50%から80%へ、埋め立ての「残り」は半分から5分の1に:サンフランシスコの「タスカン・イン」が、部門長のチームと従業員の点数で分別を続けた
米国サンフランシスコの「タスカン・イン」(キンプトン系、221室)は、2002年に、市内のホテルで初めて、ごみの50%を埋め立てから外したと認められた。2010年の市の事例集では、その割合は80%になっている。割合が30ポイント上がったことは、埋め立てに残る分が50%から20%に減ったことを意味する。この記事では、割合を「残り」の側から読み、8年間の取り組みを続けた仕組みを見る。
市の事例集に書かれていること
サンフランシスコ市の環境局は、市内のホテル5軒について「リサイクルと堆肥化の事例」をまとめた。資料の末尾には「05/10」とあり、2010年5月の版と読める。タスカン・インの欄には、次のように書かれている。
規模と結果
- 221室のホテルのリサイクルと堆肥化
- 埋め立てから外した割合(転用率)は80%
- 年間の節約は8万9,000ドル
特徴
- 専任の担当が、ごみからリサイクルと堆肥に回すものを仕分ける
- 取り組みを改善するチームがある
うまくいく要素
- 客室でのリサイクル
- 部門長でつくる「グリーンチーム」が、監査をして、転用率を上げる
- 新しく入った人への研修
- 全員への四半期ごとの研修
- 「キンプトン・トークン」で、リサイクルへの参加を後押しする。従業員がトークンを集め、ギフトカードと交換できる
取り組む理由には、節約、事業の一部として組み込んでいること、会社の環境の取り組み「アース・ケア」、認証の手続きが改善を続けさせること、長く続けてきた姿勢を挙げている。認証と表彰では、環境認証「グリーンシール」は手続き中、2002年に市内のホテルで初めて転用率50%に達したと認められたこと、市のグリーンビジネスの認定を挙げている。
割合を「残り」の側から読む
転用率50%と80%は、埋め立てに残る割合で見ると、50%と20%になる。ごみの総量が同じなら、埋め立てに回る量は5分の2になり、6割減ったことになる(InnBuddyによる計算)。
| 転用率 | 埋め立てに残る割合 | 50%のときを1とした残り |
| --- | --- | --- |
| 50%(2002年) | 50% | 1 |
| 70% | 30% | 0.6 |
| 75% | 25% | 0.5 |
| 80%(2010年の事例集) | 20% | 0.4 |
同じ考え方で、市内の5軒を比べると、転用率70%のホテルの残りは30%、80%のホテルの残りは20%で、1.5倍の差がある。割合の差は10ポイントでも、残りの量の差は大きい。
ただし、事例集は、2002年と2010年のごみの総量を書いていない。客の数や館内の使い方が変われば総量も変わるため、ここでの「5分の2」は、総量が同じだった場合の目安にとどまる。
続けるための仕組みを、5軒で比べる
タスカン・インの事例集は、8年の間に何を変えたかを順に書いてはいない。書かれているのは、取り組みを続けるための仕組みだ。研修と会合の頻度を、市内の5軒で並べると、次のようになる。
| ホテル | 研修・会合 |
| --- | --- |
| タスカン・イン | 新しく入った人への研修、全員への四半期ごとの研修、部門長のグリーンチームの監査 |
| ホテル・ニッコー | 現場の従業員が、毎朝の教育の集まりに出る |
| Wホテル | グリーンチームが2週間ごとに集まる。メンバーは3か月ごとに交代する。新人研修に分別を含める |
| ホテル・モナコ | 言語ごとの研修を続ける。部門長のグリーンチームが定期的に集まる |
| オーチャード・ホテル | 年に1回の研修 |
頻度は、毎朝から年1回まで幅がある。タスカン・インは、新しく入った人を入り口でとらえ、全員の研修を四半期ごとに繰り返し、部門長のチームが監査で数字を確かめる、という3つを重ねている。従業員が入れ替わっても、分別のやり方が途切れにくい形だ。
点数で、参加を見えるようにする
キンプトン・トークンは、従業員がリサイクルに参加すると受け取れ、ギフトカードと交換できる仕組みだ。事例集は、トークンを何回分で、いくらのギフトカードになるかは書いていない。ここで読み取れるのは、分別を「頼まれた作業」ではなく、「認められる行動」として扱っていることだ。
日本の宿で同じことをするなら、金額の大きさよりも、どの行動を点数の対象にするかを先に決めることになる。たとえば、分別の誤りを見つけて直した、新しい分別の場所を提案した、といった行動だ。
日本の宿に置き換えると
サンフランシスコの転用率は、「埋め立てから外した割合」だ。日本では、ごみの多くは燃やして処理されるため、この割合をそのまま比べることはできない。
