ホテルの食品ロスは、どこで生まれるか:ドバイの「ソフィテル・ザ・パーム」の5か月で13%と、作りすぎ45%・皿の残り34%・在庫20%
ドバイの人工島パーム・ジュメイラにあるリゾート「ソフィテル・ザ・パーム」は、食品ロスを測る機器を使い、5か月で食品ロスを13%減らした。ブランドを持つアコーの2023年の発表によると、1年に直すと3トンにあたる。同じ発表は、ホテルの食品ロスがどこで生まれるかの内訳も示している。下ごしらえと作りすぎが45%、皿の上の残りが34%、在庫の管理の不備が20%だ。この記事では、13%という数字を、この3つの出どころと並べて読む。
どんなホテルか
ソフィテルの公式ページによると、ソフィテル・ザ・パームは、パーム・ジュメイラの東の弧(イースト・クレセント)に建つ5つ星のリゾートだ。プライベートビーチがあり、レストランとバーが12、プールが6つある。料理を出す場所が多いホテルだ。
アコーの発表に書かれていること
アコーは、2023年9月29日、国連の「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」にあわせて、食品ロスとAIについての発表を出した。主な内容は次のとおりだ。
- アコーは5,500軒のホテルと1万の飲食の場を持ち、毎年2億食を出している
- 各ホテルに、グループ独自の記録の仕組み「ガイア」で食品ロスを測るよう勧めている。グループのホテルの71%、3,900軒が導入した。2025年までに、料理を出すすべてのホテルに広げる計画だ
- 国際食品ロス連合(IFWC)の一員として、食品ロスを測る共通の方法づくりに取り組んでいる
- 2030年までに食品ロスを50%減らす目標を超えることを目指す
- 飲食の売上の大きいホテルで、200の試行を始めた
- 厨房のチーム向けに、食品ロスについての研修の教材をつくった
ソフィテル・ザ・パームについての記述は、次の1文だ。オービスク社は、2021年のヴィヴァ・テクノロジーで「アコー・チャレンジ」に選ばれた新興企業で、AIで残った食べ物を読み取り、捨てられる量と種類のデータを集めて、献立の見直しを助ける。これがソフィテル・ザ・パームで使われ、5か月で食品ロスを13%減らした。1年に直すと3トンにあたる。
発表は、ソフィテル・ザ・パームで具体的に何を変えたかは書いていない。分かるのは、残った食べ物のデータをもとに献立を見直す仕組みを使ったことと、5か月の結果だ。
13%と3トンを読む
1年で3トンは、ならすと1か月に約250キログラムになる(InnBuddyによる計算)。発表は、5か月間に実際に減った量や、減る前の量を示していない。13%は5か月の結果で、3トンは、それを1年に直した数字だ。
同じ発表では、オランダの「ノボテル・アムステルダム・スキポール・エアポート」が35%減らし、2年で8トンにあたるとしている。期間が5か月と2年で違うので、2つの割合をそのまま並べて、どちらが進んでいるかを決めることはできない。
3つの出どころ
アコーの発表は、平均的なホテルについて、次の数字を挙げている。
- 1軒あたり、1年に20トン近くの食品ロスが出る
- それは、ホテルのごみ全体の約43%にあたる
- 食品ロスの45%は、下ごしらえと作りすぎから
- 34%は、皿の上に残った食べ物
- 残りの20%は、在庫の管理の不備から
20トンにこの割合を当てはめると、下ごしらえと作りすぎが約9トン、皿の残りが約6.8トン、在庫が約4トンになる(InnBuddyによる計算)。3つの割合を足すと99%で、端数の扱いで100%にならない。
出どころが違えば、手の打ち方も違う。作りすぎは厨房の作る量、皿の残りは盛りの量や客への呼びかけ、在庫は仕入れと保管の管理にかかわる。オービスク社の別の記事は、同社の機器が、料理を出す皿、下ごしらえの皿、客の皿のどこから出たごみかを見分けられると説明している。出どころを分けて測れれば、どこに手を打つかを選べる。
43%と53%
アコーの2024年3月20日の記事では、別の数字が出てくる。2023年に、グループのホテル全体で、食品ロスは運営のごみ全体の53%を占めた。2030年までに食品ロスを60%減らす目標も示している。
2023年の発表の約43%は「平均的なホテル」についての数字で、2024年の記事の53%は「2023年のグループのホテル全体」についての数字だ。どちらもアコーの数字だが、対象と時期が違う。引用するときは、どちらの数字かを書き分けたい。
日本の宿に置き換えると
在庫の管理で出るロスを減らすには、まず食品の期限の意味を正しく知ることが助けになる。消費者庁の「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月)は、食品表示基準の定義を次のように示している。
