GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 4分 / 2565文字 1食あたりで測る型 #413

「1年で10%」の目標を、9か月で37%:ロンドンの「トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフ」が、1食あたりで測った食品ロス

ロンドンのビジネス街カナリー・ワーフにあるホテル「トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフ」は、厨房に食品ロスを測るカメラ付きの機械を3台入れた。最初に立てた目標は、「1年で、1食あたりの食品ロスを10%減らす」こと。結果は、9か月で37%だった。この事例で目を引くのは、成績を「総量」ではなく「1食あたり」で測っている点だ。この記事では、1食あたりで測る意味と、事例に並ぶ「食数」「CO2」「木の本数」という換算の数字を読む。

事例の記事に書かれていること

機械を提供したオランダの会社オービスクは、2026年1月に事例の記事を出した。

機械を入れる前と後

  • 以前は、食品ロスを勘で管理していた
  • 上位の仕様の機械「オービ」を3台入れ、捨てた物の写真と、毎日の分析を見られるようにした
  • 見えてきたのは、朝食ビュッフェの作りすぎ、働く人の食堂であまり食べられていない料理、たくさん並べすぎて残る料理だった

打った手

  • 朝食ビュッフェは、小さな量をこまめに作るようにした
  • 客の前に立つ人と厨房の人を研修し直し、避けられる食品ロスを見分けられるようにした
  • 働く人の食堂の献立を、実際に食べられている量に合わせて変えた
  • 並べる量を減らし、見た目の質は保った
  • 先に仕入れた物から使う(先入れ先出し)を徹底し、余った果物、野菜、パンを別の料理に生かした
  • 毎週の結果を、チームをまたいで共有した

9か月の結果

  • 1食あたりの食品ロスの平均を、37%減らした
  • 11,050食を捨てずにすんだ
  • CO2で15,707キログラムを避けた。木700本が1年に吸収する量にあたる
  • 2万5,047ポンドを節約した

次の段階として、新しい献立の効果を追うこと、繁忙期の傾向を見ること、宿泊客の数に合わせて仕込みを合わせること、働く人の食堂での啓発を増やすことを挙げている。

「1食あたり」で測る意味

ホテルでは、提供した食事の人数分を「カバー」と数えることが多い。トライブの目標と結果は、このカバーあたり、つまり1食あたりの食品ロスで示されている。

総量で測ると、客が多い月は捨てる量も増え、客が少ない月は減る。努力の効果と、客の数の増減が、区別できなくなる。1食あたりで測れば、客の数が変わっても、作り方や並べ方の改善を比べやすい。

一方で、1食あたりの数字だけでは、全体でどれだけ減ったかはわからない。トライブの事例も、1食あたりの減り方(37%)と、捨てずにすんだ食数(11,050食)を、別々に示している。

37%は、目標のおよそ4倍

目標は「1年で10%」。結果は「9か月で37%」。期間が短いのに、減り方は目標のおよそ4倍だった。

ただし、事例の記事は、比べた基準の期間がいつか、37%がどの月の数字の平均かまでは書いていない。目標を大きく上回ったときほど、基準の取り方を記録しておくと、次の目標を立てやすい。

「11,050食」は、重さからの換算

事例の記事は、捨てずにすんだ食べ物の重さを書いていない。示されているのは、食数とCO2と金額だ。

同じ会社の別の事例では、重さと食数が両方出ている。シンガポールのラッフルズ・ホテルの事例では、1,097キログラムが2,437食にあたるとしている。割ると、1食あたり約0.45キログラムだ。会社の2024年の報告も、190万キログラムを超える食べ物を、440万食にあたるとしている。こちらは割ると約0.43キログラムで、数字が丸められているぶん、やや小さく出る(InnBuddyによる計算)。

もしトライブの11,050食にも、ラッフルズと同じ1食約0.45キログラムを当てはめると、約5トンの食べ物になる。これはInnBuddyによる仮の計算で、事例の記事が示した重さではない。

「木700本」を割ってみる

CO2の15,707キログラムを、木の700本で割ると、1本が1年に吸収するCO2は約22.4キログラムになる(InnBuddyによる計算)。事例の記事は、どんな木を想定したのかを書いていない。

日本の林野庁は、適切に手入れされた36〜40年生のスギの人工林1ヘクタールが、1年に約8.8トンのCO2を吸収すると推定している。1ヘクタールに1,000本の木があると仮定すると、スギ1本あたり約8.8キログラムだ。

この値で同じ15,707キログラムを割ると、スギ約1,785本になる(InnBuddyによる計算)。木の種類や年齢、育つ場所で、木の本数のたとえは2倍以上変わる。

消費者庁の2025年8月の調査の報告書も、2023年度の国民1人あたりの食品ロスによる温室効果ガス(年84キログラム)を、スギの木で表している。林野庁の1本8.8キログラムを使い、「スギの木を約10本植える必要がある」としている。たとえに木を使うときは、このように、どの木の、どの値かを添えると、読む人が確かめられる。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、朝食を出す宿が、1食あたりの食品ロスを120グラムから10%減らし、108グラムにしたとする。

  • 客の少ない月:1日50食×30日×120グラム(改善前)=180キログラム
  • 客の多い月:1日110食×30日×108グラム(改善後)=約356キログラム

改善したあとの月のほうが、総量では約2倍になる。総量だけを見ると、「増えた」と読めてしまう。

同じ客の多い月に、改善しないまま120グラムだったら、396キログラムだった。改善の効果は、396−356で約40キログラムだ。1食あたりの数字があってはじめて、この差を取り出せる。

宿で目標を立てるときは、「1食あたり何グラム」と「その月に何食出したか」を、必ず両方記録しておきたい。朝食、夕食、働く人の食事を分けて記録すると、トライブのように、どこで作りすぎているかも見えやすい。

割る数を、先に決める

トライブの事例は、目標を「1食あたり」で立て、毎週の結果を全員で見ることで、短い期間に大きく減らした。食数やCO2や木の本数は、その結果を伝えるための換算だ。自分の宿で始めるときは、まず「何で割るか」を決め、次に「何に換算するか」と、その前提を書き添えたい。

持ち帰れる知識

  • 1食あたりで測ると、客の数の増減と、改善の効果を分けられる
  • 総量の数字と1食あたりの数字は、別々に記録する
  • オービスクの事例では、1食はおよそ0.45キログラムとして換算されている
  • 木の本数のたとえは、木の種類と年齢で2倍以上変わる

宿で考えられること

  • 食品ロスの目標を「1食あたり何グラム」で立てる
  • 毎日、出した食数も記録する
  • 朝食、夕食、働く人の食事を分けて測る
  • 結果を毎週、チームで共有する

事業・予約への接続

「1食あたりの食品ロスを何%減らした」と示せる宿は、客の数に左右されない改善の成果を説明できる。朝食に力を入れる宿では、作りすぎを減らしながら質を保つ工夫そのものが、案内の材料になる。

Sources / 参考情報

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