GOAL 12 · TARGET 12.5 水・衛生・循環 6分 / 3558文字 脚注で範囲を確かめる型 #402

「692トン」「56%」「12.4%」は、何軒の、いつまでの数字か:スペインの「イベロスター」が国連の気候会議で示した循環経済の道筋を、脚注と付録の表から読む

2023年12月、アラブ首長国連邦のドバイで国連の気候変動の会議(COP28)が開かれた。スペインのホテルのグループ「イベロスター」は、国連世界観光機関の催しで、循環経済に向けた「道筋」の報告書を発表した。

発表の文には、目を引く数字が並ぶ。使い捨てのプラスチックを692トン減らした。給水器を1,300台以上置いた。ごみの56%を埋め立てから外した。温室効果ガスを12.4%減らした。

報告書を開くと、こうした数字のほとんどに小さな脚注が付いている。何軒のホテルの、いつからいつまでの数字なのかが書いてある。この記事では、その脚注と、巻末の付録の表を読む。

692トンは「買う量」の差

報告書によると、イベロスターは2020年までに使い捨てのプラスチックをなくすと決め、18か月で、国をまたいだ運営と仕入れの変更を進めた。

報告書の書き方は、「2018年と比べて、1年に買うプラスチックが692トン少ない」というものだ。見直した品は1,000を超える。

  • 客室のアメニティは、使い捨てから大きな容器の品へ
  • プラスチックで包んだ歯ブラシは、竹の歯ブラシを頼まれたら出す形へ
  • プラスチックの洗濯袋は、繰り返し使える布へ
  • ミニバーの飲み物は、プラスチックのボトルからアルミかガラスへ
  • 軽食は、紙のラベルで封をしたガラスの容器へ

水については、すべてのボトルをガラスに替えるのではなく、給水器を置いてボトルそのものを要らなくした。報告書の本文は1,368台と書き、脚注で「2023年11月まで、66軒の数字」としている。発表の文の「1,300台以上」は、この数字を丸めたものと読める。

付録の表では、南北アメリカの地域が合わせて835台(メキシコ414台、ドミニカ共和国179台、ブラジル176台、ジャマイカ66台)、欧州・中東・アフリカの地域が533台だ。835 + 533 = 1,368台で、本文と一致する。66軒で割ると、1軒あたり平均で約21台になる。

代わりに出てきた負担

報告書は、プラスチックを減らしたことで出てきた別の負担も書いている。

  • ごみ箱の袋をなくすと、ごみ箱を洗う手間が増えた
  • 堆肥にできる品に替えても、地域に大きな堆肥の施設がなく、うまくいかないことがあった
  • プラスチックのボトルをガラスに替えると、二酸化炭素の排出が増えた

プラスチックだけを見ていると、ほかの面で損をすることがある。こうした経験から、イベロスターは「2025年までに埋め立てのごみをなくす」という、ごみ全体の目標を立てた。

56%は「55軒の、2022年から2023年8月まで」

ごみを減らすために、イベロスターは「3R部門」をつくった。報告書は、ホテルの業界で初めての、ごみをなくすことだけを担う部門だと説明している。部門は総支配人と本社の運営に直接報告する。

  • 2023年9月の時点で、3Rのチームがあるのは61軒。チームの社員は230人
  • チームが扱うごみは、平均で1年に2万3,100トン

報告書は、2021年に始めた取り組みで、1万2,200トン、ごみの56%を埋め立てから外したと書く。脚注によると、これは「2022年から2023年8月31日まで、55軒」の数字だ。

そのほかの数字にも、それぞれの範囲がある。

  • ホテルの中で生ごみを堆肥にした量:2022年は213トン、2023年は349トン(12軒、2023年は8月まで)
  • ブラジルで、取引先と組んで堆肥にした生ごみ:2023年に258トン(2軒)

