皮はピクルスに、骨はスープに、客は厨房の裏へ:ヨルダンの2つの「モーベンピック」が、1年あまりで食品ロスを25%減らした
ヨルダンのアカバにある「モーベンピック・リゾート&レジデンス・アカバ」と「モーベンピック・タラ・ベイ」は、食品ロスをなくすことを目標に掲げる2つのホテルだ。オービスク社の2024年12月16日の記事によると、2つのホテルは1年あまりで食品ロスを25%減らし、1万1,000キログラムを超える食べ物を埋め立て地に送らずに済ませた。これは2万4,457食分にあたり、節約は6万9,000ユーロだった。記事が挙げた手は、量を減らす、客に厨房の裏を見せる、外の団体とつなぐ、皮や骨を料理に生かす、の4つに分けて読める。
始め方
記事によると、厨房のチームは、オービスク社の機器「オービ」で、1か月のあいだ食品ロスを記録した。そのあと、チームとオービスク社の「フードウェイスト・コーチ」がデータを分析した。分析で、作りすぎ(下ごしらえのしすぎ)を減らすことなど、改善できるところが見えたという。
量を減らす
1つ目は、出す量の見直しだ。
- ビュッフェの1皿の量を小さくした
- 朝食に、注文を受けて作る品目(アラカルト)を用意した
大皿にたっぷり盛ると、最後に残る量も大きくなる。小さく盛って補充する回数を増やすと、残りが小さくなる。
客に厨房の裏を見せる
2つ目は、客を巻き込むことだ。ホテルは、客向けに厨房の裏側を案内するツアーを行い、食品ロスをなくすための取り組みを見せて、意識を高めてもらった。
食品ロスを減らす取り組みは、ふつうは客から見えない場所で起きている。見せることで、客が皿に盛りすぎないなど、客の側の行動にもつながりうる。
外の団体とつなぐ
3つ目は、外の団体との連携だ。食べ物の寄付をする団体と、堆肥にする団体と組み、どうしても出る食品ロスが埋め立て地に行かないようにした。
減らす努力をしても、ゼロにはならない。残ったものの行き先を、埋め立てではなく、人が食べることと土に返すことに決めておく考え方だ。
皮や骨を料理に生かす
4つ目は、皮や残り物を料理に生かす工夫だ。記事は例として次を挙げている。
- 野菜の皮を、ピクルスやジャムに
- きゅうりの皮を、キムチに
- パンを、サラダの材料に
- 鶏の骨を、スープのだし(ストック)に
捨てていた部分が、新しい料理の材料に変わる。
アコーの2026年10月9日のページも、同じような工夫を紹介している。アコーとウィノウ社が開いた「グリーン・プレート・チャレンジ」には、ふだんなら捨てられる食材を生かした料理が40品を超えて寄せられた。優勝はセネガルの「モーベンピック・リゾート・ラマンタン・サリー」の料理長による赤い豆のパンケーキで、ほかにも、バターナッツかぼちゃの皮をカリッとした付け合わせに、すいかの皮をチャツネにしたレシピがあったという。
結果
記事によると、結果は次のとおりだ。
- 食品ロスを25%削減
- 1万1,000キログラムを超える食べ物を、埋め立て地に送らずに済んだ
- 2万4,457食分にあたる
- CO2 4万4,500キログラム分にあたる
- 6万9,000ユーロを節約
記事は、4万4,500キログラムのCO2を防ぐことは、2,200本の木が12年間吸収する量と同じだと説明している。
同じアカバでは、「ハイアット・リージェンシー・アカバ・アイラ」も、オービスク社の機器を使い、1年あまりで食品ロスを39%減らしたと、オービスク社の別の記事が伝えている。
日本の宿に置き換えると
寄付という出口は、日本では税金の扱いが気になるところだ。国税庁の質疑応答事例「フードバンクへ食品を提供した場合の取扱い」は、この点を示している。
国税庁によると、一般的に、法人が食品を寄附した場合は、一般の寄附金として、一定の限度額までしか損金に算入できない。ただし、フードバンクへの提供が、実質的にその会社の商品の廃棄として行われるものであれば、提供にかかる費用を、提供した時の損金に算入して差し支えない。この事例では、次の事実関係が認められることが理由とされている。
- 社内ルールなどに従って、廃棄する予定の食品をフードバンクが回収するもので、実質的に商品の廃棄処理の一環で行われる取引であること
