GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2556文字 書き写しを比べる型 #393

「100kW」の一行は、書き写されるたびに形を変えた:オーストラリアの「フェアモント・リゾート・ブルーマウンテンズ」の取り組みを、元のページから読む

オーストラリア・シドニーの西、世界遺産のブルーマウンテンズにあるルーラの町に、「フェアモント・リゾート・ブルーマウンテンズ」がある。アコーのブランド「Mギャラリー」のリゾートだ。

このリゾートの環境の取り組みは、いくつものサイトで紹介されている。中でもよく出てくるのが、屋上の「100kW」の太陽光パネルだ。ところが、紹介するサイトごとに、この一行の書き方が少しずつちがう。

この記事では、リゾートの元のページに何が書かれていたかを確かめ、書き写された文と並べる。あわせて、ペットボトルを減らした取り組みを、日本の水の決まりから考える。

元のページに書かれていたこと

リゾートのサイトには、以前「サステナビリティ」のページがあった。今は表示されないが、インターネット・アーカイブに2024年7月19日の保存がある。

ページは、二酸化炭素の排出と、エネルギー、水、ガスの使用を減らすことに重点を置くと書く。続いて、取り組みを並べている。

  • 電気・電子機器のリサイクル。「EDGE」というエネルギーの計測の仕組みで、建物全体のエネルギーを分析して管理する
  • 調理油と食用の脂を集めてリサイクルする
  • 宴会などで余った在庫を、地域の食品を救う団体「アース・リカバリー・オーストラリア」に寄付する
  • 効率のよいボイラーで、ガスを20%節約した
  • 会議・宴会の部門に、館内の浄水器を入れた。プラスチックのボトル2万本を埋め立てに回さずに済み、年6,500ドルの節約になった
  • 客が使える電気自動車の充電器が2基ある
  • 段ボールを圧縮する機械を置き、回収の回数を減らした
  • 自生の植物の庭を再生する。会議の客が苗を植える活動にもしている
  • 生分解するコーヒーカップ、持ち帰りの箱、ストローを使う
  • 「屋上に100kWの太陽光パネルと発電機(100kw Solar power panels and generator on the rooftop)」

太陽光は、ページの「持続可能性の活動」の欄に7つ並んだ取り組みの、最後の一行だった。

書き写された文

アコーの予約サイトの記事「オーストラリアとニュージーランドの持続可能なホテル」は、このリゾートについて「複数の100kWの太陽光パネルが、屋上の電気の発電機に電気を送っている(multiple 100kw solar panels feeding the electric rooftop generator)」と書く。

オーストラリアの太陽光の情報サイト「エナジー・マターズ」の2024年11月の記事は、リゾートは「100kWの太陽光パネル」でエネルギーのかなりの部分をまかない、さらに屋上の電気の発電機が再生可能エネルギーを「補っている(supplement)」と書く。

元の「100kWの太陽光パネルと発電機」は、書き写されるうちに、「複数の100kW」になったり、パネルが発電機に電気を送る形になったり、発電機が補う形になったりしている。どれが設備の実際の形かは、元のページの一行からは分からない。「エネルギーのかなりの部分」という言い方も、元のページにはない。

「100kW」は、量ではなく大きさ

「kW(キロワット)」は、設備が一度に出せる電気の大きさだ。1年にどれだけ電気をつくったかは「kWh(キロワット時)」で表す。同じ100kWでも、場所や向き、天気によって、つくる電気の量は変わる。元のページには、つくった電気の量も、リゾート全体の電気に占める割合も書かれていない。

リゾートの持ち主の会社のサイト(シュワルツ・ファミリー・カンパニー)は、太陽光について「統合したエネルギー管理の戦略の一部」と書くだけだ。このサイトによると、会社がリゾートを買ったのは2010年10月で、リゾートは認証の制度「グリーン・グローブ」の認証を受けている。

ボトル2万本を、数字で読む

元のページの浄水器の一行から、次のことが分かる(記事の計算)。

  • 6,500ドルを2万本で割ると、1本あたり約0.33ドル

ただし、注意が二つある。一つは、「年(per annum)」が節約の金額にかかっていて、2万本が1年の数かどうかははっきりしないことだ。もう一つは、浄水器を入れたのが会議・宴会の部門だということだ。アコーの記事やエナジー・マターズの記事は、部門を書かずに「館内のろ過の仕組み」と紹介している。

日本の宿に置き換えると

日本の宿で、ボトルの水をやめて、蛇口の水をろ過して出す場合、気をつけたいのは、建物の中の水の通り道だ。水道の水は、いったん建物の受水槽にためてから各階に送ることがある。

水道法では、水道の水だけを水源とし、水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える設備を「簡易専用水道」という(法第3条第7項、施行令第2条)。設置者には、次の決まりがある。

  • 決められた基準に従って管理する(法第34条の2第1項)。水槽の掃除を毎年1回以上、定期に行う。水の色や濁り、においなどに異常があれば、水質の検査を行う。健康を害するおそれがあると知ったら、すぐに給水を止める(施行規則第55条)
  • 地方公共団体の機関か、国の登録を受けた機関の検査を、毎年1回以上、定期に受ける(法第34条の2第2項、施行規則第56条)

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。ある宿の受水槽の有効容量が12立方メートルで、会議室で1回30人の会議を月に10回開き、1人2本のボトルの水を出していたとする。

  • ボトルの数:30人×2本×10回で、1か月600本、1年7,200本
  • 受水槽は10立方メートルを超えるので、簡易専用水道にあたる。ボトルをやめて蛇口の水をろ過して出すなら、まず、水槽の掃除と年1回の検査の記録がそろっているかを確かめる

浄水器を入れる前に、建物の水の管理を確かめておけば、客に安心して水を出せる。

元のページに戻って読む

フェアモント・リゾート・ブルーマウンテンズの「100kW」は、元のページでは、ほかの取り組みと並ぶ一行だった。書き写されるたびに、文の形は変わっていった。紹介の記事を読むときは、元の言葉に戻り、kWとkWh、部門と館全体、1年かどうかを確かめることが、数字を正しく使う出発点になる。

持ち帰れる知識

  • 紹介の記事は、元のページの言葉と比べて読む
  • kWは設備の大きさで、つくった電気の量(kWh)ではない
  • 6,500ドル÷2万本で1本約0.33ドル(記事の計算)。2万本が1年の数かは書かれていない
  • 日本では、受水槽が10立方メートルを超えると簡易専用水道にあたり、年1回以上の掃除と検査が要る

宿で考えられること

  • 自分の宿の取り組みを紹介するときは、元の言葉を一つにそろえる
  • 太陽光は、設備の大きさと、つくった電気の量を分けて示す
  • ボトルの水をやめる前に、受水槽の大きさと管理の記録を確かめる
  • ボトルを減らす部門を決め、数を数えてから始める

事業・予約への接続

会議の主催者は、ボトルを使わない会場を選ぶことがある。水の管理の記録と合わせて伝えれば、会議の誘致で安心材料になる。

Sources / 参考情報

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