「1日600キロ」の機械に、1日何キロ入ったのか:ドバイの3軒のホテルの生ごみ処理機を、能力と実績で読む
生ごみを微生物で分解し、水にして流す機械がある。米国のメーカー、パワーノットの「LFC」という機械は、ドバイの高級ホテルにも入っている。メーカーの発表には「1日600キロまで分解できる」といった能力の数字と、「1か月で2,000キロを超えた」といった実績の数字が並ぶ。2つを1日あたりにそろえると、何が見えるのか。ドバイの3軒と、米国タンパの1軒を読む。
4軒のホテルと、発表された数字
メーカーと発表文によると、4軒の数字は次のとおりだ。
- フォーシーズンズ・リゾート・ドバイ・アット・ジュメイラ・ビーチ(237室、レストラン11):2022年10月にLFC-200を設置。発表文は「1日600キロまで」。2023年1月に2,000キロ超を分解した
- ヒルトン・ドバイ・ジュメイラ(レストラン12):2023年6月1日にLFC-200の運転を始めた。発表文は「1日360キロまで」。2023年11月22日の発表までに、2万キロ超を埋め立てから外した
- ザ・エイチ・ドバイ(236室、飲食店11):2022年10月下旬にLFC-100を設置。2か月で1,830キロを分解し、二酸化炭素に換算して3.9トンの排出を避けたとしている
- グランドハイアット・タンパベイ(米国):専門誌によると、LFC-300は1日約1,000ポンド(約450キロ)を分解でき、実際にそれだけ分解しているという
同じ機械で、600キロと360キロ
フォーシーズンズとヒルトンは、同じLFC-200だ。それでも、発表文の能力は600キロと360キロで違う。
メーカーの製品ページを見ると、理由の手がかりがある。LFC-200が1日に分解できる量は「70〜600キロ」と幅で書かれている。LFC-100は35〜300キロ、LFC-300は100〜900キロだ。ページは、分解できる量は食べ物の種類、入れる回数、1日の稼働時間で変わると説明している。基準は、ふつうのレストランで出る生と調理済みの食べ物を、12〜16時間かけて入れた場合だ。炊いたご飯、パスタ、パンは早く分解され、1日の中で同じ量ずつ入れれば、かなり多く分解できるとも書く。
つまり「600キロ」は幅の上の端で、どの宿でも出る数字ではない。
1日あたりにそろえると
実績を1日あたりに直すと、次のようになる(計算はInnBuddyによる)。
- フォーシーズンズ:2,000キロ÷31日で、1日約65キロ以上。600キロの約11%で、幅の下の端の70キロにも届かない
- ヒルトン:運転開始から発表までの175日で2万キロとすると、1日約114キロ以上。360キロの約3割
- ザ・エイチ:2か月を約61日とすると、1日約30キロ。LFC-100の幅の下の端(35キロ)を下回る
ただし、この計算には限りがある。毎日動かしたのか、ホテルの生ごみのすべてを入れたのかは書かれていない。フォーシーズンズの数字は「生ごみ」ではなく「ごみ」と書かれている。また、ザ・エイチの3.9トンを1,830キロで割ると、生ごみ1キロあたり約2.1キロになるが、どの係数で計算したのかは示されていない。
それでも、能力の数字が実際に入った量の何倍もあることは読み取れる。機械を選ぶ発表と、使った結果の報告では、見るべき数字が違う。
ザ・エイチは、機械の前に量を減らしていた
メーカーの2023年の記事によると、ザ・エイチ・ドバイは、機械に入れる前に次の取り組みをしていた。
- 盛りつけの量の管理
- 食材の適切な保存
- 下ごしらえや傷みによる無駄を避ける
- できるときは、残り物を犬の保護施設に寄付する
- 残りを機械に入れる
総支配人は、業界誌の記事で、機械から出る水を、ホテルの植栽の水やりに使っていると話している。メーカーの記事によると、ホテルの運営チームは、機械が集めたデータを使って、さらに減らす方法を探すという。メーカーのページによると、ホテルは2023年1月に、エミレーツ・グリーンビルディング協議会から「グリーンキー」の認証を受けた。
1日約30キロという少なさは、機械の能力の問題ではなく、入れる前に減らした結果である可能性もある。
ドバイで、なぜ機械が広がったのか
メーカーのページによると、フォーシーズンズは以前、ごみをすべて埋め立てに出していた。委託の業者が数日おきに来て、ごみを量り、1キロごとに料金を取って運んでいた。ごみの多くは生ごみだった。ホテルは複数の機械を試してから、LFCを選んだという。
メーカーは、UAEのごみの約75%が埋め立てに送られている、ドバイは2030年までに食品ごみの埋め立てをなくす目標を掲げている、とも書いている。いずれも、メーカーの説明として読む必要がある。
日本の宿に置き換えると
