手を拭いた紙は、どこへ行くか:サンフランシスコの104室「オーチャード・ホテル」が、トイレのペーパータオルを堆肥に回した
米国サンフランシスコの「オーチャード・ホテル」は、104室の小さなホテルだ。市の環境局の事例集によると、ごみの67%を埋め立てから外し、年に2万5,000ドルを節約した。特徴として最初に挙げられているのは、トイレで手を拭いたペーパータオルを堆肥に回すことだった。ペーパータオルがどの流れに入るかは、街の処理の仕組みで決まる。この記事では、オーチャード・ホテルの取り組みと、日本で同じ紙を扱うときの違いを見る。
市の事例集に書かれていること
サンフランシスコ市の環境局は、市内のホテル5軒について「リサイクルと堆肥化の事例」をまとめた。資料の末尾には「05/10」とあり、2010年5月の版と読める。オーチャード・ホテルの欄には、次のように書かれている。
規模と結果
- 104室のホテルのリサイクルと堆肥化。区分は「小さなホテル」
- 埋め立てから外した割合(転用率)は67%
- 年間の節約は2万5,000ドル
特徴
- トイレのペーパータオルを堆肥にする
- 客室係が、客室の中と、ごみを集める場所の両方で分ける
うまくいく要素
- 客室でのリサイクル
- 収集会社リコロジーの担当者と、掲示、シール、研修、認証の報告に使う情報を一緒に整える
- 古い既存のホテルでも、うまく参加できている
- 環境への取り組みが、客の体験を高める
- 省エネと節水のための設備に投資する
- 認証の監査が、改善を続けさせる
- 取り組みを「自分たちのもの」と感じる意識を、みんなで共有する
- 年に1回の従業員の研修
取り組む理由には、オーナー、経営陣、従業員が健全な地球を望んでいること、やり方を変える意欲、社会・環境・経済の3つの成果、減り続ける埋め立て地を守ることを挙げている。ほかの取り組みとして、地元や有機の肉・野菜・ワインの購入、ボトル入りの水をやめたこと、洗面用品の寄付、既存の建物の運営を評価する環境認証「LEED EB」のシルバー、環境認証「グリーンシール」を挙げている。
ペーパータオルは、街の受け皿で行き先が変わる
市内の5軒のうち、トイレのペーパータオルを堆肥にすると書いているのは、オーチャード・ホテルと、533室のホテル・ニッコーの2軒だ。サンフランシスコでは、リサイクル、堆肥、それ以外のごみの3つに分けることが求められ、手を拭いた紙は堆肥の側に入れられた。
ただし、同じ紙が、どこでも堆肥になるわけではない。このシリーズで読んだ例では、次のような違いがあった。
- 米国サンディエゴ市の事業所向けの堆肥の制度は、厨房のペーパータオルやナプキンを受け入れている(#324)
- 米国コロラド州ボルダー郡では、2023年4月から地域の堆肥の工場が生ごみと庭の草木しか受け入れなくなり、ペーパータオルは対象から外れた(#305)
ペーパータオルを分けるかどうかは、ホテルの努力だけでなく、受け入れる工場の条件で決まる。オーチャード・ホテルの取り組みは、街の受け皿があってはじめて成り立つものだった。
2回分けると、1回目の取りこぼしを拾える
オーチャード・ホテルでは、客室係が、客室の中で分け、ごみを集める場所でもう一度分ける。客室で客が分けたものを、客室係が確かめ、集める場所でもう一度見直す形だ。
同じ市の事例集で、ホテル・モナコは、透明な袋と専任の担当で、館内の仕分けを二重にしていた(#416)。オーチャード・ホテルの事例集には、専任の担当は出てこない。客室係の日々の作業の中に、2回の分別が組み込まれている。
小さなホテルの2万5,000ドル
年間の節約2万5,000ドルを室数で割ると、1室あたり約240ドルになる(InnBuddyによる計算)。同じ事例集の404室のWホテルは約248ドル、533室のホテル・ニッコーは約203ドルで、1室あたりでは大きなホテルと同じくらいの水準だ。
ただし、事例集は、節約額に何を含めたか、どの年と比べたかを書いていない。5軒の比較は、規模の違うホテルでも取り組みが成り立った例として読むのがよい。事例集は、成功の要素の一つに「古い既存のホテルでも、うまく参加できている」ことを挙げている。
日本の宿に置き換えると
日本では、使い終わったペーパータオルを、古紙として出すことはできない。
