GOAL 7 · TARGET 7.3 エネルギー・脱炭素 5分 / 3159文字 割り算で読む型 #419

発電は使用量の87%なのに、電気代は34%減:英国の「シダー・コート・ホテル」ウェークフィールドの屋根の太陽光を、事実と予測に分けて読む

英国ウェークフィールドの「シダー・コート・ホテル」は、2023年11月、屋根に155.1キロワットの太陽光発電を載せた。設置した会社の事例の紹介によると、年の発電は12万1,550キロワット時で、年の電気の使用量14万キロワット時超の約87%にあたる。ところが、電気代の節約は初年度で34%と紹介されている。この記事では、この差がどこから生まれるかを割り算でたどり、日本の宿の屋根で考えるときの物差しを探す。

事例の紹介に書かれていること

英国ヨークの太陽光の会社は、自社のウェブサイトで、シダー・コート・ホテルの事例を紹介している。完了日は2023年11月14日だ。

ホテルの電気の使い方

  • 数百の客室があり、年に多くの結婚式を開いている
  • 電気の使用量は年に14万キロワット時を超える。主な用途は、電気の暖房と客室
  • 一日を通して電気を使い続けるため、太陽光で減らせる
  • 最近、電気の単価が1キロワット時あたり68ペンスに上がった
  • 地域の配電会社が認める上限まで、設備を大きくした

「主な事実と予測」として挙げている数字

  • 年の電気代は9万5,000ポンドを超えていた
  • 550ワットのパネル282枚で、155.1キロワットの設備。25年間の出力の保証
  • 年の発電は12万1,550キロワット時
  • 4月から9月までのふつうの日は、毎日、発電が一日の使用量を上回る
  • 初年度の電気代の節約は3万5,000ポンドで、電気代を34%減らす
  • 設備の寿命の間の節約は130万ポンド超
  • CO2を毎年30トン減らす
  • 投資の回収は3年未満

見出しが「主な事実と予測」となっているとおり、ここには設置の前に決まっていた事実と、これからの見込みが混ざっている。パネルの枚数や出力は事実で、年の発電、節約、回収の年数は、設置の時点での予測と読むのが自然だ。

別の太陽光の会社が2026年6月に出した解説の記事は、このホテルが初年度に3万5,000ポンドの節約を「記録した」と書いている。もとの紹介では予測の欄にある数字が、引用の段階で実績のように書かれている。数字を引くときは、もとの紹介の見出しまで戻って確かめたい。

87%と34%の差を、割り算でたどる

紹介の数字を組み合わせると、次のようになる(InnBuddyによる計算)。

| 計算 | 結果 |
| --- | --- |
| 発電12万1,550÷使用量14万(キロワット時) | 約87% |
| 電気代9万5,000ポンド÷使用量14万キロワット時 | 1キロワット時あたり約68ペンス |
| 節約3万5,000ポンド÷電気代9万5,000ポンド | 約37% |
| 節約3万5,000ポンド÷34% | もとの電気代は約10万3,000ポンド |

電気代を使用量で割ると約68ペンスになり、紹介にある単価と合う。英国政府の統計では、2026年1〜3月に企業などが払った電気の平均の単価は、気候変動の税を含めて24.14ペンスだった。時期は違うが、68ペンスはその約2.8倍にあたる。節約の割合は、9万5,000ポンドで割ると約37%で、紹介の34%とは少しずれる。34%から逆算したもとの電気代は約10万3,000ポンドで、「9万5,000ポンドを超えていた」という書き方とは矛盾しない。

では、発電が使用量の87%なのに、なぜ節約は3分の1ほどなのか。節約の3万5,000ポンドを68ペンスで割ると、約5万1,500キロワット時になる。これは発電の約42%だ。単価がずっと68ペンスだと仮定すると、発電のうち約4割をホテルで使い、残りの約6割は、ホテルで使い切れずに送電網へ流れる、という計算になる。4月から9月は毎日、発電が使用量を上回るという紹介の説明とも合う。

ただし、紹介は、ホテルで使う割合も、送電網へ流した電気の扱いも書いていない。売電の収入を節約に含めているかどうかもわからないため、ここでの4割は、単価を一定とした場合の目安にとどまる。

1キロワットあたりの発電と、CO2の係数

設備の大きさで割ると、ほかの事例と比べやすくなる(InnBuddyによる計算)。

  • 1キロワットあたりの年の発電:12万1,550÷155.1=約784キロワット時
  • 設備利用率(発電した量が、1年じゅう最大の出力で発電した場合の何%か):約8.9%
  • 1キロワット時あたりのCO2:30トン÷12万1,550キロワット時=約0.25キログラム

寿命の間の130万ポンドを、保証の期間の25年で割ると、年に5万2,000ポンドになる。初年度の3万5,000ポンドより大きいのは、電気の単価が上がることなどを見込んでいるためとみられるが、計算の前提は書かれていない。設備の費用も書かれていないため、「3年未満」の回収も確かめることはできない。

日本の宿に置き換えると

日本の屋根の太陽光で、シダー・コートと同じ割り算をするときの物差しが、国の資料にそろっている。

発電の目安

経済産業省の調達価格等算定委員会の2026年2月の意見(案)によると、屋根に置いた10キロワット以上の事業用の太陽光の設備利用率は、2024年6月から2025年5月の平均で13.0%だった。シダー・コートの約8.9%よりも高い。同じ155.1キロワットを、この平均で発電させると、年に約17万7,000キロワット時になる(InnBuddyによる計算)。

