GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 4分 / 2483文字 順番で読む型 #415

機械が来る前に3トン、来てから14か月で28%:英国の「ノボテル・ケンブリッジ・ノース」が、意識づけと計量を重ねた順番

英国ケンブリッジのホテル「ノボテル・ケンブリッジ・ノース」は、食品ロスを測る機械を入れる前に、チームの工夫だけで3トンの食品ロスを減らした。そのあと機械を入れ、14か月でさらに28%減らした。この事例は、「人の意識づけ」と「計量の技術」のどちらが効くかではなく、どの順番で重ねるかを考える材料になる。この記事では、2つの段階と、成果の数字の中身を読む。

事例の記事に書かれていること

食品ロスを測る機械を提供するオランダの会社オービスクは、2025年7月に事例の記事を出した。

機械を入れる前(2023年)

  • チームは、機械が厨房に来る前に、食品ロスを大きく減らした
  • 気づき、作戦、やる気だけで、3トンの食品ロスを自分たちで減らした

機械を入れてから

機械「オービ」を入れ、30日分のデータと、オービスクの「食品ロス・コーチ」の助言を受けて、次のような手を打った。

  • 食品ロスを減らす専任のチーム「フード・ウェイスト・ウォリアーズ」をつくり、ホテル全体の文化にしていった
  • 食品ロスが特に多い朝食ビュッフェ、特に稼働の高い時期に力を集中した
  • いつ、何を、どれだけ捨てたかのデータを使って、厨房の作業を細かく調整した
  • 2024年には、働く人の食事と朝食の提供にも範囲を広げた
  • 厨房のチームに任せ、成果を認めることで、誇りと工夫を引き出した
  • 催しの際には「ウェイスト・ウォリアーズ・コーナー」を設け、質のよい残り物を環境に配慮した容器で客が持ち帰れるようにした

14か月の結果

  • 食品ロスを28%減らした
  • 2,449キログラムの食べ物を捨てずにすんだ
  • 1万7,524ユーロを節約した
  • CO2で7,073キログラムを避けた

記事は、このCO2を、ガソリン車で地球を約1周半走るのと同じくらいとしている。

2つの段階は、足し算できない

3トンと2,449キログラム。数字だけを並べると、機械なしの段階のほうが大きく見える。ただ、2つの数字は、期間も、比べた基準も違う。

  • 3トンは、2023年の取り組みの成果。何と比べた3トンかは書かれていない
  • 28%と2,449キログラムは、機械で測り始めてからの14か月の成果。28%の基準となった時期も書かれていない

28%の基準が、2023年の改善のあとの水準なら、2つの段階の成果は重なっている。記事からは、そこまでは読み取れない。言えるのは、意識づけで減らしたあとにも、計量で見つかる食品ロスが残っていた、ということだ。

1キログラムあたりに直す

14か月の成果を、捨てずにすんだ1キログラムあたりに直すと、次のようになる(InnBuddyによる計算)。

  • 金額:1万7,524ユーロ÷2,449キログラム=約7.16ユーロ
  • CO2:7,073キログラム÷2,449キログラム=約2.89キログラム

同じ会社のシンガポールのラッフルズ・ホテルの事例では、1,097キログラムでCO2を3,220キログラム避けたとしている。1キログラムあたり約2.94キログラムで、ノボテルとほぼ同じ水準だ(InnBuddyによる計算)。

日本の消費者庁の2025年8月の調査の報告書は、2023年度の日本の食品ロス全体について、1トンあたりの温室効果ガスを2.26トンとしている。どこまでを数えるかで、係数は変わる。1キログラムあたりのCO2は、事例どうしで比べるときにも、前提の違いを意識したい。

「地球1周半」を割ってみる

地球1周を約4万キロメートルとすると、1周半は約6万キロメートル。7,073キログラムを6万キロメートルで割ると、1キロメートルあたり約118グラムのCO2になる(InnBuddyによる計算)。記事が引いているのは、欧州環境庁の新車の乗用車のCO2の指標で、どの年のどの値を使ったかまでは書かれていない。

日本の宿に置き換えると

日本の「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」は、2025年3月25日に変更された。その中で、レストランや宴会場のあるホテル等を含む外食事業者に、次のような行動を期待している。

  • 天候や曜日、客の特性を考えた仕入れと提供
  • 小盛りや小分けなど、客が食べきれる量を選べる仕組み
  • 宴会で、乾杯後の30分とお開き前の10分は席で料理を楽しむ「30・10運動」
  • 「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」に基づく、食べ残しの持ち帰り

食品関連の事業者全体には、食品廃棄物等の継続的な計量などで、自らが出している食品ロスを把握することも求めている。ノボテルの2つの段階は、ちょうどこの「工夫」と「計量」にあたる。催しでの持ち帰りのコーナーも、日本ではガイドラインに沿い、衛生上の注意を説明したうえで行う形になる。

方針は、事業系の食品ロスを、2000年度と比べて2030年度までに60%減らす(219万トン)目標も示している。

2つの段階を、掛け算で見る

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、週に100キログラムの食品ロスを出す宿を考える。

  • 第1段階:意識づけで15%減らし、週85キログラムになる
  • 第2段階:計量を始め、残った85キログラムからさらに20%減らし、週68キログラムになる
  • 全体の削減は32%。15%と20%を足した35%にはならない

年に直すと、100キログラム×52週=5,200キログラムが、68キログラム×52週=3,536キログラムになる。差は1,664キログラム。消費者庁の報告書の1トンあたり2.26トンを当てはめると、CO2で約3.8トンになる。

第2段階の20%は、第1段階で減らしたあとの量に対する割合だ。どの時点を基準にした割合かを、段階ごとに記録しておくと、あとで成果を説明しやすい。

順番を決めて、重ねる

ノボテル・ケンブリッジ・ノースは、まずチームの意識と工夫で減らし、次に計量で見えにくい食品ロスを掘り起こした。機械を入れるかどうかにかかわらず、宿でも「工夫で減らす」「測って減らす」を順に重ね、各段階の基準を書き残しておきたい。

持ち帰れる知識

  • 意識づけで減らしたあとにも、計量で見つかる食品ロスは残る
  • 段階ごとの削減率は、足し算ではなく掛け算で重なる
  • 1キログラムあたりのCO2の係数は、事例や国の推計で前提が違う
  • 日本の基本方針も、外食事業者の工夫と、継続的な計量の両方を挙げている

宿で考えられること

  • 食品ロスを減らす担当のチームを決める
  • 朝食など、食品ロスの多い場面から始める
  • 重さを測り始める前に、基準となる期間を決めておく
  • 催しでの持ち帰りは、国のガイドラインに沿って準備する

事業・予約への接続

宴会や催しを受ける宿では、食べきりの呼びかけや持ち帰りの対応を、案内の段階で伝えられる。段階ごとの成果を数字で示せると、法人の会議や催しの主催者に、取り組みを説明しやすい。

Sources / 参考情報

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