GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 5分 / 2795文字 換算を割る型 #412

「836キロで4トン」と「1食で約2.4キロ」:ドイツの「ラディソン・ブル・ドルトムント」の食品ロスを、CO2の換算で読む

ドイツ西部の町ドルトムント。公園のそばに建つ「ラディソン・ブル・ホテル・ドルトムント」は、厨房に食品ロスを測る機械を入れ、最初の10か月で捨てる食べ物を34%減らした。減った量は836キログラムで、CO2に換算すると4トンにあたるという。同じ紹介文には、ラディソンのグループが、余った料理をアプリで売って「18,724食、CO2で45.8トン」を減らしたという数字も並ぶ。2つの数字を割ってみると、食べ物1キログラムあたりのCO2の重さが、ずいぶんちがう。この記事では、その差がどこから来るのかを読む。

紹介文に書かれていること

世界の持続可能なホスピタリティの連盟(World Sustainable Hospitality Alliance)は、ラディソン・ホテル・グループの事例を紹介している(日付の記載なし)。グループは、埋め立てや焼却に回る食べ残しを減らすため、盛り付けの量の管理、食材の正しい保存、そして2つの提携を進めているという。

ドルトムントのホテルとウィノウ

  • ホテルは、厨房の食品ロスを見える化する英国の会社ウィノウの技術を使い始めた
  • データの分析で作りすぎを抑え、品目ごとに作る量を適正にし、アラカルトの料理の盛り付けの量も見直した
  • 最初の10か月で、食品ロスを34%減らした。836キログラムにあたり、CO2換算で4トンの削減に相当する

グループとトゥー・グッド・トゥー・ゴー

  • 店で余った食べ物を、決まった値引き価格で客に売れるアプリ「トゥー・グッド・トゥー・ゴー」と提携した
  • ヨーロッパの49軒のラディソンのホテルが参加している
  • 始めてから、18,724食を捨てずにすみ、CO2で45.8トンの削減にあたる

ドルトムントは、どんな流れで始めたか

ウィノウの2019年5月のブログによると、ホテルの不動産会社パンドックスが、ドイツとベルギーの自社の3軒のホテルでウィノウを試すことにした。そのひとつが、ドルトムントのホテルだ。パンドックスの担当者は、目的を「3軒の試験のホテルで食品ロスを大きく減らし、損益に直接効かせること」と、「日々の仕事の中で食品ロスへの意識を高め、行動を変えること」と話している。3軒とも、環境の認証「グリーンキー」を受けていた。

ホテルの公式サイトは、いまも持続可能性の取り組みとして「年に約7トンの食品ロスを避けている」と書いている。紹介文の「10か月で836キログラム」とは、期間も数え方も示されていない数字で、そのまま比べることはできない。

2つの数字を割ってみる

紹介文の数字どうしを割ると、次のようになる(InnBuddyによる計算)。

  • ドルトムント:4トン÷836キログラム=食べ物1キログラムあたり約4.8キログラムのCO2
  • アプリの提携:45.8トン÷18,724食=1食あたり約2.45キログラムのCO2

ドルトムントの数字は、アプリの数字のおよそ2倍だ。紹介文は、どちらの換算にも、使った係数や計算の方法を書いていない。

アプリの提携は、以前の記事でも数字が出ていた。英国の旅行誌ビジネス・トラベラーの記事は、提携を始めてから15,367食、CO2で37.6トンと伝えている。これも割ると、1食あたり約2.45キログラムだ。食数が増えても、1食あたりの値は変わっていない。食数に決まった係数を掛けていると考えられる。

