客が少ない朝はビュッフェを出さない:アムステルダムの「メルキュール・アムステルダム・シティ」が、12か月足らずで食品ロスを34%減らした4つの分類
オランダの「メルキュール・アムステルダム・シティ」は、オービスク社の機器で捨てる食べ物を自動で記録し、12か月足らずで食品ロスを34%減らした。オービスク社の2025年5月23日の記事によると、救った食べ物は8,000キログラム超、節約は4万6,000ユーロ超、大気に出るのを防いだCO2は1万8,000キログラム超だ。記事は、厨房のチームが取った手を4つに分類している。データで献立を変えること、チームの意識と文化を変えること、運営を変えること、在庫を減らすことだ。
始め方:1か月の基準づくり
記事によると、厨房のチームは、オービスク社の機器「オービ」で食品ロスを自動で記録し始めた。最初の1か月は、ふだんどれだけ捨てているかという基準を測る期間にあてた。そのあと、オービスク社の「フードウェイスト・コーチ」と一緒に、減らすための作戦を立てた。
記事は、紙とペンで手作業の記録をつけることは、効率よく回っている厨房ではほぼ不可能で、少なくともとても時間がかかる、と書いている。
1つ目:データで献立を変える
1つ目の分類は、データにもとづく献立の調整だ。オービのデータと自動で作られる報告から、ビュッフェでよく捨てられている品目を見つけ、朝食と夕食の献立から人気のない品目を外した。そのうえで、客の声とデータの分析をもとに、客が好む新しい料理を加えた。
外すだけでなく、加えるところまでが1つの手になっている。
2つ目:チームと客の意識
2つ目の分類は、チームの意識と参加、そして文化の変化だ。記事は次の点を挙げている。
- 厨房のチームと給仕の係が、ビュッフェの残り具合に気を配り、置きすぎるのではなく、過去のデータと状況(需要や客の数など)にもとづいて補充するよう研修を受けた
- オービスク社が用意した図や写真をビュッフェに置き、皿に盛りすぎないよう、客にも呼びかけた
- 食品ロスの目標について、定期的に、場合によっては毎日、社内で話した
- 結果をチームの中で祝い、やる気を保った
記事によると、これで、すべての部署に、ごみを強く意識する文化が広がったという。
3つ目:運営を変える
3つ目の分類は、運営の変更だ。この記事のなかで、いちばん大きな決断かもしれない。
- ビュッフェのために作る量を減らし、朝食では、見込まれる客の数をもとに、注文を受けてから作る料理(アラカルト)を増やした
- ビュッフェは、客の数が見合うときだけ用意した。そうでないときは、アラカルトで出した
- 世界各地から来る客に合わせて、アラカルトの献立を新しくすることにも取り組んでいる
ビュッフェは、客が少なくても、並べる料理の種類はあまり減らせない。客が少ない日に料理の出し方そのものを切り替えると、作りすぎの元を断てる。
4つ目:在庫を減らす
4つ目の分類は、在庫と保管の管理だ。オービのデータをもとに、冷凍庫と冷蔵庫に置く食材の量を減らした。頼みすぎと傷みを防ぐためだ。
棚に余裕があると、つい多めに頼みやすい。置く量の上限を下げることは、仕入れを見直すきっかけにもなる。
結果
記事によると、12か月足らずの結果は次のとおりだ。
- 食品ロスを34%削減
- 8,000キログラム超の食べ物を救った
- 4万6,000ユーロ超を節約
- 1万8,000キログラム超のCO2が大気に出るのを防いだ
記事は、記録は自動だったが、厨房のチームが大きな努力をして食品ロスを減らし、やる気を保ってきたことはたたえられるべきだ、とも書いている。
日本の宿に置き換えると
ビュッフェの出し方を変えて食品ロスを減らした日本の宿が、2026年に国の表彰を受けた。環境省と消費者庁が主催する令和8年度の「食品ロス削減推進表彰」で、宮城県の温泉宿を運営する株式会社一の坊が「環境事務次官賞」に選ばれた。環境省の発表によると、応募は全部で60件だった。
環境省の受賞者取組概要によると、一の坊は、3つの温泉リゾートで「オーダービュッフェ」を導入し、従来の大皿料理の提供による残食を抑えて、約36%の食品ロス削減を実現した。事業名称は「注文分だけを調理する」と説明している。あわせて、社員研修などに、農作業体験や生産者との交流プログラム「ソト活」を取り入れ、規格外の野菜を使った献立も作るようになったという。
