4,895キログラムのうち、石けんは265キログラム:バルセロナの「ヒルトン・ディアゴナル・マル」のアメニティの回収を、2030年に始まるEUの小分け容器の禁止から読む
客室の石けんの使い残しや、シャンプーの小さなボトル。スペイン・バルセロナの「ヒルトン・ディアゴナル・マル・バルセロナ」は、これらを回収する団体と組んでいる。団体が公表した数字を重さで分けると、回収したものの大半はボトルだった。そしてEUでは、2030年から、そのボトルそのものが使えなくなる。数字の内訳と、これからの決まりを並べて読む。
回収の団体が公表した数字
回収を担うのは、米国に本部を置く「クリーン・ザ・ワールド」だ。2025年5月の紹介記事によると、ホテルは433室(うちスイート21室)で、会議室が22ある。石けんとボトル入りのアメニティの両方を回収する仕組みに参加し、2025年4月までに次の数字になった。
- 回収した石けん:265キログラム
- 回収したボトル入りのアメニティ:4,630キログラム
- 回収の合計:4,895キログラム
- 配った石けん:3,113個
- 節約できた水:7,363リットル
記事によると、石けんは砕いて消毒し、第三者の検査を受けてから、地元や世界の支援の必要な地域に配る。ボトルは残った中身を抜き、洗って種類ごとに分け、細かく砕いて粒にする。粒は、新しいプラスチック製品の材料になる。
重さで分けると、95%がボトル
計算してみると、合計4,895キログラムのうち、石けんは約5.4%、ボトルは約94.6%になる。回収と聞くと石けんを思い浮かべやすいが、重さでは、ほとんどがボトルと残った中身だった。
ほかの数字も割ってみる。配った3,113個を回収した265キログラムで割ると、1キログラムあたり約12個。節約できた水を配った個数で割ると、1個あたり約2.4リットルになる。ただし、記事は、回収した石けんから何個を作ったのかを書いていない。配った個数が、このホテルの石けんだけから作られたとは限らない。
もう一つ、記事には回収を始めた時期が書かれていない。「2025年4月まで」の合計なので、1年あたりや1室あたりの量は計算できない。
ほかのホテルと比べると、割合がばらばら
クリーン・ザ・ワールドは、2026年2月の記事で、ヨーロッパのほかのホテルの数字も紹介している。
- ミュンヘンのホテル・フィア・ヤーレスツァイテン・ケンピンスキー(305室):石けん677キログラム、ボトル4,271キログラム、合計4,948キログラム
- アムステルダムのコンセルヴァトリウム・ホテル(129室):2018〜2024年に石けん2,307キログラム、ボトル3,333キログラム、合計5,640キログラム。配った石けんは4万1,210個
- ミュンヘンのヒルトン・ミュンヘン・シティ(483室):2021年からボトル6,731キログラム
石けんの割合は、ケンピンスキーで約13.7%、コンセルヴァトリウムで約40.9%になる。バルセロナの約5.4%とは大きく違う。客室の石けんの種類や、ボトルを置いているか、回収の期間がそれぞれ違うためと考えられるが、記事は理由を書いていない。なお、コンセルヴァトリウムのボトルは、同じ記事の別の場所で3,197キログラムとも書かれており、数字がそろっていない。
ヒルトンは、2019年に方針を示していた
ヒルトンの2020年4月の廃棄物の資料によると、ヒルトンは2030年までに「客室の石けんを埋め立てに送らない」という目標を掲げた。2019年には、石けんの回収を5,300軒(全体の88%)に広げた。
同じ資料は、客室の小さな容器を、大きなディスペンサーに切り替えていくと発表したとも書いている。期限は2022年だった。バルセロナのホテルが2025年4月までに回収した4,630キログラムのボトルが、いつ使われたものなのかは、紹介記事からは分からない。
2030年、EUではボトルが使えなくなる
2025年1月に官報に載ったEUの「包装と包装廃棄物に関する規則」(規則2025/40)の第25条は、2030年1月1日から、附属書Vに挙げた形と使い方の包装を、市場に出すことを禁じている。附属書Vの5番目は、宿泊業向けの次の包装だ。
- 宿泊業で使う化粧品、衛生用品、洗面用品の使い捨ての包装
- 一つの予約のためだけのもので、次の客が来る前に捨てることを前提にしたもの
- 例として、シャンプーのボトル、ハンドローションやボディローションのボトル、石けんを包む小袋が挙げられている
つまり、バルセロナのホテルで回収量の95%を占めたボトルは、EUでは2030年から出せなくなる。一方、石けんそのものは禁止の対象ではなく、包む小袋が対象になる。回収の中心は、ボトルの再生から、石けんの再生に移っていくと考えられる。欧州委員会は、2027年2月12日までに、附属書Vを詳しく説明する指針を出すことになっている。
日本の宿に置き換えると
日本には、宿の小さなボトルを禁じる決まりはない。ただ、宿から出るプラスチックの扱いには、知っておきたい点がある。