報告書は、いま埋め立てているごみの約60%(主に生ごみ)は、地域に設備があれば価値のあるものに戻せると見込んでいる。一方で、埋め立てに回ると見込むごみの約4分の1は、仕入れ先の側で作り方や包み方を変えないと減らないとも書いている。

食品ロスの473トンは「8か月」の数字

食べ残しや作りすぎを減らすため、イベロスターは英国の会社「Winnow」の、AIで捨てた食べ物を見分ける機械を使っている。2023年9月までに207台を置いた。

報告書の本文によると、2023年の最初の8か月で、110万食分以上を救い、約180万ドルを節約し、473トンを超える食品ロスを防ぎ、2,000トンを超える二酸化炭素を減らした。脚注は51軒、付録の表は55軒の数字としていて、軒数の書き方がそろっていない。

付録の表を年ごとに並べる。

  • 2021年(3軒):39.7トン、7万3,978ドル
  • 2022年(20軒):230トン、62万8,335ドル
  • 2023年1〜8月(55軒):473トン、179万5,057ドル、118万2,501食、二酸化炭素2,034トン

2023年1〜8月の数字を割り算すると、1トンあたり約3,800ドル、1キロあたり約2.5食になる。

翌年に出た2023年の持続可能性の報告書の要約では、2023年1年間で世界で節約した食品ロスは92万1,824.04キロだ。同じ要約によると、AIの機械を入れたのは、欧州・中東・アフリカの34軒と、南北アメリカの23軒すべてである。8か月の473トンと、1年の約922トンは、同じ年の数字でも期間がちがう。

12.4%は「82軒」と「90軒」の比較

温室効果ガスでは、イベロスターは2019年を基準に、2030年までに自社の排出(スコープ1と2)を85%減らすと約束している。

報告書によると、2022年末までに12.4%減った。付録の表では、2019年が22万3,380トン、2022年が19万5,599トン(二酸化炭素に換算)で、計算すると12.4%の減少になる。ただし、脚注によると、2019年は82軒、2022年は90軒の数字だ。数える軒数が同じではない。

エネルギーの節約は、2022年末までの累計で5.7%。南北アメリカが6.1%、欧州・中東・アフリカが5.2%で、キューバを除く77軒の数字である。

これからの目標は「各ホテルの基準」から測る

報告書は、新しい目標も示した。発表の文では短く書かれているが、報告書では物差しまで書いてある。

  • ごみ全体:3R部門が決めた基準から、5年で30%減らす
  • 食品ロス:オールインクルーシブ(料金に食事などが含まれる形)のホテルで、5年で60%減らす
  • 植物性の料理:重さで、基準から5年で15%以上増やす。2030年までに、すべてのホテルで65%以上にする
  • 埋め立て:2025年までになくす。2024年以降に加わるホテルは、5年のうちに

水の目標もある。乾いた地域のホテルは、くみ上げる淡水を5年間、毎年5%ずつ減らす。そのほかのホテルは、8年間、毎年3%ずつ減らす。毎年の減り方が重なるとすると、0.95の5乗で約0.77、0.97の8乗で約0.78になり、どちらも最後には2割強の減少になる。乾いた地域のホテルには、グレーウォーターの仕組みを付けるという。

日本の宿に置き換えると

日本では、PETボトルリサイクル推進協議会が、飲み物などのPETボトルの統計を出している。

  • 2024年度の国内の販売本数は、輸入品も含めて287億本
  • 販売量は、国内品64万8,831トンと輸入品3,463トンで、合わせて約65万2,000トン
  • リサイクル率は85.1%

販売量を本数で割ると、大きさの違うボトルをならした平均で、1本約22.7グラムになる。

ボトルそのものも軽くなっている。協議会によると、2024年度のPETボトル全体の軽量化率は、2004年度と比べて28.1%。清涼飲料のボトルの出荷本数は275億本で2004年度の1.86倍になったが、出荷したボトルの重さは1.27倍にとどまる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。20室、稼働率70%の宿で、使っている客室ごとに1日2本の水のボトルを無料で置くとする。

