まず減らし、次に渡し、最後に土へ:ドイツの「ラディソン・ブル・ブレーメン」が、2年で食品ロスを60%減らした順番
ドイツ北部の都市ブレーメンにある「ラディソン・ブル・ホテル・ブレーメン」は、235室のホテルだ。ロビーのレストラン「ザ・ロビー・レストラン」では、ティム料理長が2年かけて、厨房の働き方を見直してきた。
イギリスの会社ウィノー(Winnow)の2024年3月の記事によると、ウィノーの機器を使った2年間で、食品ロスは60%減った。9万食分にあたり、食材費は15万ユーロ減ったという。
この記事は、ホテルの取り組みを「減らす」「渡す」「土に返す」の順番に並べて読む。あわせて、日本で食べ物を寄附するときの手順を、国のガイドラインで確かめる。
ホテルの全体像
ブレーメンの経済振興公社(WFB)の2024年1月の記事によると、ホテルには235室と16の会議室がある。2023年のブレーメン観光賞を受けた。
記事によると、ホテルは自前の熱電併給設備(ガスなどで電気と熱を同時につくる設備)で、エネルギーの必要量の20%をまかない、残りは100%再生可能エネルギーの電気を使う。料理の二酸化炭素の量を示す「クリマート(Klimato)」を、ドイツで初めて入れたホテルでもある。
ホテルの持ち主であるスウェーデンの会社パンドックス(Pandox)の2023年1月の記事は、アラカルトのメニューの70%がヴィーガンだと紹介している。ウィノーの記事も、ティム料理長のメニューの大半はヴィーガンかベジタリアンだと書く。
第1段:まず減らす
ウィノーの記事によると、ティム料理長が成功の鍵に挙げるのは、機器がためていく写真の一覧だ。厨房のみんなが、何がいつ捨てられているかを見られるようになった。
チームは、いちばんよく捨てられている食材に絞って、使い道を考えた。
- にんじんとパースニップの皮を揚げて、料理の飾りにする
- 余った青菜をさっとゆでて、スープの色どりに加える
こうした工夫で、切りくずから出るごみだけで90%減ったという。
第2段:それでも余ったものを渡す
避けられない余りは、ごみ箱ではない行き先を探す。ウィノーの記事は、ブレーメンの3つの行き先を挙げる。
- ビュッフェで余ったパンを、ホームレスの人に食事を配る慈善団体「スープ・エンジェルス」へ
- 余った食べ物を安く売るアプリ「トゥー・グッド・トゥー・ゴー」
- ブレーメン中央駅のコミュニティ冷蔵庫(誰でも食べ物を入れたり、持ち帰ったりできる冷蔵庫)
WFBの記事は、食べ物を分け合う市民の取り組み「フードシェアリング」も挙げている。
第3段:最後に土へ
食べ物として使えないものは、土に返す。ウィノーの記事によると、コーヒーのかすは、近所の人の堆肥に回している。つながりができたきっかけは、ネットのフリーマーケットのイーベイ(eBay)だったという。
減らす、渡す、土に返す。順番が大事なのは、前の段で減らすほど、後の段に回る量が少なくなるからだ。
数字を確かめる
ウィノーの記事の数字から、次のことが分かる(どれも記事の計算)。
- 9万食を2年で割ると、1年あたり4万5,000食
- 15万ユーロを9万食で割ると、1食あたり約1.67ユーロ
パンドックスの記事にも、別の時点の数字がある。食品ロスを避けたことで、年に6万1,848キログラムの二酸化炭素を減らしていて、これは3万5,958食にあたるという。割ると、1食あたり約1.72キログラムの二酸化炭素になる。
同じ記事は、2021年1月から食べ物を救う取り組みを続け、2年で2,481袋、二酸化炭素で6,202.5キログラムを減らしたと書く。1袋あたり2.5キログラムだ。どのアプリや団体の袋かは、この部分には書かれていない。
なお、ウィノーの記事は総支配人の名前を「Zupac」と書いているが、パンドックスの記事ではアンゲリカ・ツパンツ(Angelika Zupanc)氏だ。総支配人は、ウィノーの記事で「ウィノーは最良の分析をくれ、行動を変える助けになる。作りすぎるより、よりよい客の体験につながる」と話している。
日本の宿に置き換えると
日本で、余った食べ物をフードバンクなどに渡すときの手順は、2024年12月25日に公表された「食品寄附ガイドライン(第一版)」(消費者庁のサイトに掲載)にまとまっている。
