配人へのインタビュー):朝食の「作りすぎ」が69%減った
- 2026年9月29日の発表:「残り物の重さ」が6か月で69%減った
どちらも、客に出す前、または出したあとに余った料理を指していると読める。客が皿に残した食べ残しとは別のものだ。発表の言い方からは、69%が重さで数えた割合だと分かる。
クロワッサンの64%と「30〜40個から10個」
ブログによると、品目ごとの減り方は、クロワッサンが64%、チキンハムとパプリカが70%を超えた。
総支配人のアンジェイ・レイマン氏は、クロワッサンについて、毎日30〜40個の余りを従業員に回していたが、今は10個まで減ったと話している。
ここで計算してみると、30個から10個なら約67%減、40個から10個なら75%減になる。64%とは一致しない。
これは矛盾というより、数え方の違いと読める。64%は、6か月の記録から出した重さの割合だ。30〜40個と10個は、総支配人が話した毎日の個数の目安だ。期間も単位も違うので、そのまま比べることはできない。
レイマン氏は、データを見て、クロワッサンが客にそれほど人気ではないと分かったと話している。そこで、増えている外国からの客に合う米の料理や、おかゆを出すようにした。
満足度の「4%」は、4ポイント
発表は、朝食の満足度が「4%」上がったと書いている。ブログと開発の記事には、満足度が83%から87%になったとある。
83%から87%への変化は、差でいえば4ポイントだ。もとの83%に対する比で表すと、約4.8%の上昇になる。発表の「4%」は、ポイントの差を指していると読める。割合が割合を変えるときは、ポイントか比かを書き分けると誤解が減る。
レイマン氏は、満足度が上がった大きな理由を「新鮮さ」だと話している。余りを抱えないので、料理を替える回数が増えたという。
1カバーあたりの費用の10%
もう一つの数字が、1カバー(客1人分の食事)あたりの費用が10%減ったことだ。レイマン氏は、総支配人にとって大きいのは、客室の稼働の見込みから1年分の費用を予測できることだと話している。
69%が重さの割合で、10%が費用の割合だ。捨てる重さが69%減っても、食材の費用全体が69%減るわけではない。費用の中には、客が食べた分も含まれているからだ。
発注と週末の変え方
ブログには、予測を使って変えた運営の手も書かれている。
- 鶏肉のソーセージと生鮮品は、週に1回まとめて発注していたのを、週に2回、少量ずつに変えた。品物が新鮮に保たれ、捨てる量も減るという
- 週末は家族連れや子どもが増える。子どもは甘い物を好むので、金曜日にはワッフルの生地や果物を多めに準備する
同じ219室でも、平日と週末、国内の客と外国からの客で、売れる料理は変わる。予測の道具は、その違いを数字で見せたことになる。
日本の宿に置き換えると
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊(確定値)で、そのうち外国人は1億7,992万人泊だった。割合にすると約27%になる。施設のタイプ別の客室稼働率は、ビジネスホテルが75.3%、シティホテルが74.1%、旅館が38.2%だった。
泊まる客の顔ぶれが変われば、朝食の売れ方も変わる。宿で予測を始めるときは、宿泊の人数だけでなく、誰が泊まっているかも並べて見る必要がある。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考えてみる。
- 40室の宿で、朝食は1日平均50食。和食と洋食のビュッフェ
- これまでは、毎朝ご飯を6キログラム、パンを60個用意していた
- 1か月記録すると、外国からの客が多い日はパンが10個余り、ご飯が足りなかった。国内の団体客が多い日は、ご飯が1.5キログラム余った
- 前の晩に、翌朝の客の内訳を見て、ご飯とパンの量を2段階で決めるようにする
- 余りが、平均でパン5個、ご飯0.5キログラムまで減ったとすると、パンは1日約5個、ご飯は1日約0.5キログラム、捨てる量が減る
- 1か月で、パン約150個、ご飯約15キログラムにあたる
ここでの数字はすべて仮定だ。大切なのは、宿泊の人数と、客の内訳と、余った量を、同じ表に並べることだ。
割合には、分母と単位を添える
ハンプトン・バイ・ヒルトン・ブダペストの事例は、作りすぎを減らしたことと、客の満足を上げたことが、同時に起きたことを示している。その成果を伝える割合は、重さの割合、ポイントの差、費用の割合と、中身がそれぞれ違う。宿で自分たちの成果を伝えるときも、何を、何で数えたかを、一緒に書いておきたい。
持ち帰れる知識
- 作りすぎ・残り物は、客の皿の食べ残しとは別に数える
- 83%から87%は4ポイントの上昇で、比で表すと約4.8%
- 重さの割合と費用の割合は、同じ大きさにはならない
- 2025年の日本の延べ宿泊者のうち、外国人は約27%
宿で考えられること
- 朝食の料理ごとに、用意した量と余った量を記録する
- 前の晩に、翌朝の客の人数と内訳を見て量を決める
- 生鮮品の発注を、少量・回数多めにできるか試す
- 成果を伝えるときは、ポイントか比かを書き分ける
事業・予約への接続
朝食の「新鮮さ」は、口コミで評価されやすい点だ。作る量を細かく合わせることは、捨てる量を減らすだけでなく、料理を替える回数を増やし、朝食の評価を上げる手にもなる。
Sources / 参考情報
- Winnow(英文) - アンジェイ・レイマン:「この道具を怖がらないで。よいことにしか働かない」(2025年9月1日)
裏付け: 総支配人アンジェイ・レイマン氏、219室・多い日に朝食400食超、2024年12月に導入、6か月で作りすぎ69%減、クロワッサン64%・チキンハムとパプリカ70%超減、毎日30〜40個の余りのクロワッサンを従業員に→10個、米の料理とおかゆ、鶏肉のソーセージと生鮮品を週1回のまとめ買いから週2回の少量に、週末の子ども向けのワッフル、満足度83%→87%、新鮮さ、1カバーあたりの費用10%減、稼働の見込みから1年分の費用を予測 - Winnow(英文) - ウィノウとヒルトンが「ウィノウ・フォーサイト」を発表(2026年9月29日)
裏付け: ブダペストは6か月で残り物の重さ69%減・クロワッサンの残り64%減・朝食の満足度4%上昇・1カバーあたりの費用10%減、宿泊の人数と実際に出した量・残った量の記録で料理ごとに予測、残りの写真から重さを推定し次の予測に反映、欧州・中東・アフリカの約13軒で稼働、1日10〜15分(確認約5分・記録約10分) - Winnow(英文) - ウィノウとヒルトンは、どのように一緒にウィノウ・フォーサイトを開発したか(2026年10月6日)
裏付け: 180人が泊まっていても朝6時半にスクランブルエッグを何トレイ出すかは分からない、ブダペストで米の料理とおかゆ・満足度83%→87% - 観光庁 - 宿泊旅行統計調査(2026年4月・第2次速報、2026年5月・第1次速報及び2025年年間値(確定値))
裏付け: 2025年の延べ宿泊者数6億6,111万人泊・外国人1億7,992万人泊(確定値)、客室稼働率は旅館38.2%・ビジネスホテル75.3%・シティホテル74.1% - 観光庁 - 宿泊旅行統計調査(令和7年年間値(確定値))(PDF)
裏付け: 延べ宿泊者数・日本人・外国人の確定値、施設タイプ別の客室稼働率の推移