氷1キログラムに、水は何リットル使うのか:サンアントニオの「ヒルトン・パラシオ・デル・リオ」が2004年にやめた「水で冷やす製氷機」を、EPAの2025年の手引きで読む
米国テキサス州サンアントニオの「ヒルトン・パラシオ・デル・リオ」の節水は、トイレやシャワーの交換で知られる。けれども、この事例でいちばん早い工事は、客室ではなく製氷機だった。2004年、ホテルは「水で冷やす製氷機」をやめた。米国環境保護庁(EPA)は、この型が空気で冷やす型の「最大6倍」の水を使うと書いている。6倍はどこから来るのか。2025年のEPAの手引きと、日本のメーカーの仕様を並べて、氷1キログラムあたりの水で考える。
事例に書かれている製氷機のこと
EPAの2014年の事例によると、ホテルは1968年に建った、ダウンタウンで最も古いホテルで、客室は470室ある。
- 2004年、市の水道事業体(SAWS)と組み、水で冷やす製氷機をやめた
- この型は、空気で冷やす型の最大6倍の水を使うことがある
- SAWSは、空気で冷やす節水型への交換に補助金を出した
- 交換した製氷機は22台。表には「1回通すだけの水で冷やす型」から「効率のよい空気で冷やす型」へ、と書かれている
- 2004年から2011年に、1室あたりの水は209ガロンから107ガロンに、49%減った
ただし、49%には、2007年からの客室のトイレ、蛇口、シャワーの交換も含まれる。製氷機だけでどれだけ減ったのかは、事例には書かれていない。また、専門誌の記事は、製氷機を15台と書いており、台数が資料によって違う。
製氷機は、水を2つの目的に使う
EPAが2025年2月にまとめた業務用製氷機の手引きによると、製氷機は水を2つの目的に使う。一つは氷にする水、もう一つは機械を冷やす水だ。
氷をつくると熱が出る。その熱を、空気で逃がすのが「空冷」、水で逃がすのが「水冷」だ。いちばん簡単な水冷は、水を機械に1回だけ通して冷やし、そのまま排水に流す。
手引きは、次のように書いている。
- 水を一滴も無駄にしない機械でも、100ポンド(45キログラム)の氷に約12ガロン(45リットル)の水が要る
- 冷やす水を除いても、100ポンドの氷に12ガロンから50ガロン超(45〜189リットル超)を使う。氷を洗う水の量や、氷の質で変わる
- 冷やす水も含めると、1回通すだけの水冷は100〜300ガロン(379〜1,136リットル)、空冷は50ガロン(189リットル)未満
「6倍」は、300と50の比
計算してみると、水冷の上の端の300ガロンを、空冷の上限の50ガロンで割ると6になる。EPAの事例の「最大6倍」と、手引きの数字は合っている。
1キログラムあたりに直すと、次のようになる。
- 一滴も無駄にしない場合:約1リットル
- 空冷:約4.2リットル未満
- 1回通すだけの水冷:約8.4〜25リットル
同じ1キログラムの氷でも、冷やし方によって、使う水が数倍から十数倍違う。
EPAが勧める順番
手引きは、空冷が多くの店や施設に向くとしている。一方で、空冷には、空気の出入り口のまわりに15センチメートル以上のすき間が要り、まわりの気温が27度以下の場所が向いている。水冷は、気温がいつも27度を超える場所や、すき間が取れない場所など、どうしても必要なときだけにするよう勧めている。
1回通すだけの水冷を使っていて、空冷に替えられない場合は、冷やす水を冷却塔や熱交換器で回して使う方式に改める。それも難しければ、冷やした後の水を別の用途に使い直すことを考える。替えるときは、必要な量に合った大きさを選ぶ。つくりすぎた氷は、それだけ水の無駄になるからだ。
空冷でも、使い方で差が出る
手引きは、すでに空冷の機械を使っている場合にも、できることを挙げている。
- エネルギースターの認証を受けた製氷機は、ふつうの空冷の型より、平均で電気が10%、水が20%少ない
- 石灰やあかを落とし、消毒する掃除を定期的に行う
- 冷やす部分のコイルと空気の取り入れ口を、ほこりのない状態に保つ
- 使わないときはふたを閉め、冷たい空気を逃がさない
- タイマーで、氷をつくる時間を夜などに移す
- 水漏れや調子の悪い製氷機に気づいたら、すぐに知らせるよう、使う人に伝えておく
また、必要以上に質の高い氷をつくると、そのぶん水を多く使う。手引きによると、透明なキューブアイスは、凍らせながら表面を洗うので水を多く使い、洗わないフレークアイスやナゲットアイスは、続けてつくることができる。飲み物に使う氷と、料理の飾りや冷やすための氷を、分けて考える余地がある。
日本の宿に置き換えると
