GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 5分 / 3059文字 何を数えたかを読む型 #428

同じホテルの「1.6トン」と「40トン」:ジャカルタの「フェアモント・ジャカルタ」とロンドンの「ノボテル・ロンドン・エクセル」の食品ロスの数字は、いつ、何を数えたかで変わる

アコーは2023年の発表で、ウィノウ社の機器を使う例として2軒のホテルを挙げた。インドネシアの「フェアモント・ジャカルタ」は1年で食品ロスを16%(1.6トン)減らし、英国の「ノボテル・ロンドン・エクセル」は39%(12トン)減らした。その後、同じ2軒について別の数字も出ている。フェアモント・ジャカルタについては、英国の団体WRAPが2026年8月28日、25%減らし、1年に約40トンの食べ物を救ったと公表した。ノボテル・ロンドン・エクセルについては、アコー自身の2023年9月の記事に「45%減った」とある。この記事では、同じホテルの違う数字を並べ、食品ロスの数字が、いつ、何を数えたかで変わることを読む。

アコーの2023年の発表

アコーは2023年9月29日の発表で、食品ロスを減らすAIの例として3つの新興企業を紹介した。その1つがウィノウ社の「ウィノウ・ビジョン」だ。発表によると、2016年から、余った食べ物をカメラで読み取って量と種類のデータを集め、チームが献立を見直して食品ロスを減らすのを助けてきた。当時、約100軒で使われていた。

発表が挙げた例は次の2つだ。

  • フェアモント・ジャカルタ:1年で16%、1.6トン減
  • ノボテル・ロンドン・エクセル:39%、12トン減

ノボテル・ロンドン・エクセルの「45%」

アコーは2023年9月、各地のホテルの食品ロスの取り組みを紹介する記事も出した。ノボテル・ロンドン・エクセルについて、記事は次のように書いている。

  • 会議、宴会、大きな催しの料理を出し、館内のレストランとバーもある
  • 飲食の場が多様なので、AIの技術に頼ることにした
  • ウィノウ社の仕組みは、厨房のチームが捨てる前の食べ物を量り、何かを見分けて記録する
  • データで、客が本当に求めるものが分かり、間違いを避け、仕入れと調理を改善できる
  • 2022年10月に導入してから、食品ロスは45%減った

同じアコーの同じ時期の発表と記事で、39%と45%という2つの数字が出ている。どちらも、いつからいつまでの、どの範囲の結果かは書かれていない。この記事では、どちらが正しいかを決めず、2つとも示す。

フェアモント・ジャカルタの「25%」と「40トン」

WRAPの2026年8月28日の事例によると、フェアモント・ジャカルタは488室の5つ星ホテルで、終日営業の食堂、レストラン、客室への料理の提供、宴会など、多くの飲食の場を持つ。もともと食品ロスの計測、従業員の参加、余った食べ物の寄付の仕組みを持っていた。

それでも、試行を始めた時点で、食品ロスは1年に推定160トン、食材費にして74万4,000米ドル分出ていた。インドネシアの食品協定「GRASP 2030」を率いるインドネシア持続可能な開発のための経済人会議(IBCSD)、国際食品ロス連合(IFWC)、WRAPが組んだ試行で、次の3つが重点の場所(ホットスポット)とされた。

  • 厨房の下ごしらえ、特に果物の切りくず(下ごしらえが食品ロスの半分近くを占めた)
  • メインレストランのビュッフェの残り
  • 従業員食堂の皿の残り

取った手は、果物の切りくずをサラダ、キムチ、デザート、飲み物に使う、ビュッフェの作る量を需要に近づける、加熱したたんぱく質の料理を作り直して使う、寄付を温かいビュッフェの料理にも広げる、毎日の食品ロスの結果と目標を従業員と共有する、などだ。

結果は次のとおりだ。

  • 食品ロス全体で25%減(1食あたり314グラムから237グラム)
  • 1年に約40トンの食べ物、21万6,000米ドル、118トンのCO2換算の排出を減らす
  • メインレストランのビュッフェの残りは63%減
  • 下ごしらえのロスは、さらに15%減
  • 従業員食堂の皿の残りは7%減

なぜ数字が違うのか

フェアモント・ジャカルタの2つの数字を並べると、違いが大きい。2023年の発表の「16%で1.6トン」から逆算すると、減らす前は1年に約10トンになる(InnBuddyによる計算)。2026年の事例の、試行の時点の推定は1年に160トンだ。

