GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 4分 / 2382文字 換算の前提を読む型 #385

「16トン」を「1万食」で割ると:フィリピンのスイスホテル・クラークの食品ロス67%減を、CO2の換算と熟れすぎた果物のジャムから読む

フィリピンのパンパンガ州、クラーク・フリーポート・ゾーンにある「スイスホテル・クラーク」は、2023年2月から、英国のウィノウの仕組みで食品ロスを測ってきた。ウィノウの事例のページによると、食品ロスを67%減らし、年に1万食分の食べ物を埋め立てから救い、二酸化炭素に換算して年16トン(CO2e)の温室効果ガスを減らしたという。

この記事では、16トンと1万食と週100キログラムという3つの数字を割り算でつなぎ、換算の前提がどこまで分かるかを確かめる。そのうえで、ホテルが2025年5月時点で公開している持続可能性の計画から、その後の取り組みを読む。

事例のページに書かれたこと

ページによると、ウィノウの仕組みは、カメラで捨てた食べ物を見分け、記録する。冷蔵庫で使われなかった材料なのか、ビュッフェで出されなかった料理なのか、何がいちばん多く捨てられているかが分かる。

ホテルは、そのデータをもとに、次のことをした。

  • 献立と仕込みの量を見直す
  • 捨てるはずだった食材を、だしやピューレ、ほかの料理の材料に回す
  • 食材の扱い方と下ごしらえを変え、使える部分を増やす

執行副料理長のラウザー・ガルシア氏は、同業者への助言として「ごみ箱をよく見ること」を挙げている。皮のむき方を見直す、仕入れすぎた材料を別の料理に回すなど、捨てた物の中に減らす手がかりがあるという。

3つの数字の単位

ページには、成果を表す数字が3つある。

  • 週100キログラム:ページの本文は「毎週100キログラムを埋め立てから救っている」と書いている。ガルシア氏の言葉としては「店の一つに入れてから、最大で毎週100キログラム、約250食分」とある
  • 年1万食:埋め立てから救った食事の数
  • 年16トン:減らした温室効果ガスを二酸化炭素に換算した重さ(CO2e)

1食を何グラムと数えるかは、ページに直接は書かれていない。ガルシア氏の言葉の「100キログラムで約250食」から計算すると、1食400グラムになる。

16トンを割り算でつなぐ

16トンを1万食で割ると、1食あたり1.6キログラム(CO2e)になる。

1万食を1食400グラムで重さに直すと、年4トンだ。16トンを4トンで割ると、捨てずに済んだ食べ物1キログラムあたり4.0キログラム(CO2e)になる。

一方、週100キログラムが1年(52週)続いたとすると、年5.2トンになる。16トンを5.2トンで割ると、1キログラムあたり約3.1キログラム(CO2e)だ。

どちらの重さを分母にするかで、1キログラムあたりの値は約3.1と4.0に分かれる。ページは、16トンを出すのに使った換算の係数も、もとにした重さも書いていない。16トンは、ウィノウの換算による数字として読むのが確かだ。

「店の一つ」と、ホテル全体

ガルシア氏の言葉は、ウィノウを「店の一つ」に入れたと言っている。週100キログラムと約250食は、その1か所の数字だ。67%や年1万食、年16トンが、その1か所の数字なのか、ホテル全体の数字なのかは、ページからは分からない。

2025年5月の持続可能性の計画

スイスホテル・クラークは、ホテルのサイトに「持続可能性の管理計画」を公開している。計画は「2025年5月時点」の取り組みとして、食べ物について次のことを挙げている。

  • 食品ロスの委員会を設け、捨てる量を見張り、分析し、減らす。ウィノウなどの道具で、食べ物の使い方を記録し、最適にする
  • 熟れすぎた果物や余った果物を、ジャムや菓子、焼き菓子に変える
  • 放し飼いなどの倫理的に育てられた卵や、有機の農産物を、信頼できる仕入れ先から買う
  • 野菜やハーブなどを、地元の農家や生産者から優先して仕入れる

2023年に始めた測る取り組みが、2025年には委員会という形で続いていることが分かる。果物をジャムに変える取り組みは、事例のページの「だしやピューレに回す」と同じ考え方だ。

日本の宿に置き換えると

日本では、農林水産省が平成21年度の「食品ロス統計調査」で、宿泊施設が宿泊客に出した夕食の食べ残しを調べている。消費者庁の資料に収められた調査の結果によると、1食あたり926.7グラムを出し、137.1グラムが残った。食べ残しの割合は14.8%(飲み物を除く)だ。

料理の種類ごとに食べ残しの割合が高かったのは、次の料理だ。

  • みそ汁、スープ類:22.1%
  • 菓子・デザート類:19.2%
  • 果物が主体の料理:17.8%

果物やデザートは、宿の夕食で残りやすい料理の上位に入っている。ただし、この調査は客が食器に残した量だけを調べたもので、厨房で傷んで捨てた果物は含まれていない。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考えてみる。

  • 夕食は1日平均45食。果物の盛り合わせを1人50グラム出す。1日2.25キログラム
  • これとは別に、熟れすぎて盛り合わせに使えない果物が、1日0.6キログラム出ていた
  • これを煮てジャムにし、翌朝の朝食のヨーグルトやパンに添える
  • 1か月(30日)で、約18キログラムの果物を捨てずに使える計算だ

果物を捨てずに済んだ量を二酸化炭素に換算するときは、スイスホテル・クラークの1キログラムあたり3.1〜4.0という値を借りないほうがよい。前提が分からない係数を使うと、数字だけが一人歩きするからだ。

換算の前に、重さと場所を確かめる

スイスホテル・クラークの事例は、ごみ箱を調べることから、だしやピューレ、果物のジャムへと、捨てる物を料理に戻した例だ。一方で、16トンや1万食といった換算の数字は、もとの重さや係数、どの店の数字かが書かれていない。

宿で成果を伝えるときは、まず捨てずに済んだ重さと、どの厨房の数字かを示し、換算するなら係数を添えておきたい。

持ち帰れる知識

  • 16トン÷1万食で、1食あたり1.6キログラム(CO2e)
  • もとにする重さで、1キログラムあたりの値は約3.1〜4.0に分かれる
  • 平成21年度の調査で、宿泊施設の夕食の食べ残しは14.8%
  • 宿の夕食では、果物やデザートの食べ残しの割合が高い

宿で考えられること

  • 捨てた物を、冷蔵庫の材料と出した料理の残りに分けて記録する
  • 熟れすぎた果物を、ジャムや焼き菓子に回せるか試す
  • 食品ロスの担当を、部署をまたいで決める
  • 二酸化炭素に換算するときは、使った係数を書いておく

事業・予約への接続

宿で作ったジャムは、朝食の一品にも、売店の土産にもなる。捨てるはずだった果物から生まれた品だと伝えれば、宿の取り組みを客に知ってもらうきっかけになる。

Sources / 参考情報

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