自家消費の割合

同じ意見(案)は、屋根に置いた事業用の太陽光で、発電のうち自分で使った割合(自家消費率)の実績を、全期間の平均で17.6%、最近の設置の年で約38%としている。10キロワット以上50キロワット未満の設備に30%以上の自家消費を求めていることの効果が見られる、と書いている。

国の制度

資源エネルギー庁の2026年のガイドブックによると、次のとおりだ。

  • 10キロワット以上50キロワット未満の太陽光は、自分で使ったあとの余った分が買い取りの対象になる。認定には、発電量の少なくとも30%を自家消費する、などの地域活用の要件がある
  • 2025年度下期の認定分から、屋根に置く事業用の太陽光の買い取りの価格は、最初の5年間が1キロワット時あたり19円、6年目から20年目までが8.3円になった
  • 屋根に置く区分は、入札の対象にならない

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

屋根に30キロワットの太陽光を載せる宿を考える。設備利用率は国の資料の平均と同じ13%、電気の単価は1キロワット時あたり30円、買い取りは最初の5年が19円、6年目からが8.3円とする。年の発電は約3万4,000キロワット時になる。

| 自家消費の割合 | 1〜5年目の年の効果 | 6年目からの年の効果 |
| --- | --- | --- |
| 30% | 約76万円 | 約51万円 |
| 60% | 約87万円 | 約73万円 |

自家消費を30%から60%に上げると、1〜5年目で年に約11万円、6年目からは年に約22万円、効果が大きくなる。買い取りの価格が下がる6年目からは、自分で使う割合の差が、より大きく効いてくる。国の算定でも、自家消費分の便益は1キロワット時あたり19.56円と、買い取りの価格とは別に置かれている。

日中に洗濯や給湯、空調などの電気を多く使う宿ほど、自家消費の割合を上げやすい。シダー・コートの紹介でも、ホテルの電気の主な用途として、電気の暖房と客室が挙げられていた。

発電量より、使い切れる量

シダー・コート・ホテルの87%と34%の差は、屋根で生まれた電気を、どれだけ館内で使えるかの差として読める。宿で太陽光を検討するときも、発電量の見込みに加えて、日中の電気の使い方と、自家消費の割合を先に確かめておきたい。

持ち帰れる知識

  • 事例の紹介の数字は、事実と予測を分けて読む
  • 発電量が使用量に近くても、館内で使い切れない分があれば、節約の割合は小さくなる
  • 設備利用率や1キロワットあたりの発電で比べると、地域の差が見える
  • 日本の屋根の太陽光は、自家消費の割合が国の制度の要件にも関わる

宿で考えられること

  • 時間ごとの電気の使用量を調べ、日中にどれだけ使っているかを確かめる
  • 洗濯や給湯など、日中に動かせる電気の使い方を洗い出す
  • 見積もりでは、発電量と一緒に、自家消費の割合の見込みを確かめる
  • 買い取りの価格が下がる6年目以降の効果も計算しておく

事業・予約への接続

屋根の太陽光の発電量は、宿の環境の取り組みとして、数字で示しやすい。結婚式や会議を受ける宿では、催しの電気の一部を自前の発電でまかなっていることを、主催者に伝えられる。

Sources / 参考情報

  • Green Building Renewables(英文) - 事例:シダー・コート・ホテルの太陽光パネル(ウェークフィールド)(完了日2023年11月14日)
    裏付け: 数百の客室と結婚式、年14万キロワット時超(電気の暖房と客室)、単価68ペンスへの上昇、配電会社の上限まで大きくした、「主な事実と予測」:電気代9万5,000ポンド超、550ワット×282枚で155.1キロワット・25年の保証、年12万1,550キロワット時、4〜9月は毎日発電が需要を上回る、初年度3万5,000ポンド・34%、寿命の間に130万ポンド超、年30トン、回収3年未満
  • 経済産業省 調達価格等算定委員会 - 令和8年度以降の調達価格等に関する意見(案)(PDF)(令和8年2月2日)
    裏付け: 屋根設置の事業用太陽光の設備利用率(10キロワット以上、2024年6月〜2025年5月の平均13.0%)、自家消費率の実績(全期間平均17.6%、直近の設置年で約38%)、10〜50キロワットに30%超の自家消費を求める効果、自家消費分の便益の想定値19.56円
  • 資源エネルギー庁 - FIT・FIP制度ガイドブック2026(PDF)
    裏付け: 10〜50キロワットは自家消費後の余剰が買い取り対象、自家消費型の地域活用要件、2025年度下期認定分から屋根設置の事業用は19円(〜5年)・8.3円(6〜20年)、屋根設置区分は入札の対象外
  • EE Renewables(英文) - ホテルを太陽光で動かせるか(2026年6月17日)
    裏付け: シダー・コート・ホテルが初年度に3万5,000ポンド・34%の節約を「記録した」、寿命の間の見込みは130万ポンド超と紹介
  • Department for Energy Security and Net Zero(英文) - 四半期のエネルギー価格(2026年6月)(PDF)(2026年6月30日)
    裏付け: 英国の企業などの電気の平均単価(2026年1〜3月、気候変動の税を含めて1キロワット時24.14ペンス)

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