メルキュール・アムステルダム・シティが客の少ない朝にアラカルトへ切り替えたことと、一の坊のオーダービュッフェは、どちらも「先に大量に並べる」ことをやめ、「注文に合わせて作る」ほうへ寄せた工夫だ。
環境省によると、この表彰の選考基準は、波及効果・将来性、貢献・成果、具体性、先進性、継続性の5つだ。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
20室の宿で、朝食をビュッフェで出しているとする。客が少ない日でも、見栄えを保つために同じ品数を並べるので、ビュッフェで余って捨てる量は、客の数にかかわらず1日4キログラムだとする。
1か月のうち、朝食の客が20人以下の日が12日あり、その日の客は平均15人だとする。その12日だけ、注文を受けてから作る定食形式に切り替える。定食形式で捨てる量は、客1人あたり0.1キログラムだとする。
- ビュッフェのまま:4キログラム×12日=48キログラム
- 定食形式に切り替え:0.1キログラム×15人×12日=18キログラム
客が少ない12日だけ切り替えると、1か月で30キログラム減る計算だ。どの人数で切り替えるかは、日ごとの客の数と捨てた量を記録して決める。
出し方を、客の数で選ぶ
メルキュール・アムステルダム・シティは、献立、意識、運営、在庫の4つを変え、客の数が見合わない日はビュッフェを出さなかった。日本の宿でも、日ごとの客の数と捨てた量を並べて記録し、出し方を切り替える目安を決めるところから始められる。
持ち帰れる知識
- 最初に基準を測っておくと、あとで減った量が比べられる
- ビュッフェは、客が少なくても品数を減らしにくい
- 冷凍庫と冷蔵庫に置く量を減らすと、頼みすぎと傷みを防げる
- 日本でも、オーダービュッフェで食品ロスを約36%減らした温泉宿が国の表彰を受けた
宿で考えられること
- 朝食の客の数と、捨てた量を毎日記録する
- 客が少ない日に、出し方を切り替える目安の人数を決める
- よく残る品目を献立から外し、代わりの料理を試す
- 冷凍庫と冷蔵庫に置く量の上限を決める
事業・予約への接続
注文を受けてから作る朝食は、できたてを出せることとして客に伝えられる。客の数に合わせて出し方を変えることは、食品ロスと仕入れの費用を同時に減らす工夫になる。
Sources / 参考情報
- Orbisk(英文) - 成功事例:メルキュール・アムステルダム・シティ・ホテルが、オービスクの技術で食品ロスを減らす方法を示す(2025年5月23日)
裏付け: 1か月の基準づくりとフードウェイスト・コーチ、4つの分類(データで献立調整・人気のない品目を外し客が好む料理を追加、補充の研修・ビュッフェの図や写真・定期的〈場合により毎日〉の社内の話・結果を祝う、ビュッフェの量を減らし朝食で見込み客数にもとづくアラカルト・客の数が見合うときだけビュッフェ・アラカルトの献立の刷新、冷凍庫と冷蔵庫の在庫を減らす)、12か月足らずで34%・8,000キログラム超・4万6,000ユーロ超・CO2 1万8,000キログラム超、紙とペンはほぼ不可能 - 環境省 - 令和8年度「食品ロス削減推進表彰」受賞者決定について(2026年9月29日)
裏付け: 消費者庁とともに公募、応募60件、環境事務次官賞に株式会社一の坊「料理人が産地で学ぶ『ソト活』と、注文分だけを調理する『オーダービュッフェ』による食品ロス36%削減」 - 環境省 - 別紙1 令和8年度食品ロス削減推進表彰 受賞者取組概要(PDF)(2026年9月)
裏付け: 3つの温泉リゾートでオーダービュッフェを導入、従来の大皿料理の提供による残食を抑制、約36%削減、農作業体験や生産者との交流プログラム「ソト活」、規格外野菜を活用したメニュー - 環境省 - 令和8年度「食品ロス削減推進表彰」について
裏付け: 環境省と消費者庁が連携して表彰、選考基準(波及効果・将来性、貢献・成果、具体性、先進性、継続性)、主催は環境省・消費者庁 - 株式会社一の坊 - 「令和8年度 食品ロス削減推進表彰」にて『環境事務次官賞』を受賞(2026年9月30日)
裏付け: 温泉宿を運営、オーダービュッフェ導入による残食抑制と「ソト活」、2026年9月29日(環境省発表)