「100kW」の一行は、書き写されるたびに形を変えた:オーストラリアの「フェアモント・リゾート・ブルーマウンテンズ」の取り組みを、元のページから読む
オーストラリア・シドニーの西、世界遺産のブルーマウンテンズにあるルーラの町に、「フェアモント・リゾート・ブルーマウンテンズ」がある。アコーのブランド「Mギャラリー」のリゾートだ。
このリゾートの環境の取り組みは、いくつものサイトで紹介されている。中でもよく出てくるのが、屋上の「100kW」の太陽光パネルだ。ところが、紹介するサイトごとに、この一行の書き方が少しずつちがう。
この記事では、リゾートの元のページに何が書かれていたかを確かめ、書き写された文と並べる。あわせて、ペットボトルを減らした取り組みを、日本の水の決まりから考える。
元のページに書かれていたこと
リゾートのサイトには、以前「サステナビリティ」のページがあった。今は表示されないが、インターネット・アーカイブに2024年7月19日の保存がある。
ページは、二酸化炭素の排出と、エネルギー、水、ガスの使用を減らすことに重点を置くと書く。続いて、取り組みを並べている。
- 電気・電子機器のリサイクル。「EDGE」というエネルギーの計測の仕組みで、建物全体のエネルギーを分析して管理する
- 調理油と食用の脂を集めてリサイクルする
- 宴会などで余った在庫を、地域の食品を救う団体「アース・リカバリー・オーストラリア」に寄付する
- 効率のよいボイラーで、ガスを20%節約した
- 会議・宴会の部門に、館内の浄水器を入れた。プラスチックのボトル2万本を埋め立てに回さずに済み、年6,500ドルの節約になった
- 客が使える電気自動車の充電器が2基ある
- 段ボールを圧縮する機械を置き、回収の回数を減らした
- 自生の植物の庭を再生する。会議の客が苗を植える活動にもしている
- 生分解するコーヒーカップ、持ち帰りの箱、ストローを使う
- 「屋上に100kWの太陽光パネルと発電機(100kw Solar power panels and generator on the rooftop)」
太陽光は、ページの「持続可能性の活動」の欄に7つ並んだ取り組みの、最後の一行だった。
書き写された文
アコーの予約サイトの記事「オーストラリアとニュージーランドの持続可能なホテル」は、このリゾートについて「複数の100kWの太陽光パネルが、屋上の電気の発電機に電気を送っている(multiple 100kw solar panels feeding the electric rooftop generator)」と書く。
オーストラリアの太陽光の情報サイト「エナジー・マターズ」の2024年11月の記事は、リゾートは「100kWの太陽光パネル」でエネルギーのかなりの部分をまかない、さらに屋上の電気の発電機が再生可能エネルギーを「補っている(supplement)」と書く。
元の「100kWの太陽光パネルと発電機」は、書き写されるうちに、「複数の100kW」になったり、パネルが発電機に電気を送る形になったり、発電機が補う形になったりしている。どれが設備の実際の形かは、元のページの一行からは分からない。「エネルギーのかなりの部分」という言い方も、元のページにはない。
「100kW」は、量ではなく大きさ
「kW(キロワット)」は、設備が一度に出せる電気の大きさだ。1年にどれだけ電気をつくったかは「kWh(キロワット時)」で表す。同じ100kWでも、場所や向き、天気によって、つくる電気の量は変わる。元のページには、つくった電気の量も、リゾート全体の電気に占める割合も書かれていない。
リゾートの持ち主の会社のサイト(シュワルツ・ファミリー・カンパニー)は、太陽光について「統合したエネルギー管理の戦略の一部」と書くだけだ。このサイトによると、会社がリゾートを買ったのは2010年10月で、リゾートは認証の制度「グリーン・グローブ」の認証を受けている。
ボトル2万本を、数字で読む
元のページの浄水器の一行から、次のことが分かる(記事の計算)。
- 6,500ドルを2万本で割ると、1本あたり約0.33ドル
ただし、注意が二つある。一つは、「年(per annum)」が節約の金額にかかっていて、2万本が1年の数かどうかははっきりしないことだ。もう一つは、浄水器を入れたのが会議・宴会の部門だということだ。アコーの記事やエナジー・マターズの記事は、部門を書かずに「館内のろ過の仕組み」と紹介している。
日本の宿に置き換えると
日本の宿で、ボトルの水をやめて、蛇口の水をろ過して出す場合、気をつけたいのは、建物の中の水の通り道だ。水道の水は、いったん建物の受水槽にためてから各階に送ることがある。
