GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 4分 / 2609文字 総量と1食あたりを分ける型 #399

「年23万8,000食」と「1食122.5グラム」はちがう物差し:中国の「プルマン嘉興平湖エクセレンス」とカナダの「フェアモント・ザ・クイーン・エリザベス」の食品ロスを読む

フランスのホテルグループ、アコーは、2024年3月20日に、食品ロスに取り組む3つのホテルを紹介する記事を載せた。そのうち、アラブ首長国連邦の「ノボテル・アブダビ・ゲート」は、#395で取り上げた。この記事では、残りの2軒を読む。

  • 中国の「プルマン嘉興平湖エクセレンス」:1年に23万8,000カバーを超える
  • カナダの「フェアモント・ザ・クイーン・エリザベス」:1カバーあたり122.5グラム

カバーは、ホテルの飲食で出した食事の数のことだ。2つの数字は、どちらも食品ロスの記事に出てくるが、物差しがちがう。1つ目は、出した食事の総数で、2つ目は、1食あたりの食品ロスの重さである。

プルマン嘉興平湖エクセレンス

記事によると、このホテルには3つのレストランと、1,500平方メートルの大宴会場、いくつかの会議室がある。1年に23万8,000を超えるカバーで食品ロスを管理するのは、大きな課題だという。

ホテルのチームが決めた主な手順は、次のとおりだ。

  • すべての宴会の前に、人数を確かめる
  • 持ち帰りの箱を用意し、客が残った料理を家で食べられるようにする
  • しっかりした計測の計画を立てる

最初のデータの見直しをもとに、2024年の半ばまでに20%減らす目標に向けて改善を進めている。オーナーの支援や従業員の研修を含め、経営の側も深く関わっているという。

記事に書かれているのは、20%の「目標」で、減った結果ではない。1カバーあたりの重さも、1年の食品ロスの総量も書かれていない。

フェアモント・ザ・クイーン・エリザベス

記事によると、このホテルの厨房は、1年に88万を超えるカバーを出している。館内の7つの飲食の店のシェフが協力して、メニューをそろえている。同じ食材を、店ごとにちがう料理に仕立てることで、食品ロスを減らす。

ほかの取り組みは次のとおりだ。

  • メニューの入れ替えや日替わりの料理を工夫して、食材を使い切る
  • 「ソルサイクル(Solucycle)」という処理の機械で、食べ物のごみをバイオガスに変える
  • 地元の団体と協力して、残った食べ物を困っている人たちに届ける

記事は、このホテルが食品ロスの基準の値を「1カバーあたり122.5グラム」に下げたと書く。アコーのホテルの平均は300グラムだという。いつから下げたのか、期間は書かれていない。

総量と1食あたり

1食あたりの数字と、出した食事の数を掛けると、総量の目安になる。以下は記事の数字どうしの掛け算で、記事が書いた量ではない。

  • 88万カバー × 122.5グラム = 約107.8トン
  • 88万カバー × 300グラム = 約264トン

1食あたりの数字は、規模のちがうホテルどうしを比べやすい。一方で、ごみの処理の費用や、運ぶトラックの台数を考えるには、総量が必要になる。プルマン嘉興平湖エクセレンスのように、総数だけが分かるときは、1食あたりの重さが分からなければ総量も分からない。

アコーのグループの数字

同じ記事によると、2023年には、食べ物のごみがアコーのホテルの運営のごみの53%を占めた。アコーは2015年から食品ロスに取り組み、2023年に測る方法をしっかり決めた。目標は2030年までに60%減らすことだ。計測の方法を学ぶ案内や、オンラインの研修もつくり、減らし方に絞った3つ目の研修を準備しているという。

アコーが2023年9月29日に出した報道発表には、ほかのホテルの数字もある。

  • 計測の機器のウィノー(Winnow)を、約100軒が使っている
  • インドネシアの「フェアモント・ジャカルタ」は、1年で食品ロスを16%、1.6トン減らした
  • 英国の「ノボテル・ロンドン・エクセル」は、39%、12トン減らした
  • 2017年から、売れ残りを安く売る仕組みのトゥー・グッド・トゥー・ゴー(Too Good To Go)と組んでいる。2023年には685軒から13万7,116個の袋が引き取られ、137トンの食べ物が捨てられずにすみ、345トンを超える二酸化炭素の排出を防いだ

割り戻すと、フェアモント・ジャカルタの減る前の量は1年に約10トン、ノボテル・ロンドン・エクセルは約31トンになる。137トンを13万7,116個で割ると、1袋あたり約1キログラムだ。これらも記事の数字どうしの割り算である。

日本の宿に置き換えると

日本では、食品リサイクル法が、食べ物のごみの扱い方を定めている。法律の施行令の第1条は、「旅館業」を、食事を出す事業として、この法律の対象の「食品関連事業者」に入れている。

2025年3月14日に定められた国の基本方針は、まず、食べ物のごみが出ないようにすることを最優先とする。外食産業のように、あちこちから少しずつ出るごみは、再生利用などには技術、費用、エネルギーの面で制約が多いからだ。そのうえで、再生利用の手法に順番をつけている。

1. 飼料化:家畜のえさにする。成分や熱量を最も有効に使え、えさの自給率を高める
2. 肥料化:飼料化が難しい場合
3. きのこの菌床:飼料化と肥料化が難しい場合
4. メタン化など:上の3つが難しい場合。炭にした燃料、油脂、エタノール、メタンなど

フェアモント・ザ・クイーン・エリザベスの、同じ食材を店ごとに使い分ける工夫は、ごみを出さない段階の取り組みにあたる。バイオガスに変える機械は、日本の順番では4つ目の「メタン化など」に近い。

基本方針は、2029年度までに、外食産業全体で再生利用などの実施率を50%にする目標を置いている。2022年度は32%だった。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。ある宿が、1年に3万食を出し、1食あたりの食品ロスが100グラムだとする。

  • 1年の総量:3万食 × 100グラム = 3,000キログラム
  • 1食あたり80グラムに減らせば、2,400キログラムで、600キログラム減る
  • 残る2,400キログラムは、地域に飼料や肥料にする業者があるかを調べ、順番の上から選ぶ

2つの物差しを並べる

プルマン嘉興平湖エクセレンスは人数の確認や持ち帰りの箱から始め、フェアモント・ザ・クイーン・エリザベスはメニューの工夫で1食あたりの量を下げた。数字を使うときは、総数か1食あたりかを書き、できれば両方を並べると、規模のちがう宿どうしでも比べられる。

持ち帰れる知識

  • カバーは出した食事の数。総数と1食あたりは別の物差し
  • 88万カバー × 122.5グラムは約107.8トン(記事の数字どうしの掛け算)
  • アコーでは、2023年に食べ物のごみが運営のごみの53%
  • 日本の再生利用の順番は、飼料化、肥料化、きのこの菌床、メタン化など

宿で考えられること

  • 食品ロスを、1食あたりと1年の総量の両方で記録する
  • 宴会の前に人数を確かめる
  • 同じ食材を、料理ごとに使い分ける
  • 地域で飼料や肥料にする業者を調べておく

事業・予約への接続

宴会や会議の客には、人数の確認と持ち帰りの箱の用意を、予約のときの案内に入れられる。1食あたりの食品ロスを示せば、団体の客にも取り組みが伝わりやすい。

Sources / 参考情報

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