GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2553文字 1年目の数字を目安と比べる型 #396

「179キロワットで、1年目は3万キロワット時」をどう読むか:英国の「ホリデイ・イン・コービー」の太陽光の数字を、発電の目安と税の決まりから確かめる

英国イングランドの中部に、コービーという町がある。ここにある「ホリデイ・イン」のホテルが、屋根などに太陽光パネルを付けた。

取り付けを手がけた英国の会社、パーフェクト・センス・エナジー(Perfect Sense Energy)は、自社のサイトの「ホテル向けの太陽光パネル」のページで、この例を紹介している。並んでいる数字は3つだ。

  • パネルの大きさ:179キロワット(kWp)
  • 1年目の発電:3万キロワット時(kWh)
  • 1年目の節約:4,230ポンド

これは取り付けた会社の販売のページで、ホテルや、ホテルを運営するグループが出した資料ではない。この記事では、3つの数字を1キロワットあたりに直し、公的な発電の目安と比べる。あわせて、同じページに書かれた税の話も、英国の政府の案内で確かめる。

ページに書かれていること

ページによると、コービーのホテルは、電気代などを減らし、二酸化炭素の排出を減らすために、太陽光の設備を付けると決めた。

ページには、取り付けの流れも6つの段階で書かれている。

1. 現地の調査:必要なパネルの数、置ける場所、使う電気の量を調べる
2. 設計:調査をもとに、ホテルに合わせた設備を設計する
3. 許可の手続き:必要な許可を取る
4. 取り付け:安全の決まりを守り、客の迷惑にならないように付ける
5. 試験と運転開始:発電していることを確かめる
6. 保守と見守り:パネルの掃除などを続ける

ただし、この6つの段階は会社のサービスの一般的な説明で、コービーのホテルで何をしたかの記録ではない。ページのよくある質問には、「英国では冬の夜が長く、1年を通して太陽光だけでホテルの電気をまかなうのは難しい。明るい月には、ほぼ太陽光だけで運営できることもある」とある。

1キロワットあたりに直す

3つの数字を割り算すると、次のようになる。

  • 3万キロワット時 ÷ 179キロワット = 1キロワットあたり約168キロワット時
  • 4,230ポンド ÷ 3万キロワット時 = 1キロワット時あたり約14.1ペンス

1キロワットあたりの年間の発電量は、場所が同じなら、大きさのちがう設備どうしでも比べやすい。

公的な目安と比べる

欧州委員会の共同研究センターは、太陽光の発電量を見積もる無料の道具「PVGIS」を公開している。コービーの町の中心のあたり(北緯52.49度、西経0.69度)で、179キロワットのパネルを真南に向けて置くとして計算した。損失は道具の初期の設定の14%とした。

  • 傾き35度:1年に約18万3,000キロワット時(1キロワットあたり約1,025キロワット時)
  • 傾き10度:1年に約16万5,000キロワット時(1キロワットあたり約921キロワット時)

ページの3万キロワット時は、この目安の6分の1ほどにあたる。

ページは、この差の理由を書いていない。たとえば、1年目が設置した月からの数か月分なのか、ホテルで使った分だけを数えたのか、179キロワットの一部だけの数字なのかは、ページからは分からない。パネルの向きや傾き、影の具合も書かれていない。この記事では、どちらが正しいとは決めない。数字の意味を確かめたいときは、取り付けた会社やホテルに、期間と数え方を尋ねることになる。

PVGISの計算では、月ごとの差も大きい。傾き35度の場合、12月は約6,500キロワット時、5月と7月は約2万2,000キロワット時で、3倍を超える差がある。「明るい月にはほぼ太陽光だけ」という説明は、この季節の差とつじつまが合う。

税の話を、政府の案内で確かめる

ページには、「2027年3月まで、企業は再生可能エネルギーの設備に0%の付加価値税(VAT)で投資できる」とも書かれている。

英国歳入関税庁の案内(通知708/6)によると、省エネの設備の取り付けを0%にする決まりは、2023年5月1日から2027年3月31日までのものだ。対象は、住宅などの住まいと、慈善の目的の建物である。自炊型の休暇用の宿泊施設は、住まいに含まれる。一方で、同じ案内は、病院や刑務所、ホテルや宿屋などへの取り付けには、標準の税率がかかると書いている。