- フードバンクとの合意書で、提供した食品の転売などの禁止や、取扱いの情報の記録と保存、結果の報告などのルールを定め、目的外に使われないことが担保されていること。提供した食品の使い道が確認できること
国税庁は、広告宣伝のために食品を提供する場合は、広告宣伝費として損金に算入できる、とも書いている。農林水産省も、同じ考え方をウェブサイトで案内している。実際の扱いは、宿ごとの事情によって変わるので、税理士や税務署に確かめたい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
ある宿の売店で、賞味期限が近づいた菓子を、社内ルールにより期限の前に棚から下げているとする。下げる数は1か月30箱で、1箱は0.3キログラムだ。
- 1か月:30箱×0.3キログラム=9キログラム
- 1年:9キログラム×12か月=108キログラム
これまで捨てていた年108キログラムを、フードバンクへの提供に切り替えるとする。先に、提供する食品の範囲を決めた社内ルールを作り、フードバンクと合意書を結ぶ。提供のたびに、品名と数量が分かる受け取りの書類をもらって保管する。厨房では、野菜の皮や鶏の骨のように、料理に生かせる部分がないかを、献立を考えるときに確かめる。
減らし、見せ、つなぎ、生かす
2つのモーベンピックは、量を減らし、客に厨房の裏を見せ、寄付と堆肥の団体とつなぎ、皮や骨を料理に生かした。日本の宿でも、寄付の出口を考えるなら、社内ルールと合意書と記録をそろえるところから始められる。
持ち帰れる知識
- 小さく盛って補充すると、最後に残る量が小さくなる
- 野菜の皮や鶏の骨は、ピクルスやだしの材料になる
- どうしても出る食品ロスの行き先を、先に決めておける
- 日本では、一定の条件を満たすフードバンクへの食品の提供は、廃棄と同じように損金に算入できるとされている
宿で考えられること
- ビュッフェの1皿の量を見直す
- 皮や骨、残ったパンを生かせる献立を考える
- 近くのフードバンクや堆肥の業者を調べておく
- 寄付を始める前に、社内ルールと合意書の形を整える
事業・予約への接続
厨房の裏側の見学や、皮を生かした料理は、客に話せる宿の取り組みになる。寄付の仕組みを整えておくと、地域とのつながりも生まれる。
Sources / 参考情報
- Orbisk(英文) - 成功事例:モーベンピック・アカバとタラ・ベイは、食品ロスゼロを目指している(2024年12月16日)
裏付け: 2つのホテル、1か月の記録とコーチの分析・作りすぎ、ビュッフェの量を小さく、客向けのバックオブハウスのツアー、寄付と堆肥の団体との連携、朝食のアラカルト、野菜の皮→ピクルスとジャム・きゅうりの皮→キムチ・パン→サラダ・鶏の骨→ストック、1年あまりで25%・1万1,000キログラム超・2万4,457食・CO2 4万4,500キログラム・2,200本の木の12年分、6万9,000ユーロ - Accor(英文) - 持続可能な食で、共有価値をつくる(2026年10月9日)
裏付け: アコーとウィノウ社のグリーン・プレート・チャレンジ、40品超、優勝はモーベンピック・リゾート・ラマンタン・サリー(セネガル)の赤い豆のパンケーキ、バターナッツの皮の付け合わせ、すいかの皮のチャツネ - Orbisk(英文) - AIで食品ロスを減らす:ハイアット・リージェンシー・アカバ・アイラ・リゾート(2025年10月27日)
裏付け: 1年あまりで39%減 - 国税庁 - フードバンクへ食品を提供した場合の取扱い
裏付け: 一般の寄附金は一定の限度額まで、実質的に商品廃棄として行われる提供は提供時の損金に算入して差し支えない、社内ルールによる廃棄予定の食品の回収、合意書(転売等の禁止・記録と保存・結果の報告)、使途の確認、広告宣伝費、法人税法第22条第3項・第37条 - 農林水産省 - 円滑な食品アクセスの確保
裏付け: フードバンクへの食品提供が企業等の商品廃棄として行われるものであれば、提供に要する費用を提供時の損金の額に算入できる