日本の製氷機メーカーの仕様からも、目安がつかめる。ホシザキの小型の空冷のキューブアイスメーカー(IM-25M-NA)は、室温20度・水温15度で1日約24〜26キログラムの氷をつくり、水を1日約0.05立方メートル(50リットル)使う。1キログラムあたり約2リットルで、EPAの空冷の範囲に入る。
同じ会社の大型のフレークアイスメーカーには、ふだんは空冷で動き、まわりが暑くなると水冷を足して動く「空水冷」の型がある。会社のページは、年に170トンの氷を使う場合、水冷の機械と比べて年の製氷の費用の差が約24.7万円になるとしている。計算の条件は、室温30度・水温25度、電気1キロワット時21円、上水道1立方メートル215円、下水道151円(東京、税込み)だ。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で考える。宴会場のある宿が、1日に45キログラムの氷をつくるとする。
- 1回通すだけの水冷:1日379〜1,136リットル
- 空冷:1日189リットル未満
- 差:1日約190〜947リットル以上、1年で約69〜346立方メートル以上
- 水と下水の料金を1立方メートル600円とすると、1年で約4.2万〜20.7万円以上
製氷機の銘板や説明書で「水冷」と書かれていたら、まず、冷やす水が1回で流れているのか、回して使っているのかを確かめたい。夜に製氷機の排水口をのぞいて、氷をつくっていない時間にも水が流れ続けていないかを見るのも手がかりになる。
客室の外にも、水は隠れている
パラシオ・デル・リオの事例は、客室の器具の交換で知られている。しかし、最初に手をつけたのは、製氷機だった。冷やす水は、氷にならずに排水に流れる。1キログラムあたりの水で比べると、目立たない機械の重みが見えてくる。
持ち帰れる知識
- 製氷機の水は、氷にする水と、機械を冷やす水の2つ
- 1キログラムの氷に、空冷は約4.2リットル未満、1回通すだけの水冷は約8.4〜25リットル
- 「最大6倍」は、水冷300ガロンと空冷50ガロンの比
- 水冷を使うなら、冷やす水を回して使う方式に
宿で考えられること
- 製氷機が空冷か水冷かを、銘板や説明書で確かめる
- 水冷なら、冷やす水が1回で流れていないかを確かめる
- 1日に使う氷の量をはかり、機械の大きさが合っているかを見る
- 替えるときは、まわりの気温と、すき間が取れるかを確かめる
事業・予約への接続
宴会や夏のビアガーデンなど、氷を多く使う宿ほど、製氷機の水の差が大きくなる。機械の更新に合わせて節水を説明できれば、環境に配慮した会場を探す主催者への提案材料になる。
Sources / 参考情報
- US EPA(英文) - ウォーターセンスの活用:テキサスのホテルが水の効率を4つ星に(2014年7月)
裏付け: 1968年築・ダウンタウン最古・470室、2004年に水冷の製氷機をやめ空冷の型に、水冷は空冷の最大6倍の水、SAWSの補助金、表で製氷機22台(1回通すだけの水冷から効率のよい空冷へ)、2004〜2011年に1室209ガロンから107ガロン・49%減、2007年から客室の器具の交換 - US EPA(英文) - ウォーターセンス・アット・ワーク 4.2 業務用製氷機(2025年2月)
裏付け: 水は氷にする分と冷やす分、100%効率でも100ポンドに約12ガロン(45リットル)、冷やす水を除いて12〜50ガロン超、1回通すだけの水冷は100〜300ガロン(379〜1,136リットル)・空冷は50ガロン(189リットル)未満、空冷は15センチ以上のすき間と27度以下、水冷は必要なときだけ、エネルギースター認証は電気10%・水20%少ない、掃除・コイル・ふた・タイマー・水漏れの報告、キューブアイスは洗うため水が多い、冷却塔や熱交換器で回す方式への改修、冷やした水の使い直し、必要な大きさを選ぶ - FacilitiesNet(英文) - 節水の事例
裏付け: 数百台のトイレ・蛇口・シャワーと、水冷の製氷機15台を改修 - ホシザキ - 自然冷媒製氷機 アンダーカウンタータイプ ラインナップ
裏付け: IM-25M-NAは空冷、製氷能力約24/26kg/日(室温20℃・水温15℃、50/60Hz)、消費水量約0.05/0.05m³/日 - ホシザキ - 産業用大型製氷機 FM・CMシリーズ 製品特長
裏付け: 空水冷はふだん空冷で暑くなると水冷を併用、年170トンの氷で水冷機と空水冷機の年間製氷原価の差額約24.7万円、条件は室温30℃・水温25℃・上水道215円/m³・下水道151円/m³(東京・税込)