ホテルにとって、ページの説明と政府の案内は一致していない。税の扱いは、ページではなく政府の案内で確かめるのが確実だ。

ページのよくある質問には、「年間のエネルギー消費が5万〜10万kWpの小さなホテル」という書き方もある。kWpは設備の大きさの単位で、1年に使う量はkWhで表す。単位の書き方にも注意して読みたい。

日本の宿に置き換えると

日本でも、太陽光の発電量は季節と地域で大きく変わる。気象庁は、1991年から2020年の30年間の平均を「平年値」として公開している。太平洋側の東京と、日本海側の新潟を比べる。

  • 東京:日照時間は1月が192.6時間、6月が124.2時間。1年で1,926.7時間。1日あたりの全天日射量は12月が8.1、5月が17.3メガジュール(1平方メートルあたり)
  • 新潟:日照時間は1月が56.4時間、12月が62.9時間、8月が205.2時間。1年で1,639.6時間。1日あたりの全天日射量は12月が4.5、5月が19.0メガジュール

東京では、冬の日照時間が梅雨の時期より長い。新潟では、冬の日照時間が夏の3分の1以下になる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。ある宿の太陽光が、5月に6,000キロワット時を発電するとする。発電量は全天日射量に比例すると単純に考える。

  • 東京の宿:12月は 6,000 × 8.1 ÷ 17.3 = 約2,800キロワット時
  • 新潟の宿:12月は 6,000 × 4.5 ÷ 19.0 = 約1,400キロワット時

同じ5月の発電でも、12月には地域によって2倍の差が出る。実際の発電量は、パネルの傾きや雪、影でも変わる。月ごとの目安は、取り付ける会社の見積もりやPVGISのような道具で確かめる。

1年目の数字に添えるもの

コービーのホテルの3つの数字は、ホテルが太陽光に踏み出した記録だ。そのうえで、1年目の数字には、何か月分か、発電した全部か使った分か、どの電気の値段で計算したかを書き添えると、ほかの宿と比べられる数字になる。

持ち帰れる知識

  • 3万キロワット時 ÷ 179キロワット = 1キロワットあたり約168キロワット時
  • PVGISの目安では、同じ場所・大きさで1年に約16万5,000〜18万3,000キロワット時
  • 英国の0%のVATは住まいなどが対象で、ホテルや宿屋には標準の税率(通知708/6)
  • 東京は冬の日照時間が長く、新潟は冬に短い(気象庁の平年値)

宿で考えられること

  • 太陽光の数字を1キロワットあたりに直して、目安と比べる
  • 1年目の数字には、期間と数え方を書き添える
  • 税の扱いは、販売のページではなく公的な案内で確かめる
  • 冬の発電の少なさを、地域の平年値で先に知っておく

事業・予約への接続

太陽光の取り組みを紹介するときは、大きさと発電量に加えて、何か月分の数字かを書くと信頼につながる。季節ごとの発電を示せば、冬と夏で電気の使い方を変える工夫も伝えられる。

Sources / 参考情報

  • Perfect Sense Energy(英文) - ホテル向けの太陽光パネル
    裏付け: コービーのホテルの179キロワット・1年目の発電3万キロワット時・1年目の節約4,230ポンド、目的、取り付けの6つの段階、冬は難しく明るい月はほぼ太陽光、2027年3月まで0%のVATという説明、「5万〜10万kWp」の書き方
  • European Commission JRC(英文) - 太陽光発電の見積もりの道具 PVGIS
    裏付け: 北緯52.49度・西経0.69度、179キロワット、損失14%、真南で、傾き35度は1年に約18万3,000キロワット時・12月約6,500・5月と7月約2万2,000、傾き10度は約16万5,000キロワット時(2026年10月18日に計算)
  • GOV.UK(英文) - 省エネの材料と暖房の設備のVAT(通知708/6)
    裏付け: 0%は2023年5月1日から2027年3月31日、対象は住まいと慈善の目的の建物、自炊型の休暇用の宿泊施設は住まいに含む、ホテルや宿屋などは標準の税率
  • 気象庁 - 過去の気象データ 平年値(東京)
    裏付け: 1991〜2020年の平年値、日照時間1月192.6時間・6月124.2時間・年1,926.7時間、全天日射量12月8.1・5月17.3メガジュール
  • 気象庁 - 過去の気象データ 平年値(新潟)
    裏付け: 1991〜2020年の平年値、日照時間1月56.4時間・12月62.9時間・8月205.2時間・年1,639.6時間、全天日射量12月4.5・5月19.0メガジュール

関連する記事