- 消費期限:定められた方法で保存したとき、傷んで安全でなくなるおそれがないと認められる期限
- 賞味期限:定められた方法で保存したとき、期待される品質が十分に保たれると認められる期限
ガイドラインは、賞味期限を過ぎても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではないとしている。そのため、「おいしく食べることのできる期限です」といった説明を添えることが望ましいとしている。期限を決める側には、期限を短めにとるための係数(安全係数)をできるだけ1に近づけることが望ましいとしている。
宿の厨房の在庫には、消費期限のものと賞味期限のものがまじっている。たとえば、在庫を確かめるときに、期限の種類を分けて見る。消費期限のものは期限を守り、賞味期限の近いものから献立に組み込む。期限を過ぎた食材をどう扱うかは、宿の衛生の決まりに従って判断する。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
30室の宿で、1年に3.6トンの食品ロスが出るとする。アコーの発表の割合を当てはめると、次のようになる。
- 下ごしらえと作りすぎ(45%):約1.6トン
- 皿の上の残り(34%):約1.2トン
- 在庫の管理の不備(20%):約0.7トン
在庫の分を、期限の種類を分けた確認と、期限の近いものから使う手順で半分にできれば、1年に約0.36トン減り、全体の約10%にあたる。作りすぎと皿の残りは、それぞれ別の手の打ち方が要る。3つの出どころごとに量を記録しておけば、どこから手をつけるとよいかを比べられる。
出どころを分けて、測る
ソフィテル・ザ・パームは、残った食べ物のデータを使って、5か月で食品ロスを13%減らした。アコーの発表は、ホテルの食品ロスが、作りすぎ、皿の残り、在庫の3つから生まれることを示している。日本の宿でも、まず出どころを分けて測り、在庫なら期限の確認から、手をつけるところを決めたい。
持ち帰れる知識
- 短い期間の割合と、1年に直した量は、分けて読む
- ホテルの食品ロスは、作りすぎ、皿の残り、在庫の3つから生まれ、それぞれ手の打ち方が違う
- 同じ会社の数字でも、「平均的なホテル」と「グループ全体」では対象が違う
- 賞味期限は、過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない
宿で考えられること
- 捨てる食べ物を、作りすぎ、皿の残り、在庫の3つに分けて記録する
- 在庫を確かめるとき、消費期限と賞味期限を分けて見る
- 賞味期限の近いものから、献立に組み込む
- 短い期間の結果を1年に直すときは、元の期間を添えて伝える
事業・予約への接続
食品ロスの取り組みを紹介するとき、どこで生まれるロスに手を打ったかを添えると、取り組みの中身が伝わる。期間と数字を正確に書くことは、取り組みへの信頼につながる。
Sources / 参考情報
- Accor(英文) - 食品ロス:アコーのホテルを支えるAI(2023年9月29日)
裏付け: 5,500軒・1万の飲食の場・年2億食、ガイアをグループのホテルの71%・3,900軒が導入、2025年までに料理を出す全ホテルへ、IFWC、2030年までに50%減の目標を超える、1軒あたり年20トン近く・ごみ全体の約43%・下ごしらえと作りすぎ45%・皿の残り34%・在庫の不備20%、200の試行、オービスクは2021年のヴィヴァ・テクノロジーのアコー・チャレンジ、ソフィテル・ザ・パームで5か月で13%・年3トン、ノボテル・アムステルダム・スキポール・エアポート35%・2年で8トン、厨房のチーム向けの研修の教材 - Accor(英文) - 持続可能な食のモデルを育てる:世界に影響する、食品ロスとたたかう地域の取り組み(2024年3月20日)
裏付け: 2023年に食品ロスがグループのホテルの運営のごみ全体の53%、2030年までに60%減の目標 - Sofitel(英文) - ソフィテル・ドバイ・ザ・パーム
裏付け: パーム・ジュメイラのイースト・クレセント、5つ星のリゾート、プライベートビーチ、レストランとバー12、プール6つ - Orbisk(英文) - 食品ロスの記録の仕組みとは何か(2025年11月19日)
裏付け: 料理を出す皿・下ごしらえの皿・客の皿のどこから出たごみかを見分けられる - 消費者庁 - 食品期限表示の設定のためのガイドライン(PDF)(令和7年3月)
裏付け: 食品表示基準第2条の消費期限・賞味期限の定義、賞味期限は期限を過ぎても必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない、説明の付記が望ましい(表示例「おいしく食べることのできる期限です」)、安全係数は1に近づけることが望ましい