公益財団法人古紙再生促進センターの「古紙標準品質規格」は、古紙に混ぜてはいけないもの(禁忌品)を定めている。その中で、紙製品だが製紙の原料にならないものとして、「汚れた紙(油のついた紙、使い終わったティッシュペーパーやペーパータオル、ペットの汚物処理した紙など)」を挙げている。食べ物のかすのついた紙も同じ区分だ。
センターは、禁忌品を混ぜないことが大切な理由として、製紙の工程での機械の故障や不良品の原因になることを挙げている。日本の宿でペーパータオルを扱うときに大事なのは、オーチャード・ホテルのように「資源に回す」ことよりも、まず「古紙に混ぜない」ことになる。
たとえば、トイレの近くに紙の回収箱を置いている宿では、手を拭いた紙がそこに入らないよう、箱の位置や表示を分けておきたい。使い終わった紙は、自治体や収集業者のルールに沿って、ほかのごみとして出す。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
40室の宿で、客用と従業員用のトイレで、1日にペーパータオルを500枚使うとする。1枚の重さを2グラムとすると、次のようになる。
- 1日に1キログラム、年に365キログラム
- 古紙の回収箱に、このうち1割がまじると、年に約37キログラムの禁忌品が古紙に入る
年に約37キログラムは、宿全体のごみから見れば小さい量に見える。ただ、古紙の側から見ると、まじった紙が、ほかの紙のリサイクルの妨げになる。ペーパータオルの量を測り、どの箱に入っているかを一度確かめておくと、表示や箱の置き方を見直すきっかけになる。
行き先を決めてから、分ける
オーチャード・ホテルは、トイレのペーパータオルを堆肥に回し、客室係が2回分けることで、104室で67%に届いた。ペーパータオルの行き先は、街によって違う。宿でも、まず自分の街で受け入れ先がどこかを確かめ、そのうえで、館内の箱と表示を決めたい。
持ち帰れる知識
- ペーパータオルがどの流れに入るかは、街の受け入れ先の条件で決まる
- 客室係の日々の作業に2回の分別を組み込むと、専任の担当がいなくても取りこぼしを拾える
- 日本では、使い終わったペーパータオルは古紙の禁忌品にあたる
- 古い建物でも、分別の仕組みは取り入れられる
宿で考えられること
- トイレの近くの紙の回収箱に、手を拭いた紙が入っていないか確かめる
- ペーパータオルの使用量を、一度数えてみる
- 客室係が、客室とごみの集積の場所で確認する手順をつくる
- 自分の街の受け入れ先の条件を、収集業者に確かめる
事業・予約への接続
小さな宿でも、客室での分別と、従業員の確認の手順を説明できると、取り組みの中身が伝わりやすい。古い建物で続けている工夫は、建物の歴史とあわせて紹介できる。
Sources / 参考情報
- SF Environment(英文) - リサイクルと堆肥化の事例:オーチャード・ホテル(PDF)(資料の末尾に「05/10」)
裏付け: 665 Bush Street、小さなホテル、104室、転用率67%、年間の節約2万5,000ドル、トイレのペーパータオルの堆肥化、客室係が客室とごみを集める場所で分ける、リコロジーとの掲示・シール・研修・認証の報告、古い既存のホテル、客の体験、省エネと節水の設備、認証の監査、共有の意識、年1回の研修、取り組む理由、地元・有機の購入、ボトル入りの水をやめた、洗面用品の寄付、LEED EBシルバー、グリーンシール - SF Environment(英文) - 同じシリーズの事例:ホテル・ニッコー、Wホテル、ホテル・モナコ(PDF)
裏付け: ホテル・ニッコーもトイレのペーパータオルを堆肥化(533室・10万8,000ドル)、Wホテル404室・10万ドル、ホテル・モナコの透明な袋と専任の担当 - Hotel Council of San Francisco(英文) - ごみの削減(2017年3月4日時点の保存版)
裏付け: 住民と事業者に、リサイクル・堆肥・それ以外のごみの3つの分別を求める - 古紙再生促進センター - 古紙標準品質規格(PDF)(昭和61年1月27日制定、平成28年8月3日改定)
裏付け: 禁忌品A類のA-2「紙製品ではあるものの製紙原料とならないもの」に、食品残渣のついた紙、汚れた紙(油のついた紙、使い終わったティッシュペーパーやペーパータオル、ペットの汚物処理した紙など) - 古紙再生促進センター - 古紙を分別する理由
裏付け: 禁忌品が混ざると、生産工程での機械トラブルや不良品の原因になる