東京都環境局の説明によると、事業活動で出る20種類の産業廃棄物のうち、廃プラスチック類は、業種に関係なく産業廃棄物になる。例には「廃ポリ容器類」も挙がっている。客室から出る空きボトルも、事業のごみとして扱いを確かめる必要がある。
東京都の2024年3月の「3Rガイドライン(オフィス・商業施設等向け)」は、区市町村に出された大きな建物の再利用計画書(令和4年度)をまとめている。熱回収も含めた再利用率は、オフィスビルが約66%、店舗(飲食店を除く)が約78%なのに対し、飲食店・ホテル・式場は約45%だった。ガイドラインは、取り組みの例として、ホテルの客室のアメニティを、バイオマス由来の素材に替えることも挙げている。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。20室、稼働率70%の宿が、シャンプー、コンディショナー、ボディソープの小さなボトルを、使った部屋ごとに1本ずつ替えるとする。
- 使った部屋の数:20室 × 70% × 365日 = 年5,110室
- ボトル1本8グラム(中身の残りを含む)× 3本 = 1室24グラム
- ボトルの量:5,110室 × 24グラム = 年約123キログラム
- 石けんの使い残し:1室10グラムとすると、年約51キログラム
この仮定では、ボトルは石けんの使い残しの2倍を超える。ボトルをディスペンサーに替えれば、残るのは主に石けんになる。どちらが多いかをはかってから、回収や切り替えの順番を決めたい。
「何キロ回収したか」の前に、「何を出しているか」
バルセロナのホテルの数字は、回収の成果を示している。同時に、宿から出ていたものの大半がボトルだったことも示している。EUの決まりは、そのボトルを出さない方向に進む。回収の量を誇る前に、重さの内訳を見て、出すものを減らす順番を考えたい。
持ち帰れる知識
- 回収の重さの約95%はボトル、石けんは約5%
- 石けんの割合は、ホテルによって約5%から約41%までばらつく
- EUでは2030年1月1日から、宿泊業の一つの予約向けの使い捨ての洗面用品の包装が禁止される
- 日本では、事業で出る廃プラスチック類は業種に関係なく産業廃棄物
宿で考えられること
- 客室から出る石けんとボトルを、分けて1か月はかる
- ボトルをディスペンサーに替えられるか検討する
- 空きボトルを、産業廃棄物として正しく出しているか確かめる
- 石けんを回収して寄付する仕組みを調べる
事業・予約への接続
海外からの客、とくにヨーロッパの客は、2030年以降、小さなボトルのない客室に慣れていく。ディスペンサーの衛生の管理や、石けんの回収を自社サイトで説明しておくと、選ばれる理由になる。
Sources / 参考情報
- クリーン・ザ・ワールド(英文) - スペインのホテルの持続可能性の基準をつくる:ヒルトン・ディアゴナル・マル・バルセロナ(2025年5月21日)
裏付け: 433室(スイート21室)、会議室22、石けんとボトルの両方の回収、2025年4月までに石けん265kg・ボトル4,630kg・合計4,895kg・配った石けん3,113個・水7,363リットル、石けんは砕いて消毒し第三者の検査、ボトルは中身を抜き洗って分け砕いて粒に - クリーン・ザ・ワールド(英文) - 持続可能性という課題:ヨーロッパのホテルを循環型の廃棄物管理へ(2026年2月12日)
裏付け: ケンピンスキー・ミュンヘン(305室)石けん677kg・ボトル4,271kg・合計4,948kg、コンセルヴァトリウム(129室)2018〜2024年に石けん2,307kg・ボトル3,333kg・合計5,640kg・4万1,210個(同じ記事の別の場所ではボトル3,197kg)、ヒルトン・ミュンヘン・シティ(483室)2021年からボトル6,731kg - ヒルトン(英文) - 廃棄物のファクトシート(2020年4月)
裏付け: 2030年の目標に石けんを埋め立てに送らない、2019年に石けんの回収を5,300軒(88%)に、客室の小さな容器を2022年までに大きなディスペンサーに切り替えると発表 - 欧州連合(英文) - 包装と包装廃棄物に関する規則(EU)2025/40(2024年12月19日採択、2025年1月22日官報掲載)
裏付け: 第25条1項で2030年1月1日から附属書Vの包装を市場に出すことを禁止、第25条6項で2027年2月12日までに指針、附属書Vの5番(宿泊業の一つの予約向けで次の客の前に捨てる化粧品・衛生用品・洗面用品の使い捨ての包装、例はシャンプーのボトル・ローションのボトル・石けんを包む小袋) - 東京都環境局 - 産業廃棄物の具体例
裏付け: あらゆる業種から排出されるものに廃プラスチック類、例に廃ポリ容器類 - 東京都環境局 - 3Rガイドライン オフィス・商業施設等向け(2024年3月)
裏付け: 20種類の産業廃棄物、令和4年度の事業用大規模建築物の再利用率(オフィス約66%・店舗約78%・飲食店・ホテル・式場約45%、熱回収を含む)、ホテルの客室のアメニティをバイオマス由来の素材に替える例