東京都環境局が2024年3月にまとめた、オフィスや商業施設向けの3Rの手引きは、食品リサイクル法にもとづく順番を示している。まず発生を抑え、次に飼料、肥料、メタンなどへの再生利用を進める。手引きは、熱回収からメタン化へ、メタン化から飼料化や肥料化へと、順番の高い方法に見直すことを勧めている。生ごみ処理機の導入は、食品廃棄物を減らす「一歩進んだ取組」として挙がっている。最初の手順は、品目ごとの量とリサイクル率をつかむことだ。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)で、機械の1キロあたりの費用を考える。リースや保守など、機械の固定の費用を年60万円とする。
- 1日30キロ入れる場合:年約1万950キロで、1キロあたり約55円
- 1日10キロしか入らない場合:年3,650キロで、1キロあたり約164円
- 回収に出す料金を1キロ40円とすると、どちらも回収より高くなる
この仮定では、使う量が3分の1になると、1キロあたりの費用は3倍になる。機械を入れる前に、何日か生ごみを量り、1日あたりの実際の量を出すことが出発点になる。
能力の数字は「上の端」として読む
ドバイの3軒の例は、能力の数字と実績の数字が、何倍も離れうることを示している。機械を比べるときは、能力の幅と、自分の宿の1日あたりの量を並べたい。そして、ザ・エイチのように、機械の前に量を減らす取り組みを置きたい。
持ち帰れる知識
- メーカーの能力は「70〜600キロ」のように幅で示され、食べ物の種類や入れ方で変わる
- 実績を1日あたりにそろえると、能力の上の端の1〜3割ほどだった
- 機械の1キロあたりの費用は、実際に入れる量で大きく変わる
- 日本の手引きでは、生ごみ処理機の前に、発生抑制と再生利用がある
宿で考えられること
- 何日か生ごみを量り、1日あたりの平均と最大を出す
- メーカーの能力が、幅のどこを指しているかを確かめる
- 盛りつけの量や保存の見直しを、機械より先に行う
- 機械から出る水の行き先を、自治体や業者に確かめる
事業・予約への接続
機械を入れたことより、「1日に何キロ出て、何キロ減ったか」を示せるほうが、取り組みの説明として伝わる。宴会や会議の主催者に、料理の量の調整と合わせて提案できる。
Sources / 参考情報
- Power Knot(英文) - フォーシーズンズ・リゾート・ドバイが生ごみ処理機で持続可能性を高めた方法
裏付け: 237室、以前はすべて埋め立て、業者が数日おきに量って1キロごとに料金、多くが生ごみ、複数の機械を試した、2022年10月にLFC-200を設置、2023年1月に2,000キロ超、UAEのごみの約75%が埋め立て - PR Newswire(英文) - フォーシーズンズ・リゾート・ドバイ・アット・ジュメイラ・ビーチがパワーノットの生ごみ処理機を設置(2023年3月7日)
裏付け: LFC-200は1日600キロまで、237室・レストラン11 - Power Knot(英文) - ヒルトン・ドバイ・ジュメイラが生ごみ処理機を導入(2023年11月22日)
裏付け: LFC-200は1日360キロまで、レストラン12、2023年6月1日に運転開始、2万キロ超を埋め立てから外した - Power Knot(英文) - 生ごみ処理機がザ・エイチ・ドバイのグリーンキー認証を助けた方法
裏付け: 236室・飲食店11、2022年10月下旬にLFC-100を設置、2か月で1,830キロ、3.9トン、2023年1月にグリーンキー、機械が自動で重さを量る - Power Knot(英文) - ドバイが新しい技術で食品ごみに取り組む:LFC(2023年4月24日)
裏付け: フォーシーズンズの11レストラン・1日600キロ、ザ・エイチの盛りつけ・保存・下ごしらえ・犬の保護施設・残りを機械へ、業界誌での総支配人の発言(2か月で1,830キロ、排水を植栽の水やりに)、運営チームがデータで追加の削減策を探す、ドバイの2030年の目標 - Power Knot(英文) - LFC生ごみ処理機
裏付け: LFC-100は35〜300キロ、LFC-200は70〜600キロ、LFC-300は100〜900キロ、量は食べ物の種類・入れる回数・稼働時間で変わる、基準は12〜16時間、ご飯・パスタ・パンは早い - Lodging Magazine(英文) - 食べ残しよ、さようなら:生ごみ処理機がホテルの食品ごみを減らす
裏付け: グランドハイアット・タンパベイのLFC-300は1日約1,000ポンド、実際にそれだけ分解 - 東京都環境局 - 3Rガイドライン オフィス・商業施設等向け(2024年3月)
裏付け: 食品リサイクル法の優先順位、飼料化・肥料化・メタン化、熱回収からメタン化へ・メタン化から飼料化や肥料化へ、生ごみ処理機で減量化(一歩進んだ取組)、品目・排出量・リサイクル率の把握