  • 1日に14室 × 2本 = 28本。1年で1万220本
  • 1本22.7グラムとすると、1年で約232キロのプラスチック

給水器に替えれば、この本数は減らせる。一方で、イベロスターの報告書が書いたように、ガラスに替えれば排出が増え、給水器を置けば掃除と水質の管理の手間が増える。何を減らして、何が増えるのかを先に並べておくと、替えたあとに困らない。

脚注を読む習慣

イベロスターの報告書の数字は、どれも脚注で範囲が示されていた。692トンは2018年と比べた1年の買う量の差、1,368台は66軒の2023年11月まで、56%は55軒の約1年8か月、473トンは8か月、12.4%は82軒と90軒の比較だ。

大きな数字を見たときに、何軒の、いつまでの数字かを確かめる。それだけで、自分の宿と比べてよい数字かどうかが見えてくる。

持ち帰れる知識

  • 付録の表の給水器は、南北アメリカ835台+欧州など533台=1,368台
  • プラスチックをガラスに替えると排出が増え、袋をなくすと手間が増えた
  • スコープ1と2の12.4%減は、2019年の82軒と2022年の90軒の比較
  • 新しい目標は、各ホテルの基準から5年で、ごみ30%減、食品ロス60%減

宿で考えられること

  • 取り組みの数字には、軒数と期間を書き添える
  • ボトルを替える前に、増える手間と排出も並べる
  • 食品ロスは、期間をそろえて前の年と比べる
  • ごみの量を測る担当を決め、基準の年を記録しておく

事業・予約への接続

給水器や竹の歯ブラシは、客がすぐに気づく変化だ。客室の案内に「なぜボトルを置かないのか」を短く書いておくと、物足りなさより納得が伝わりやすい。数字を出すときは、いつからいつまでの何の数字かを添えると信頼につながる。

Sources / 参考情報

  • PR Newswire(英文) - COP28:イベロスターが循環経済の道筋を発表(2023年12月13日)
    裏付け: COP28の国連世界観光機関の催しで発表、2018年以降692トン・給水器1,300台以上・1,000点超、3Rの社員230人超・60軒・年約2万3,000トン・3年で56%、スコープ1と2で12.4%、エネルギー5.7%、食品ロス60%・植物性65%・ごみ30%
  • Iberostar Wave of Change(英文) - イベロスター・ホテルズ&リゾーツの循環経済への道筋(2023年12月)
    裏付け: 10ページ:18か月、1年に買う量が2018年より692トン少ない、アメニティ・竹の歯ブラシ・布の袋・アルミやガラス、給水器1,368台(脚注:2023年11月まで66軒)。11〜13ページ:袋・堆肥・ガラスの負担、61軒・230人・年2万3,100トン、1万2,200トン56%(脚注:55軒)、堆肥213→349トン、ブラジル258トン、60%と4分の1、Winnow207台・473トン(脚注:51軒)、12.4%(脚注:82軒と90軒)、5.7%(77軒)。22〜23ページ:水とごみの目標。30〜34ページ:付録の表
  • Iberostar Group(英文) - 2023年の持続可能性の報告書の要約(2024年)
    裏付け: 40ページ:2023年に世界で節約した食品ロス92万1,824.04キロ、Winnowは欧州・中東・アフリカの34軒と南北アメリカの23軒すべて
  • PETボトルリサイクル推進協議会 - リサイクル率の算出
    裏付け: 2024年度の販売本数287億本、国内品64万8,831トン・輸入品3,463トン、リサイクル率85.1%
  • PETボトルリサイクル推進協議会 - PETボトルの軽量化
    裏付け: 2024年度の軽量化率28.1%(2004年度比)、清涼飲料用の出荷本数275億本で2004年度の1.86倍、出荷ボトル重量は1.27倍

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