環境省の2026年3月の発表では、2024年度の日本の一般廃棄物について、次のような数字が示されている。
- ごみの総排出量は3,811万トン。そのうち事業系のごみは1,175万トン
- ごみの総処理量のうち、直接燃やした割合(直接焼却率)は80.8%
- 処理せずに直接埋め立てた割合(直接埋立率)は0.8%
- 最終処分量は306万トン
- リサイクル率は19.3%
日本の物差しで考えると、燃やしたごみも「埋め立てから外した」ことになり、転用率は高く見えてしまう。日本の宿で、タスカン・インの「50%から80%」に近い目標を立てるなら、「可燃ごみに回る割合」や「資源に回る割合」を、自分の宿の物差しとして決めるほうがわかりやすい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
月に3トンのごみを出す宿で、資源に回る割合を30%から50%に上げるとする。
- 30%のとき:資源0.9トン、可燃ごみなど2.1トン
- 50%のとき:資源1.5トン、可燃ごみなど1.5トン
- 可燃ごみなどは、月に0.6トン、年に7.2トン減る。2.1トンを1とすると、残りは約0.71になる
可燃ごみなどの処理費を1キログラムあたり35円とすると、年7.2トンで約25万円になる。ただし、資源の回収にも費用がかかる場合があるため、差し引きの節約は契約によって変わる。
資源に回る割合を20ポイント上げても、可燃ごみの残りは3割弱しか減らない。タスカン・インの30ポイントで残りが6割減ったのは、もとの残りが50%だったからだ。割合を上げる目標と、残りを何割減らすかの目標は、分けて書いておくと、取り組みの手応えを説明しやすい。
残りの量を数え続ける
タスカン・インの80%は、8年をかけた積み重ねの結果として、事例集に載っている。入り口の研修、四半期ごとの研修、部門長の監査、従業員の点数という、続けるための仕組みが並んでいる。宿でも、割合だけでなく「残り」を記録し、研修の頻度を決めておきたい。
持ち帰れる知識
- 転用率は、埋め立てに残る割合に直すと、変化の大きさがわかりやすい
- 50%から80%への変化は、総量が同じなら、残りが5分の2になることを意味する
- 日本ではごみの多くを燃やすため、埋め立てから外した割合は物差しにしにくい
- 研修の頻度と、監査をする人を決めると、従業員が入れ替わっても続きやすい
宿で考えられること
- 資源に回る割合と、可燃ごみの残りの量を、両方記録する
- 新しく入った人への研修に、分別のやり方を入れる
- 部門の責任者が、定期的にごみの集積の場所を見る
- 点数や表彰の対象にする行動を決める
事業・予約への接続
分別の割合を年ごとに示せると、取り組みが続いていることを、法人の出張の担当者や旅行会社に説明しやすい。従業員の参加の仕組みは、採用の場面で職場の様子を伝える材料にもなる。
Sources / 参考情報
- SF Environment(英文) - リサイクルと堆肥化の事例:タスカン・イン(PDF)(資料の末尾に「05/10」)
裏付け: 425 North Point Street、221室、転用率80%、年間の節約8万9,000ドル、専任の担当の仕分け、改善のチーム、客室でのリサイクル、部門長のグリーンチームの監査、新人研修、四半期ごとの全員研修、キンプトン・トークンとギフトカード、アース・ケア、グリーンシールは手続き中、2002年に市内のホテルで初めて転用率50%、SFグリーンビジネス - SF Environment(英文) - 同じシリーズの事例:ホテル・ニッコー、Wホテル、ホテル・モナコ、オーチャード・ホテル(PDF)
裏付け: 毎朝の教育の集まり(75%)、2週間ごとの会合と3か月ごとの交代・新人研修(70%)、言語ごとの研修と部門長のグリーンチーム(80%)、年1回の研修(67%) - Hotel Council of San Francisco(英文) - ごみの削減(2017年3月4日時点の保存版)
裏付け: 2020年までに埋め立てごみゼロの目標、3つの分別、リコロジーの「捨てた分だけ払う」料金 - 環境省 - 一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和6年度)について(PDF)(令和8年3月27日)
裏付け: ごみ総排出量3,811万トン、事業系ごみ1,175万トン、直接焼却率80.8%、直接埋立率0.8%、最終処分量306万トン、リサイクル率19.3% - Hotel Management(英文) - ホテルはごみについて賢くなっている(2017年3月31日)
裏付け: ホテル協会の事例として5軒の室数・転用率・節約額を紹介(タスカン・インは221室・80%・8万9,000ドル)