ガイドラインの「定義」によると、食品を寄附する人(食品寄附者)には、「ケータリング、ホスピタリティ部門」が含まれる。宿も、寄附する側になれる。
ガイドラインが手続きの例として挙げる流れは、次のとおりだ。
- 寄附する前に、フードバンクなどと協議し、条件を明らかにしてから、寄附するかを決める
- 寄附する食品の品目、数量、消費期限または賞味期限、保存方法、ロット、荷姿などを、前もって伝える
- 受け取る側からは、受け入れられる量、冷蔵庫や冷凍庫の容量、駐車場の広さなどを聞く
- 協議とマッチングがまとまったら、合意書を結ぶ
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。ある宿の朝食で、毎日パンが15個余るとする。1か月(30日)で450個になる。
- まず減らす:焼く数を見直し、余りを1日5個減らせば、1か月の余りは300個になる
- 次に渡す:残る300個を寄附する前に、受け取る団体と、何日おきに何個、どの期限のものを、どう保存して渡すかを決め、合意書にする
- 最後に土へ:渡せなかった分だけを、たい肥などに回す
先に減らしておけば、受け取る側の冷蔵庫や配る日の都合に合わせやすくなる。
順番を守ると、行き先が見つかる
ラディソン・ブル・ブレーメンの60%は、2年の積み重ねの結果だ。写真で捨てるものを確かめ、皮や青菜を料理に使い、それでも余ったパンや食べ物を町の団体や冷蔵庫に渡し、コーヒーかすは土に返す。順番を守ると、それぞれの段に回る量がちょうどよくなる。
持ち帰れる知識
- 減らす、渡す、土に返すの順番で考える
- 9万食÷2年で年4万5,000食、15万ユーロ÷9万食で1食約1.67ユーロ(記事の計算)
- 日本の食品寄附ガイドラインでは、ホスピタリティ部門も食品寄附者に含まれる
- 寄附の前に協議し、条件を明らかにし、合意書を結ぶ
宿で考えられること
- よく捨てる食材を3つに絞り、使い道を考える
- 余りの量を減らしてから、寄附の相談をする
- 受け取る側の冷蔵庫の容量や配る日を聞いておく
- 使えないものだけを、堆肥などに回す
事業・予約への接続
余った食べ物の行き先を地域の団体と決めている宿は、地域とつながる宿として紹介できる。どの段で何をしているかを順番に示すと、取り組みが伝わりやすい。
Sources / 参考情報
- Winnow(英文) - ラディソン・ブル・ブレーメンは、AIで9万食をごみにせずに済ませた(2024年3月21日)
裏付け: ザ・ロビー・レストランのティム料理長、2年で60%減・9万食、写真の一覧、メニューの大半がヴィーガンかベジタリアン、コーヒーかすを近所の堆肥へ(イーベイでつながり)、余ったパンをスープ・エンジェルスへ、にんじんとパースニップの皮を揚げて飾りに、青菜をスープに、切りくずのごみ90%減、トゥー・グッド・トゥー・ゴー、中央駅のコミュニティ冷蔵庫、15万ユーロ、総支配人の発言(表記はZupac)、2023年のブレーメン観光賞 - Pandox(英文) - ラディソン・ブル・ブレーメンは、持続可能性の手本になりたい(2023年1月23日)
裏付け: 総支配人アンゲリカ・ツパンツ氏、年6万1,848キログラムの二酸化炭素・3万5,958食、2021年1月から・2年で2,481袋・6,202.5キログラムの二酸化炭素、アラカルトの70%がヴィーガン - WFB Bremen(独文) - 観光賞2023:ラディソン・ブル(2024年1月23日)
裏付け: 2023年のブレーメン観光賞、235室・16の会議室、熱電併給設備で20%・残りは100%再生可能エネルギー、ドイツで初めてクリマート、ウィノー・トゥー・グッド・トゥー・ゴー・フードシェアリング - 消費者庁 - 食品ロス削減の取組
裏付け: 食品寄附ガイドラインを令和6年12月25日に公表 - 消費者庁 - 食品寄附ガイドライン~食品寄附の信頼性向上に向けて~(第一版)(PDF)
裏付け: 序章第4 食品寄附者の定義に「ケータリング、ホスピタリティ部門」、第7 事前に協議し条件を明らかにして意思決定、合意書の締結、品目・数量・消費期限または賞味期限・保存方法・ロット・荷姿の事前の情報共有、受入れ可能な数量・保管場所の容量・駐車場の広さ