アプリの会社の物差し

トゥー・グッド・トゥー・ゴーは、自社のサイトで、環境への効果の計算方法を公開している。

  • 1食=1個の「サプライズバッグ(中身を選べない詰め合わせ)」=平均1キログラムの食べ物とする
  • 2023年に、代表的な国でバッグ150個の重さを測ったところ、平均1.5キログラムだった。種類の差を考え、控えめに1キログラムに切り下げた
  • 2024年に、食の持続可能性の専門機関と一緒に、ライフサイクル(生産から廃棄まで)の評価を行った。食べ物1キログラムを救うと、CO2で2.7キログラムを避けられるとしている
  • 計算は、捨てられた場合と、アプリで救われた場合の差。救われた食べ物の90%が食べられ、客は同じような食べ物を買わずにすむ、と仮定している

ラディソンの「1食あたり約2.45キログラム」は、この2.7キログラムより小さい。紹介文がいつの係数を使ったのかは、書かれていない。

日本の国の物差し

日本では、消費者庁が、食品ロスによる温室効果ガスの排出量を推計している。2025年8月の調査の報告書によると、2023年度の食品ロス464万トンに対して、温室効果ガスの排出は1,050万トンだった。

報告書は、食品ロス1トンあたりの排出量を2.26トンとし、こう注意している。

  • この値は、たとえば地方自治体が、地域の食品ロスの量から温室効果ガスを簡単に推計し、住民への啓発に使うことを想定したもの
  • あくまで全国の発生の状況に対する推計で、食品ロスの量で割り振った値である

2026年6月に公表された2024年度の推計では、食品ロス461万トン、温室効果ガス978万トンだった。割ると、1トンあたり約2.12トンになる(InnBuddyによる計算)。

何を数えるかで、係数が変わる

食べ物1キログラムあたりのCO2は、こうして並べると、約2.1〜4.8キログラムの幅がある。

  • 何の食べ物か。肉が多ければ大きく、パンや野菜が多ければ小さい
  • どこまで数えるか。生産だけか、運ぶ、調理する、捨てる、までを含むか
  • 何と比べるか。捨てた場合とだけ比べるのか、代わりに買わずにすんだ分まで数えるのか

ドルトムントの4トンが、どの前提に立つのかはわからない。ただ、厨房で測った「836キログラム」は、重さの実績だ。CO2の4トンは、その重さに何かの係数を掛けた、換算の数字である。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、厨房で測り始めた宿が、1年で食品ロスを500キログラム減らしたとする。

  • ドルトムントの割り算の値(約4.8)を使うと、CO2で約2.4トン
  • アプリの会社の係数(2.7)を使うと、約1.35トン
  • 消費者庁の報告書の値(2.26)を使うと、約1.13トン

同じ500キログラムでも、CO2の数字は2倍以上ちがってくる。宿の報告や案内でCO2の数字を書くときは、「食べ物を何キログラム減らしたか」を主にし、CO2は「どの係数を使ったか」と一緒に書くと、読む人が比べられる。

重さは実績、CO2は換算

ドルトムントのホテルが示したのは、機械で測り、10か月で836キログラムを減らしたという事実だ。CO2の4トンは、その事実に掛けた物差しの結果である。自分の宿の数字を外に出すときも、まず重さを測り、換算はその後ろに、係数と出典を添えて置きたい。

持ち帰れる知識

  • 食べ物1キログラムあたりのCO2の換算は、前提によって約2.1〜4.8キログラムの幅がある
  • トゥー・グッド・トゥー・ゴーは、1食=1キログラム、1キログラムで2.7キログラムのCO2としている
  • 消費者庁の報告書は、食品ロス1トンあたり2.26トンを、全国の按分値として示している
  • 重さは実績、CO2は換算。換算には係数と出典を添える

宿で考えられること

  • まず、食品ロスの重さを測る
  • CO2に換算するときは、使った係数と出典を決めておく
  • 年ごとに係数を変えるなら、そのことを書いておく
  • 余った料理を売ったり渡したりする前に、作る量を見直す

事業・予約への接続

企業の出張や団体の予約では、環境への取り組みの数字を求められることがある。重さの実績と、換算の前提を分けて示せる宿は、問い合わせに落ち着いて答えられる。

Sources / 参考情報

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