水道法では、水道の水だけを水源とし、水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える設備を「簡易専用水道」という(法第3条第7項、施行令第2条)。設置者には、次の決まりがある。
- 決められた基準に従って管理する(法第34条の2第1項)。水槽の掃除を毎年1回以上、定期に行う。水の色や濁り、においなどに異常があれば、水質の検査を行う。健康を害するおそれがあると知ったら、すぐに給水を止める(施行規則第55条)
- 地方公共団体の機関か、国の登録を受けた機関の検査を、毎年1回以上、定期に受ける(法第34条の2第2項、施行規則第56条)
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。ある宿の受水槽の有効容量が12立方メートルで、会議室で1回30人の会議を月に10回開き、1人2本のボトルの水を出していたとする。
- ボトルの数:30人×2本×10回で、1か月600本、1年7,200本
- 受水槽は10立方メートルを超えるので、簡易専用水道にあたる。ボトルをやめて蛇口の水をろ過して出すなら、まず、水槽の掃除と年1回の検査の記録がそろっているかを確かめる
浄水器を入れる前に、建物の水の管理を確かめておけば、客に安心して水を出せる。
元のページに戻って読む
フェアモント・リゾート・ブルーマウンテンズの「100kW」は、元のページでは、ほかの取り組みと並ぶ一行だった。書き写されるたびに、文の形は変わっていった。紹介の記事を読むときは、元の言葉に戻り、kWとkWh、部門と館全体、1年かどうかを確かめることが、数字を正しく使う出発点になる。
持ち帰れる知識
- 紹介の記事は、元のページの言葉と比べて読む
- kWは設備の大きさで、つくった電気の量(kWh)ではない
- 6,500ドル÷2万本で1本約0.33ドル(記事の計算)。2万本が1年の数かは書かれていない
- 日本では、受水槽が10立方メートルを超えると簡易専用水道にあたり、年1回以上の掃除と検査が要る
宿で考えられること
- 自分の宿の取り組みを紹介するときは、元の言葉を一つにそろえる
- 太陽光は、設備の大きさと、つくった電気の量を分けて示す
- ボトルの水をやめる前に、受水槽の大きさと管理の記録を確かめる
- ボトルを減らす部門を決め、数を数えてから始める
事業・予約への接続
会議の主催者は、ボトルを使わない会場を選ぶことがある。水の管理の記録と合わせて伝えれば、会議の誘致で安心材料になる。
Sources / 参考情報
- Fairmont Resort Blue Mountains(英文) - サステナビリティ(以前の掲載・現在は表示されない。インターネット・アーカイブの2024年7月19日の保存)
裏付け: 二酸化炭素・エネルギー・水・ガスの削減、EDGEの計測、調理油の回収、アース・リカバリー・オーストラリアへの寄付、ボイラーでガス20%節約、会議・宴会の部門に浄水器・2万本・年6,500ドル、充電器2基、段ボールの圧縮機、自生の植物の庭、生分解の容器、「100kw Solar power panels and generator on the rooftop」 - ALL Accor(英文) - オーストラリアとニュージーランドの持続可能なホテル
裏付け: 「multiple 100kw solar panels feeding the electric rooftop generator」、充電器2基、館内のろ過の仕組みで2万本 - Energy Matters(英文) - 太陽光とホスピタリティ産業:環境の動きを引っぱるホテル(2024年11月20日)
裏付け: 100kWの太陽光パネルでエネルギーのかなりの部分、屋上の発電機が「supplement」、充電器2基、ろ過の仕組みで2万本 - Schwartz Family Company(英文) - フェアモント・リゾート
裏付け: 2010年10月に購入、グリーン・グローブ認証、充電器2基、太陽光は統合したエネルギー管理の戦略の一部 - e-Gov法令検索 - 水道法
裏付け: 第3条第7項 簡易専用水道の定義、第34条の2 基準に従った管理と定期の検査 - e-Gov法令検索 - 水道法施行令
裏付け: 第2条 簡易専用水道の適用除外の基準は水槽の有効容量の合計10立方メートル - e-Gov法令検索 - 水道法施行規則
裏付け: 第55条 水槽の掃除を毎年1回以上・異常時の検査・給水の停止、第56条 検査は毎年1回以上