違いの理由は、どちらの出典にも書かれていない。考えられることとして、時期の違い、量った範囲の違い(機器を置いた厨房だけか、ホテル全体か)、量り方の違い(機器の記録か、推定か)がある。この記事では、理由を決めつけない。言えるのは、同じホテルでも、いつ、どの範囲を、どう量ったかで、数字が大きく変わりうることだ。

日本の宿に置き換えると

フェアモント・ジャカルタでは、下ごしらえ、特に果物の切りくずが重点の1つだった。切りくずを数えるときには、「食べられる部分」と「食べられない部分」をどう分けるかが問題になる。

食品リサイクル法の第2条第2項は、「食品廃棄物等」を2つに分けている。食べられた後や食べられずに捨てられた食品(第1号)と、製造、加工、調理の過程で副次的に出たもののうち食べられないもの(第2号)だ。

農林水産省の委託調査の報告書(令和6年2月)は、事業者へのアンケートで使った判断の目安を載せている。主な点は次のとおりだ。

  • 調理くずのうち、骨、魚のあら、貝の殻、取り除いた脂身、野菜などの皮・芯、種、茶がら、コーヒーかすは「食べられない部分(不可食部)」
  • 食パンの耳のように、一般に食べられているものは「食べられる部分(可食部)」
  • 骨や皮など食べられない部分だけを捨てる場合は、その全部を不可食部と数える
  • 食べられない部分を取り除いたあと、残った部分を捨てる場合は、その全部を可食部と数える
  • 作り置きや食べ残しのように、食べられる部分と食べられない部分がまざったものは、基本的に全部を可食部と数える。ただし、実際に量るか、日本食品標準成分表の廃棄率などで不可食部の量を推計できる場合は、それを除いた量を可食部と数える

果物の切りくずなら、皮や芯だけなら不可食部、皮を厚くむいて果肉がついていれば、その分は食べられる部分を捨てていることになる。どこまでを数えるかを決めずに量ると、「食品ロス」の数字は、量る人によって変わってしまう。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

朝食のビュッフェで果物を出す宿で、果物の下ごしらえから出るくずが1日に8キログラムあるとする。分けて量ると、皮、芯、種などの食べられない部分が6キログラム、皮を厚くむいたことで一緒に捨てていた果肉が2キログラムだった。

  • 「食品廃棄物等」として数えると:1日8キログラム
  • 食べられる部分(可食部)だけを数えると:1日2キログラム

むき方を見直して、果肉の分を1日1キログラム減らせたとする。

  • 1年の減り方:1キログラム×365日=365キログラム
  • 可食部で見ると、2キログラムから1キログラムで50%減
  • 食品廃棄物等で見ると、8キログラムから7キログラムで12.5%減

同じ1キログラムの改善でも、分母が違えば割合は大きく変わる。数字を出すときは、どちらで数えたかを添えたい。残った皮や芯は、堆肥にするなどの行き先を考える。

何を数えたかを、先に決める

フェアモント・ジャカルタは、2023年の発表では「1年で16%・1.6トン」、2026年の事例では「25%・1年に約40トン」と伝えられた。ノボテル・ロンドン・エクセルには、39%と45%がある。日本の宿で食品ロスを量るときは、可食部と不可食部をどう分けるか、どの範囲を量るかを先に決めておきたい。

持ち帰れる知識

  • 同じホテルの食品ロスの数字が、時期と出どころによって大きく違うことがある
  • 量った範囲や量り方が書かれていない数字は、そのまま比べられない
  • 食品リサイクル法は、食品廃棄物等を、食べられたもの・食べられずに捨てられたものと、副次的に出た食べられないものに分けている
  • 同じ改善でも、可食部で数えるか、食品廃棄物等で数えるかで、割合が大きく変わる

宿で考えられること

  • 量る範囲(どの厨房の、どのごみか)を決めて記録する
  • 切りくずは、食べられない部分と、一緒に捨てている食べられる部分を分けて量ってみる
  • 重点の場所を3つほどに絞り、手を打つ
  • 数字を伝えるときは、可食部か食品廃棄物等か、どちらで数えたかを添える

事業・予約への接続

何を数えたかをはっきりさせた数字は、取引先や客に説明しやすい。切りくずを料理に生かす工夫は、献立の特色として伝えることもできる。

Sources / 参考情報

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