GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2570文字 能力と実績を並べる型 #408

「1日600キロ」の機械に、1日何キロ入ったのか:ドバイの3軒のホテルの生ごみ処理機を、能力と実績で読む

生ごみを微生物で分解し、水にして流す機械がある。米国のメーカー、パワーノットの「LFC」という機械は、ドバイの高級ホテルにも入っている。メーカーの発表には「1日600キロまで分解できる」といった能力の数字と、「1か月で2,000キロを超えた」といった実績の数字が並ぶ。2つを1日あたりにそろえると、何が見えるのか。ドバイの3軒と、米国タンパの1軒を読む。

4軒のホテルと、発表された数字

メーカーと発表文によると、4軒の数字は次のとおりだ。

  • フォーシーズンズ・リゾート・ドバイ・アット・ジュメイラ・ビーチ(237室、レストラン11):2022年10月にLFC-200を設置。発表文は「1日600キロまで」。2023年1月に2,000キロ超を分解した
  • ヒルトン・ドバイ・ジュメイラ(レストラン12):2023年6月1日にLFC-200の運転を始めた。発表文は「1日360キロまで」。2023年11月22日の発表までに、2万キロ超を埋め立てから外した
  • ザ・エイチ・ドバイ(236室、飲食店11):2022年10月下旬にLFC-100を設置。2か月で1,830キロを分解し、二酸化炭素に換算して3.9トンの排出を避けたとしている
  • グランドハイアット・タンパベイ(米国):専門誌によると、LFC-300は1日約1,000ポンド(約450キロ)を分解でき、実際にそれだけ分解しているという

同じ機械で、600キロと360キロ

フォーシーズンズとヒルトンは、同じLFC-200だ。それでも、発表文の能力は600キロと360キロで違う。

メーカーの製品ページを見ると、理由の手がかりがある。LFC-200が1日に分解できる量は「70〜600キロ」と幅で書かれている。LFC-100は35〜300キロ、LFC-300は100〜900キロだ。ページは、分解できる量は食べ物の種類、入れる回数、1日の稼働時間で変わると説明している。基準は、ふつうのレストランで出る生と調理済みの食べ物を、12〜16時間かけて入れた場合だ。炊いたご飯、パスタ、パンは早く分解され、1日の中で同じ量ずつ入れれば、かなり多く分解できるとも書く。

つまり「600キロ」は幅の上の端で、どの宿でも出る数字ではない。

1日あたりにそろえると

実績を1日あたりに直すと、次のようになる(計算はInnBuddyによる)。

  • フォーシーズンズ:2,000キロ÷31日で、1日約65キロ以上。600キロの約11%で、幅の下の端の70キロにも届かない
  • ヒルトン:運転開始から発表までの175日で2万キロとすると、1日約114キロ以上。360キロの約3割
  • ザ・エイチ:2か月を約61日とすると、1日約30キロ。LFC-100の幅の下の端(35キロ)を下回る

ただし、この計算には限りがある。毎日動かしたのか、ホテルの生ごみのすべてを入れたのかは書かれていない。フォーシーズンズの数字は「生ごみ」ではなく「ごみ」と書かれている。また、ザ・エイチの3.9トンを1,830キロで割ると、生ごみ1キロあたり約2.1キロになるが、どの係数で計算したのかは示されていない。

それでも、能力の数字が実際に入った量の何倍もあることは読み取れる。機械を選ぶ発表と、使った結果の報告では、見るべき数字が違う。

ザ・エイチは、機械の前に量を減らしていた

メーカーの2023年の記事によると、ザ・エイチ・ドバイは、機械に入れる前に次の取り組みをしていた。

  • 盛りつけの量の管理
  • 食材の適切な保存
  • 下ごしらえや傷みによる無駄を避ける
  • できるときは、残り物を犬の保護施設に寄付する
  • 残りを機械に入れる

総支配人は、業界誌の記事で、機械から出る水を、ホテルの植栽の水やりに使っていると話している。メーカーの記事によると、ホテルの運営チームは、機械が集めたデータを使って、さらに減らす方法を探すという。メーカーのページによると、ホテルは2023年1月に、エミレーツ・グリーンビルディング協議会から「グリーンキー」の認証を受けた。

1日約30キロという少なさは、機械の能力の問題ではなく、入れる前に減らした結果である可能性もある。

ドバイで、なぜ機械が広がったのか

メーカーのページによると、フォーシーズンズは以前、ごみをすべて埋め立てに出していた。委託の業者が数日おきに来て、ごみを量り、1キロごとに料金を取って運んでいた。ごみの多くは生ごみだった。ホテルは複数の機械を試してから、LFCを選んだという。

メーカーは、UAEのごみの約75%が埋め立てに送られている、ドバイは2030年までに食品ごみの埋め立てをなくす目標を掲げている、とも書いている。いずれも、メーカーの説明として読む必要がある。

日本の宿に置き換えると

東京都環境局が2024年3月にまとめた、オフィスや商業施設向けの3Rの手引きは、食品リサイクル法にもとづく順番を示している。まず発生を抑え、次に飼料、肥料、メタンなどへの再生利用を進める。手引きは、熱回収からメタン化へ、メタン化から飼料化や肥料化へと、順番の高い方法に見直すことを勧めている。生ごみ処理機の導入は、食品廃棄物を減らす「一歩進んだ取組」として挙がっている。最初の手順は、品目ごとの量とリサイクル率をつかむことだ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で、機械の1キロあたりの費用を考える。リースや保守など、機械の固定の費用を年60万円とする。

  • 1日30キロ入れる場合:年約1万950キロで、1キロあたり約55円
  • 1日10キロしか入らない場合:年3,650キロで、1キロあたり約164円
  • 回収に出す料金を1キロ40円とすると、どちらも回収より高くなる

この仮定では、使う量が3分の1になると、1キロあたりの費用は3倍になる。機械を入れる前に、何日か生ごみを量り、1日あたりの実際の量を出すことが出発点になる。

能力の数字は「上の端」として読む

ドバイの3軒の例は、能力の数字と実績の数字が、何倍も離れうることを示している。機械を比べるときは、能力の幅と、自分の宿の1日あたりの量を並べたい。そして、ザ・エイチのように、機械の前に量を減らす取り組みを置きたい。

持ち帰れる知識

  • メーカーの能力は「70〜600キロ」のように幅で示され、食べ物の種類や入れ方で変わる
  • 実績を1日あたりにそろえると、能力の上の端の1〜3割ほどだった
  • 機械の1キロあたりの費用は、実際に入れる量で大きく変わる
  • 日本の手引きでは、生ごみ処理機の前に、発生抑制と再生利用がある

宿で考えられること

  • 何日か生ごみを量り、1日あたりの平均と最大を出す
  • メーカーの能力が、幅のどこを指しているかを確かめる
  • 盛りつけの量や保存の見直しを、機械より先に行う
  • 機械から出る水の行き先を、自治体や業者に確かめる

事業・予約への接続

機械を入れたことより、「1日に何キロ出て、何キロ減ったか」を示せるほうが、取り組みの説明として伝わる。宴会や会議の主催者に、料理の量の調整と合わせて提案できる。

Sources / 参考情報

関連する記事