「誰が分けるか」を先に決める:サンフランシスコの「ホテル・モナコ」が、透明な袋と専任の担当で80%を埋め立てから外した
米国サンフランシスコの「ホテル・モナコ」(キンプトン系、201室)は、ごみの80%を埋め立てに回さずにすむようにし、年に12万ドルを節約した。市の環境局がまとめた事例集を読むと、目立つのは設備よりも「誰が、どこで分けるか」の決め方だ。客、ベルマン、ハウスマン、仕分けの専任の担当、部門長のチームが、それぞれの場所で役割を持っている。この記事では、その役割の分け方と、市内の5軒の数字の読み方を見る。
市の事例集に書かれていること
サンフランシスコ市の環境局は、市内のホテル5軒について「リサイクルと堆肥化の事例」をまとめた。資料の末尾には「05/10」とあり、2010年5月の版と読める。ホテル・モナコの欄には、次のように書かれている。
規模と結果
- 201室のホテルのリサイクルと堆肥化
- 埋め立てから外した割合(転用率)は80%
- 年間の節約は12万ドル
特徴
- 従業員食堂では使い捨ての食器を使わない
- ボトル入りの水をやめた
- ベルマンが、到着した客の一人ひとりに、リサイクルの仕組みを伝える
うまくいく要素
- 客室でのリサイクル
- 収集会社リコロジーの営業の担当者が、改善の提案、研修、掲示物を定期的に用意する
- 環境認証「グリーンシール」の毎月の監査が、部門どうしのよい競争と継続を支える
- 部門長でつくる「グリーンチーム」が定期的に集まり、改善を続ける
- 専任の担当が、ごみの中からリサイクルと堆肥に回すものを館内で仕分ける
- 透明な袋を使い、ハウスマンが、仕分けの必要なものをひと目で判断できるようにする
- 言語ごとの研修を続ける
ほかに、洗面用品、リネン、寝具の寄付、2006年の地域の環境賞(CORY賞)の受賞も挙げている。改善できる点としては、従業員の休憩室にリサイクルと堆肥の回収を入れること、従業員の教育で参加を広げ続けることを挙げている。
分ける人を、場所ごとに並べる
事例集の項目を、ごみが生まれる場所の順に並べ直すと、次のようになる。
| 場所 | 担う人 | 事例集にある仕組み |
| --- | --- | --- |
| 到着時のロビー | ベルマン | 一人ひとりにリサイクルの仕組みを伝える |
| 客室 | 客 | 客室でのリサイクル |
| 館内の運搬 | ハウスマン | 透明な袋で、仕分けが必要かを判断する |
| 集積の場所 | 専任の担当 | ごみからリサイクルと堆肥を仕分ける |
| 運営全体 | 部門長のグリーンチーム | 定期的に集まり改善する。毎月の監査 |
客が分けきれなかったものを、ハウスマンが袋の外から見つけ、専任の担当が最後に仕分ける。最初の分別がうまくいかなくても、次の人が拾える形になっている。事例集は、従業員に向けて言語ごとの研修を続けていることも挙げている。分ける人が多い職場ほど、伝え方をそろえる工夫がいる。
5軒を、1室あたりに直す
市の事例集の5軒の数字を並べ、年間の節約額を室数で割った(InnBuddyによる計算)。
| ホテル | 室数 | 転用率 | 年間の節約 | 1室あたり |
| --- | --- | --- | --- | --- |
| ホテル・モナコ | 201室 | 80% | 12万ドル | 約597ドル |
| タスカン・イン | 221室 | 80% | 8万9,000ドル | 約403ドル |
| Wホテル | 404室 | 70% | 10万ドル | 約248ドル |
| オーチャード・ホテル | 104室 | 67% | 2万5,000ドル | 約240ドル |
| ホテル・ニッコー | 533室 | 75% | 10万8,000ドル | 約203ドル |
1室あたりで見ると、ホテル・モナコの節約は、5軒の中で最も大きい。ただし、事例集は、節約額に何を含めたか、どの年と比べたかを書いていない。転用率が同じ80%のタスカン・インとも、1室あたりで約1.5倍の差がある。ホテルの業態、厨房の大きさ、もとの契約の内容でも差は生まれるため、この表だけで、どの施策が節約を生んだかは言えない。
80%の外にある20%
転用率80%は、裏返すと、20%がまだ埋め立てに回っているということだ。事例集が改善点に挙げたのは、従業員の休憩室だった。客室や厨房に仕組みを入れても、従業員が昼食をとる場所には分別の箱がなかったことになる。残る20%を減らすには、客の目に触れない場所を一つずつ点検することになる。
市の仕組みが、分ける理由をつくる
サンフランシスコのホテル協会のウェブサイト(2017年3月時点の保存版)によると、市は2020年までに埋め立てごみをゼロにする目標を掲げ、住民にも事業者にも、リサイクル、堆肥、それ以外のごみの3つに分けることを求めていた。収集会社リコロジーの料金は「捨てた分だけ払う」方式で、それ以外のごみを減らして、リサイクルと堆肥に回すほど、支払いが少なくなる。
