GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 4分 / 2527文字 2つの割合を見分ける型 #381

「66%」と「30%」は何がちがうか:フランクフルト空港の2つのヒルトンが1つの厨房で減らした作りすぎと、日本の統計が数えてこなかったもの

ドイツのフランクフルト空港には、「ヒルトン・フランクフルト・エアポート」と「ヒルトン・ガーデン・イン・フランクフルト・エアポート」という2つのホテルがある。英国のウィノウが公開した事例のページによると、2つのホテルは1つの厨房をいっしょに使う形で運営されていて、その厨房は1日に600食を超える料理を出している。

この厨房は、料理をどれだけ作るかを予測する道具を入れ、作りすぎを66%減らした。ページには、もう一つ「1カバーあたりの残り物が30%減った」という数字もある。この記事では、2つの割合が何を数えたものかを分けて読み、そのうえで、日本の国の統計が何を数え、何を数えてこなかったかを確かめる。

2つのホテル、1つの厨房

事例のページは、2つのホテルを「デュアル・オペレーション」(2軒を1つとして動かす運営)と呼んでいる。厨房を率いるのは、大きなビジネスホテルで30年以上働いてきた総料理長のマンフレート・ブロイアー氏だ。

課題は朝食の作りすぎだった。ブロイアー氏は、スクランブルエッグやベーコンのような温かい料理を、朝早くに作りすぎることが多く、それが捨てる量につながっていたと話している。

なお、ウィノウとヒルトンが2026年9月29日に出した発表は、66%を「ヒルトン・フランクフルト・エアポート」の成果として書いている。事例のページを読むと、この数字は2つのホテルが使う1つの厨房の数字だと分かる。

「300食か500食か」から「卵20キログラム」へ

入れた道具は「ウィノウ・フォーサイト」だ。携帯電話から使え、その日の稼働と、これまでに作った量をもとに、料理ごとに作る量を示す。使い続けるほど、その厨房に合わせて予測が変わっていくという。

ブロイアー氏は、変化を次のように話している。以前は「朝食は300食か500食か」と決めて、あとはチームが作る量を判断していた。今は「スクランブルエッグ20キログラム、ベーコン25トレイ」と、料理ごとの量で計画する。

食数で決めると、料理ごとの量は人の勘に任される。料理ごとの重さやトレイの数で決めると、誰が作っても同じ量になる。単位を変えたことが、この厨房のいちばん大きな変化だと読める。

作り方と発注の変え方

ページは、成果を支えた手として3つを挙げている。

  • スクランブルエッグやベーコンなどの温かい料理を、朝のあいだに少量ずつ何回かに分けて作る。新しい料理を出せて、捨てる量も減る
  • 予測を見て、その日の作る量を調整する
  • 予測をもとに、朝食のパンなどの発注を、実際に出る量に合わせる

「測る道具」と「予測する道具」を重ねる

この厨房は、2023年に「ウィノウ・ビジョン」を入れ、捨てた料理を記録していた。ビジョンは、カメラとはかりで、何が捨てられたかを測る仕組みだ。2024年に、予測のフォーサイトを加えた。

ブロイアー氏は、2つは補い合うと話している。毎日、前の日に捨てた料理の写真も見て、どこから無駄が出ているかを確かめるという。

発表によると、フォーサイトは追加の機器がなくても使えるように作られ、厨房の小さいホテル向けには単独で、ビジョンをすでに使っている厨房には追加の機能として売られている。フランクフルトは、後者の例にあたる。

66%と30%と5%

ページの数字を、何を数えたかで分けると次のようになる。

  • 66%:作りすぎの量の減り方。発表は「作りすぎの重さが全体で66%減った」と書いている
  • 30%:1カバー(客1人分の食事)あたりの残り物の減り方
  • 5%:食品の費用の減り方

66%は「作りすぎ」の「全体」の重さ、30%は「残り物」の「1人あたり」の量だ。数える物も、分母も違う。客の数が同じなら、全体の量の減り方と1人あたりの量の減り方は同じになるはずなので、2つの数字の差は、客の数の変化、数えた期間、言葉の定義の違いなどから来ていると考えられる。ページからは、どれにあたるかは分からない。

5%も、66%とそのまま比べられない。食品の費用には、客が食べた分も含まれるからだ。

日本の統計は、厨房の中を数えてこなかった

日本では、農林水産省が「食品ロス統計調査」で、外食の食べ残しを調べてきた。調査の概要によると、調べたのは客が食器に残した量で、厨房の中で捨てた量は、調査の制約から調べていない。宿泊施設については、宿泊客に出した夕食を対象にした。

最後の外食の調査は平成27年度で、対象は東京都と大阪府の食堂・レストラン、結婚披露宴、宴会だった。食べ残しの割合は、食堂・レストランが3.6%、結婚披露宴が12.2%、宴会が14.2%だ。この調査は、平成27年度で終わっている。

つまり、国の統計からは、宿の厨房の「作りすぎ」は見えない。フランクフルトの66%のような数字は、宿が自分で測らないと手に入らない。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考えてみる。

  • 朝食ビュッフェは1日平均70食。温かい料理を、朝6時半に一度に7キログラム作っていた
  • 記録すると、毎朝1.4キログラムが残っていた。1食あたり20グラムになる
  • 温かい料理を3回に分けて作るようにし、2回目と3回目は、その時点の客の入りを見て量を決める
  • 残りが毎朝0.5キログラムに減ったとすると、減り方は約64%。1食あたりでは約7.1グラムになる
  • 1か月(30日)で、約27キログラムを捨てずに済む計算だ

このシミュレーションでは、客の数を変えていないので、全体の減り方と1食あたりの減り方はどちらも約64%で同じになる。客の数が月によって変わる宿では、両方の数字を並べておくと、成果を正しく伝えやすい。

何を、何で割ったかを書いておく

フランクフルトの事例は、作る量を「食数」から「料理ごとの重さ」に変え、捨てた料理の写真と予測を毎日つなげた例だ。そして、その成果は66%、30%、5%と、数える物と分母が違う数字で伝えられている。

日本の統計が厨房の中を数えてこなかった以上、宿の作りすぎは、宿が自分で測るしかない。測るときは、全体の量と1人あたりの量を、両方残しておきたい。

持ち帰れる知識

  • 「作りすぎ」と「残り物」、「全体」と「1人あたり」は、別の数字になる
  • 食数ではなく、料理ごとの重さやトレイ数で作る量を決める
  • 日本の国の外食の調査は、客の食べ残しだけを調べ、厨房の中は調べていない
  • その調査は平成27年度で終わった

宿で考えられること

  • 朝食の温かい料理を、何回かに分けて作れるか試す
  • 作る量を、料理ごとの重さやトレイ数で書いて渡す
  • 残った料理の量を、全体と1食あたりの両方で記録する
  • 前の日に捨てた料理を、写真で振り返る時間をつくる

事業・予約への接続

温かい料理を少量ずつ作り足すと、客はいつでも作りたての料理を取れる。捨てる量を減らす工夫が、朝食の満足を上げる工夫にもなる。成果を伝えるときは、何を何で割った数字かを添えると、取引先や客の信頼につながる。

Sources / 参考情報

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