GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 5分 / 2772文字 損失と金額を分けて読む型 #383

541メガワット時は、どこで減った数字か:ヨルダンのシーダーズ・ホテルの太陽光の設計を、損失の階段と3つの節約額で読む

ヨルダンの首都アンマンで建設中だった「シーダーズ・ホテル」のために、ヨルダンの研究者3人が、電力網につなぐ太陽光発電を設計した。論文は2021年6月に学術誌に載った。

設計は、パネル912枚、出力301キロワット、インバーター12台。ホテルが使う電気を年444メガワット時と見積もり、太陽光で年541メガワット時をつくれるという結果だった。

この記事では、541という数字が、太陽の光からどのような段階を経て減ってきた数字なのかを、論文の損失の説明から確かめる。そのうえで、論文に出てくる3つの金額を見分け、日本の買い取りの仕組みと比べる。

太陽の光から541メガワット時まで

論文は、設計ソフト「PVsyst」が出した1年間の損失の図を説明している。数字を順に並べると、次のようになる。

  • パネルの面が受ける光のエネルギー:3,232メガワット時
  • パネルの標準の効率19.62%で電気に変えると:634メガワット時
  • 温度、光の当たる角度、パネルどうしのばらつき、配線の抵抗などで13.7%減り:551メガワット時
  • インバーターで直流を交流に変えるときに1.7%減り:541メガワット時

3,232に19.62%を掛けると約634になり、論文の数字と合う。551に、1.7%減を当てはめると約541.6で、これも合う。

一方、634から551への減り方を計算すると約13.1%で、論文の13.7%とは少しずれる。損失を項目ごとに掛け合わせて数えると、合計の割合と単純な引き算は一致しないことがある。ただ、論文からは、ずれの理由までは分からない。

光のエネルギーから見ると、電力網に送る電気になるのは約16.7%だ。論文によると、損失がいちばん大きいのは、パネルが電気をつくる段階だ。

1キロワットあたり約1,800キロワット時

541メガワット時を301キロワットで割ると、1キロワットあたり年約1,797キロワット時になる。1年の時間(8,760時間)で割ると、設備利用率は約20.5%だ。

論文によると、PVGISという公開の道具で計算した、パネルの面が受ける光は年2,197キロワット時/平方メートル。月ごとに見ると、1キロワットあたりの1日の発電は、6月の6.9キロワット時がいちばん多く、1月の2.8キロワット時がいちばん少ない。夏と冬で2倍以上の差がある。

論文は、パネルの性能が年0.7%ずつ落ちるとして、寿命を25年とした。1年目を541メガワット時とすると、25年目には約457メガワット時になる計算だ。

つくる電気は、使う電気より約97メガワット時多い

541メガワット時は、ホテルが使うと見積もった444メガワット時より、約97メガワット時多い。444の約22%にあたる。

論文は、ヨルダンには太陽光の電気を電力網に送る仕組み(論文は「フィードイン・タリフ」と呼ぶ)があり、ホテルにとって経済面で大切な要素だと書いている。ただ、余った電気をどう扱うか、いくらで評価するかは、論文の計算からははっきり読み取れない。

3つの金額を見分ける

論文には、1年あたりの金額が3つ出てくる。

  • 年4万9,231ディナール:541メガワット時に、1キロワット時0.091ディナールを掛けた額。つくった電気をすべて電気料金で評価した数字
  • 年3万6,560ディナール(5万1,493ドル):年あたりの生涯の節約額(ALCS)。25年の費用と節約を、金利4.63%で年あたりにならした数字
  • 年2万7,528ディナール(3万8,718ドル):ホテルの実際の使用量(月37メガワット時)にもとづく、1年の節約額

論文の要旨は、5万1,493ドルを「生涯の節約額」とだけ書いている。本文と結論を読むと、年あたりにならした数字だと分かる。また、2万7,528ディナールの計算の内訳は、論文からは読み取れない。

発電単価の0.0141と0.028

電気1キロワット時をつくる費用(発電単価)も、論文の中で2つの値が出てくる。本文は0.0141ディナール(0.0199ドル)、結論は0.028ディナール(0.0199ドル)と書いている。

ドルの値はどちらも同じだ。論文は費用の18万600ディナールを25万4,366ドルと換算している(1ディナール約1.41ドル)。0.0141ディナールにこの換算を当てはめると約0.0199ドルになる。0.028ディナールでは約0.039ドルになり、ドルの値と合わない。本文の0.0141ディナールのほうが、計算の筋が通る。

日本の宿に置き換えると

日本では、太陽光の電気を電力会社が買い取る値段を、国が毎年決めている。経済産業省の2026年3月19日の発表によると、2026年度は次のとおりだ。

  • 屋根に設ける事業用(10キロワット以上):最初の5年は1キロワット時19円、6〜20年目は8.3円
  • 地上に設ける事業用(10キロワット以上50キロワット未満):9.9円。2027年度以降は支援の対象外
  • 再生可能エネルギーの賦課金:1キロワット時4.18円

資源エネルギー庁の2026年7月の資料も、地上の事業用は2027年度から新しい支援の対象外とし、屋根に設けるものなど、地域と共生する形に支援を絞る方針を示している。シーダーズ・ホテルの設計のような駐車場の上の設置が、日本でどちらの区分になるかは、この発表からは分からない。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、25室の宿で考える。

  • 屋根に35キロワットを設け、1キロワットあたり年1,100キロワット時つくる。年3万8,500キロワット時
  • 買う電気は1キロワット時30円(賦課金を含む)とする
  • 75%を宿で使えると、2万8,875キロワット時×30円で年86万6,250円分。余る9,625キロワット時は、最初の5年は19円で18万2,875円、6年目からは8.3円で約7万9,888円
  • 合計は、最初の5年が年104万9,125円、6年目から約94万6,138円
  • 宿で使えるのが50%だと、最初の5年は年94万3,250円、6年目から約73万7,275円

6年目からは、自分で使う割合が75%か50%かで、年に約21万円の差が出る。つくる量を、宿が昼に使う電気に合わせることが大切になる。

損失と金額を、一段ずつ確かめる

シーダーズ・ホテルの541メガワット時は、3,232メガワット時の光から、パネル、温度や配線、インバーターと、段階ごとに減ってきた数字だ。論文の金額も、何を、何年で、どの電気について数えたかで、3つに分かれる。

太陽光の見積もりを受け取ったときは、どこで何%減るのか、金額はどの電気をいくらで評価したものかを、一段ずつ確かめておきたい。

持ち帰れる知識

  • 太陽光の損失は、パネル、温度・配線、インバーターの順に積み重なる
  • 設備利用率は、年の発電量を出力と8,760時間で割って求める
  • 「節約額」は、どの電気を、いくらで、何年で数えたかで変わる
  • 日本の屋根の事業用の太陽光は、2026年度は最初の5年19円、6〜20年目8.3円

宿で考えられること

  • 太陽光の見積もりで、損失の内訳を出してもらう
  • 宿が昼間に使う電気の量を、季節ごとに確かめる
  • 自分で使う電気と、余って売る電気を分けて試算する
  • パネルの性能の落ち方を、何%で見ているか確かめる

事業・予約への接続

屋根の太陽光で宿の電気をまかなうことは、客に伝えやすい取り組みだ。数字を伝えるときは、見込みか実績か、何に対する割合かを添えると、信頼を損なわずに済む。

Sources / 参考情報

関連する記事