同じ市内のヒルトン・サンフランシスコ・ユニオンスクエアの取り組みは、#299 で詳しく読んだ。ホテル・モナコの年12万ドルも、この料金の仕組みの中で生まれた数字として読む必要がある。
日本の宿に置き換えると
日本でも、透明な袋は、すでに事業系のごみのルールになっている地域がある。
- 大阪市は、2008年(平成20年)1月から、ごみを出すときに「中身の見えるごみ袋」(透明または半透明)を使うよう指定しており、事業系のごみにも使うよう求めている
- 京都市は、事業系の一般廃棄物を、無色透明か白色透明の、90リットルまでの丈夫な袋で出すよう求めている。色のついた袋や紙袋、段ボール箱は使えない
ホテル・モナコの透明な袋は、収集のためだけでなく、館内で「この袋は仕分けが必要か」を判断する道具として使われていた。収集のルールで透明な袋を使っている宿なら、同じ袋を、館内での確認の手順にも組み込める。
言語ごとの研修も、日本の宿に関係が深い。厚生労働省のまとめでは、2025年10月末時点で、宿泊業の事業所で働く外国人は4万7,007人、外国人を雇う宿泊業の事業所は6,311か所だった。宿泊業と飲食サービス業を合わせると31万9,999人で、前の年の27万3,333人から増えている。分別の掲示や研修を、ふだん職場で使う言葉に合わせることは、ホテル・モナコと同じ課題への答えになる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
40室の宿で、館内から1日に45リットルの可燃ごみの袋が10袋出るとする。
- 透明な袋なので、運ぶ担当が、資源が混じっている袋を外から見分けられる。1日に3袋で見つかるとする
- 集積の場所で、仕分けの担当が1袋に2分かけて抜き出す。1日に6分、年に約37時間になる
- 抜き出した資源で、可燃ごみが1日に1袋減るとすると、年に365袋が資源に回る
年37時間を、誰の仕事として時間を割り当てるか。ホテル・モナコの「専任の担当」は、この時間を、業務として決めておくことにあたる。
役割を書き出すことから
ホテル・モナコの事例集に並んでいるのは、ごみを分ける場面ごとに、担う人を決める仕組みだ。宿でも、客室、運搬、集積、休憩室のそれぞれで「誰が分けるか」を書き出し、空いている場所から埋めていきたい。
持ち帰れる知識
- 分別は、客、運搬、集積の担当が順に拾う形にすると、取りこぼしが減る
- 透明な袋は、館内で仕分けの要否を判断する道具にもなる
- 節約額は、室数で割ると比べやすいが、含める範囲がわからなければ施策の差とは言えない
- 転用率80%の残りの20%は、客の目に触れない場所に残りやすい
宿で考えられること
- 客室、運搬、集積、休憩室ごとに、分ける担当を書き出す
- 収集のルールで使う透明な袋を、館内の確認にも使う
- 掲示や研修を、職場で使う言葉に合わせる
- 仕分けにかかる時間を、業務として割り当てる
事業・予約への接続
到着時に分別の仕組みを一言で伝えると、客室での分別に協力してもらいやすい。館内の仕組みを説明できると、環境への配慮を条件にする法人の出張や団体の問い合わせにも答えやすい。
Sources / 参考情報
- SF Environment(英文) - リサイクルと堆肥化の事例:ホテル・モナコ(PDF)(資料の末尾に「05/10」)
裏付け: 501 Geary Street、201室、転用率80%、年間の節約12万ドル、従業員食堂で使い捨てなし、ボトル入りの水をやめた、ベルマンが到着した客に説明、客室でのリサイクル、リコロジーの営業の担当者、グリーンシールの毎月の監査、部門長のグリーンチーム、館内で仕分ける専任の担当、透明な袋とハウスマン、言語ごとの研修、寄付、CORY賞2006、休憩室での回収 - SF Environment(英文) - 同じシリーズの事例:タスカン・イン、オーチャード・ホテル、ホテル・ニッコー、Wホテル(PDF)
裏付け: 221室・80%・8万9,000ドル、104室・67%・2万5,000ドル、533室・75%・10万8,000ドル、404室・70%・10万ドル - Hotel Council of San Francisco(英文) - ごみの削減(2017年3月4日時点の保存版)
裏付け: 2020年までに埋め立てごみゼロの目標、住民と事業者に3つの分別を求める、リコロジーの「捨てた分だけ払う」料金 - 大阪市 - 事業系ごみの分け方・出し方
裏付け: 2008年1月から排出指定制度、中身の見えるごみ袋(透明または半透明)、事業系ごみにも使用 - 京都市 - 事業ごみとは
裏付け: 事業系一般廃棄物は無色透明または白色透明の90リットルまでの丈夫な袋、有色袋・紙袋・段ボール箱は不可 - 厚生労働省 - 「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和7年10月末時点)(Excel)(2026年1月30日公表)
裏付け: 別表4、宿泊業の外国人労働者4万7,007人・事業所6,311か所、宿泊業・飲食サービス業31万9,999人(参考6、前年27万3,333人)